54のパラレルワールド

Photon's parallel world~光子の世界はパラレルだ。

「銀河がこのようにあるために」清水義範

2006年05月04日 | 読書感想文
農家学脳科学を題材にした小説はないかと思ってみつけた小説。

銀河がこのようにあるために清水義範

脳に関するおもしろい仮説が登場して、知的好奇心を刺激されます。宇宙論もでてきて、脳が宇宙をどう認識するのかという話に。
ビッグバン宇宙はビッグクランチになるのか。開いた宇宙なのか閉じた宇宙なのか。

ときは2099年、世紀末。なぞの第十惑星カーリーが現れる。太陽くらいに大きいのに質量がない。太陽系を縦に周る。物理学的にありえない、不吉な惑星。ときをおなじくして、自我をもたない無自我病児たちのなぞの行動。宇宙がとんでもないことに。

おもしろい仮説。「脳のクセ」「脳の傾斜」「おののく遺伝子」。

まず「脳のクセ」。脳には奇妙なクセがある。たとえば、丸いものが二つ並んでいるとそれを目だと思う。マンホールが二つ並んでいると、道が顔に見える。
人間はどの時代どの民族でも神を想像してきた。宗教に興味がない人間でも、神様はなんでもお見通しだというレベルで神を想像している。人間が必ず神を想像するのは、人間の脳には神を想像するクセがあるのではないか。
脳の前頭葉、前頭連合野にある自我を生み出すモジュール構造、その中に神を創造しているフレームがあるのではないか。

「脳の傾斜」は脳のクセによって現実の認識が狂わされているかもしれないという仮説。脳の知覚に狂いがあるとすれば、ものの真の姿はわからない。
宇宙論や量子力学、遺伝子工学、学問すべてについて、人間の脳に認識の偏りがあるとすれば、学問はすべて疑わしいものになる。
脳の傾斜の具合がわかれば、その傾きの分だけ科学を修正できる。そうすれば本当の宇宙がわかるようになる。

「おののく遺伝子」は自己増殖する遺伝子にとって世界は必ずしも楽園ではなく、遺伝子の存在を脅かす悪条件がたくさんあり、遺伝子は恐れおののいているという仮説。
遺伝子は自己が増殖していくために、怖いことから目をそむけ、偽りの世界認識を生物に与えているのかもしれない、という仮説。


結局われわれは世界の真の姿をみることができないということで。人間は脳を通してでしか世界を見ることができない。
これは養老孟司さんが言っていたことだが、大人の脳には偏見がたくさん含まれていて、その偏見を通して物事を認識するから、物をそのままの状態で見ることができない。
食べ物の好き嫌いを例にすれば、好きなものはおいしい、嫌いなものはまずい、そのおいしさ加減は好きか嫌いかの認識に大きく影響される。目隠しをしたらばどうなるだろうか。

「世界は錯視でできている」「誰も真実を見ることができない」
世界が冷たく感じる、あの人は私にひどいことばかりする、何もかもが嫌だ、そんなとき、それは自分の脳が生み出している世界だと気づかなければならない。それは本当の世界ではない。歪められた世界なのだ。
世界の真実の姿が見えないのならば、嫌な世界を想像するよりも、美しいすばらしい世界を想像したほうがいい。世界をすばらしいものとして捉えるクセをつけたほうがいい。

ポジティブシンキング、夢見る少女、青色メガネ。
青い空を見ろ、輝く月を見ろ、咲き誇る花を見ろ、世界はこんなに美しい。。

妄想教。。 

ブロ電™切符

こんな切符が、、、


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2 コメント

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見えているようで見えていないもの (TOMOはは)
2006-05-05 05:56:24
面白い本を見つけられたんですね!



同じ時間を過ごしても、同じ本を読んでも



人それぞれ、見えているもの感じるところが違っているのは



ほんとうに不思議ですよね!



私も、『世界はこんなに美しい』と感じられる



ささやかな歓びを見つけたような気がします!!
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十人十色 (54)
2006-05-05 07:27:36
知的好奇心を満たしてくれる本はおもしろいです。

同じ本でも、読む人間の脳が違うから、そこから見えるもの感じるものが違ってくる。

想起されるイメージは千差万別。それがおもしろい。

それが個性であり、生きている証なのだと思う。。
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