福岡市東区を流れる多々良川の河口、右手の小高い丘の上に名島城址公園がある。
その昔、毛利三本の矢で知られている小早川隆景が、居城としていた名島城の跡である。
黒田長政が福岡に城を築いたことで、廃城となり石垣や構築物はすべて移設されたという。
天守閣があったと思われるところに、サクラの大木がまるで龍が横たわっているかのように枝をひろげている。
臥龍桜は数年ほど前に公園として整備されるまでは、藪の中でひっそりと佇んで世の趨勢を見守ってきた。
十数年ほど前に名島神社の神主に教えてもらって以来、毎年何世紀にもわたり生き抜いてきた巨木のご機嫌伺に来ている。
福岡市周辺では、最大級のサクラの古木である。
例年より早く開花宣言があって一度覗いてみたが、まだ花を余りつけてはいなかった。
少し遅いだろうかと思いながら月参りを兼ね覗いてみたのだ。少し散り始めてはいたが、まだ見事な花を付けていた。
少し樹勢が弱りかけた時期もあったが、このところ毎年見事な花をつけている。
神主の話では樹齢数百年ときいたが、確かに見ていると霊験あらたかに思えてならない。
弁財天、宗像三女人、荼枳尼天が城址に祭られ、桜花を咲かせ人々の安康を願っている。
高台にあるために強い風が吹くと、散り急ぐだろうがここ2、3日はまだ楽しめそうである。