あいらのひみつ箱

2006年の年明けとともにジュリーに堕ちました。日の浅いファンが 勝手な思いを書き連ねるゆるいブログです。

新文芸坐2本立て映画&長谷川和彦監督トークショー③

2009-12-15 16:57:02 | イベント・ライブレポ
※トークショーレポ、後半です。
----------------------------------------------------------------------
(現在DVDなどで見られている『青春の殺人者』が、オリジナルより10分程度
短いことについて。)

海外で上映するという話があり、そのために10分程度短くしたものを作ったの。
お金が無かったので、原版を切った。
まあ、あとで戻せるようにはしていたが。
で、劇場ってのは、時間が短いほうが喜ぶんだね。
上映時間短いほうが、お客さん回転させられるし。
なので、こちらの短くしたほうが劇場から劇場へ普及していった。
今日見たのも、短いほうでしょ?
オリジナルは紆余曲折あって、結局行方不明になっちゃってる。

水谷さんは傷天なんかで注目してた。
ときには、あのショーケンさえ食ってしまうことがある俳優として。
ショーケンとは他の仕事で付き合いがあって、なんかのときに
ショーケンが「おい、豊!」なんて呼んで。
水谷さんに直接「ジェームス・ディーンみたいなの、やるか?」とカマした。

母親役は最初市原さんじゃなく、浜木綿子さんだった。
市原さんみたいな、新劇出身の役者だけはヤダなと思ってたんだけど。
田村モンさん(?)に「市原はいいよ」と言われて。
舞台出身の人って、興奮してくると、どうも正面向いてミエを切りたがる。
だから「市原さん、そこは、そんなにやらなくていいから」なんてね(笑)
でも、結果的には良かった。

この映画の回想シーンに出てくる子役、アレはうちの息子なんだけど
あいつが今年39だもんな。
30年も経つはずだよな。
息子は39で、いまだに売れないロックバンドやってるけど、
まあ・・・・・・やってるだけいいよな。俺と違って(笑)

(「この30年間は、何をなさっていたんですか。」という問いに)

それは・・・・簡単には言えないぞ。
話長くなっちゃう。

見てもらえばわかると思うけど、『太陽を盗んだ男』は撮影自体、
ものすごくキツくてね。
・・・・・あれで、スタッフや友人を何人も失った。
自分は映画を撮ってるときは異常者になるので。
だから・・・・そうなってもやる意味があるものでないと。
大切なものを失っても意味があるものでないとね。
ハンパなものをやったって仕方がない。


これは、今ヘイさんの教え(笑)
妥協することよりも、自分を通しきれることのほうが監督には大事だと、
22にして刷り込まれたんだね。

書いて映画になってないホンはいっぱいある。
でも、やってるのは文学じゃないから。

途中でプロデューサーが逃げたりとかね。
結局作品にはなってない。

(「いつまで待てばいいんでしょうか。」という問いに)

まあ、そう言うと暗くなるから、前向きな話しよう。
映画を見てくれる人たちの話は聞きたいと思ってるんで、
アンケートも書いてください。
「バカヤロー、もう撮らないで死ね」とかはなるべく少なめにね(笑)

撮るって気持ちだけはずっとあるし、
やるべきことはやってるんで。
新作で、劇場で、お目にかかりましょう。

長谷川監督作品を簡潔に言うと、
「毒×痛快、一回だけ涙」って感じだね。
主人公を一回だけ泣かす。
豊は見事涙を流したけど、沢田はダメなんだ。
沢田は、まぶたに涙が溜まっちゃって、落ちないんだ。

いかにも奇をてらったものをやろうとは思ってない。
文太さんにしたって、不死身っぷりで笑いを取ろうとしたわけじゃなく
不動明王のような存在として描いたら、ああなった。

劇場でシーーンと見られたら、これ、辛いな~と思ってたが
お客さんの反応をみたら、けっこう笑ってた。
でも、だからといって笑わそうと思って作ってるわけでも
これまた、無いんだよね。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

この後、ファンの方が運営されてる「ゴジサイト」の紹介などをなさって
ショーは終わりました。


「一回だけ涙」のお話、じゅりの涙が落ちないって、泣くシーンは
「ホンモノの涙が本当に流れたのを撮る」ってことでしょうか~。
上手い具合に流れないから、スポイトでチョイチョイ、とかはしないのかぁ(笑)

しかし
「自分は映画を撮ってるときは異常者になる」
「大切なものを失っても意味があるものでないと」
って、すごい言葉ですね。

日本映画史上の傑作を生み出すということが、どれだけの犠牲を
伴うことなのか、一般人には想像を絶する世界です。

ゴジ監督が、もし作家だったら、きっとこの30年の間に、すでに
何十という作品を残しておられるんでしょうね。
しかし「やってるのは文学じゃない」とハッキリおっしゃる。

結果として30年映画を撮っていないのは、
「映画監督として一切妥協しない」
という、強い信念ゆえなのかも知れないと思いました。

作品のブランクは長くなったものの、「やるべきことはやってる」との
力強いお言葉もありましたし、拝見したお姿は、気力体力ともに充実して
おられるように見えました。
映画監督には、晩年になってから傑作を生み出す方も多いですから、
60代なんてまだまだ若い!
「新作で、劇場で、お目にかかりましょう。」
という言葉に期待をかけたいと思います!