spin out

チラシの裏

華族

2015年03月19日 | ミステリ
浅見雅夫男「華族の誕生」は意外に面白かったです。
じつは、華族を作るということは貴族院、つまり国会と議員を作ることに他ならず、
伊藤博文による日本の超速近代国家化を視程にいれた支配者階級の再編成であり、
機械的な分別に反論する公卿や大名がオモテやウラから
伊藤と岩倉、三条へ爵位をあげる運動をかける者もあり、
勝海舟さえその運動に巻き込まれるエピソードには
伊藤と勝の腹芸のさぐりあいが見事としか言えない。



著者は伊藤、三条実美、その他公卿大名の書簡を読み、
そのウラ行間背景にある意図を解読する手法で華族制度から為政者たちの言動を推理する。
分からない部分は分からないと正直に書き、一般読者にも面白いと思わせる努力を怠らない。



保坂正康「華族たちの昭和史」は浅見の本からの引用が多く、
かつ華族(というより貴族院議員)への過剰な同情があるせいか、
貴族院議員がもう少ししっかりしていたら日本の未来と現在は違っていたのではないか、
とも読める書き方だ。
見識は高かったかもしれないが、
政治的行動力はほぼ皆無の公卿や諸侯出身の華族に期待するのはムダだろう。

で、まったく関係ないけれど横溝正史の「塙侯爵一家」を読んでみることにした。
大昔に買って放置していた桃源社版を読む理由ができてよかった。
ま、正史が小説に書く程度だから、
小説に登場する華族は実態とずいぶんかけ離れていた、と思うべきでしょう。
ちなみに冒頭のイギリスでの場面は、阿片窟のあるアッパースワンダム小路ということから、
ホームズ「唇のねじれた男」からのイタダキでしょうか。
トリックも一人二役を二人一役へ換骨奪胎させたのかなあ。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『少年倶楽部』熱血・痛快・... | トップ | サンカの民を追って »

コメントを投稿

ミステリ」カテゴリの最新記事