Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

伊藤 友計 「西洋音楽の正体」

2021-03-25 08:21:55 | 新音律
「西洋音楽の正体 - 調と和声の不思議を探る」 講談社選書メチエ(2021/2).

Amazon 上の CM*****「西洋音楽」とは何か。それはどのように形成されてきたのか。
古代ギリシア人によって気づかれた、音の高低と数学の関係、音の並び。それは音楽として中世から近代へと西洋で練り上げられていった。
音階や半音の発見、音を重ねることへの傾きと和音原理の探究、長調・短調の整序と規則の整理、また、人間的感情の美的表現から心地よさの追求へ。
西洋音楽は、一つの「世界創造」であった。本書では、その楽理の由来、実践の発展を訪ね、自然と音楽の関係、背景にある思想の展開に焦点を当てる。
西洋音楽とは普遍性を持つものなのか。自然のなかにドレミファソラシドはあるのか。*****

1600年あたりのモンテヴェルディから始まる,音楽史に沿った調と和声の解説.記述は論文調で堅苦しいが,良い先生のように 同じことを表現を変えて何度も言ってくれるので,わかりやすい.
G7→Cというコード進行はモンテヴェルディから始まる.これにはじまり,今のジャズのベーシストが自習・他習で学ぶことが,西洋音楽の王道を歩んでいると認識できるのは面白い.
長・短ひっくるめて24の調が出現したのは17世紀末ということである.しかしこれらの調がどんなものであったかは,よくわからない.マッテゾン「新設のオーケストラ」(1713)は,「ハ長調 / 屈強で大胆な性格,ヘ長調 / 寛容,忠実,愛...」といった調子で24の調を性格づけている.平均律では長調・短調の違い以外は,こうした性格ははっきりしない.平均律普及以前の古典的な音律ではもっとそれぞれの性格は明確だったのだろう.しかし,それぞれの調の構成音・基本波の周波数など,今となっては知るよしもないのかもしれない.

終章は「音楽と自然」で「音楽は自然ではなく,自然は楽器も音階も和音も作らない」がこの本の結論の一つである.この節には物理学者ヘルムホルツも登場する.

出版社はページが増えるのを嫌がる.それでも,年表と索引くらいあればいいのに.
動画は本書の冒頭でフレーズが俎上にのる,モンテヴェルデイ「つれないアマリッリ Cruda Amarilli」の歌唱例.



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