医師日記

「美」にまつわる独り言です
水沼雅斉(みずぬま まさなり)

エッセネ派神殿の美25

2007年06月19日 11時40分35秒 | Weblog
 彼女の説では、エッセネ派にとって「キッティーム」はローマ人でしたが、「闇の子」とは、ローマ人ではなく、あろうことか同胞のパリサイ人とサドカイ人だと・・・。

 彼女の織り成す物語全体のトーンは、ヨーロッパ人の奥深さからか良い意味でとっても暗く、残念なことにはラストが理屈っぽく、かつ尻切れ気味で、流し読みにならざるを得ず、スリリングさやスピード感には劣り、また偶然の積み重ねがあまりに大きすぎますが、そこは処女作、大目に見て。

 主人公の深遠な思考描写はなかなかのものですし、文章の質や、小説全体の色といったものに圧倒的個性があり、訳もとっても知的です。

 僕たち日本人が普段あまり触れる機会のないユダヤ教や、エッセネ派やクムラン宗団とは、あるいはシナゴーグ、トーラーとは、ヘブライ語とは、エルサレムとは、シリア正教会は・・・などがよく分かりますよ。

 そして彼女が出した、「死海文書」に記載されていた「エッセネ人」「クムラン宗団」の驚愕の仮説・・・

 イエスは確かに存在しました、そして確かに布教を行い、実在したイエスを実際に殺したのも福音書どおり確かにローマ人でした、しかしその舞台裏の驚くべき真実とは・・・?

 しかし女史はどうして、ここまで、若干27歳にして、ヘブライ語の文字に至るまでだとか、聖書の内容、歴史、ユダヤ教の秘儀にまで詳しいのでしょうか?

 勉学の賜物なのでしょうか?

 すごすぎるぞ!

 日本の作家はこの点で、つまり邦モノの多くは色恋沙汰や浅い人間関係などのたわいもない(?)テーマだとか、事件といっても湯けむり殺人事件なんて矮小なものが多く、人物の心理描写の書き込みも足らないし、専門知識の追求や学術的な裏づけは貧困で、大風呂敷などの点において非常に劣る気がします。

 中には作者が先生のように劇中にしゃしゃり出て、はい、これはかくかくしかじか、はい、ここはこう考えてね、そもそも日本人は、のごとく大雑把なくくりで、さあこれにて一件落着!・・・後味すっきり、よりも・・・

 僕は映画でも小説でも、「永遠の仔」のように後味が悪く、暴露し追及し、問題を投げかけ、読者に判断を委ねるものが好みです。


 そして「クムラン」の続編が、「クムラン 蘇る神殿」です。

 エルサレム神殿内の宝物の行方を記した「銅の巻物」とは?

 サマリア人の果たした役割は?

 神殿の再建に燃える、エッセネ派は何をしたいのか?

 どうしてエッセネ人は神殿にこだわったのか?

 ユダヤ人にとってエルサレム神殿とは何だったのか?

 テンプル騎士団とフリーメーソン(石工)は、エッセネ派にどう関わったのか?

 テンプル騎士団はなぜ、テンプル、すなわち「神殿」騎士団と名乗ったのか?

 テンプル騎士団と、その総長ジャック・ド・モレーと、騎士団員を処刑したフランス国王フィリップ端麗王、当時の教皇でフランス人のクレメンスは?

 テンプル騎士団と戦ったイスラム勢力とエッセネ人の関係は?

 エッセネ人のコーヘン(大司祭)の血が流れる、現代のクムラン宗団の「メシア」にして物語の主人公、アリーの運命やいかに??

 主人公アリーと、謎多きアメリカの現代娘、ヒロインとの許されざる恋の行方は?