箇条書き風
ハサミのアラカルト
Q:なぜハサミは切れなくなるのですか?
刃先が毛髪のせん断のさいに摩耗したり、毛髪の抵抗で刃先アールが
大きくなるためです。
Q:どうすれば切れるようになるのですか?
大きくなった刃先アールを数ミクロン除去する事で、アールを小さくすると
また切れます。 こんな単純なことが研磨の理論です。
刃裏の表面が荒いと刃の劣化も早くなります。
ハサミ角
動刃と静刃の開いた角度のことを、ハサミ角といいます。
ハサミ角が大きいほど、髪の毛は刃先の方向へ逃げやすくなりますが
切れる感触は軽い。 ハサミ角が小さいほど、髪の毛は刃先の方向へ逃げないが
感触は重くぶつ切りになる。 ハサミ角が大きいケ所は、開ききった時の
刃元になり、開閉角の小さい場所が刃先になる。
ハサミのせん断力=支点から力点までの距離÷支点から
作用点までの距離×指の力です。
したがって、ハサミのせん断力(切る力)は刃元で強く、刃先で弱くなります。
また、同じハサミでも長いハサミよりも短いハサミの方が
良く切れることになります。
ハサミは単に切れれば良いのでなく、切ったときの手ごたえ、音など
五感で感じる部分もかなり重要であり、これを調子といいます。
カット中に刈り毛が飛ぶのは、刃角が大きい場合や刃先の
研磨面が荒い場合に起こります。
刃形状の種類と呼び名
ハサミの峰には平峰型(段刃)・弓峰型(ハマグリ刃)・三角峰型(剣刃)があります。
刃全体の長さに対して刃幅が広いと笹刃と呼び、刃幅が細いと柳刃と呼んでいます。
ハサミで毛髪を切ろうとすると、両刃の接触を押し広げようとする力
つまり、側方圧が生じます。
切れ味の劣化が進み側方圧に負けると、ハサミの刃と刃の隙間に切れなかった
髪の毛をはさんでしまう現象が起きてしまいます。
このような現象は長いハサミに多く切れなくなった7インチ以上のハサミの
刃先でよく起きる現象で、研ぎ師仲間では「ぱっくん」バサミと呼んでいます。
これを防ぐために側方圧に対抗するだけの接触圧を必要とします。
それ故ハサミは裏刃にアキを作り、鋼の弾性を利用して接触圧をつくっています。
また、刃裏の接触面積が小さいほど、接触圧は大きくなるので
必要以上にネジを強く閉めたりヒネリを強くするというハサミの構造的負担を
軽減できるので操作は楽になります。
押し切りは、この構造的負担を増長する使い方で・・・
手入れの行き届かない・・・ つまりが・・・ 切れないハサミを使った時に
身に付いた「悪癖」かも知れません。
押し切りの結果は、刃先がひっくり返り気味に擦れ合い刃が荒れるので・・・
更に切れなくなる原因を繰り返す愚行でも有るのですね。
まともな「研ぎ師」から見れば・・・ 手動式のパチンコ台が温泉街にすら
無くなって久しいのに、そんなに親指を鍛えてどうするんだい?。
と内心では「突っ込み」を入れてます。
決して「力一杯働く」あんたは偉いとは思いませんです。
お客様の「押し切り癖」を更正するのも「まともな研ぎ師」の仕事のひとつです。
次回から中級編に成ります。