弁護士早瀬のネットで知財・法律あれこれ 

理系で特許事務所出身という経歴を持つ名古屋の弁護士があれこれ綴る雑記帳です。

メロン熊の危機!?

2014-09-02 17:36:52 | 意匠・商標

裁判所の知的財産判例データベース,夏季休廷もあってしばらく更新ありませんでしたが,9月に入ってから更新され始めました。

今日新たに掲載されたのは,北海道物産センター夕張店のキャラクター「メロン熊」の事案です(平成25年(ワ)7840号 大阪地裁平成26年8月28日判決)。

メロン熊のオフィシャルブログは → こちら

きもかわいいってことで人気あるそうです。どう見ても,ゆるキャラとは言えない感じですね(^^)

 

本件は,商標権が問題となり,「メロン熊」さん側が被告でした。

原告会社は「melonkuma」という商標について,キーホルダーや人形等を指定商品とする商標権を有していたため,「メロン熊」さん側に損害賠償請求したというものです。

 

結論として,請求は認められませんでした。理由は次の通り。

・「melonkuma」と「メロン熊」とは,称呼(読み方)は同じだけれど,外観は違うし,観念も異なる。

外観が異なるというのは,一方はローマ字,他方は片仮名+漢字だから,見た目が違うということです。

観念が異なるというのは,一応「melonkuma」を発音すると果物のメロンと熊を思い起こさせるけれど,そもそも原告は,「melonkuma」という商標について何ら商品化していなかったので,具体的にイメージできるものはなく,「メロン熊」のようにメロンと熊とが一体化したようなイメージを思い起こさせるものではないということです。

・一般消費者が「melonkuma」と「メロン熊」の出所を誤認混同するおそれは極めて低い。

前述したように,原告は,「melonkuma」という商標について何ら商品化していなかったので,その商標自体に自分のところの商品を識別させる能力がないし,かえって,「メロン熊」を思い起こさせるくらい「メロン熊」が有名になっていて,両者を間違えることは普通はないでしょということです。

・原告の権利行使が権利濫用である。

原告商標には識別能力も顧客吸引力もないのに,「メロン熊」さんが有名になって顧客吸引力を得たのをいいことに権利行使するのは権利の濫用だと判断しています。

 

というわけで,裁判所は,商標が非類似だとするのではなく,権利濫用として請求を棄却しました。

「melonkuma」と「メロン熊」とが非類似だと言い切らなかったのは,誤認混同のおそれは低いけれどゼロではないという感覚が裁判官にあったのかもしれませんね。

 

この事案,原告が「melonkuma」商標を使った商品化をしていなかったという事情が,「メロン熊」さん側が勝つ要素の一つでした。

でも,これって正直なところ,結果論のような気がしますね。

 

原告の商標権取得が平成20年で,「メロン熊」さんが登場し始めたのが平成21年頃だとすると,その時点では原告による商品化の可能性はあったはずです。

「melonkuma」という名前と,キーホルダーや人形といった指定商品からすれば,原告は,メロンと熊を組み合わせたキャラクターを考えていたと思われるので,仮にその通り商品化がされていたら,結構やばかったんではないでしょうか。

ちゃんと商標調査をし,「melonkuma」商標の存在を知った上で,それでもリスクを取って「メロン熊」の名前で行くと「Go」を出したのなら,それも一つのやり方ですが,もし何も考えずに「メロン熊」という名前を採用し,後から商標登録しようと考えたら「melonkuma」という商標があったなんてことだとしたら…

 

やはり,事前にきちんと調査して出願しておくことは重要ですね。

 

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