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高田衛の「八犬伝の世界」

2013年06月11日 | others
高田衛の「八犬伝の世界」は、
滝沢馬琴の「八犬伝」をオリジナルの読本の挿絵から分析するという手法で、
馬琴の構想を明らかにしていきます。
なんたってびっくりなのは、1巻ですでに8人の犬士の幼児姿が描かれ、
その精神的な父親である「丶大(ちゅだい)法師」も描かれています。
この時点ではまだ犬士たちは生まれていませんし、
「丶大法師」はまだその俗身である武士の金碗大輔です。
だからリアルタイムで読んでいた読者には、この絵の意味が理解できないことになります。



ところでこの挿絵は北斎の弟子が担当していました。
馬琴は北斎に絵の指示を細かく送っていたそうですから、
画家が勝手に想像して描いたわけでなく、
馬琴の中にあるすでに出来上がっていた構想に従って描いていたわけです。
馬琴も行き当たりばったりで書いていたわけでないことが分かります。

山田風太郎の「八犬伝」は、山田風太郎がリライトした八犬伝そのものと、
馬琴と北斎のやりとりを交互に描いたメタフィクショナルな構成になっていて、
物語とその作者との関係を山田風太郎独自の醒めた視点で描いています。



山田風太郎と八犬伝の組み合わせは、とっても親和性が高いかと思いきや、
「八犬伝」そのものには風太郎はあまり熱が入っていないように見えるというか、
犬江親兵衛が「ソーラエ」とカタカナで喋るあたりは、
なんだかな~、と思うのはわたしだけか。
風太郎の興味は、盲しいた馬琴が文盲の嫁に博覧強記のかたまりみたいな文章を書かせたあたり、にあるようです。

そういえば風太郎は「八犬伝」を忍者ものの枠組みに借用した「忍法八犬伝」を書いています。



こちらの八犬士は乞食、詐欺師、軍学者といった残念な連中ばかりですが、
姫のためなら身命を問わず戦うという設定になっています。
やっぱり山風はマジメな主人公が嫌いというか、大儀名分が気に食わないのでしょうね。



「八犬伝の世界」が中公新書で出たのが1980年、山田風太郎の「八犬伝」連載が1983年で、
風太郎「八犬伝」には上記の「幼児姿の八犬士」のことも出てきます。
ということは山田風太郎も「八犬伝の世界」を読んでいたに違いありません。

なんのかんの言っても我々世代はこれですよね!




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