今回の旅で手に入れた ヴァン・デ・コーク教授のThe body keeps the score : brain, mind, body in the healing of trauma 『虐待されたら、意識できなくても、身体は覚えてますよ : 脳と心と身体がトラウマを治療する時どうなるか?』については、もうすでに何度か触れました。
この本のプロローグ序章に、ヴァン・デ・コーク教授がトラウマに対する見方が劇的に変化した経緯の一部が、ハッキリと示されてます。Facing trauma「トラウマとしっかりと向き合って」と題された、この序章は、最初から、日本のPTSD研究者で、実際に震災支援に「来ている」学者に読ませたいと感じました。こういう人たちにも、トラウマに苦しむ子どもたちに、シッカリと向き合ってもらいたいからなんですね。
その部分を翻訳しときましょう
「トラウマに出合おうとするには、戦闘員になったり、シリアやコンゴの難民キャンプを訪ねたりする必要はありません。トラウマは、私どもにも、友達にも、私どもの家族にも、ご近所の人にも起こりうることです。アメリカ疾病管理予防センターの調査研究によれば、アメリカ人の5人に1人は、子どもの頃に痴漢や性的ないたずらを経験していますし、4人に1人は、親からあざが出来るほど殴られたことがありますし、3組の夫婦に1組は、物理的な暴力に関わりがありますよ、と言われています。私どもアメリカ人の4人に1人が、家族にアルコール依存症の人がいる中で育っていますし、8人に1人が、母親が眼の前で殴られているのを目撃しています」
でも、これはアメリカに限ったことではないことは、日本で子どもの臨床をしている人でしたら、誰の目にも、火を見るよりも、明らかなことでもあるからです。しかし、そのことを認めない「研究者」やら、あるいは臨床をせずにPTSDの「研究」をしている人やらが、残念ながら、日本には多すぎる。ですから、「震災直後であれば、原因がハッキリしていましたが、震災後4年も過ぎると、その原因がよく掴みきれないケースが増えています」などという、寝ぼけた、無責任発言を、マスメディアにイケシャアシャアと言ってのける「専門家」「精神科医」が出て来るんですね。私は義憤を何度も感じてます。この人たちのお名前は伏せておきますね。
ヴァン・デ・コーク教授の序文の言葉をなぞらえて、申し上げれば
「トラウマに出合おうとするには、津波を体験したり、仮設住宅や見なし仮設を訪ねたりする必要はありません。トラウマは、私どもにも、友達にも、私どもの家族にも、ご近所の人にも起こりうることです。…日本人の◎人に1人は、子どもの頃に痴漢や性的ないたずらを経験していますし、▽に1人は、小さいころから、否定的な言葉を繰り返し言われる中で育っていますし、▲人に1人は、赤ちゃんの頃から、親が仕事や研究などで、そばにいてくれません、また、◇組の夫婦に1組は、物理的な暴力に関わりがありますよ、と言われています。私ども日本人の■人に1人が、家族に仕事依存症やアルコール依存症の人がいる中で育っていますし、☆人に1人が、母親が眼の前で殴られているのを目撃しています」
って感じ。
そして、最近cnn(http://jp.reuters.com/video/2015/09/27/pope-says-he-met-with-victims-of-clerica?videoId=365743694&videoChannel=-9993&channelName=Latest+Videos+JP)等で、ローマ教皇のフランシスさんが、司祭などによる、子どもに対する性的虐待について、「神様も泣きます」と述べたことが報じられました。しかし、日本では、母親が、仕事や研究で、赤ちゃんの時分から、子どもが寝る頃までホッタラカシにしたり、「〜はダメでしょ」「勉強しなさい」などと否定的な言葉と態度を子どもに対して繰り返す場合も、「神様も泣きます」ね。