中澤晴野「人生バイプレイヤー きょうだい児を生きる」,文芸社(2019/2).
病気や障害のある兄弟姉妹を持った人を「きょうだい児」と呼ぶことをこの本で初めて知った.16とんの周囲にも,きょうだい児が存在したし,今も存在している.
著者の弟 A ちゃんはダウン症.周囲の目が向くのはもっぱら A ちゃん,この子のバイプレイヤーとして人生を生きなければならないのが,きょうだい児のリアルである.親が子と過ごす時間は半生であるのに対し,きょうだいの場合は一生だ.「きょうだい」と平仮名で書くのは,兄弟・姉妹を一般化するためらしい.
100ページ足らず.前半は 1991 年生まれの著者の体験で,後半ではややそれが一般化される.読むのが苦しかった.
きょうだい児が声を上げても,周囲にその声を叩き潰されることが日常的であり,そのために障害のあるきょうだいや家族,周囲のひとを憎む感情が生まれる.どんなに不平不満が溜まろうと,周囲はきょうだい児に,親や障害を持つきょうだいに対して良い子であることを期待する.著者はきょうだい児であることの負担から病んで,精神障害者手帳を持つに至ったという.
驚くことに,子どもに障害や病気があることがわかったとき,意図して下の子を作ってお世話係にしようと考える親は一定程度存在するそうだ.
ひとりくらい病気・障害のある子がいても,昔のように兄弟姉妹が多ければ,きょうだい児としての負担は分散される.しかし現代ではこども2人だけということが多い.いっぽう現代ではSNSが救い.きょうだい児ネットワークもある.
著者は学校で「いじめ」に会うが,それがどこまできょうだい児だったことに原因するかはわからない.両親には手厳しく,A ちゃんは人間扱いしていないみたいに読める.つまり内容はネガティヴで主観的に過ぎるように思える.この本を「告発」とする著者としては,しかしそんなことは百も承知らしい.だからこその迫力!! Amazon のカスタマーレビューでは,著者と同じダウン症きょうだい(姉)という方曰く,「よくぞ、書いて下さった」と感謝の気持ちで一杯になりました...
図書館で借用.カバーデザイン 中川ともき.
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