Moments musicaux

ピアニスト・指揮者、内藤 晃の最新情報です。日々、楽興の時(Moments musicaux)を生きてます。

愛聴盤ひとことレビュー(22)

2008年12月10日 | レビュー
■Youri Egorov BOX■

これは以前にもご紹介しましたが、ユーリ・エゴロフ(1954-1988)は僕の敬愛するピアニストの1人で、少なからず影響も受けたと思います。何と言っても、演奏の隅々から垣間見える、音楽家としての「美意識」がすばらしい。このひとはひたすらに美しいものを追い求めたのだなあと。自然体・正統派で、同時にゾクゾクするような自発性・ときめきに溢れたみずみずしい演奏が、とびきりの美音で奏でられます。
とりわけ、「謝肉祭」「クライスレリアーナ」など一連のシューマン録音は絶品で、その中でも絶品中の絶品なのが「色とりどりの小品」です。これは、ブラームスのシューマン変奏曲の原曲として知られるのみでほとんど演奏される機会はありませんが、実にチャーミングな作品で、エゴロフの夢見るような美しいピアノはその魅力を余すところなく表出しています。
このBOXは33歳で夭折したエゴロフの遺した録音の集大成になっています。シューマンのみならず、すべての収録曲が珠玉の名演といっても過言ではなく、このBOXが多くの音楽を愛する方の手元に渡ることを願ってやみません。

Youri Egorov - The Master PianistYouri Egorov - The Master Pianist
Johann Sebastian Bach Ludwig van Beethoven Frederic Chopin

EMI Classics 2008-03-04

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愛聴盤ひとことレビュー(21)

2008年12月10日 | レビュー
■ブラームス:変奏曲集/デイヴィッド・コレヴァー■

コレヴァーさんは、とても親しくお世話になっているピアニスト。とても共感できる自然体の音楽家だ。このディスクの最大の特徴は、シゲルカワイのピアノが使われていること。コレヴァーさんは、シゲルカワイの“ほの暗い”音色に惚れ込んでいるそうで、そのしっとりとした陰影のあるタッチがブラームスの音楽と驚くほど深く溶け合っている。このCDは、コレヴァー氏自身が非常に気に入っている録音だそうで、シゲルカワイの特徴ある音色によってブラームスの内省的な面が見事に表出されている。1曲目の「シューマンの主題による変奏曲」からして、“これしかない!”と言いたくなるような、陰鬱さを孕んだ音色に惹きこまれる。抑制されたロマンティシズムがジワジワと染み出てくるような素晴らしいブラームスである。

Brahms: Variations for PianoBrahms: Variations for Piano
Johannes Brahms David Korevaar

Ivory Classics

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