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「楡家の人びと」

2016-05-09 22:31:58 | 読書

「楡家の人びと 第1部」 北杜夫(著)
溢れる楽天性と人当たりの良さで患者の信頼を集めるドクトル楡基一郎が、
誇大妄想的な着想と明治生まれの破天荒な行動力をもって、
一代で築いた楡脳病院。
その屋根の下で、ある者は優雅に、ある者は純朴に、
ある者は夢見がちに、ある者は漠とした不安にとまどいながら、
それぞれの生を紡いでゆく。
東京青山の大病院と、そこに集う個性豊かな一族の、
にぎやかな年代記の幕が上がる。


「楡家の人びと 第2部」 北杜夫(著)
関東大震災による建物の消失、
圧倒的なカリスマ性を誇った基一郎の突然の死。
災いが続き衰退に向かう楡病院に、
気位高く君臨する基一郎の長女・龍子、
二代目院長を引き継いで病院経営と家庭の不和に悩む夫の徹吉、
不幸な結婚で落ちぶれる龍子の妹たち、
浮世離れした弟たち。
時代は大正から昭和へ変わり、軍国主義の風潮が広がる中で、
一族それぞれの運命は大きく分岐し変転する。


「楡家の人びと 第3部」 北杜夫(著)
遂に太平洋戦争が勃発。
開戦時の昂揚も束の間、
苛酷さを増す戦況が一族の絆を断ち切り、
大空襲は病院を壊滅させる。
敗戦に続く荒廃の季節、残された者には、
どんな明日が待っているのか――。

人間のささやかな毎日の営み、夢と希望、苦悩と悲嘆、
そのすべてが時の流れという波濤に呑みこまれ、
「運命」へと変貌してゆくさまを、
明治から昭和への時代変遷を背景に描きあげた一大叙事詩。

<感想>
直木賞受賞作「小さいおうち」中島京子(著)を読んだとき、もっとリアルにその時代を感じられる本が読みたくなって探してみつかった「楡家の人びと」。
随分前に買ったけれど積読本に紛れていたのを引っ張り出して連休中に読んでみた。
三島由紀夫が、「戦後に書かれたもつとも重要な小説の一つである。この小説の出現によつて、日本文学は、真に市民的な作品をはじめて持ち」「これほど巨大で、しかも不健全な観念性を見事に脱却した小説を、今までわれわれは夢想することも出来なかつた」と、称賛しただけのことはあった。