54のパラレルワールド

Photon's parallel world~光子の世界はパラレルだ。

「シュレーバー回想録」D.P.シュレーバー

2006年05月22日 | 読書感想文
ある神経病者の手記。フロイトやラカンの精神分析において重要な文献。
シュレーバーの想像力に驚かされる。

シュレーバー回想録―ある神経病者の手記D.P.シュレーバー

神の神経である「光線」がシュレーバーの神経を振動させ、「神経言語」を発生させる。

こんな突飛な想像が何個も何個も飛び出してくる。

神が私との独占的な神経接続の関係に入ってしまい、神にとっては私こそが唯一の人間となってしまい、私という人間がすべての中心となってしまった。

神の光線は私の神経の強い引力によって私から離れることができなくなってしまい、私と神は特別な関係になってしまった。
神が私の神経から離れるために私を脱男性化しようとした。私の生殖器は引き込まれ、胸が出てきて、背骨は縮み、全身に官能神経が現れた。
私の脱男性化は生物が絶滅するような天変地異のときに人間を存続させるという計画のためでもある。私は生き残り、私の神経と神の光線から新たな子どもが生まれる。

まあこんなことが果てしなく論じられるわけです。

シュレーバーはのちにシュレーバー症例と呼ばれるパラノイア状態にあり、いろんな幻覚を見たのでしょう。しかし、そんな彼が分厚い「回想録」を残したというのは学術的に非常に貴重である。
パラノイア患者がどのような幻覚を見るのか。精神科医でなくとも興味深い。
それに、普通に読み物としておもしろい。

シュレーバーは「回想録」に書いてあることが、キリスト教をはじめとするあらゆる宗教を変革させてしまうだろうと書いている。神と交信し、一体となった人間として、まさにその通り。実際にキリスト教がどうなったかは知りません。

パラノイアの想像力

シュレーバーの想像力はすごいんですよ。「神の光線」とか。
シュレーバーはもともと優秀な弁護士で、学がある人だった。知識がたくさんつまった脳みそが精神異常をきたすと、どのような想像力が発揮されるのか、ということです。

人間というのは常識があるから、関係ない知識と知識はつながらないんです。脳が勝手に切り離しているから。でも関係ない知識と知識が結びつくことで驚きのアイデアが生まれることは多々あるわけで。
アインシュタインの「相対性理論」なんて、高速で動く物質は伸びて、質量が増大し、時間が遅れる、なんてのは常識じゃ生まれないわけで。
偉大なる大発見は常識を超えたところで生まれるわけです。

精神異常というのは常識をとっぱらって、あらゆる知識をごちゃまぜにしてしまうのです。「原子のスープ」ならぬ「知識のスープ」ですよ。化学反応が起こって驚きのアイデアがたくさん生まれてくる。

立川談志師匠が手塚治虫の作品について語っていた。
頭の中にあるぐちゃぐちゃしたわけのわからないものを、なんとか表現しようとする。そこにイリュージョンが生まれる。

まず普通の人では頭の中はぐちゃぐちゃにはならない。そうならないように脳が制御してしまっている。
僕はだから、想像性のために頭の中をぐちゃぐちゃにしたいんですよ。
新しいものに出会うと頭の中がぐちゃぐちゃになる。神経回路が新たに作り直されるというか。そこで新たなアイデアが生まれてくる。
だから新しいもの、驚きを与えてくれるものにたくさん触れたいと思う。
また、眠いときもぐちゃぐちゃになりますよ。意識が朦朧としているときに神経と神経がヘンな風に結合してアイデアが生まれたり、夢っていうのは記憶の整理ですよね、ぐちゃぐちゃなんです。
ドラッグを使うと簡単にぐちゃぐちゃになるんでしょうね。でもコネもカネもない。禅でもやってみようかね。

「シュレーバー回想録」を読んで思ったのはだから、パラノイア的になったほうがおもしろいアイデアが浮かぶんじゃないか、と思って。
できるだけ常識を取っ払って物事を考えるようにしたい。。

奇人変人トカゲのおっさん。。

これかなり前に「現代芸術論」で紹介されてた本で、読むのに二週間かけちゃった。アメリカの学生は一週間に何冊も参考文献を読むというのに、一冊に二週間もかけてたら追いつかないよね。
ダメダメな自分を露呈してしまったよ。。

にほんブログ村 大学生日記ブログへよかったらこっちもクリックしてみてください。。


最新の画像もっと見る

19 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
基本パラノイア (akiletter)
2006-05-22 21:07:43
パラノイア 太宰治  HUMAN LOST



23日 妻をののしる文 時々読みます。



シンクロニシティ 今日読んでいました。
返信する
せめて方向性 (空も 海も 人も)
2006-05-23 00:07:32
混沌 パラノイアパラダイスです。

  せめて方向性  楽な流れに~~~



わざわざ 逆流に~~~



類の中で せめて吾が身を守りましょう!!

返信する
ノゲイラ (54)
2006-05-23 05:16:25
太宰さん、人間失格、新ハムレット、お伽草紙。堕罪納む。。



パラノイア、逸脱できずに、パラレルや

方向性ないな~

でも読書感想文+αに軸が移動している近頃。。
返信する
桜庭の住む街 (空も 海も 人も)
2006-05-23 06:11:45
東京も 一歩入れば まだまだ長閑

 安全地帯で暮らせる人達



読書軸は自在に





返信する
救いたい人がいます (akiletter)
2006-07-12 05:41:29
傷ついて 少し自分を見失っただけの 



未来有る若い命が 薬漬けにされ 本当の病に





知った  友人3人とその母 の 救いたい意志で

 

かならず 元気に してみせます。 



  なぜか ここで 宣言 !!





救われる 脳が 抹殺される現状 目の当たり

返信する
精神科医 (54)
2006-07-12 11:10:28
精神科医というのはようわからんのです。

精神なんてものはよくよく解明されていないものなのだから、

精神医学というのはいい加減なものなのです。

クスリというのは副作用が伴うものなので慎重に使用しなければならない。

抗不安剤は不安を打ち消すクスリではないし、精神安定剤は精神を安定させるクスリではない。



つまりは、誰もが精神科医になれるし、誰もが(比喩的な意味で)クスリになれるのだ、と思います。

重要なのは心の平安です。クスリなど要らない。人と人との関わり合いの中で精神は生きてくるのだと思います。。



いやぁ、よくわからんのだけどね、、、
返信する
素質 (akiletter)
2006-07-13 20:40:29
良くわかられてます。



しかし現実は、厳しく 一度壊れたこころ



薬漬けの身体は、 なかなかです。



いつもながらの 明快等 ありがとう。



元気がでました。
返信する
心の奥底 (akiletter)
2006-09-14 05:57:17
お祭りに出たかった。 はっぴを着て 山車を引き



太鼓をうつ    そして夏祭りに出た。 



それがすべてだと 気付いた。



来年も 出たい。 意志  心の奥底にあるもの



少しずつ 見えてきて 母も子も 楽になる事が 快方への道程



子の夢を 共に見る事 ささやかな夢を ともに



返信する
祭りのあと (54)
2006-09-14 10:54:54
夏はいろんなところで祭りが催される。

お祭り騒ぎ。

TUBEの横スタLIVEとかa-nationとか。

夏フェス。

来年はサマソニに行きたいなあ。。
返信する
真面目にあきれた (akiletter)
2006-09-16 03:23:07
事実は小説より 奇なり なのに



返信する

コメントを投稿