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神楽太夫

2011年11月05日 | ミステリ
先日、各務原市の図書館で行われた青空古本市で買ったのが、横溝正史「刺青された男」(角川文庫)。
なんたって「10g/30円」という量り売りの本屋で売っていたカバー無し裸本です。

むかし読んだかどうか定かなかったのですが、
正史が「本陣殺人事件」を書く前に戦後初めて書いた作品「神楽太夫」が入っていたのでちょいと読んでみました。
※本当に戦後初めて書いた作品は「探偵小説」でした。
収録された「神楽太夫」をはじめ、戦後すぐに書かれた短編は面白いですね。
読んでみると、以前に読んだという記憶が戻ってきました。
そのころはこれらの作品が詰まらなかったんだなあ。

アマゾンのコメントでも「正史は長編作家なので短編はつまらない」などと書かれていますが、
いやいや、そう思う人は戦前の由利先生のシリーズを読んでみたほうがいいと思いますし、
戦前の作品では短編のほうが評価が高いはずですがね。

でもたしかに、「刺青された男」に収録されている戦後すぐに書かれた短編は、
複雑な構成を短い枚数の中に無理やり収めている感は否めません。
しかも、構成の中で「探偵小説作家、あるいは探偵小説マニアの妄想が現実に敗北する」
という、ヘンな共通点が見られます。

枚数が短いのは、当時の紙事情のせいで長い作品が載せにくかったことを考慮したのでは、
という理由が考えられます。

ところで「本陣殺人事件」では重要な登場人物の一人が探偵小説マニア、という設定になっていますが、
「本陣」以外の戦後に書かれた長編作品で
「マニア」が登場する作品は無いのではないでしょうか(検証していませんので確証はありません)。

長編作品では正面きって本格ミステリを書いた正史は、
短編ではバークリーのような「メタ」がかったミステリを書こうと思ったのでは?とも思わせます。
しかし残念ながら正史がバークリーを読んでいた、という記述はなかったような
(検証していませんが、『探偵小説五十年』にも出てこない記憶があります)気がしますが、
マニアの正史がバークリーを読んでいないはずはないでしょう。
(※個人的にはA・バークリーをまったく読んでないので、
バークリー作品の評価が間違っているかもしれません。『試行錯誤』は途中で投げました)
この短編集に収録された短編「探偵小説」は、
トリックそのものは古臭いものながらプロットはクロフツのようなアリバイ工作ものです。
もしかしたら長編として考えてみたものの、トリックが古臭いので短編に仕立て直したのではないか、と。
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