はさみ屋のブログ

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刃物の錆(サビ)

2006年01月12日 | 刃材や金属そして錆

 地球上の殆どの金属(貴金属を除く)は酸化した状態(錆びた状態)で発掘されます。
これは、この状態が自然界では一番安定した 状態だからです。

鉄も例外ではなく、鉄鉱石等酸化した状態で発掘されます。
そこから酸素を取り除いた鉄が鋼の原材料 となります。

従って刃物を空気中に放置すれば、自然に錆が出来るのは当然です。

でわ、鉄の錆をもう少し詳しく説明します。

空気中には酸素及び水(水蒸気)が存在します。
まず、鉄の表面に水蒸気が触れる と、水の膜をつくります。
(かなり薄い層ですな)その膜に、酸素が溶け込み、その酸素と鉄とが
化学反応を起こし酸化鉄 (錆)になります。

また、鉄の表面が汚れていると水の層が酸性になり、この反応を促進します。
従って、錆の発生を押 さえる為には、表面をきれいにし、乾燥した所に
置いておく事が有効です。
なので、鉄の表面に油を塗布し、空気に触れさ せない方法も有効です。

錆の発生は金属の種類や、その金属の置かれている周囲の状況によって違います。
金属の種類による酸化物(錆)の違いは、色の違いとなって現れます。
アルミの表面の白っぽい色は酸化アルミの一種ですし、銅の錆は
古い10円玉に見られる様に 緑青(ろくしょう)と呼ばれ緑色をしています。

ステンレスの刃物はサビていな いように見えますが、実は材料の中に
含まれているクロムと鉄の水酸化物が、1~3nm(ナノメートル)の
厚みで存在 します。
つまり、錆びているのです。 (1nm=1/1,000,000mm)

このような金属の表面に酸化した金属の被膜(酸化被膜)が出来ると
空気中に放置しても、その内部が酸化しにくくな ります。
つまり安定した状態となるわけです。

しかしこの酸化被膜も、塩分や酸やキズに対して充分と言える
強度では無く注意が必要です。

(アルミの弁当箱に梅干しを入れ続けると弁当箱の表面にブツブツが
出来るのは塩分、酸がアルミの酸化被膜を破る例です。)

例えば、鋼の包丁にもアルミやステンレスほど強力ではありませんが、酸化被膜を
つくる事が出来ます。 

鉄の錆は空気中及び水の中に溶け込んだ酸素O2と水分H2Oが作用して
生ずる赤錆【 水酸化第二鉄Fe(OH)3や
酸化第二鉄Fe2O3を中心とした錆】と、赤錆が塩類を含む水溶液に侵されたり
して生ずる黒錆【マグネタイトFe3O4を中心とした錆】とがあります。

鋼包丁の表面に後者の酸化被膜黒錆(薄いネズミ色)の被膜が一度出来ると
錆の進行は抑えられます。

酸化被膜の水酸基OHに対する強度は、その鋼の性質や包丁の
製造方法によって違います。

鍛造包丁は、板抜き包丁に比較して、組織の微細化、均一化がより進んでいるため
酸化被膜の水酸基に対する強度が大きく、赤錆の発生の止まりが
早いと言われています。

赤錆は放置しておくと、包丁の内部へ錆が進行しますので
赤錆が発生したらクレンザーなどで、すぐ除去して下さい。

包丁に限らず・・・ 刃物は日頃の手入れ次第です。

もしも、刃物を道具として使用する仕事をしているのなら・・・
手入れや管理に気配りをするのがプロだと思いたいですね。

料理人の包丁に対する思いと、理美容師のハサミに対するこだわりの
落差は結構大きな気がしますね。 はさみ屋としては・・・・・・・・・



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