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肥満、第3の要因に「腸内細菌の変化」 伝統的な和食で予防可能

2014年05月07日 | Weblog

 肥満やメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)を引き起こす大きな環境要因に食べ過ぎや運動不足が挙げられる。3つ目の環境要因として、膨大な腸内細菌の集まりである腸内細菌叢(そう)が関係していることが、ゲノム(全遺伝情報)解析が進んだことで明らかになってきた。専門家は健全な腸内細菌叢を保つには欧米型の食事ではなく、伝統的な和食が良いと推奨している。(山本雅人)

 ◆米研究論文に注目

 「腸内細菌叢は肥満研究の最も大きな注目分野の一つ」と語るのは、日本肥満学会理事長で国立国際医療研究センター総長の春日雅人氏だ。糖尿病研究の権威である春日氏は昨年9月、米科学誌『サイエンス』に掲載された米ワシントン大のグループの研究論文に着目した。

 同論文によると、片方が肥満、もう片方が痩せ形の双子4組を選び出し、腸内細菌が大量に含まれるそれぞれの便を無菌のマウスの腸内に移植。すると、太った人の便を移植したマウスは太り、痩せ形の人の便を移植したマウスは太らなかったという。同論文から春日氏は「細菌叢の差違は肥満の結果もたらされたのではなく、肥満を引き起こす原因だったことが示された」と強調する。

 ◆ゲノム解析で加速

 ヒトゲノムの全配列は2003(平成15)年に解読が宣言された。腸内細菌叢の研究はゲノム解析の恩恵を受け、細菌の遺伝子配列の解析速度が飛躍的に上がり、菌の種類や量が分かるようになった。腸内細菌叢と肥満の関係は米国が先行しているが、日本では免疫疾患などの関係について、理化学研究所統合生命医科学研究センターの本田賢也・消化管恒常性研究チームリーダーによる研究が知られている。

 「腸内には約1千種、総重量で1キロの細菌が存在し、共生している。それらの共生関係が崩れると、肥満・メタボといった代謝性疾患やアレルギーなどの免疫疾患につながる」と本田氏は解説する。

 共生関係を崩すものとしてはまず、脂肪が多くカロリーの高い欧米型の食事が挙げられる。本田氏によると、高脂肪食を1週間続けただけで細菌叢の構成が変化したという複数のデータがあり、肥満の原因となる細菌は「食事で摂取した糖類などの分解を促進し、体内により吸収しやすい形にする働きがある。そういう菌が高脂肪食を好み、それを餌に増えるのではないか」。

 次に、食物繊維の少ない食事や、同じメニューを繰り返し食べることも共生関係を崩す。いずれのケースも「バクテロイデスとファーミキューテスという腸内細菌のグループの細菌量が変化して崩れる」ことが判明している。現時点で最大の予防方法は食事にあるという。

 本田氏は「健全な腸内細菌叢を保つためには、野菜を含め、さまざまな食材を少しずつ摂取できる伝統的な和食が適している」と話している。

 ■数十の菌を合わせた飲み薬開発に期待

 腸内細菌というと、ヨーグルトの整腸作用が思い浮かぶ。

 本田氏は「良い作用があるのは確かだ」と前置きしたうえで、「腸内細菌叢全体というレベルから見ると、ヨーグルトを食べただけで大きな影響を与えられるほどでない」とみる。ビフィズス菌などは腸内細菌の中ではマイナーな部類であることや、摂取しても体内にとどまりにくいからだ。

 本田氏は現在、細菌叢の中から優れた菌の組み合わせについて研究を進めており、将来は「数十の菌を合わせた飲み薬が開発される時代が来る」と期待をにじませた。


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