「タイタンの妖女」「猫のゆりかご」でおなじみのカート・ヴォネガットさん。爆笑問題の太田さんがおすすめする最高の作家さん。の
タイムクエイク―時震
タイムクエイクは宇宙のしゃっくり。きまぐれな宇宙が突然膨張をやめて縮んだ。でもやっぱりまた膨張に戻った。そのせいで時間が2001年から1991年まで戻ってしまった。人々は10年間のリプレイのなかでありとあらゆることをもう一度くりかえさなければならなくなった。未来に何が起こるか、すべてわかっている人生。しかもあらゆる失敗もまったく同じように繰り返さなければならない。変更はできない。
それはまるで舞台劇にたとえられる。第一幕が上がった瞬間から、俳優たちは自分たちがこれからいうこと、すること、最後に万事がどうおさまるかをすべて知り尽くしている。それなのに、まるで未来が謎であるような調子でふるまうしか選択の余地が無い。
リプレイが続いた10年後、人々はふたたび2001年にたどり着き、自由意志を取り戻す。しかし、人々は自動運転に慣れてしまったため自由意志に戸惑ってしまう、、
「タイムクエイク」は自由意志のすばらしさを教えてくれる。人間の意識はすばらしい。キルゴア・トラウトの最後の教義が心を打った。
キルゴア・トラウトは話し始めた。「宇宙は、とてつもなく膨張したため、もはや光はそれほど速いものではなくなり、あきれるほど長い年月を使っても、たいした旅ができなくなった。かつてはいちばんスピードが速いといわれた光も、いまでは早馬便のように、歴史の墓場にはいってしまった」
そしてトラウトはわたしに、広い空からキラキラまたたく光の点をふたつ選ばせた。
「よろしい!チリンガ・リーン!」とトラウトはいった。「さて、それでは――そのふたつの光点がいかなる天体であるにせよ、この宇宙はとんでもなく希薄になってしまったため、光がそのひとつからもうひとつまで旅をするのには、何万年、いや、何百万年もの歳月がかかる。チリンガ・リーン?さて、そこであんたにたのみがある。そのひとつをよく見てから、もうひとつをよく見てほしい。」
「オーケイ」とわたしはいった。「はい、すみました」
「一秒ぐらいはかかったかな?」とトラウトはいった。
「せいぜいね」
「たとえあんたが一時間かかったとしても、かつてあのふたつの天体のあった場所から場所へ、なにかが旅をしたわけだ。控えめに見積もっても、光の百万倍のスピードで」
「なにが旅をしたんです?」
「あんたの意識さ」
カート・ヴォネガットはユーモアにあふれた作家だ。キルゴア・トラウトの口ぐせ「チリンガ・リーン!」の由来に関する話には爆笑した。こちらはぜひ本を手にとって読んでもらいたい。
また、トラウトの短編もいくつも出てくるが、なかでも『笑いごとではない』『B-36の三姉妹』はすばらしい。
カート・ヴォネガットの『タイムクエイク』は二度読むべき作品だ。一度目は先になにが待っているのかわからない状態で。二度目はなにもかもがわかっている状態で。
ああ、タイムクエイク!
そして二度目に読み終わった後、読者は自由意志を取り戻すのだ。
あんたはひどい病気だった!だが、もうすっかりよくなった!
チリンガ・リーン?
タイムクエイク―時震
タイムクエイクは宇宙のしゃっくり。きまぐれな宇宙が突然膨張をやめて縮んだ。でもやっぱりまた膨張に戻った。そのせいで時間が2001年から1991年まで戻ってしまった。人々は10年間のリプレイのなかでありとあらゆることをもう一度くりかえさなければならなくなった。未来に何が起こるか、すべてわかっている人生。しかもあらゆる失敗もまったく同じように繰り返さなければならない。変更はできない。
それはまるで舞台劇にたとえられる。第一幕が上がった瞬間から、俳優たちは自分たちがこれからいうこと、すること、最後に万事がどうおさまるかをすべて知り尽くしている。それなのに、まるで未来が謎であるような調子でふるまうしか選択の余地が無い。
リプレイが続いた10年後、人々はふたたび2001年にたどり着き、自由意志を取り戻す。しかし、人々は自動運転に慣れてしまったため自由意志に戸惑ってしまう、、
「タイムクエイク」は自由意志のすばらしさを教えてくれる。人間の意識はすばらしい。キルゴア・トラウトの最後の教義が心を打った。
キルゴア・トラウトは話し始めた。「宇宙は、とてつもなく膨張したため、もはや光はそれほど速いものではなくなり、あきれるほど長い年月を使っても、たいした旅ができなくなった。かつてはいちばんスピードが速いといわれた光も、いまでは早馬便のように、歴史の墓場にはいってしまった」
そしてトラウトはわたしに、広い空からキラキラまたたく光の点をふたつ選ばせた。
「よろしい!チリンガ・リーン!」とトラウトはいった。「さて、それでは――そのふたつの光点がいかなる天体であるにせよ、この宇宙はとんでもなく希薄になってしまったため、光がそのひとつからもうひとつまで旅をするのには、何万年、いや、何百万年もの歳月がかかる。チリンガ・リーン?さて、そこであんたにたのみがある。そのひとつをよく見てから、もうひとつをよく見てほしい。」
「オーケイ」とわたしはいった。「はい、すみました」
「一秒ぐらいはかかったかな?」とトラウトはいった。
「せいぜいね」
「たとえあんたが一時間かかったとしても、かつてあのふたつの天体のあった場所から場所へ、なにかが旅をしたわけだ。控えめに見積もっても、光の百万倍のスピードで」
「なにが旅をしたんです?」
「あんたの意識さ」
カート・ヴォネガットはユーモアにあふれた作家だ。キルゴア・トラウトの口ぐせ「チリンガ・リーン!」の由来に関する話には爆笑した。こちらはぜひ本を手にとって読んでもらいたい。
また、トラウトの短編もいくつも出てくるが、なかでも『笑いごとではない』『B-36の三姉妹』はすばらしい。
カート・ヴォネガットの『タイムクエイク』は二度読むべき作品だ。一度目は先になにが待っているのかわからない状態で。二度目はなにもかもがわかっている状態で。
ああ、タイムクエイク!
そして二度目に読み終わった後、読者は自由意志を取り戻すのだ。
あんたはひどい病気だった!だが、もうすっかりよくなった!
チリンガ・リーン?
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