はさみ屋のブログ

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あれこれの続き

2005年12月25日 | 刃材や金属そして錆

技法と素材の歴史  
 
 西洋では、
 ● 坩堝法 → 粗鉄を坩堝に入れ、再加熱して精錬する。
 ● パドリングによる精錬加工 ― パッドル法(銑鉄を棒でかき回す)
 ● 酸素転炉法(1852年)
 ● 流れ出た銑を高温のままポッドに入れ、高温のまま酸素を吹き込む溶鋼法に変化
   ベッセマー法(1855年)
 ● トーマス法(1978年)
 ● アメリカにおける平炉法
 ● 電炉法

 など、多くの技術改革や発明があり、精密な精鋼を可能にしてきました。

それらの精鋼素材を加工して、板、棒などに加工する技術―圧延技法も
すばらしい進歩を遂げ、今、私たちはいつでも希望する性能を有する素材を
入手できる時代にいます。

明治、大正、昭和と日本のヤスキ刃物鋼(金紙、銀紙、高速度鋼など)や
アメリカのベッレヘム=W8Cr3,5の高速度鋼、スウェーデンのアッサブ鋼
イギリスのアーサーバルファー鋼、ドイツの W6、W4鋼、その他にも
多くの銘鋼と呼ばれた素材がありそれぞれの使い方、処理の仕方によって
様々な特色が出せるそうです。

現在、世界中で一番多く刃物向けの鋼を作っているのは日本です。

ただし、鉄鋼全体の生産量や販売高から見れば1% 内外のシェアしかありません。

それでも、刃物鋼の生産をしている精鋼メーカーの人達が、日本の刃物鋼の
火を消してはいけないという、使命感を持っていると思われる程の
すばらしい素材を作っていますのでそれは直接刃物に関わる
人間として、とても嬉しい事です。

日本以外に、海外で刃物鋼としての生産は、スウェーデン、イギリス
オーストラリアくらいしか有りません。
そのためか、他の諸外国は日本のステンレス系刃物鋼や工具鋼を
マテリアルとして輸入して自分たちで加工するというケースが多くなり
各国の特徴有る銘鋼は少なくなりました。

金属粉を押し固めて焼結する粉末系素材や産業用構造合金などの刃物素材は
ほとんど日本製のみと言えるほどです。
もっともこんな高級素材で刃物を作るのは日本ぐらいかも知れません。
そんな状況をご承知いただいた上で世界の刃物用素材の概略と物性について
大きく整理して紹介致します。


(1)炭素鋼系列

   JIS 炭素工具鋼               SKシリーズ
   JIS 炭素工具鋼スペシャル     SKSシリーズ
 ● 炭素鋼系列 ←基本鋼としての炭素鋼系列
   ヤスキ 白紙 1号~3号・鋸材用もあり
       黄紙  2号、3号・鋸材用もあり

 これらの特徴を次に述べましょう。
鋼を硬化させる主成分の炭素だけの合金で、現在でも多くの刃物に使われています。

少し錆びやすい傾向が有りますが、刃の性能としての切れ味、切れ味の持続性能
研ぎによる刃先形成能力に一番優れた性能を持っています。
大工道具の刃物として最も多く使用され、鍛冶(かじ)の工夫が
されているのもこの鋼種です。
JISに分類される鋼種は複数の工具として、各メーカーより販売されていますが
メーカー間による性能の差は見いだせないそうです。
炭素鋼はすべての鋼の基本なのです。

理美容業界でも、ひと昔前まではこの種の鋼が 着鋼(ちゃっこう)と
呼ばれるハサミの刃先に使われていましたが、錆び易いため
今ではほとんど見かけなくなりました。(全鋼と呼ばれる合金に変わったんです)

でっ  次回は(明日の投稿予定)合金鋼について・・・ と続く


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1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ものづくり温故知新 (日本ブランド研究員)
2008-03-11 20:45:40
 伝統技術で世界最強の日本刀のナノテクノロジーを抽出し先端技術を駆使して日立金属がSLD-MAGICという金型用鋼を開発した。これは韓国製鉄が出来ない優秀なハイテン(高張力鋼板)を切り裂いたり、曲げたりする金型に応用され自動車などが製造されている。こんなことが韓国では出来ないのは切れ味抜群の日本刀には日本のオリジナル技術がいっぱい詰まっているから。
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