エリクソンの小部屋

エリクソンの著作の私訳を載せたいと思います。また、心理学やカウンセリングをベースに、社会や世相なども話題にします。

リンゴと自分

2014-06-30 09:30:00 | エリクソンの発達臨床心理

 

 

 
陽気で楽しいことが、ピチピチ、キラキラ生きること
  やり取りの中で関わり合うことと、陽気で楽しいことに価値を認めることが、人間にとって、2つの根源的な経験である、とエリクソンは言います。しかし、なぜこの...
 


 マハトマ・まど・みちおさんの詩に「リンゴ」があります。

 リンゴ

 

 リンゴを ひとつ

 ここに おく

  

 リンゴの

 この 大きさは

 この リンゴだけで

 いっぱいだ

 

 リンゴが ひとつ

 ここに ある

 ほかに なんにもない

 

 ああ ここで

 あることと

 ないことが

 まぶしいように

 びったりだ

 

 

 この詩を味わうと、どんな気持ちがするでしょうか?

 

 この詩を味わうことと、

 ≪陽気で明るい関わり≫の味は、

 まぶしいように

 びったりだ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

精神疾患の総合デパートになった、いまの日本

2014-06-30 05:05:08 | エーリッヒ・フロムの真まこと(の行い)

 

 フロムによれば、愛着はお母さんに対するものから、お父さんに対するものへと発達し、この二つが統合するところに、子どもの愛着が健康になる秘密が隠されているようですね。

 今日は、p42の3行目から。

 

 

 

 

 不安神経症になる一つの原因は、男の子の母親が、子どもをかわいいとは思っていても、甘やかせすぎだったり、エバッタりする母親である場合で、しかも、父親が弱くて、子どもに無関心である場合です。こういうケースでは、男の子は赤ちゃんの時の母親に愛着することにこだわったままなんですね。その男の子は、いつまでも母親に甘え、頼りなく感じて、指示待ち族になろうとします。つまり、受け身で、守ってもらい、世話を焼いてもらわなくちゃならない人になっちゃって、父性が全くありません。すなわち、規律もなければ、独立心もありませんから、自分で人生を切り開いていくことができません。誰彼かまわず、「甘えられる人」を探すかもわからないし、権威や権力のある人なら、男にでも女のにでも、甘えようとします。たほう、母親が冷淡で、反応が鈍くて、エバっている場合、男の子は、母親から守ってもらう代わりに、父親か、父親代わりの人から守ってもらうようになります。この場合も最初のケースと同様になるか、あるいは、父親にだけベッタリした人物になっちゃいます。そういう人は律法や秩序や権威ばかりを大事にして、掛け値なしに人を大事にすることを期待することも、受け止めることもなくなります。こういった発達がさらに強まるのは、その父親が権威主義的で、しかも、その息子に強く愛着を感じている場合です。こういった不安神経症になるケースは、おしなべて、一つの原理が、それが父性原理であっても、母性原理であっても、うまく育たなかった場合でして、これはもっと重篤な不安神経症の場合なのですが、母親の役割と父親の役割がゴチャゴチャになっています。外側の人間に関しても、心の中の役割に関しても、母親と父親がゴチャゴチャになっているんです。さらに詳しく調べますと、ある種の不安神経症、たとえば、強迫神経症になるのは、父親にだけ愛着のあるケースですし、他方、他の不安神経症、たとえば、ヒステリーやアルコール依存症になるのは、自分自身を上手に表現できずに、人生の現実に対処できないケースですし、鬱になるのは、母親にだけ愛着がある場合なんです。

 

 

 

 

 フロムによれば、愛着がうまく育たないと、強迫神経症、ヒステリー、アルコール依存症、ウツと言った、様々な精神疾患を患うことになります。母親に対する愛着と父親に対する愛着が共にうまく育ち、しかも、両者がうまく統合されると、心がまとまって、健康な心が生まれるのですね。

 今の日本は、そういう意味では、あらゆる精神疾患の「総合デパート」の観がありますね。フロムが挙げた精神疾患になる前に、今の日本では、多くの子どもが「愛着障害」を顕著に示しているんですね。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

≪陽気で明るい関わり≫は、「正しい」ことよりも、はるかに正しい! 

2014-06-29 10:53:56 | エリクソンの発達臨床心理

 

 
やり取りがどれだけ大事か強調してもしきれない:根っこの経験
   一見攻撃的に見える行動も、それは、人との陽気で明るいやり取りを求めている行動である、これは臨床上非常に大事な視点なのですが、なかなか納得できない視点...
 

 ≪陽気で明るいやり取り≫。それが臨床で最も大事で、最も「正しい」関わりであることを、私は確信しています。

 ≪陽気で明るい関わり≫に、子どもはすぐに嬉しそうに反応します。ところが、「真面目な」教員ほど、「正しい」ことが好きな教員ほど、「ちょっと、いやだな」と言うサインを身体全体から発しますね。そういう教員は、ほぼ例外なく、子どもとのやり取りは一番へたくその部類に入ります。子どもの気持ちを理解する(understand)、一歩下がって、子どもより下に立つ、のが苦手だからです。その手の教員がやってることと言えば、子どもより上に立って(upper-stand)、正しいことを子どもに教え、押し付け、強制することです。それでは、子どもの心に、その正しいことは届かないのに…。自分との対話がないから、子どもの気持ちとも対話ができないのです。

 ≪陽気で明るい関わり≫に、なぜあれだけ子どもは反応するのか? それは、≪陽気で明るい関わり≫こそ、子どもの存在を、子どもが生きてきて、今ここで生きていて、これから生きていくことを肯定するからです。そして、子どもが、最も鋭敏に、最も繊細に、そして、最も深淵に求めていることと言ったら、自分の存在、自分が生きてきて、今ここに生きていて、これから生きていくことを肯定してもらうことなんです。

 今日から、あなたも≪陽気で明るい関わり≫をしてみませんか? なぜなら、≪陽気で明るい関わり≫こそ、どんな「正しい」ことよりも、正しいことだから!

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

良心の 父と母の仲が悪いと…

2014-06-29 02:15:25 | エーリッヒ・フロムの真まこと(の行い)

 

 フロムが語る良心は、非常に能動的ですね。フロイトが考えた良心は、文字通り両親を取り入れたもので、他の選択肢は当面ないところに受動性が垣間見えます。

 p41下から5行目から。

 

 

 

 お母さん中心の愛着から、お父さん中心の愛着に、今見てきたように変わり、最終的にはこの2つが統合されるところに、心の健康と大人になることの根源があります。この発達がうまくいかないと、不安神経症になっちゃいます。この考えを発達させるのは、この本の狙いを超えちゃっいますが、もう少しここにとどまることが、あるいは、今申し上げたことをもっとはっきりとさせてくれるかもしれませんね。

 

 

 

 

 母なる良心と父なる良心は、似て非なるもの。相矛盾した内実を備えています。しかし、この2つの良心が統合されるのは、矛盾が解消されるのではなくって、時と場合に応じて用いられたり、あるいは、相矛盾したままで、その緊張感を維持したままに用いられたり、するのですね。

 しかし、真実であるとき、常にそこには、二律背反、相矛盾する点が共存するものなのですね。

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

今どきのシキタリ

2014-06-28 20:29:23 | エリクソンの発達臨床心理

 

 
「攻撃性」の賜物とやり取りの範囲とルールなど
  子どもの時期が厳しく苛酷な時期になりやすいことを意識して、子どもと関わることが大事であることが分かりました。また、遊びの目的が、やり取りをするためであるこ...
 

 イマドキの日本のシキタリ。今日のエリクソンに学ぶのなら、子どもの手を振り払うのがイマドキなのでしょうか?

 というのも、今の日本では、極端に “あそび“ と言う名のゆとりが足りないからです。ですから、子どもが手を伸ばしている時にも、家庭では、母親も父親も、その子どもが伸ばした手をにぎる者がおりません。学校では、学校の先生が大車輪で大忙し。トイレに行く時間さえない。ですから、子どもが手を伸ばしても、その手を取るものがいません。

 「aggredere(「攻撃」を意味するラテン語)の、まず第一の意味は、楽しく陽気なやり取りを求めて、物や人に歩み寄ること」なのに。手を伸ばしているだけなのに。その手を取る大人がいないんです。

 大人に “あそび” がないからです。その手を伸ばすと、子どもは、「心の中では、欲求不満と激しい怒り、恥と「自分は悪い」という気持ちをすぐに経験すること」になります。

 私ども大人は、何のために、この “あそび” と言う名のゆとりをなくしているんでしょうか? こどもが伸ばした手よりも大事なものが、この世の中にあるのでしょうか?

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする