54のパラレルワールド

Photon's parallel world~光子の世界はパラレルだ。

犯罪者製造人

2008年01月31日 | クリエイティブな思考への挑戦
「おいお前、金出せよ!」
無視。金のない俺からなぜ金を取ろうとする。まったく、、ふざけたガキどもめ。
なぜこんなやつらが次から次へと現われるのだろう。

『犯罪者製造人』

「金出せよ」
「はい、どうぞ。」
「金持ってんだろ?」
「はいはい、どうぞ。」

私は犯罪者製造人。

かつあげは初歩的な強盗です。初めてかつあげをする人は当然不安です。罪悪感も感じています。それでも、なんらかの理由があって、かつあげという行為に及んでしまいます。最初は失敗するかもしれないと思っていますから、抵抗する姿勢さえ見せれば、相手は必ずあきらめます。
しかし、なんの抵抗もなく金を渡してしまえば。思いのほか簡単に金が手に入る。その事実はクセになります。バイトして金を稼ぐのが馬鹿らしくなります。かつあげを繰り返すでしょう。次は、前の成功があるから失敗するなんて思っていません。少々の抵抗でもあきらめません。失敗するはずないと思っています。うまくいかないと暴力を振るうかもしれません。どんどんエスカレートしていきます。もう普通の生活には戻れません。やがて重大な犯罪者になってしまいます。

私は犯罪者製造人。
五千円で一人の人生をめちゃくちゃにする。。

死のトリ

2008年01月31日 | クリエイティブな思考への挑戦
「地球温暖化による気候変動、、このままでは人類は滅びてしまいます。博士、どうすればよいでしょう?」
「なにもしなければいい」
「え、どういうことです?」
「人類など滅びてしまえばいいのだ。人類が地球に与えている負荷を考えてみろ。人類さえ滅びてしまえば、人類さえいなくなれば、地球はすぐにでも回復するだろう。」

博士の考えに従い、人類は滅びた。

自動車も走らず、電気も使われず、炎も燃やされず、家畜も殺されず、森林も伐採されず、
二酸化炭素の量はすぐに減少し、温暖化はすぐに解消された。
生物たちは生き生きと暮らし始めた。
かつて人間たちが独占して住んでいた場所にもどんどん動物たちは進出していった。
長年、人類の支配のために狭い森に追いやられていた動物たちは、ついに広い世界での自由を手に入れた。

しかし、、

一羽のはぐれカラスが鋼鉄の洞窟の中をさまよっていた。
暗闇の中で赤く光るボタンをみつけた。
好奇心に駆られたカラスはその赤いボタンをつついた。
その瞬間、核爆弾が放たれ、地球は消滅した。。

愛は降る

2007年11月29日 | クリエイティブな思考への挑戦
『愛は降る』

この世がすべて枯れてしまっても、
私は大地に水をあげるよ。
あなたの生命が育つように。

愛は降る降る涙零れる
空は曇って落ちてまた晴れるから
私は水をあげるよずっと

この世がすべて闇になっても、
私は目を閉じずにいるよ。
あなたの光をみつけられるように。

誰もが心の中にある怪物に怯えていたんだ。
私はそれでも信じている。
空は晴れるから。

愛は降る降る涙零れる
空は曇って落ちてまた晴れるから
光が降る降る虹が零れる
世界が晴れて晴れて輝き出す
私は愛を愛をあげるよ、いつまでも。

卒業まであと少し、、

2007年03月20日 | フリージャム
冬の早朝のフライト。
空は晴れていて、空気は澄んでいて、地上がはっきりと見えた。

翼を囲む円形の虹。
空気を高速で切り裂く翼が見せる奇跡。
それはまるで天翔龍閃(あまかけるりゅうのひらめき)。

雲の中へ突入。
霧の中にいるような感じ。
それはまるでサイレントヒルの世界。

機体の下を過ぎ去るいくつもの雲の塊。
その形がまるで、
空を飛ぶ数頭の龍に見えた。

波が止まったように見える。
しかしよく見ると動いている。
上下する海水面。
波の本当の姿を見ることができた。
けれどやはり海岸を見ると、ゆっくり打ち寄せる波に見えた。

北海道の凍った地面に映る太陽。
その輝きは空に輝く太陽と等価だ。
天と地に輝く二つの太陽。
地面に映る太陽は飛行機とともに氷の上を滑る。

飛行機から見下ろす地上は本当にミニチュアに見える。
よく見ると本物に見えるのだろうか?
視力がよければ細部まで見ることができるのだろうか?

もしも上空から地上の様子を詳しく知る必要のある動物がいるならば、
その視力は2.0、6.0などはるかに超え、50.0とか70.0とかになるのだろうか?
その眼が見る世界は一体どんなものだろうか?

卒業まであと少しです。

北海道に行ってきました。


雪象をつくりました。


すごいでしょ。でかいでしょ。


一番高いところは手が届きません。

北海道に行ったけどインフルエンザにやられてどこへも行けませんでした。
ほ、北海道め、、

そんなわけで、どんなわけで、
卒業まで、あと少しです。

このブログも終わりです。
この支配からの卒業です。

さよならバイバイ。

私も大学生のころはこんなこと考えてたんだな、、といつか振り返るのかしらん。。

「タイラント」試作ver.

2007年02月22日 | クリエイティブな思考への挑戦
タイラント Part1
タイラント Part2
タイラント Part3
タイラント Part4
タイラント Part5
タイラント One more final...


参考資料(この作品を書いた作者(俺!)の脳に影響を与えたと思われる主な作品)

古川日出男
「アラビアの夜の種族」 「13」「ロックンロール七部作」「ルート350」「ベルカ、吠えないのか?」「サウンドトラック」
全体的な作風、ロックンロールがすごくなるところ、軍用犬が出てくるところ、ロックの神様の踊り、、

カプコン
「バイオハザード」 「バイオハザード2」 「バイオハザード3」
人を喰うという世界観、ジル・クリス・クレア・タイラントという名前、鎌のような右腕、、

こしたてつひろ「爆走兄弟レッツ&ゴー!!」
ブレッド・ジョー・エッジ・ミラー・ハマーD・カルロ・ゴーセイバ・レツセイバの名前、ライトニングマグナム・パワーブースタ・マグナムトルネード、、

和月伸宏「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」
「弱肉強食」は志々雄真実の影響、ナイフのヤラナケレバヤラレルというナイフを手にするシーンは瀬田宗次郎の回想シーンの影響、、

BUMP OF CHIKEN「K」(アルバム「THE LIVING DEAD」)
夜のナイトから騎士のナイトへ、、

鳥山明「ドラゴンボール」
天下一武道会、瞬間移動、ナイフ(ナイト)がアルティメットタイラントを羽交い絞めにして一緒に死ぬシーンは悟空ラディッツの場面の影響か、、

庵野秀明「新世紀エヴァンゲリオン」
潔癖症はね、、

TAK MATSUMOTO「Trinity」(アルバム「DRAGON FROM THE WEST」)
「世界の終幕にふさわしい静かなロックバラード」のシーンを書いてるときに頭の中で流れた曲、、

マイクル・クライトン「タイムライン」
量子テレポーテーション、、

スティーヴン・スピルバーグ「A.I.」
氷付けにされたベイベーのもとに宇宙人が降りてくるところ、、

タイラント One more final...

2007年02月22日 | クリエイティブな思考への挑戦
空飛ぶ円盤がいなくなり、そして誰もいなくなった世界。氷に包まれた静かな世界に、ロックンロールが流れている。世界の終幕にふさわしい、静かなロックバラードが。神のギターが。
そして波飛沫を上げて一頭のイルカが舞い上がった。誰もいない氷の世界に、その美しい流線型が、天高く。
ロックンロールが、ヴォリュームを上げる。

海には海の王者がいた。動植物が死滅する〝デス現象〟が起きたとき、海でも魚たちが死んでいった。そして、陸上で人間が生き残ったように、海でも生き残った種がいた。それは凶暴なサメでも、巨大なクジラでもなく、海で最も知能のあるイルカだった。
そして〝タイラント化現象〟が起きたとき、イルカもまたイルカを喰らい始めた。戦争がはじまった。サメを喰って強力な歯を手に入れたイルカもいたし、クジラを喰って巨大化したイルカもいた。電気なまずを喰って電撃を操るイルカやタコを喰って軟体化したイルカなんかもいた。
暴走した食欲を満たすための激しい戦争の末に、最後の一頭が生き残った。この最後の一頭をLASTドルフィン、Lドルフィンと呼ぶことにする。
エルドルフィンは最後に生き残ったのはいいが、海に食料はもうなかった。陸上動物、タイラント化した人間は海には入ってこなかった。イルカは陸上に上がることもできなかった。海をさまよい続けるだけだった。エルドルフィンの意識を次第に空腹が占めてゆく。
飢餓感でさまよっていたとき、エルドルフィンはエネルギーを感じた。どこからともなくエネルギーが流れてくるのを感じたのだ。全身の筋肉を、神経を、精神を振るわせるエネルギー。ロックンロールが海に響いていた。
エルドルフィンはそのエネルギーの震源地へと泳いでいった。そしてそこで永久エネルギーと出会った。

TAKギター。ギターを抱えたTAKは、意識を失いながら、音楽が鳴るはずの無い場所で、ロックンロールを奏でていた。全身からロックンロールが溢れ出していた。なにもかもを超越した、至高のロックンロール。TAKは神だった。無限のエネルギーがそこにはあった。

エルドルフィンはTAKをギターごと喰らった。すると、エネルギーが湧き上がり始めた。腹の底から溢れ出すエネルギー。神のロックンロール。全身を究極の快楽が駆け抜ける。
エルドルフィンは全身を震わせながら泳いでいる。ロックンロールの軌跡を海に描き出そうとしている。
海がロックンロールを奏ではじめる。

エルドルフィンは深く深く潜ってゆく。ロックンロールを、よりディープに。地球内部へと向かって。
地上は氷河に覆われていた。海水温もどんどん低下していった。イルカは熱を求めて深海へと移動していった。地球の熱を、マントルを求めて。

そして、エルドルフィンは地球と出会った。地球はエルドルフィンと出会った。そしてロックンロール、無限のエネルギーと出会った。
地球は覚醒する。目覚める。地殻が震える。ロックンロールとシンクロする。神のロックが、マントルを超えて、地球のコアへと響き渡る。地球がロックする!究極のロックンロールが、新世界がはじまる!!

エルドルフィンは上昇してゆく。地球のエネルギーに押されて、超スピードで昇ってゆく。流線型のボディが波を切り裂く。全身が震える。究極のロックンロールが始まろうとしている!

波飛沫を上げてエルドルフィンは舞い上がった。天高く。そしてロックンロールが溢れ出した。エルドルフィンの体内から、大音量のロックンロールが。究極のロックンロール、新しい世界のはじまりを告げる、至高のロックンロールが!!
氷が砕け散り、世界は再び色彩に溢れ出す。覚醒する。無限のエネルギーが流れている。
地球が産声をあげる。歌っている。
世界中にロックンロールが響き渡っていた。エネルギーに満ち溢れていた。

今ならなんでもできそうな気がする。。。

タイラント Part5

2007年02月22日 | クリエイティブな思考への挑戦
「やめて、やめてよ、、」
ジルはアルティメットタイラントに押さえつけられていた。北へ向かっている途中に突然あらわれた巨大な怪物。キングタイラントとは比べ物にならないほどの鍛え上げられた筋肉。究極の戦闘マシーン。どこからあらわれたのかわからない。目の前の空間に突然光の点があらわれて、それが大きく拡大して眩しい閃光を放ったかと思ったら、そこに怪物がいた。瞬間移動してきたかのように。

アルティメットタイラントの身体には科学反応が起こっていた。人類科学最高の至宝。アルティメットタイラントは量子テレポーテーションマシンを喰ったのだった。
物質を量子レベルにまで還元して、空間に開いた四次元の穴から別の空間へと一瞬にして移動させる量子テレポーテーションマシン。物質の量子データを扱うには超高速処理が必要で、マシンにはバイオコンピュータが使われていた。
バイオコンピュータの回路には人間の脳細胞が使われていた。そのためアルティメットタイラントは量子テレポーテーションマシンを喰ったのだった。
そして科学反応が起こった。アルティメットタイラントは瞬間移動できるようになったのである。肉のあるところへと瞬間移動し、殺戮する。空間的距離に関係なく、大陸から大陸へと、一瞬にして移動し、殺し、喰う。
光の中からあらわれるこの究極の生命体を、あるものは神だと信じて死んでいったものさえいた。

「やめてぇ、、」
アルティメットタイラントはジルの胸に指を突き刺していった。心臓が貫かれていった。まず父の心臓。つづいて母の心臓。そして兄の心臓。
「やめてぇ!」
ジルを支えていたのはまさに家族の絆だった。どんなに一人ぼっちだと思っていても、いつも近くには家族がいたのだった。いつでも優しい兄と、おせっかいなほど世話をやく母と、何も言わないが心の奥では大事に思ってくれている父が。家族を喰らったことによってその思いが本当に強くダイレクトに感じられた。だからこそ一人でも生きていこうと思えたのだった。
しかしついにジルは一人ぼっちになってしまった。母も父も兄も、みんな殺されてしまった。私は一人。
もう、どうでもいい。

アルティメットタイラントは最後の一撃を加えようとしていた。しかし、横から突撃してきたものによって吹き飛ばされた。巨大な犬だった。いや、人間か。四本足で立ち、こちらをにらみつける眼はギラついている、全身の毛が逆立ち、鋭い牙が光る。
ウーグァン!
俊敏な動きで首筋に噛み付いてきた。こんな戦闘術、俺は知らない。アルティメットタイラントははじめて困惑していた。

ウォンは戦闘本能全開だった。なぜだかわからないが、全身からアドレナリンが吹き出している。空腹のまま北へと歩き続けていたせいだろう。飢餓感が暴走している。
しかし、首筋に喰らいついたはいいが、噛み切れなかった。筋肉が硬い。首の筋肉が噛み切れないほどに硬い。タイラントがつかみかかってきたので、いったん飛びのいて第二撃を加えにいく。

その戦いをナイフは見ていた。あの犬男、急に駆け出したと思ったら、それに何なんだあの怪物は、どっから来やがった?
北へ向かっていたジル、ナイフ、ウォンは同時に出会ったのだった。強烈な飢餓感にいたナイフはウォンに襲いかかった。ジルは女だったから襲う気になれなかった。ナイフはウォンにコロスコロスコロスと念を送った。しかしウォンはまるで気にしないかのように噛みついてきた。こいつには僕の言葉の波が通じないのか?もしかして僕と同じタイプなのか?ウォンはただ人間の言葉を知らないだけだった。
ウォンに倒されたナイフだったが、ウォンは止めを刺す前に駆け出したのだった。
ナイフはアルティメットタイラントにも念を送ってみた。ヤラレロヤラレロヤラレロヤラレロ。しかし怪物にはなにも効いていないようだった。こいつにも通じないのか?世界で最後まで生き残ったやつらは簡単にはやられないのか。僕もおしまいかもしれない。アルティメットタイラントの思考速度はナイフのそれをはるかに超えていたのだった。究極の頭脳だった。

ウォンは弾き飛ばされていた。ウォンは起き上がり、再び突進していった。そして飛びかかる。しかしタイラントは消えるのだった。あの巨体が一瞬にして目の前から消えるのだった。そして背中に衝撃があり、地面に叩きつけられている。全身の骨が砕け散りそうなほどの衝撃。
もう限界だ。ウォンは悟っている。この怪物には勝てない。

家族の心臓を撃ち抜かれて放心状態だったジルは起き上がり、自分を助けてくれた獣のような青年をみつめていた。倒れても倒れても起き上がり、飛びかかっていく。どうしてそう何度も立ち上がれるの?
タイラントの戦いぶりは異常だった。信じられない光景だった。青年が飛び掛っていくと、消えるのだ。光の点となって消えて、そして光の点から突然あらわれて攻撃する。マジックのようだった。しかも光の点からあらわれるそのスピードは、一番最初に自分の目の前に突然あらわれたあのときよりもはるかに速くなっている。まさに瞬間移動だった。こいつ、戦いながら強くなっていっている。
ふと、ウォンがこちらを向いた。その瞳がなにかを伝えてくるかのようだった。守らなきゃ。どこからともなくその強い思いが湧き上がった。

ジルとウォンがみつめあっているのにナイフは気づいていた。あの犬野郎、どういうつもりだ?すると犬野郎はナイフのほうを向いた。その瞳が何かを伝えてくるかのようだった。女を守れ。そう言っているように思えた。
そのとき、ウォンの頭に鉄槌が振り下ろされた。アルティメットタイラントの強烈な一撃。頭と地面が砕け散った。

「うああああああ!」
ジルはアルティメットタイラントに向けてディスティニーマグナムを撃った。トルネードが空気を貫いてゆく。
アルティメットタイラントが走ってくる。強靭な脚力で地面を蹴って。弾丸を瞬間移動でかわして、走ってくる。
ジルは恐怖のあまり第二撃を撃てない。
アルティメットタイラントの右拳が振り上げられる。
そこへナイフが横から突進した。しかしアルティメットタイラントは少し態勢を崩しただけだった。ナイフはコンクリートの壁に激突したような衝撃を全身に感じていた。こいつ、人間じゃねえ。
アルティメットタイラントは両腕でジルとナイフを左右に吹っ飛ばした。軽トラックにはねられたような衝撃が二人を襲う。
アルティメットタイラントはジルに向かって歩いていった。
すべてを破壊するディスティニーマグナム。でも当たらなければ意味がない。パワーだけじゃ勝てない。でも、消える相手にどうしろっていうのよ?
すると、近づいてくるアルティメットタイラントを何者かが押さえつけた。ウォンだった。

ウォンの頭は砕け散っていた。そして、ナイトが目覚めたのだった。最強の犬、ナイトが。
よくもウォンを殺しやがって。あいつはなんだか知らんが、あの女を守ろうとしていたみたいだ。だから俺もあの女を守ってやるよ!
ウーグァン!!

ジルはアルティメットタイラントに狙いをつけていた。今なら、動きを封じられている今ならあの怪物を仕留められる。
でも、今撃てばあの青年も一緒に、、
そのとき、アルティメットタイラントの鉄槌がウォンの頭を砕いたシーンがよみがえった。そしてウォンの瞳がジルをみつめたときのシーンが重なった。
引き金は引かれた。運命を変える銃。ディスティニーマグナムが。

ジェット機のような空気を切り裂く轟音とともに銃弾が竜巻となって飛んでゆく。旋風が巻き起こり、すべてを吹き飛ばしてゆく。
アルティメットタイラントは見た。しかし、そして消えた。ウォンとともに消失した。
かわされた!

ナイフは見た。ウォンに羽交い絞めにされたタイラントが一瞬消えたのを。そしてトルネードが自分に向かって迫ってくるのを。
終わりだ。
そう思って手にしたのは運命を変えたナイフだった。潰れるリンゴ。潰れる自分。
シヌノハイヤダ
ナイフはナイフを振りかざした。腕に衝撃があり、閃光が弾けた。
銃弾は跳ね返った。

アルティメットタイラントは見ている。先にかわしたはずの銃弾が迫ってくるのを。眩しい光の渦が目の前に迫ってくるのを。
ウォン、だが中身はナイトはまだしがみついていた。だからこそ瞬間移動ができなかったのだ。一瞬消えることはできたが、別の場所へと移動することはできなかった。そして。

強烈な光が辺りを包んだ。ジルとナイフは目を閉じた。しかし目を閉じてても開けててもわからないほどにすべてが真っ白だった。

数十秒かけて世界が色を取り戻していった。
アルティメットタイラントとウォンがいた場所にはなにもなかった。肉のかけらもなかった。
すべてが量子のくずとなって消えたのだった。
運命を変える銃と運命を変えるナイフが二人の運命を変えた。世界の運命を変えた。


地球温暖化は深刻だった。大型台風や熱波はもちろんだったが、最も脅威だったのは新種のウイルスだった。熱帯性の致死性ウイルスが北上し、その間に独自の進化を遂げたのだった。既存の抗生物質がまったく効かないこの新種のウイルスは世界中で日に百万単位の人間を死に至らしめるという猛威をふるった。そしてこのウイルスは〝キラ〟と呼ばれ恐れられた。日本の首都は北海道へ移され、札幌は〝第二東京〟とされた。アメリカではメキシコからの不法な移民が急増し、さらにアメリカ人はカナダへと不法入国した。アメリカの首都はアラスカへと移された。
しかしもう逃げ道はない。ここでアメリカ大統領は決断する。温暖化を、いや熱帯化を終わらせようと。地球を動かすのだ。核爆弾を使って地球の軌道を太陽からほんの少し外側へずらす。それだけで地球の地獄は終わるのだ。
この〝地球を動かせ〟作戦は世界各国の支持を得た。灼熱地獄を終わらせるためなら核の使用もなんでも認めると。しかしアフリカ諸国が強く反対した。アフリカ諸国は大陸のいたるところに太陽電池を張り巡らせ、その豊富な太陽エネルギーを電力に換え、世界中に電力を輸出していたのだった。太陽エネルギーこそがアフリカのライフラインだった。アフリカ人は暑さにも強く、新種のウイルスにも免疫があった。屈強だったのだ。地球熱帯化で先進各国が莫大なダメージを受ける中、アフリカ諸国は発展し続けたのだった。地球熱帯化は天からの恵みだ、終わらせてなるものか。
アメリカは実力行使に出る。熱帯化で莫大なダメージを受けているとはいえ、アメリカは巨大軍事大国だった。キングオブパワーだった。国際採決を待たずにアメリカはアフリカに核爆弾を落とした。うるさいアフリカをだまらせるとともに、地球をずらしてしまうという一石二鳥の作戦だった。世界各国はそれを黙認した。熱帯化は速やかに終わらせたかった。核保有国は密かにアメリカに核爆弾を譲渡していた。アフリカに世界中の核爆弾が降り注ぎ、大陸はその原型をとどめない海に浮かぶ瓦礫の山々となった。
かくして地球熱帯化は終焉し、日本の首都は東京へ、アメリカの首都はワシントンへと戻り、季節に冬が戻ってきたのだった。

〝地球を動かせ〟作戦から数十年後、動植物が絶滅していくという〝デス現象〟が起こった。そのなかで密かに地球寒冷化が進んでいた。太陽活動が急に弱くなったのが原因だった。食物がなくなった世界で人間が人間を喰うという〝タイラント現象〟が起こるなか、地球寒冷化はかなり進んでいた。しかしタイラント化した人間たちはそれに気づかない。そして地球は何万年ぶり何度目かの氷河期を迎える。
そして今、、

ジルとナイフは氷の上を歩いている。北へ向かって歩いている。ジルはひたすら歩き続けている。ナイフはそれに無言でついていく。凍った海を世界でたった二人だけの人間が無言で歩いている。北へ、北へ。
二人は北極までやってきた。そして、北極点までたどりついた。ジルの手にはGPSの装置が握られている。数値は0、0を示している。
「やっと着いたのね。北極点。ゼロの地点。」
ジルは北極点を中心にして歩き出した。自転の向きとは反対方向に、時計回りに、ぐるぐると回りはじめた。
「私は、時間を戻すの。」
ナイフは思った。GPSはどれだけ正確なのだろうか。ジルが回っている中心が北極点よりちょっとでもズレていたら。、、いや、それでもいい。北極点だ。幻想なんだ。この世界には僕とジルしかいない。二人が北極点だと思えば、それはもう北極点なんだ。
ジルは北極点を回りながら、みるみると若々しくなっていった。疲れ果てた表情に生気が戻り、一回転ごとに美しくなっていった。それを見ながらナイフは、発情した。勃起した。そしてジルを押し倒した。僕は、愛を知りたい。
「ちょっと、まだ日が出てるじゃない。」
ナイフは無言のテレパシーを送って応える。北極は白夜といって太陽が一日中沈まないって聞いたことがある。だから、日が出てても今は夜なんだ。
幻想なんだ。夜だと思えば夜になる。世界には今僕たち二人しかいないんだから。
暮れない太陽の下で、ジルとナイフは一日中愛を交わした。食欲に抑えられていた数年分の性欲が一気に解放されたみたいに。すべてを出した。
しかし、ジルは再び目覚めた。ジルの食欲が。


氷の大陸にジルは一人佇んでいる。また一人ぼっち。
いや、今は一人ではない。孕んでいる。胎の中に宿る小さな生命を愛でている。いや、愛でられているのか。
一人じゃないよ、と聞こえている。
しかし、ジルは死ぬ。空腹と寒さで。


風が吹く音がしている。遠くでは波の音がしている。地球の音だけがしている。
卵の殻が破れるような音がした。凍りついたジルの胎を割って、名前もないベイベーが生まれた。
生まれたばかりなのにベイベーは一歳だった。自力で外へ出るのに一年がかかっていた。胎の中で母親の肉を喰い、成長していた。しかし胎から出た瞬間が出生だとすればそれでも〇歳か。年齢とはよくわからないものだ。ともあれ、こうして〇歳か一歳のベイベーが誕生した。
最初の人間か、最後の人間か。
ベイベーは母親の肉を食べて生きた。北極の寒さが長い間母親の肉を新鮮なまま冷凍保存していた。しかしやがて母親の肉も食べ尽くし、ベイベーは食べ物を失くした。空腹と寒さがベイベーを衰弱させていく。〇歳もしくは一歳のベイベーにとってこの環境は厳し過ぎた。
ベイベーはオーロラを見ている。最初の人間もしくは最後の人間がオーロラを見ている。たった一人、それでいて地球のすべての生命を含んでいるベイベー。一であり全であるベイベーがオーロラを見ている。
「あれは食べられるのかなあ」
ベイベーは言葉を知らない。だから非言語の感覚で。言語ではない〝空腹〟という生の感覚がベイベーを四六時中支配している。
あれは食べられるのかなああれは食べられるのかなああれは食べられるのかなあ
そしてそのまま、ベイベーの飢餓の感覚は氷に閉ざされる。冷凍保存される。ベイベーは〝飢餓〟という名の氷像となった。鑑賞者はいない。


地球のゼロの地点に、唯一であり全てである存在、〝飢餓〟が永遠より存在している。
空から円盤が降りてきた。そして円盤から光が伸びてきて、氷像を包むと、氷像は円盤へと昇っていった。

「この星の唯一の生命反応ですね。」
「だが、凄まじい生命エネルギーだな。この星の生命バランスはいったいどうなっているんだ?」
氷像はぬるま湯に浸けられ、ゆっくりと解凍されようとしていた。
「まだ赤ん坊じゃないですか?いったいどこから生まれたのでしょう?まさか、神様が創った最初の子どもなんじゃ、、」
「馬鹿野郎!神様なんているわけないだろう。我々のこの科学力は神様が創ったものか?いや、我々人類がつくったものだろう。どうせ、戦争でもやらかして生物がみんな滅びてしまったんだろう。全世界が氷河に包まれているのもどうせ核爆弾かなんかのせいだろう。」
「そうですかねえ、、」
そのとき緊急警報が鳴り響いた。宇宙船内が赤い光に染まる。
「あの野郎、なにしやがった!?」
二人の宇宙人は〝バスルーム〟へと急いだ。

ベイベーは目覚めた。何年ぶり?何百年ぶり?わからないが久々に目覚めた。そして目の前になにものかを見とめている。
あれは食べられるのかなああれは食べられるのかなああれは食べられるのかなあ
ベイベーは飢餓となり、目の前の宇宙人に襲いかかっていた。

宇宙人はバスルームに着くなり見た。仲間が喰われているのを。赤ん坊が大人を喰っているのを。
「なんなんだてめえはよお!」
宇宙人はベイベーにつかみかかった。しかし逆に押さえつけられた。赤ん坊とは思えないほどの力があった。
なんなんだてめえはよお、、

後から来た宇宙人は逃げ出した。目の前で仲間が襲われたのだ。押し倒されて、喰われ始めたのだ。
これは普通じゃない。普通じゃない。我々はなんてものを拾ってきてしまったんだ!
待てよ、食事に夢中になっている今なら倒せるかもしれない。相手は赤ん坊なんだし、武器を使えば余裕で倒せる。
いや、あいつは普通じゃない。赤ん坊じゃない。あ、悪魔だ。神様が送り込んだ悪魔だ!
どうすればいいんだ。逃げ出すか?どこへ?外へ。でも氷の世界で生きていけるほど我々人類は強くできていない。
そのときベイベーが入ってきた。赤い回転灯に照らされたその眼はまさに悪魔の眼だった。
「あ、あのー!待ってください!あ、あ、あなたは、その、お腹が空いているだけでしょう!わ、私を食べたらそこでおしまいですよ!もうありませんよ!」
宇宙人はまくし立てたが、ベイベーには伝わっていないように思われた。言葉が通じないのか。そう思い、宇宙人は大きなジェスチャーを交えて説明し始めた。
ベイベーを指差し、手の平をお腹の前に持っていき、円を描くように回して、
「あなたは、お腹が空いているのですね!」
自分を指差し、大きく口を開けて噛み付く仕草をして、腕を交差させてばってん、
「私を、食べたら、おしまいですよ!」
体を動かし、大きな声で話し始めると、宇宙人は次第に冷静さを取り戻し始めた。そして自分が助かる方法を思いついた。
自分を指差して、人差し指を上げた手をひとーつとやって、左の手の平に右の拳をぽんと叩いて、
「私に、ひとつ、提案があります!」
(※めんどくさいので以降、ジェスチャーは割愛。)
この宇宙船には時空転移装置というものがあり、ベイベーを過去へ飛ばすことができる。そうすればベイベーは仲間たちと会うことができるし、食べ物もたくさんあるだろう。宇宙人の説明はこんなものだった。
ベイベーは止まっている。
通じたのだろうか?いや、変な格好して騒いでいるなと思ってキョトンとしているだけか。とにかく、この悪魔を過去へと送り飛ばしてやらねば!
実際のところ、ベイベーは二人の宇宙人を食べて満腹だったのだった。そして急に眠くなったのだった。ベイベーはまだベイベーだった。

宇宙人はベイベーを時空転移装置へとつれていき、中に入れた。そして時間を適当に合わせてスイッチを押した。
これで悪魔とはおさらばだ。
時空転移装置は二重円筒構造である。中の円筒が超光速で回転しはじめる。すると円筒と円筒の間に雷のようなものが発生する。そして爆音とともに円筒全体が光に包まれて回転が止まる。ベイベーは消えている。
成功だ。

ベイベーは移送空間にいる。七色に揺らめく色彩の海に包まれている。光の反射が美しい色の旋律を奏でている。
もしベイベーがこの光景を見ていたら、はるか昔の記憶がよみがえっていたかもしれない。
あれは食べられるのかなああれは食べられるのかなああれは食べられるのかなあ
渇望し、それでいて絶対に手の届かないもの。それが目の前に、四方八方を包み込んでいる。
しかし、ベイベーは熟睡していた。


ベイベーは目を覚ました。森のなかにいた。
ベイベーの周りにある木々や草は枯れて、色を失っていた。死んでいた。
ベイベーは歩き出した。ゆっくり、とことこと。
すると、ベイベーの周りにある植物は次々と枯れて、色を失っていった。死んでいった。
花が枯れ、蝶が堕ちた。
ベイベーは思っている。言葉ではない、生の感覚で。
暑いな、ここは。。

タイラント Part4

2007年02月22日 | クリエイティブな思考への挑戦
科学の街にアルティメットタイラントが現れた。
科学者に戦闘能力はない。虐殺される知能。地球最後の科学力が失われてゆく。タイラント化した人間の生物学的変化、人口食料の開発手法、デス現象の原因究明、、人類存亡をかけた最後の知能が失われてゆく。科学の力が、、野蛮な戦闘民族の手によって、、、。
一人の科学者が怪物に立ち向かおうとしている。
私には振動エネルギーがある。私には無限のエネルギーがあるのだ!〝振動エネルギー〟はアルティメットタイラントに体当たりした。振動しながら。そして腕を振り回しポカスカ殴った。アドレナリンが吹き出している。ハイになっている。しかしもちろん、びくともしない。そんな、、私の振動エネルギーが、、、。全身が震え上がる。そして意識が消える。
振動エネルギーという究極の永久エネルギー理論が永遠に失われた。
しかしここでケミストリーが起こる。化学変化が起こる。戦闘馬鹿だったタイラントに、地球最高の科学力が備わったのだ。
タイラントの脳は急速に発達し、全身の神経が思考するようになった。強靭な心臓から送り出される血液は脳を駆け巡り、科学者たちよりもはるかに高速な思考を可能にさせる。バラバラだった科学者たちの思考能力が融け合い、史上最高の科学頭脳が誕生したのだ。
この頭が考えれば今起きているあらゆる事象の謎を解明することができるだろう。しかし、アルティメットタイラントは戦闘のことを考えている。戦闘のことだけを考えている。肉体を効果的に動かすにはどうすればよいか、筋肉の能力を最大限に引き出すにはどうすればよいか。そしてあらゆる格闘技術、徒手空拳による殺人術を学ぼうとしている。
最強の肉体と最強の頭脳を手に入れたまさに究極の戦士が誕生した。


ブレッドはライトニングマグナムをキングタイラントに向けた。
「これで終わりだ。マグナム・トルネード!!」
引き金を引いた瞬間、パワーブースターが唸りを上げ、ゴールドの銃弾が渦を巻いて空気を切り裂いていった。
圧縮された空気の波を受けながら、ブレッドはキングタイラントを見た。銃弾が巻き起こすトルネードがキングタイラントの胸を切り裂き、肉片を撒き散らせながら突き破った。キングタイラントは大きな呻き声をあげ、大量の血飛沫が宙に舞った。
キングタイラントの胸には巨大な穴が空いていた。ブレッドは吐き気を覚えた。そこに見えたのは、無数の心臓だった。キングタイラントの巨大な体内には無数の心臓があったのだ。それらが全てばらばらに脈打っている。
撃て、全部撃て!
ブレッドはマグナムを連射した。一つ一つ心臓が撃ち殺されてゆく。鮮血を吹き出し、その鼓動が止まってゆく。命が萎んでいく。血が吐き出されるごとに悲鳴が聞こえてくるようだった。
生きているのか、全部。巨大なタイラントの中で、喰われていった者たちの心臓は生き続けていたのか。俺は、俺は、
ブレッドはマグナムをさらに連射した。俺が解放してやる。タイラントの呪縛からお前たちの魂を。
心臓が一つ潰れていくたびに、ブレッドは歓喜の叫びが聞こえるようだった。
これは解放なんだ。解放なんだ!
心臓は破裂するたびに真っ赤な花が咲くように見えた。ブレッドの顔には恍惚の表情が浮かび上がっていた。

ジョーは目を覚ました。まだ死んでいなかった。目の前にはブレッドがいた。ブレッドは、、。

終わった。これですべてが終わった。俺はついにキングタイラントを倒した。
ブレッドはキングタイラントの体内の心臓をすべて撃ち殺していた。暴君は完全に沈黙した。ブレッドは改めてその亡き骸を見た。巨大な身体。コンクリートを砕くほどの強度を誇る筋肉。砕け散った無数の心臓。心臓が無数にあったからこいつは死ななかったのだ。心臓一つ失ったくらいでは死なない。そして右腕。カルロと同じだ。キングタイラントの右腕は鎌のように変形していた。最初に現れたときにはなかった。カルロを喰ったからか。それとも。いや。
ブレッドは亡き骸に歩き出した。胃袋が求め始めた。唾液が溢れ出した。こいつを喰えば、俺が最強だ。最強の肉体、無数の心臓、再生する肉体、鋼さえ切り裂く大鎌、そして最強の武器、すべてを貫くパワーブースターライトニングマグナム。歪んだ笑顔。
銃声。
ブレッドは振り返った。
ジョーだった。
「そんなブレッド、、見たくないよ」
ブレッドはジョーの涙を最後に倒れた。唯一の心臓が撃ち抜かれていた。

「ありがとう、ジョー」
ジルがあらわれた。
「ブレッドがキングタイラントになったらどうしようかと思ったわよ。それを阻止してくれるなんて。」
ジルはジョーの額にデザートイーグルを突きつけた。
「潔癖症はね、つらいのよ」
銃声。


誰もいない世界で音楽が流れている。ロックンロールが響いている。スティーヴン・バンドだった。
スティーヴン・バンドはエンドレスのロック・バトルを続けながら、勝ち続けながら、その街の若者たちを喰らい尽くしながら、全国のライヴ・ハウスを回っていた。そしてたどり着いた。ロックの殿堂、ワールド・スタジアム。伝説のロック・バンドたちが歴史に残るライヴを演じた、世界中のロック・バンドの夢の舞台である。
スティーヴン・バンドはロックの殿堂で二十万人を相手にバトルし、そして勝った、喰った、そして誰もいなくなった。スティーヴンたちは演奏し続けている。誰もいないスタジアムで、ロックンロールを。俺たちはここまで到達した。そして最高のロックをして、勝った。ここから先、行く場所なんてあるか?俺たちはキングとして、この場所に君臨し、自分たちが行けるところまでロックし続けるだけさ。
スティーヴン・バンドが放つロックンロールは、キングとしての貫禄を見せつける重低音で、その爆音はスタジアムを超え、全世界にキング・オブ・ザ・ロックンロールを響かせるような勢いだった。

世界中に響き渡るロックンロールの震源地に、一人の青年があらわれた。タクヤだった。タクヤは目の前の光景に驚いている。響き渡る轟音に驚いている。音楽だ、俺が求めていたロックンロールだ!そして全身を揺さぶるこの独特のシャウト、今目の前にいるのは、〝EAT'EM ALL〟だ!(彼は知らなかった、スティーヴン・バンドという名前を)。
タクヤは音楽を求めてさまよい歩いていた。そして聞いたのだった。どこからか聞こえてくる音楽を。それも、求めていたロックンロールを。そしてたどり着いたのだった。ロックの殿堂、ワールド・スタジアムへ。

スティーヴン・バンドはスタジアムに突然現れた一人の青年に気づいている。新しい客だ。久しぶりの客だ。やってやるぜ。みせつけてやるぜ!久しぶりの客にメンバーは勢いづいている。ギターがうなりを上げる。スティーヴンがシャウトする。

これだ、これだよ!本物のロックンロール!タクヤの眠っていたものが目覚める。身体が動き出す。踊りだす。ロックンロール・バトルがはじまっている。
タクヤは知っている。音楽はエネルギーになるということを。音楽を聴いているタクヤは、しかも最高のロックンロールを聴いている今のタクヤは、エネルギーに満ち溢れている。身体が踊る、跳ねる、全身でロックする。

スティーヴンは目の前の光景に驚いている。青年の踊りは今までにバトルしてきた連中をはるかにしのいでいた。その動きは目に見えていない。残像が見えるばかりである。ロックンロールの殿堂に突如としてあらわれた青年、この凄まじい動き。全身でロックを表現しているその威厳。俺たちが目にしているのはロックの神じゃないのか?世界の真ん中で最高のロックをしている俺たちのもとへロックの神様が光臨したんじゃないのか?おもしろいぜ。ロックのキングとロックの神様。最高のバトルのはじまりだ!
スティーヴン・バンドのメンバーはみな触発されている。〝ロックの神〟に。ギターが放つヘヴィなサウンドは空間を歪ませるほどになり、ベースはベースと思えないほど速く動き独特のメロディを奏でる、ドラムはいつも以上に多く叩いている、間断なきほどに隙間なく速打ちされるドラムス、それが新しいビートを生み出していた。ロックの殿堂で、今、新しいロックンロールが生まれようとしていた。

タクヤは揺さぶられている。なんなんだ、これは。最高だ、最高だよ!それは今までに聞いたことない至高のロックンロールだった。時空を歪ませるギターが全身に衝撃を与え、踊るベースが神経を波立たせる、そして絶え間なく速打ちされるバスドラムが心臓の鼓動にリンクして心拍数をMAXに高める。
スティーヴンがシャウトした。スティーヴン独特の中毒性の声が空間を振動させる。タクヤの理性が吹っ飛ぶ。
タクヤは爆発している。全身の筋肉が弾けている。腕が、足が、腰が、首がビートを刻む。揺れる、弾む、ロックしている。脳みそさえもが心臓のように拍動している。スティーヴン・バンドの強力なロック・サウンドがタクヤの身体に無限のエネルギーを注ぎ込んでいる。

スティーヴンはシャウトしている。連続シャウトしている。ハイトーンヴォーカルがさらにハイに、またさらにハイになっていく。高速シャウトになっていく。超速シャウトになっていく。どこまで行っちまうんだ?ロックンロールはどこまで昇っていくんだ?俺たちはどこまでハイになれるんだ?頭の中が真っ白になっていく。快感が全身に広がっていく。光に包まれていく。そして昇っていく。快楽へ、快楽へ。


山賊は黄金の菩薩像の前で手を合わせて拝んでいた。高僧を喰らい、宗教に目覚めたあの山賊である。高僧を含めた十三の遺体を喰った後もずっと山賊はこの寺院に残っていたのだった。菩薩像が奇跡を起こしてくれると信じて。
山賊の体は痩せ細っていた。飢餓感が山賊を支配していた。それでも山賊は拝み続けていた。一度餓死の淵から救ってくれたのだ。おれぁ菩薩様を信じることにしたのだ。
しかしそれももう限界だった。何日間、いや何ヶ月こうしていればいいんだ?菩薩様、それはひどすぎやしないかい?おれぁこんなにも痩せ細って空腹で今にも死んでしまうかもしれないのに。山賊は菩薩像をにらみつけた。菩薩像は笑顔で見下ろしている。あんたはいつもその顔だ。スマイルなんて喰えるもんじゃねえぞ!
山賊は思いっきり黄金の菩薩像を殴りつけた。しかし逆に拳を痛めてしまった。痛ぇ~なにしやがる!
ぴしっ !? ぴしぴしっ !? !?
なんと黄金の巨大な菩薩像にひびが入り始めた。ぴしぴしっ。ひびの奥から眩しいほどの光が漏れている。お、おれぁ、、
すると菩薩像は粉々に砕け散った。強烈な閃光が中から溢れ出して御堂を光で染めた。そして巨大なシルエットがあらわれている。山賊はそれを見た。
「ぼ、菩薩様ぁ!!」
山賊はひれ伏した。目を閉じ、額を床につけ、合わせた両手を頭の上に、山賊なりの最敬礼をした。

アルティメットタイラントは目の前にターゲットをみつけている。相手は妙なポーズをとっている。これは自分の知らない武術の構えなのだろうか?
しかし究極タイラントはひるまない。巨大な両の手で山賊の頭をつかむと上空高くへ持ち上げて、右ひざを突き出しながらその硬いひざの甲に両の手を振り下ろし、山賊の頭を叩きつけた。脳みそが飛び散り、全身の骨が砕け散った。
弱すぎる、、。

山賊は畏敬の念を抱いていた。ついカッとなって殴っちまったけども、ついに奇跡が起きたんだ。菩薩様が光臨してくださった!
山賊は最高の祈りを捧げた。どうか救ってくだせぇどうか救ってくだせぇ!突然、頭に電流が走りぬけた。そして身体がふわっと浮き上がった。宙に浮いているのだ。神様の奇跡だと思った。すると一気に加速した。目を閉じているのでよくわからないが上昇しているのだろう。そして強烈な光が弾けて、全身を快感が駆け巡った。至福の瞬間だった。神様ぁ、おれぁあんたを信じて本当によかったよ。
山賊は永遠のような一瞬のなかで神の神秘を感じた。


誰もいない世界でナイフはたった一人でいた。無言のテレパシーで街を全滅させながら移動してきたナイフだったが、ありとあらゆる街を喰らい尽くし、ついに世界には誰もいなくなったのだった。
ナイフは運命を変えたナイフをみつめている。また一人ぼっちになってしまったなあ。僕を無視する人間はいなくなったけど、ついには世界に無視されてしまったなあ。僕にはこのナイフしかないや。無言の会話をはじめようとしている。しかしナイフはなにも返さない。
僕はいつも一人だった。だから、一人が好きなんだと思ってた。だけど、たぶんそうじゃない。いつも一人ぼっちになってしまうんだ。それに慣れてただけなんだ。本当は一人ぼっちなんて、、
イヤダ
ナイフは歩き出していた。誰かがいるかもしれない。そう信じて。とりあえず北へ。北へ、北へ。


誰もいない世界でナイトとウォンだけがいた。一人の青年と、ライオンのように大きな犬は街を喰らい尽くしながら移動してきた。そしてついに誰もいなくなった。エサ切れだ。
ウォンは二本足で歩くようになっていた。しかし襲うときは四本足になる。戦闘技術は犬そのものだった。ウォンはナイトと過ごすうちに犬の言葉を覚えた。人間の言葉は何一つ知らない。覚えた言葉は、ウーグァン!(コロセ)とウーグゥ、、(ハラヘッタ)の二つだった。
一人と一頭は北へ北へと移動していた。黙っていてもエサは来ない。とりあえず移動しよう。だが、ナイトにはわかっている。誰もいないと。その嗅覚は肉のにおいをまったく感じていなかった。次第に疲れる。腹が減る。
ナイトは倒れこんだ。ナイトのほうが年老いていた。もう限界だった。ナイトはウォンを見る。ウォンはナイトを見る。その瞳はギラついていた。獲物を見る眼。それに気づいてウォンもナイトも眼を逸らすのだった。一人と一頭は一心同体だった。タイラントになっても相手を喰うような気にはならなかった。
飢餓はひどくなっていった。一人と一頭はその場で動かずにいる。お互いにわかっている。相手を喰わなければ生きていけないと。しかし喰えない。喰いたくない。動けずにいる。腹が鳴る。どちらかが死ぬだろう。そしたらそれを喰おう。生き残ったほうが勝者だ。
ナイトにはわかっている。老いている自分のほうが先に死ぬだろうと。犬の寿命は短い。そしたら喰われてやろう。それで本望だ。軍用犬として育てられたナイトには人間を殺せない。ナイトは少年の、今は青年の騎士だった。最初から腹は決まっていた。
しかし、青年はウーグゥ、、と言った、鳴いた。ナイトの予想に反して青年は衰弱していた。若い方はそれだけでよりエネルギーを喰うのだ。動いていれば体力の差が出るが、黙って動かずにいれば新陳代謝の差で老いている方が有利だった。
ウーグァン!ウーグゥ、、ウーグァン!ウーグァン!ウーグゥ、、ウーグァン!、、、ウー、、ウーグァン!!


誰もいない世界でジルは一人だった。また、一人。
兄を喰い、父を喰い、母を喰い、私は一人になった。警察署で、クレアやブレッドたちを喰い、私一人になった。警察署を脱け出し、街中の人間を喰って、また私は一人になった。最後はいつも一人。私はいつも一人。
ところで、私は誰?
私はこんな人間だっただろうか?私はどんな人間だった?
ジルは運命を変える銃を見た。私を変えたのは銃だった。たった一つの銃声だった。最初に兄を殺したあの銃声。あの一発が昔の私を殺した。今の私は新しい私。でも本当の私は誰?今の私?昔の私?
運命を変える銃は次々とその形を変えていった。最初はただの拳銃だった。それがショットガンになり、デザートイーグルになり、そしてこのなんとかマグナムに。すべてを破壊できそうなこの、ディスティニーマグナム。
でも、本当に運命なんて変えられるの?それとも、運命は変わったけど、それはいい方向だといえるかしら?本当は最初に兄に喰われていたほうがよかったんじゃ。あのとき喰われていればこんな思いしなくて済んだのに。究極的に一人になってしまうなんて。一人になるための戦いだった。すべてを喰らい尽くして一人になるための。ブレッドが言っていたっけ。

「この戦いはいつまで続くの?」
「ずっとさ。戦いには目的がある。領土を奪うためだったり、利権を得るためだったり。目的を果たせば戦いは終わる。だが、この戦いの目的は、食欲だ。食欲に終わりはない。人間は生きている限り、食欲を満たそうとする。だから、この戦いに終わりはない。」

食欲がある限り、この戦いに終わりはない。食欲が失くなれば。
運命を変える銃。すべてを破壊するディスティニーマグナム。
ジルはこめかみに銃を押し当てた。
これで終わりにできる。すべてを終わりにできる。
銃声。

トルネードが上昇していった。空には鬱々とした暗雲が立ち込めていたのだが、弾丸が空気を切り裂きトルネードが暗い雲を吹き飛ばした。一発の銃弾が闇を切り開いた。突如として青空が広がった。
ディスティニーマグナムは空を向いていた。
死ねない。私は死ねない。まだ終わりじゃない。
人間は死を意識したときに生を実感する。だからこそ度々銃口をこめかみに向けるのかもしれない。
ジルは再び生に覚醒した。
そして北へと歩き出した。


誰もいないステージで、一人のギタリストが最後のロックンロールを奏でている。究極のロックンロールバトルを制した神、タクヤはTAKになっている。神のギタリストとして、究極のロックンロールを奏でている。
それはバトルでみせたような、ヘヴィで破壊的な高速ロックではなく、世界の終末にふさわしい、静かで壮大なギター・インスト・バラードだった。誰もいない世界に優しいロックンロールが流れている。
突然地面が割れ、ロックの殿堂は海へと沈んでいった。ロックンロールが飲み込まれてゆく。ロックンロールの神は、究極のロックバラードを奏でながら海へと沈んでいった。地上から音楽が消えた。
しかし世界中の海にロックンロールが響き渡る。美しい波となって、世界中の海が歌い出す。誰も聴くはずのないロックンロール。究極のロックンロール。
TAKは深く、深く沈んでゆく。まるで地球内部に神のロックンロールを届けるかのように。


タイラント Part3

2007年02月22日 | クリエイティブな思考への挑戦
ジョーが重傷を負い、ミラーが死んでいた。
「言っただろう、死神のように追いかけ回すってな」
カルロのグロテスクな鎌から血が滴り落ちている。「次は誰だ?」
パワーブースターさえあれば、、。ブレッドたちはパワーブースターを探している途中でカルロに急襲されたのだった。まずジョーが右肩から袈裟斬りにされ、さらにとどめの一閃を加えようとしたところをミラーが身を挺して飛び込んだのだった。それは臆病なミラーではなく、ハマーDの優しさと勇敢さだった。
ジルはショットガンを撃った。しかしカルロはそれをかわした。もう一撃。やはりそれもかわした。
「どうして当たらないのよ?こんなことってある?」
「相手の目線や腕の角度、筋肉の微妙な動きなどを読めば銃弾をかわすことができる。だが、言うのは簡単だがそれを実践するのは難しい。カルロは二度の戦争でその技術を命がけで習得したんだ。あいつは優秀な軍人なんだ。」
ジルとクレアはブレッドたちと合流していた。ジルもクレアも別々に警察署に入ったのだったが、三者は同時に出会ったのだった。ブレッドはクリスの妹であるクレアはいいとして、素性の知れないジルに関しては内心警戒していた。
二人と出会って一瞬気が緩んでいたところをカルロに襲撃された。カルロはずっと隙を窺っていたのだった。
「こんなとき兄さんならどうするかしら、、」
「クリス・レッドフィールドか。あいつなら、、」
「うおおおおお!!」
どこかからか叫び声が聞こえてきた。ブレッドは後ろを振り返った。
「ゴー・セイバ!」
「カルロ!てめえはこの俺がぶっ殺す!」
ゴーはマグナムをぶっ放した。しかしそれはカルロの右に逸れた。カルロの後ろの壁が大爆発した。
ゴー・セイバは兄のレツ・セイバとともに射撃大会に参加するためにこの警察署に来ていたのだった。レツ・セイバはクリスやブレッドと優勝争いをするほどの射撃の名手だった。ゴー・セイバは逆にまったく的を外すのだった。だが、ゴーのライトニングマグナムはオリジナルカスタムで、その威力はマグナムの領域を超え他を圧倒していた。兄のレツをカルロに殺されたゴーはカルロを追っていたのだった。
「ちょこまかと逃げ回るんじゃねえ!マグナム・トルネード!!」
ライトニングマグナムから発射された銃弾は激しく回転し、渦を起こしながら空気を貫いてゆく。しかしそれは的の中心を射ていないのでカルロは容易にかわす。
「パワーだけじゃ人は殺せないぜ?」
カルロはワンステップでゴー・セイバの懐に飛び込んだ。
「このときを待っていたぜ。マグナム・」
「遅えよ」
ゴーの腹が掻っ捌かれていた。
「いいか、実践において必要なのはスピードだ。いくらパワーがあっても当たらなければ意味がない。銃というのはそれだけで殺傷性のあるものだ。それ以上パワーを追求しても意味がないだろう。」
「カルロ、、」
「パワーだけじゃ勝てないぜ?」
「俺はパワーだけじゃないぜ」
カルロは振り向いた。ブレッドがライトニングマグナムをかまえていた。弾すでに発射されていた。
「いつの間に、、」
衝撃。高速回転する銃弾がカルロの腹を抉っていく。銃弾は背中を突き破り、カルロの腹に穴が開いていた。
くそ、、。重傷を負ったカルロは逃走した。
その背中をブレッドは追わない。このライトニングマグナムにパワーブースターを合わせれば、、。


ヘッドフォンからドラムの音が漏れてくる。シャウトが漏れてくる。若者が大音量でROCKを聴いている。タクヤは人間を食べていない。ロックンロールを食べている。ロックがエネルギーをくれるんだ。肉なんか喰わなくても生きていけるんだ。ロックさえあれば!
「うるせえんだよ!」
男がヘッドフォンを取り上げた。男は求めていた。殴りあう口実を。殺しあう口実を。急にロックンロールを奪われたタクヤは覚醒した。俺のロックを返せ!飢餓感が目覚めた。ロックンロールへの渇望。
タクヤは男を突き飛ばし、ヘッドフォンを取り返した。そして素早く耳につけた。再びロックンロールが流れる。
「この野郎!」
突き飛ばされた男は金属バッドを持っている。口実はできた。バトル解禁だ。男は金属バッドで殴りかかった。タクヤは間一髪でかわした。金属バッドはタクヤがいた背後の壁をひび割っていた。タクヤはここではじめてこの危うい現状を理解した。ヘッドフォンからはロックが流れている。「Dead or Live!」金属バッドの第二撃が襲ってきた。今度は側頭部にまともにくらった。身体が吹っ飛び、頭がふらふらした。そしてなにより、この一撃でヘッドフォンが壊れてしまった。ロックンロールが止まる。消えてゆく音の中で最後のシャウトが聞こえていた。「Eat'em all!!」タクヤは覚醒した。LIVEだ、LIVEなんだ!金属バッドを奪い、男をぼこぼこに殴っている。骨が砕ける一音一音にロックンロールを聴いていたのかもしれない。俺からロックを奪いやがって、このやろう、このやろう、うおおおお!
ロックンロールは与えてくれる。殺す力を。生きる力を。


とある島に、世界中から格闘家たちが集まっていた。人間が人間を喰らうという異常事態、人殺しが罪に問われなくなっている。今こそ殺しを含めてルール無用のアルティメットバトルができる。世界中の格闘家たちが天下一武道会を開こうとしていた。
最初はトーナメント戦が行われた。一対一の肉弾戦。武器は一切使用しない。筋骨隆々の戦士たちが集まっていた。相手が死ぬまで殴りあう。そして、勝ったものは相手を喰った。まさに弱肉強食だった。
しかし、武舞台の上で一対一で行われていたバトルのルールは次第に崩壊してゆく。興奮し、凶暴化した戦士たちが場所を問わずそこかしこでバトルをはじめてしまった。トーナメント制は崩れ、まさにルール無用の殺し合い、バトルロワイアルとなった。
戦いに勝ち、殺した相手の鍛え上げられた肉体を喰らっていった戦士たちの肉体は究極的に進化していた。アルティメットファイターたちのアルティメットバトル。殴れば肉を突き破り、手刀は骨までも断つ。しかし傷つけられた肉体はたちまち再生する。まさに死闘。
そんな血みどろのアルティメットバトルの末にたった一人が生き残った。強者たちを喰らい尽くし、最強の肉体を手に入れた究極の戦士、アルティメットタイラントが誕生した。


ブレッドたちはミラー、ゴー・セイバの肉を喰っていた。ブレッド、エッジ、重傷のジョー、ジルが肉を喰うなか、クレアは肉を喰おうとしなかった。
「喰わないのか?」
「私、人の肉を食べるなんてできないわ。吐き気がしちゃう」
「だけどこれからの世界には人肉しか食べるものがないんだぜ?今までどうしてきたんだよ?」
「ぎりぎりまで高い金を払ってでも普通の食料を食べてたわ。でもそれが尽きてからはなにも、、」
「腹減ってるだろう?よくそれで理性を保っていられるよな。喰えよ」
「いやよ、絶対。」
それを見ながらジョーが言った。
「潔癖症はね、つらいわよ、この世界で生きていくには。」

パワーブースターはすぐ近くの部屋にあった。ブレッドは早速ライトニングマグナムに装着しようとしたが、うまく合わなかった。
「ライトニングマグナムはゴー・セイバのオリジナルカスタムだから規格が合わないのよ。でも待って、このコンピュータでパワーブースターのセットアップができるわ。私がなんとかライトニングマグナムに合うようにセットアップしてみる」
ジョーは機械関係に強かった。しかし、コンピュータの前に立った途端、ジョーは倒れてしまった。カルロにやられた傷は深かった。
「ジョー、無理だ」
「いいえ、やるわ。私しかいないもの」
「ライトニングマグナムじゃなくても、俺のマグナムにならこのままでも使えるだろう?」
「ダメよ、キングタイラントに通用しないかもしれない。最強の武器をつくっておくべきよ」
ジョーは引き下がらない。ジョーはコンピュータの前に座り、作業をはじめてしまった。
「ブレッド、俺とジルとクレアで医務室へ行って救急キッドをとりにいってくるよ。」
「エッジ、いやそれは危険だ。行くなら俺が行く。」
「リーダーはジョーについていてやってくれよ。な」
エッジはそう言うと、ジルとクレアを引っ張って部屋を出た。ジョーが一言。
「両手に花ね」

「ライトニングマグナムとパワーブースターは最後の切り札なのよ。あの二人だけで残しておくのは危険じゃない?戦えるのはブレッドだけよ?」
「カルロ相手なら誰が残ったって危険さ」
エッジは、今にも死にそうなジョーをブレッドと二人だけにしてやりたかった。
それに、両手に花だ。


ナイフは街に出ていた。ビルの屋上から街を見下ろしている。そして無言のメッセージを送っている。コロセコロセコロセコロセ。すると街を歩いていた人間が突然殺し合いをはじめるのだった。それは新手のテロリズムだった。
ナイフは知っている。自分の思考が空間を越えて他の人間に伝わることを。そして他の人間を操ることができることを。僕を無視し続けた人間たちみんな死んじゃえ。
数時間もすると、路上には無数の死体が転がっている。ナイフはそれを喰うのだった。自分の手は汚さない。ナイフはナイフを使って肉を切り取って上品に食べるのであった。


ナイトとウォンは街に出ていた。ウォンとは、ナイトが死んだ森で助けた少年である。少年は言葉も知らないうちから捨てられたのか、人間の言葉をまったく知らなかった。ナイトが「ウォン」というと、少年も「ウォン」と応えたのだった。
ナイトとウォンは街に出て人間を襲うのだった。ナイトは殺した人間をウォンに差し出した。夜だったナイトは今や少年を守る騎士のナイトだった。
女や子どもが相手のときはウォンにもやらせた。ウォンは四足で駆けていき、首筋に噛み付くのだった。ナイトの戦いぶりをよく学んでいた。相手が思いのほか強く、苦戦しそうになると、ナイトはすかさず加勢して少年を守るのだった。


ブレッドとジョーの前にカルロがあらわれていた。
「ブレッド、さっきはよくもやってくれたな」
「ジョー、パワーブースターはまだか?」
「まだよ!」
ジョーは高速でコンピュータを操作している。ライトニングマグナムとパワーブースターを融合させる作業中で、ブレッドの手にはそのどちらもなかったのだった。せめてライトニングマグナムさえあれば、、。
カルロが近づいてくる。ブレッドは動けない。身動きの取れないジョーを残して逃げるわけにはいかない。
カルロの右腕が高くあがる。グロテスクな鎌がギラリと暗く光る。これまでか。
咆哮とともに壁が砕け散った。壁の破片がブレッドたちにぴしぴしと当たった。三メートルを超える巨人、キングタイラントだった。カルロはひどくおびえた様子で一歩二歩とあとずさった。
咆哮とともにキングタイラントはカルロに殴りかかった。カルロは後ろに飛んでそれをかわした。キングタイラントの拳が床を砕いた。なんというパワー。カルロは意を決してキングタイラントの懐に飛び込み、鎌で胸を切り裂いた。大きな傷口がぱっくりと開いた。だが、傷口はみるみるうちに塞がれていった。キングタイラントが咆哮をあげる。ブレッドは全身で震えている。カルロはさらに右から左から袈裟斬りに二閃した。キングタイラントの胸が十字に切り裂かれたが、傷口はやはり急速に再結合されてゆく。キングタイラントは咆哮をあげながらカルロを殴り飛ばした。カルロの身体は壁を突き破り隣の部屋まで吹っ飛んだ。キングタイラントはそれを追っていった。
なんなんだ、あのパワーは。あのカルロが赤子のように。あれが人間だろうか?とにかく、助かったのか?いや、あの怪物が戻ってきたら、、。
「ブレッド、、」
「何だ!」
「これであの化け物をやっつけて、、、」
ジョーは気絶した。その手からブレッドの手に、最強の武器が手渡された。パワーブースター搭載ライトニングマグナム。
これで、やつを、、


ロックンロールが生まれていた。箱の中で、溢れそうな若者たちが頭を腕を振り、叫んでいる。揺れている。揺れている間は飢餓感を忘れられる。どこかへ飛んでいく。
ヴォーカルが叫んでいる。「I play rock'n roll! Eat'em all! Eat'em all!」
若者たちはやがて踊り疲れ、倒れてゆく。バッタバッタと力尽き、息絶えてゆく。バンドも、周りの若者たちも気にしない。バンドはロックし続け、若者たちは踊り続ける。
最後の一人が倒れ、ロックするバンドだけが残った。ヴォーカルは「We are Winner!」と叫び、フィニッシュ。スティーヴン・バンドはまたしてもLIVEした。SURVIVEした。バトルに勝利した。バンドのメンバーは倒れている若者たちを喰っていった。熱いロックが流れてくる。一緒にロックし、踊り続けた若者の肉からエネルギーが注入される。こうして新しいロックが生み出されてゆく。ロックがLIVEする。
俺たちはロックしてる。みんないい顔して倒れてゆくんだ。俺たちは新時代の救世主なんだ。俺たちがこいつらを喰う権利はあるよなあ。ヴォーカルのスティーヴンは思っている。


科学の街では、科学者たちがタイラント化現象について研究していた。理性の強い科学者たちが集まるこの街では、タイラント化による殺し合いはまだ起きていなかった。
「タイラント化した人間は食欲が異常に増大するといわれています。これは人間を喰ったときにそのホルモン物質をも取り込んでしまうからではないでしょうか。つまり、食べた人間の食欲誘発ホルモンを摂取してしまうことにより、食欲が倍増してしまうのです。これは凶暴性にもいえます。攻撃性を促すという男性ホルモンのテストロゲンをはじめとする暴力性のホルモンが人間をさらに凶暴化させていると思われます。」
「しかし、それがなぜ今頃になって起こっているんだ?人間はそれまでにも豚や牛などの肉を喰ってきた。豚や牛を食べてもなぜ普通でいられたんだ?」
「おそらく種が違うからでしょう。豚のホルモンは人間に影響を与えない。同じ人間のホルモンだから問題なのです。たとえば、人食い民族のことを考えるならば、彼らは凶暴で野蛮な性質をもっていた。人間が人間を喰うことが問題なんです。」
「異常な再生能力もそれで説明できるのかな。新陳代謝が倍増しているから傷つけられても細胞が一気に分裂成長して傷を治癒させてしまう。しかし、心臓が何個もできるとか、脳みそを複数もつなんていうのは生物学的にありえないと思うんだが、、」
「タイラント化した人間がどうなるかなんてどうでもいい問題です。動植物が死滅した〝デス現象〟がどうして起こったのかが重要です。人間が人間を喰うようになったのも、すべては食料不足を引き起こしたデス現象のせいです。」
「しかしデス現象に関してはほとんどわかっていないじゃないか。いつどこで発生したのかもあいまいだ。温暖化が原因だともいわれているし、放射性物質が原因だともいわれている。人類が生み出した新たな毒性物質、あるいは突然変異による新種のウイルスが原因だともいわれている。」
「なぜ人間だけが生き残ったのだろうか?これは最後の審判なのだろうか」
「科学に宗教を持ち出すな!」
「タイラント化現象もデス現象も問題ではありません。現実的な問題に対処する方法を考えるべきです。今のこの現状で食料をつくるにはどうすればよいかを研究すべきです。」
「人口食料をつくろうという努力はいろいろやってきた。バイオ植物やバイオ家畜を生み出そうという研究もしてきた。しかし、動植物のDNAはことごとく失われてしまったのだ。現在、コンピュータ上に残っている動植物のDNA情報をもとにDNAの復元を行おうとしているが、DNAのサイズは微小で、だがその情報量は多い。そんなものを扱おうとすることに無理がある。」
「クローン人間を喰うという案も出ているが、倫理的な理由で反対されているという。しかし、人が人を喰っているこの状況で倫理もくそもあるかと思うね。」
「私は新しいエネルギーの研究に取り組んでいます。振動エネルギーというものです。人間は振動をエネルギーにすることができるのです。ノリノリの音楽を聴くと元気が出ます。お笑い番組を見て笑うと元気が出ます。スポーツをしていい汗をかくと気持ちがいいです。これらはすべて振動です。音楽は音の振動ですし、笑うと体が振動します、運動すると全身が振動します。この、振動がエネルギーになるというメカニズムを明らかにすることによって、人間は食料なしにエネルギーを得るようになれるのではないかと思うのです。」
「馬鹿げた研究はやめたまえ。この非常事態に」
「みなさんもよくわかっていると思います。研究に没頭していると空腹のことなんて忘れてしまいます。それは頭の中がフル回転していて、脳内物質が振動しているからなのです。振動はエネルギーになるのです」
「議論はここまで。各自研究に戻ろう。」
科学者は他人の研究には無関心である。自分の研究こそが正しいと思っている。しかしこうして議論することは怠らない。議論がまとまることは皆無だが、その議論によって得た知識が、知らず知らずのうちに自分の研究の役に立っている。そのことを無意識のうちに理解しているのかもしれない。


ジルとクレアが対面している。
「あなたが兄さんを殺したのね」
「心配しないで、すぐに兄のもとへと送ってあげるわ」
ジルはクリスのショットガンをクレアに向けた。しかし。
「ク、、レ、、ア」
ジルの目が変わった。殺気だった目がやわらかくなっている。
「俺は、、助けたジルに殺されて、、クレア、、殺してくれ、俺を殺してくれ、、」
クレアは直感した。ジルの姿に、ジルの声に、今、兄を感じた。
「兄さんなの?できない、できないよ。兄さんを殺すなんて、できないよ」
「俺はもう死んだんだ。これはジルだ。お前を殺そうとしているんだ。だから、早く殺してくれ!」
クレアは首を横に振った。兄が歩み寄ってきた。そしてクレアの体を抱きしめた。
「兄さん、、」
クレアの目から涙が溢れ出した。しかしそれはもう兄ではなかった。クレアが頭をあずけているジルの右肩が鼓動していた。
「聞こえるでしょう?それはクリスの心臓よ。そいつが私の意識を支配したのね。一緒に逝かせてあげる」
ジルはショットガンを自分の右肩に押し当て、クリスの心臓とクレアの脳を同時に吹き飛ばした。
「私を殺すチャンスはあったのに。潔癖症は、この世界では生きていけないわよ」 
「ジル、それがお前の正体か」
エッジがデザートイーグルを向けている。
「お前の目的はなんだ?ブレッドに教えてやらねえとな、ジルは危険だって」
「目的?あなたと同じよ。食欲だけ。でも残念だけどブレッドには教えてやれないわね。だってここで死ぬんだから」
「残念だったな。俺たちには無線通信装置があってね、この会話はすべてブレッドに筒抜けだ」
「あら、そう。でもどっちにしろ同じ。知ってても知らなくても殺されるのは向こう!」
銃声。
すまねえ、ジョー、、救急キッドを届けられそうに、、ねえ、、、

タイラント Part2

2007年02月22日 | クリエイティブな思考への挑戦
なんでこんなことになっちまったんだ、、
男は警察署の地下室にいた。ずっと身を潜めていた。非戦闘員のこの男は戦っても勝てないと最初からあきらめて、誰も知らないこの隠し部屋へと逃げ込んだのだった。
秩序を守るのが警察ってもんだろ?なんなんだこの有様は!これが警察のあり方か!?
実際、秩序が壊れたのは警察が一番初めだった。

動植物が次第に死んでいった。食物が不足していった。食料の値段は高騰した。すると、貧困層は食べ物を買えなくなった。そして盗みをはたらくようになった。はじめは万引きだったが、次第に強盗になっていった。
警察の仕事は一気に増えた。
食料が不足しだし、人々は食物を無駄にしなくなった。食べられる部分はすべて食べるようになった。残飯を捨てることはなくなった。すると、ゴミをあさることで生活していた浮浪者たちが腹を空かせ始めた。ゴミあさりでは生きていけない。浮浪者たちは盗みを働くようになる。
警察の仕事はさらに増えた。
店主は店を閉め始めた。この食糧不足は一時的なものではない。恒久的なものに違いない。貴重な食べ物を売ってる場合か!食料高騰のおかげでぼろ儲けだが、金がなんになる!金なんか食えねえ!
食料を買えなくなった市民は暴動を起こす。
警察の仕事はよりハードになる。

そんな中で、警察官たちも食料不足なのだった。しかも、警察官が盗みを犯すなどあってはならなかった。実際、盗みをはたらいた警官もいた。しかしすぐに捕らえられ、厳重な罰を科せられた。
食糧不足で、仕事はハードになる、盗みは厳禁、、ストレスは溜まる一方だった。
そして、内戦が起こった。
警察署には食料庫があった。警察官たちはそこから全員に平等に食料を分け与えていた。ここでいう平等とは、階級に見合った配分であったということ。下っ端の取り分は少ない!
腹を空かせた下っ端警官たちが暴動を起こした。上官たちは殺された。戦闘に長けているのは下っ端警官のほうだった。

内戦が起こり、警察機能は停止した。街では、タイラント化した人間たち、そのほとんどが貧困層であるが、一般市民を襲いだす。喰らい出す。人が人を喰う、地獄絵図。小さな子どもたち、ストリートチルドレンたちは発狂しだす。恐れる。恐れは理性を奪う。やらなければやられる!

場所は地下室へと戻る。
人間は殺し合う生き物だとは思ってたけどもよ、ここまでひどくなるかよ?人間が人間を喰うなんてよぉ、世も末だな、、あぁ、腹減った、、、
男はときどき上の階に行った。誰もいないことを確認しながら、慎重に辺りを探した。すると、死体が転がっていたりする。喰い散らかされたあとのもあったし、無傷の死体もあった!無傷といっても、撃たれたり刺されたりしてるけど、、つまり喰われてないってこと。そうやってみつけた死肉を喰って、男は生き残ってきていた。だが、、
もう無理だよな、、もう死体はきれいに平らげられちゃってるし、今生き残ってるやつらなんて到底敵う連中じゃない。のこのこ出て行った途端に撃ち殺されるに決まってる。
あぁ、飢えて死ぬのかな、、あぁ、、腹減った、、、
すると部屋が揺れた。地震だろうか?再び揺れた。爆発か?再び。昔恐竜映画で見たティラノザウルスが迫ってくるときの足音が思い出された。まさか、そんなことあるわけない。
激震、そして崩壊音。
天井が砕け散った。そして上から巨大な生き物が降りてきた。三メートルはあろうかという巨体。上半身が異様に大きく、両腕の筋肉は異常に発達していて、その皮膚は裂けていて真っ赤な筋肉があらわになっていた。顔は焼けただれていて誰なのか判別がつかない。
こいつもタイラント化した人間なのか?もともとはここの警官だったのか?なんなんだこの姿は?もう人間じゃねえ!
部屋全体を揺るがすほどの咆哮とともに、巨大なタイラントは男を超怪力で床に押さえつけた。床がひび割れるほどの力だった。そして巨大な口を開けて男の肩にかぶりついた。男は苦痛の悲鳴をあげた。
男は生きたまま喰われていった。

カルロは牢屋にいた。空腹で動けなかった。そこへ足音が聞こえてきた。食い物!カルロは俊敏に起き上がり、足音の方を向いた。警官だった。カルロを閉じ込めた張本人だった。その手には鎌が握られていた。その目はギラついていた。俺を閉じ込めておいて、今度は俺を喰らいにきただと?ふざけやがって。
牢の扉が開いた。鎌をもったギラついた警官が迫ってきた。空腹のカルロは動けない。鎌が振り下ろされた。
しかし、カルロは俊敏に交わしている。空腹にも関わらず身体が動いている。躍動している。カルロの動物的本能は、死を前にして限界以上に反応していた。鍛え上げられた身体は実戦経験の少ない上官の腕から素早く鎌を奪い取っている。目の前に肉があり、飢餓の境地に達した身体は飢えた獣のように襲い掛かる。鎌の一閃で上官の思考は吹っ飛んでいる。身体から切り離された首が宙を舞っている。
カルロは久しぶりの食料にありついた。牢から出ることもできた。しかし、牢屋の区域を仕切る扉は堅く閉ざされていた。上官はその一部始終を誰にも見られたくなかったのだろう。あの野郎。扉は銃や鎌で破れるものではない、分厚い鉄扉だった。
空腹で動けなかったカルロは上官一人前の肉を喰らった。しかし、それが逆にカルロの胃を目覚めさせてしまった。食料をなかばあきらめかけて眠っていた胃袋が、再び覚醒したのだ。飢餓感が一気に押し寄せてきた。上官一人ではあまりに少なすぎた。しかし外へ出る扉は堅く閉ざされている。
そしてカルロは、鎌を喰った。金属製の刃物。その刃先にはさきほど殺した上官の血がこびりついていた。カルロは狂っていた。
カルロは苦しみだす。腹を押さえてのた打ち回る。鎌を喰うなんて、と今更後悔する。その痛みは激痛になる。激痛はしだいに場所を腹から移し、腕が痛み出す。どうなっているんだ?右腕が震えだす。筋肉が膨張し、血管が浮き出てきて、脈打っている。どうなってるんだ!?右腕の皮がはち切れる。グロテスクな生肉があらわれる。そして変形していく。激痛が走る。カルロは大声で悲痛の叫びを上げている。
そして、死神が誕生した。牢屋の分厚い鉄扉が切り裂かれている。その切り口は酸で溶けたようになっている。殺戮がはじまる。


ブレッドたちは肉を喰っていた。ハマーDの肉を。爆発した武器庫の炎で焼けた肉だった。ブレッド、エッジ、ジョーの三人が肉を喰っているなか、ミラーだけが背を向けている。
「ミラー、喰えよ」
「できないよ。ハマーは俺を助けるために死んだんだ。俺には喰えない。」
ブレッドはハマーDの心臓と脳みそをミラーの方へ放り投げた。
「ハマーDはお前のために命を落とした。だったらその気持ちに応えるためにも、お前は生きなければならない。ハマーの死を無駄にするな。お前に喰われることだってあいつの本望だろう。」
ミラーはハマーDの心臓と脳みそをみつめている。ハマーDとの思い出がよみがえってくる。ミラーは涙を流しながらハマーDの心臓と脳みそを喰らった。俺の中で生き続けてくれ。

「これからどうするの?」ジョーが口を開く。「カルロのやつが言っていたように、警察署に残っているのが私たちとカルロとキングっていう化け物だけだとしたら、早く脱出した方がいいと思うんだけど」
「いや、俺たちはカルロをみつけ出して殺す。ハマーDの仇は絶対にとる」
「ブレッド、でもカルロのあの強さを見たでしょ?銃弾を避けてしまうなんて、どうするのよ。それにあの鎌みたいな右腕、勝てっこないわよ」
「だからってあいつを見逃すわけにはいかねえだろ!」エッジが怒鳴る。
ミラーは背を向けたままつぶやいている。
「無理だよ、無理だよ、、」
エッジがそんなミラーに言う。
「お前はどうなんだよ、ミラー!」
「無理だよ、無理だよ、、」
「ハマーはお前を助けて死んだんだぞ!お前はそれで何も思わねえのかよ!カルロを見逃していいのかよ!」
「だけど、、無理だよ、、、」
「てめえそれでも男かよ!ちんぽこはついてんのかよ!」
「もういいエッジ、よせ!」リーダーのブレッドが止める。「勝てる方法がないでもない。」
パワーブースター。アメリカ軍が開発した新兵器。それを銃に組み合わせることによって、銃の威力を何倍にも高めるという。そのパワーブースターの試作品が警察署内にあるというのだ。それを使えばカルロだろうと、キングタイラントだろうと倒せるはずだ。ブレッドの秘策はそういうものだった。
「だけど、パワーブースターを手に入れるまではどうするのよ。カルロはいつでも私たちを狙っているし、キングタイラントだって食べ物を探してうろついているのよ。危険よ」
そのときミラーが立ち上がった。
「やろうよ。パワーブースターを手に入れて、カルロをやっつけよう。ハマーの仇を俺たちの手でとってやるんだ!」
ミラーは感じていた。自分のなかにハマーDの温もりを。ハマーの魂が血となり肉となり流れ込んでくる。身体の底から勇気が溢れ出していた。
「ジョー、どうする?俺たちは戦う。一人で逃げるか?」
「ブレッド、、行くわよ。男ってこれだからいやよ」
ジョーは一人ではいられなかった。ブレッドから離れるのはまっぴらごめんだった。


どっかの孤児院。
少年がいた。少年は人と付き合うのが苦手で、いつも一人でいた。その空気感が周りに人を寄せつかなかったので、誰も少年に近づこうとはしなかった。ずっとしゃべることをしなかったので、少年はしゃべり方を忘れた。そのかわり脳で考えることが多かった。口に出すよりも脳で考えるほうが断然速かった。少年は名前を忘れた。誰も少年を呼ぶことがなかったし、頭の中での自分は一人称だったから名前は必要なかった。でも、少年よりもっと小さな少年二人組がこの前少年に話しかけてきた。二人は少年に「君、名前はなんていうの?」と聞いてきたが、少年は答えなかった。名前を忘れたせいもあるが、そもそも二人組と話すことに興味がなかった。とうのむかしにしゃべり方を忘れていた。少年二人組はなにも答えない少年に対して勝手に名前をつけた。「君、名前ないの?」「じゃあ、君は、、君君だ!」二人組は君君、君君と言ってしばらくつきまとったが、少年がなにも応えないのであきてどこかへ行ってしまった。少年はそれでも、誰も自分のことなど気にしないこの孤児院で自分にかまってくれた少年二人組のことが少しうれしかった。君君か、いいな、それ。君君じゃわかりづらいので以後キミクンである。

キミクンは逃げていた。そして考えていた。いったいどうなっているんだ。先生たちはいつのまにかいなくなっているし、食べ物はないし、幼い子たちは餓死しはじめるし、その餓死した子の死体は埋めてあったのにいつのまにか掘り起こされていて血だまりができていたし、そしてあいつらは僕を追いかけてきている、喰おうとしている。電気のない暗がりの孤児院の中をキミクンは音を立てないように逃げていた。隠れていた。そこへ足音が聞こえてくる。懐中電灯の明かりがサーチライトとなって廊下を照らす。探しているんだ。キミクンは追っている者たちの顔が目が釣り上がり口は裂け牙を剥き出しにし涎を垂らしながら自分を探しているんだと思った。そんな怖い顔見たくない。見たくないと思いながらそれを見たくて、少し顔を出した。ちょうどそのときサーチライトがキミクンの顔を照らした。「見つけたぞ!」
キミクンは走り出した。静寂が割れた。部屋から部屋へ、ドアからドアへと逃げる。しかし、追い詰められた。「とうとう追い詰めたぞ」いつも無視されて、いないように振舞われていたけれど、こういう非常事態においては、真っ先に餌食になるのはまったく無関係な僕ということか、、くそっ、人脈をつくるのも大事なんだな、やっぱり。懐中電灯で照らす二人の背後から一際体の大きいタケシが現れた。「よお、お前、あれ、名前なんだっけ、、?どうでもいいか、俺たちの食料なんだから。」こいつら、やっぱり僕を食べる気なんだ。タケシの大きな体が迫ってくる。懐中電灯の明かりを背にしたタケシの顔は影になっていて、それがキミクンの豊かな想像力によって奇妙に凶暴にコラージュされていく。悪魔がやってくる。暴君がやってくる!
キミクンは咄嗟にそこにあったものをタケシに向けた。キミクンがつかんでいたのはナイフだった。その先には真っ赤なリンゴが刺さっていた。「リンゴか?まだ果物が残っていたとは。くれるのか?」タケシはリンゴをつかんだ。
腐ったリンゴはぐしゃぐしゃに潰れて、そこから真っ赤な汁が溢れ出した。そしてナイフの刃があらわれ、暗がりの中で紅くギラリと輝いた。
キミクンは自分とリンゴを重ねていた。潰れるリンゴ、潰れるボク、、。そしてナイフの暗い輝きがささやきかけていた。
ヤラナケレバ、ヤラレル!
「うああああああ!!」
懐中電灯が割れ、光が消えた。闇の中でタケシは初めて少年の声を聞いた。「殺す、殺すコロス、コロスコロスコロスコロスコロス!」しかし少年の口から音は発せられていない。耳で聞いているのではない、脳で直接聞いている。無音の、コロスというメッセージを受け取っている。キミクンは、しゃべることを忘れた少年は、頭の中で考えることを覚えた。音声にせずに脳の中で思考だけを回転させたほうが速いと悟っている。キミクンの思考回路は高速に進化していた。そしてその高速思考回路は空間を越えた。キミクンからタケシへと伝達された。人類が初めてテレパシーを使った瞬間だった。コロスコロスコロスという思考は、あまりにも高速すぎて、タケシにはそのすべてを理解することはできなかった。キミクンの脳はタケシをどのように殺すのか、ナイフを突き刺してそのあとどうするか、いや、他の殺し方はどうか、後ろの二人はどうするか、殺したあとやっぱり喰うのか、どこから喰おうか、簡単に殺すのもどうか、苦しませて殺そうか、、あらゆる思考が同時進行で超高速で回っていた。人間の限界を超えている、常人には理解できない速さだった。しかしタケシはそのコロスという思考にとてつもなく驚異を感じた。全身で、神経のすべてで恐怖した。
悲鳴が暗闇にこだました。一晩中。いや、暗いから一晩中と書いたけれども、昼なのかもしれない、朝なのかもしれない。とりあえず、数時間のうちに孤児院にいた者たちはナイフの餌食になった。
このときキミクンは改名する。僕の運命を変えたのはこのナイフだ。だから僕の名前はナイフだ。


動植物が死に絶えてゆく中で、人間だけが生き残った。しかし、動植物は一気に死滅したのではない。植物の死滅からはじまり、虫が死に、魚が死に、爬虫類が死に、、それはまるで進化レベルが低いものから順番に死滅しているようだった。あるいは知能レベルが低いものから順番に。
その中で最後まで生き残ったのが人間だったが、人間の他にも長く生き残っていた動物もいた。それは犬であった。さまざまな哺乳類や鳥類が死んでゆく中で、人間以外で最後まで生き残ったのは犬だった。人間に近い動物としてその知能の高さにも定評があった猿ではなく。早くから人間世界に入り込んでいた犬たちは、猿よりもはるかに知能を発達させていたのかもしれない。

死んだ森の中を一頭の犬が歩いている。犬たちもまたタイラント化し、殺しあった。そしてその最後の生き残りがこのナイトであった。
ナイトは犬と狼のハイブリッドで、さらに軍用犬としての訓練を積んでたので戦闘能力に長けていた。ナイトというのは軍用犬時代に名づけられた名前だった。夜間に敵兵を奇襲する部隊、そのエースとなるべくつけられた名前だった。ナイトは夜を生きた。

食糧不足になり、犬に与えられるエサはなくなった。軍用犬たちは腹を空かせた。それだけではない。軍は犬たちを食料とみなした。軍用犬が一頭、また一頭と、兵士に喰われていった。軍用犬は戦場では真っ先に攻撃を仕掛ける切り込み役である。命をかけて突入するその軍用犬が、栄誉を与えられるのではなく、喰われるなんて。そして軍用犬たちは反旗を翻した。軍用犬たちは人間を襲い、脱出した。射殺される犬もいた。ブリーダーを喰らう犬もいた。
そんな中でナイトは長年のパートナーと出くわした。二度の戦争をともに経験しているパートナーである。パートナーは黙って出口を示した。目と目が合った。パートナーはナイトに向かって最後に「生きろ」と言った。だからナイトは生きた。
森の中では野犬たちが壮絶な戦いを繰り広げていた。獰猛な犬たちが牙を剥き出しにして喰らいあっていた。そこには上位の犬も下位の犬もない。階級など消滅している。ただ、強いものが生き残り、弱いものは喰われる。唯一明快なルールだけがあった。
戦闘訓練を積んでいるナイトは勝ち残った。一度に数匹を相手にしても余裕だった。特に夜はその真価を発揮した。淡い月明かりのもとで音もなく忍び寄り暗い鮮血を撒き散らす。ナイトは夜を生き残った。

ナイトは森を歩いている。枯れた植物の残骸だけが残る、死んだ森を。空腹である。森にはもう野犬はいなかった。すでに喰い尽していた。ナイト自身は気づいていないが、最後の一頭なのだった。もう何日も肉を喰っていない。俺は死ぬのだろうか?
すると前方に人間が二人いた。エモノダ。ナイトは駆け出している。ハンターと化している。ナイトはこれまで人間を襲ってこなかった。自分は人間に育てられたのであり、だから人間を襲うべきではない。そう思っていたからこそ、森の中で野犬たちを喰ってきたのだった。しかし今のナイトは、空腹のあまりそんなことは飛んでいる。ただ食欲だけが暴走している。
二人の男は突然のハンターの出現に驚いている。いや、驚く間もなく咬みつかれている。一瞬のうちにのどを掻っ切られている。ほぼ二人同時に事切れている。戦争用に訓練されたナイトにとって、その戦闘能力が最もよく発揮されるのは人間相手のときだった。
ナイトはそのまま一人の男をペロリと平らげてしまった。人間を喰うことにためらいはなかった。胃袋は求めていた。もう一人にとりかかろうとしたところでふと気づいた。そこにはさらにもう一人いた。少年がナイトをみつめていた。
お前、一人なのか?親に捨てられたのか?ナイトは少年に自分と同じ匂いを感じている。俺も、軍に見捨てられたんだ。そして一人ぼっちなんだ。少年をとって喰おうという気持ちは起こらない。してはいけないような気がしている。
少年の表情。二人の大人に殺されそうだった恐怖。一頭の犬に命を助けられたことによる喜びと感謝。しかし最も強い感情は、腹減った、だった。ナイトは残っている一人の男を少年の前に引きずっていった。喰えよ。少年は貪りついた。
夜明けだった。

タイラント Part1

2007年02月22日 | クリエイティブな思考への挑戦
誰もが死んだ。
動植物が死に絶え、、、
人間だけが残った。
食物がなかった。
人間は殺し合い、、
喰らい合った。
まさに――――
弱肉強食――――。
    


「父さん、なにやってるの?」
暗い部屋の中で父がなにかを貪り喰っていた。
父の背中越しに見えたのは、顔の半分が喰い散らかされた人間。
しかしそれは顔の残りの半分で母だとわかった。
「母さん!父さん、なにやってるんだ!」
父が振り返った。
その眼はもはや人間のものではなかった。獲物をみつけた獣のような鋭い瞳が暗がりの中で光った。とてつもない恐怖を感じた。
逃げなければ。
部屋を飛び出した。壁に激突した。痛がる間もなく廊下を走り出した。破裂しそうな心臓の激動が身体のバランスを狂わせているみたいに、身体はもつれ何度も転んだ。廊下がいつもよりもはるかに長く感じられた。ベルトコンベアの上を走ってるみたいに、走っても走っても進んでいないように感じた。
気づいたら家の外に出ていた。無事に脱出できたのだ。
荒い息を整えながら家を振り返った。そしてそこでやっと気づいた。
家の中には妹がいる!
獰猛なタイラントがいる家の中に妹が一人取り残されているのだ。
助けに行かなければ、、でも、、
正義感と恐怖感のせめぎ合い、、
心はそんなに強くはない。
甲高いブレーキ音、そして激突音。
左を向いた。隣の家の塀に車が激突していた。運転席のドアが開いた。
助手席に乗っている女が運転席の男の首筋に噛み付いていた。
男は女の頭を引き剥がそうともがいていたが、その腕はすぐにだらりと垂れ下がった。
背後で女性の悲鳴が聞こえた。
振り返るとヤンキー風な女が逃げていた。
その後ろから走ってきた派手なバイクが女を派手に轢いた。
女の肢体はまるで人形のように折れ曲がり、吹っ飛んだ。
バイクから降りてきた男は倒れた女に走りより、その胸に貪りついた。
男はおっぱいではなく、心臓を喰らおうとしていた。
みんな獰猛なタイラントだ。みんなみんなみんな。
恐怖が全身を支配する。
こうなったら、、
獰猛な父タイラントがいる家へ引き返した。
しかし、妹を助けるためではない。
喰らうためである。
正義感と恐怖感のせめぎ合い、、
心はそんなに強くはない。
みんな獰猛なタイラントだ。

ジルはふとんの中でうずくまっていた。何もかもが恐ろしかった。
ドアが開く音。
「お兄ちゃん?」
兄ではなかった。
姿かたちは兄だったが、その眼は人間のものではなかった。
荒い息づかいとともにゆっくりと近づいてくる。よだれが床に落ちる。
来ないで、来ないで来ないで。
しかし歩みは止まらない。ゆっくりと確実に近づいてくる。
ジルは意を決した。
そして銃を兄に向けた。いや、兄タイラントに。
銃は本当は自分を撃つために所持していた。度々その銃口をこめかみに当てていた。
何もかもが恐ろしかった。
遺書はずっと机の一番上の引き出しに鍵をかけてしまってあった。
銃声。
その銃弾は自分ではなく、兄を撃ち抜いた。心臓を貫いた。
兄タイラントは倒れ、床に暗紅の血が広がった。
一発の銃弾は、兄だけでなく、同時にジルをも殺した。
一発の銃弾は、すべてを変えた。
生を死に、死を生に。
人間は死を意識したときに生を実感する。だからこそ度々銃口をこめかみに向けたのかもしれない。
ジルは生に目覚めた。
兄を殺した罪を背負った以上、私は死ねない。
まだ終わりではない。
先ほどの階下での兄の叫び。
「母さん!父さん、なにやってるんだ!」
そして外での車の衝突、バイク事故。
人間を喰らう人間。
おぞましかった。
何もかもが恐ろしかった。
しかし、終わらせなければ。
ジルは銃を握り締め、階下の寝室へと歩き出した。
やらなければ、やられる。
部屋を出ようとしたそのとき、ジルは空腹を感じた。
突然の飢餓感。
ここしばらく何も口にしていないのだった。
動植物が死に絶えた今、食物はないのだ。
部屋でずっとうずくまっていたジルは、他の者よりは空腹感を感じていなかった。
しかしただいまの戦闘によって、急激に胃は目覚めたのだった。
飢餓感。
目の前には肉塊が転がっていた。先ほどまでは生きていた肉が。
だめよ。ジルは目を反らした。
しかし胃は求めていた。肉を喰わせろと唸った。そして。
ジルは喰らった。兄を。
人の肉を喰らうなんて嫌だ。そんなことをするくらいなら死んだ方がましだ。一瞬前まではそう思っていた。
一瞬後、一発の銃弾はすべてを変えていた。
どんなことをしてでも生きなければ。
骨だけを残し、あとはすべてきれいに平らげた。床に広がった血も飲み干した。
いくら空腹が過ぎていたとはいえ、人一人を女が一人で平らげてしまうなんて。しかしジルはそんなことに気づきもしない。
私は兄を食べてしまった。たった一人の兄を。いつでも優しかった兄を。
私は罪を背負ったのだ。兄の血と肉は私の体内にいつまでも罪として宿り続けるだろう。
罪を背負った人間は、その罪を償うために生きなければならない。
そう思った。
立ち上がるとジルは身体から溢れ出す生命力を感じた。これは。
私には兄がついているのだ。いつでも優しかった兄。そんな兄を喰らってしまうという罪を犯した私をそれでも支えてくれている。
そしてもうひとつ、私にはこの運命を変える銃がある。
ジルは再び歩き出す。
運命を変えるために。

ドアを叩く音。ドンドン。
その音は次第に速く強くなっていく。ドンドンドンドンドン。
音が止まる。そして、強烈なドーン。ドアがきしむ。いや、家全体が大きく揺らいだ。
間をおいて、またしても強烈なドーン。ドアにカギはかかっていない。
三回目の強烈なドーンでドアはぶち破られた。父タイラントだ。
ジルはその姿を見て思った。これは人間ではない。この部屋のドアは外からは引いて開くのだ。それをこのタイラントは押し破ったのだ。
タイラントと化した父の体はひとまわり大きくなっていた。
それは母を喰らったためなのか、それとも恐怖心からそう見えているだけなのか、ジルにはわからなかった。
ジルは迷わず父タイラントを撃った。
銃弾は父タイラントの胸に当たった。心臓に当たった。
タイラントは自分の胸を見た。しかし何事もなかったかのように再びジルにむかってきた。
そんなバカな。
ジルはもう三発タイラントの心臓に銃弾をぶち込んだ。
タイラントは止まらない。胸の辺りから血が滴り落ちているのに。
タイラントは右腕を振り上げた。
ジルは直感した。死ぬと。
振り下ろされる右腕を見て思った。兄さん、ごめん。いや、右腕など見えていなかった。次々とあらわれるフラッシュバックを見ていた。
強烈な銃声。
ジルは我に返った。フラッシュバックから戻ってきた。
目の前には巨大なタイラントがいた。その顔は、、その頭は吹き飛んでいた。首から大量の血が吹き出しており、その血はジルにも降りかかった。タイラントの身体が前のめりに倒れてきたので、ジルは横に飛びのいた。
「大丈夫かい?」
ドアの方を見ると、警官の制服を着た青年が立っていた。その手にはショットガンが握られていた。
「あなたは誰?」
「僕はクリス。銃声が聞こえたんで急いでこの部屋に駆けつけたんだ。」
「助けてくれてありがとう、、」
クリスは父タイラントのもとへしゃがみこんだ。
「なにするの?」
「食べるのさ。もったいないだろう?この世界にはもう食べ物がないんだから。」
「でも、、待って!、、それは私の父なの。母も含まれるわ。だから、、」
「そういうことか、、わかったよ。君に任せる。僕はここに来る途中で何体か食べてきてるから。食べ終わったら下に下りてきてくれ。待ってるから。」
そう言ってクリスは階下へ降りていった。
兄以外でこんな風に男の人と話すなんて初めて。ジルはそう思う間もなく父タイラントにかぶりついた。
父を喰らうのは兄を喰らう以上に罪悪感を感じた。しかし他人に喰われるのはまっぴらだった。それに、胃は求めていた。
ジルはタイラントの吹き飛んだ頭の肉片も含めてきれいに平らげた。
兄に続いて父、しかもその父はすでに母を喰らっていたので、ジルはこのひとときの間に三人の人間を平らげている。おかしくないか?しかしジルはそんなことに気が回らない。
私は兄に続いて父さんまでも食べてしまった。その体内にある母さんをも食べてしまった。私は家族全員を食べてしまった。
ジルは家族全員の命を罪を背負ったのだった。兄、父、母、みんなの血肉が体内に宿っている。
罪の意識とは裏腹に、強烈な生命力が溢れてくる。みんなの分まで生きなければ。絶対に死ねない。
ふと思い出して机の一番上の引き出しを開けた。カギの場所を忘れてしまったので強引に引き破った。
そして遺書をばらばらに引き裂いた。もうこんなものは必要ない。
舞い落ちる白い紙片は、この狭い部屋を出て行くジルの背中を祝福しているようだった。

兄さん、助けて!
クレアは狂った獣と化した人間たちが蠢く街の中をバイクで疾走していた。
一体のタイラントがバイクに飛びかかってきた。クレアはアクセルをふかし、タイラントを吹っ飛ばした。ヘルメットに血が付着する。
くそったれ!もう、なんなのよ!
振り返ると、吹っ飛んだタイラントに数体のタイラントが群がっていた。そして一斉に喰らい始めた。すると一体のタイラントが別の一体のタイラントを押しやった。押しやられたタイラントは奇声をあげながら押しやったタイラントの頭に殴りかかった。殴られたタイラントの頭は180度周り、クレアの方を向いた。
もううんざり!
バイクは疾走する。兄がいるはずの警察署を目指して。
兄さん、助けて!

「妹?」
「そう、クレアっていうんだけど、家に帰ったらいなくて、もしかしたら俺を探しに警察署にむかってるんじゃないかと思って。すれ違いになっちゃったみたい。やっと警察署を抜け出して来たってのに、また戻るなんて最悪だよ。」
「警察署は、そんなにひどいの?」
「強力な武器持ったやつや、格闘技に秀でたやつらがみんなタイラントになって殺し合いしてるんだぜ?まるで地獄だったよ。命からがらさ。」
「そうなの、、」
「でも今やどこもかしこも腹を空かせたタイラントでいっぱいだからな。どこも地獄さ」
クリスが運転するパトカーが急に進路を逸らした。歩道に乗り上げ、そこをさまよっていた一体のタイラントを吹っ飛ばした。ブティックのショーウインドウに激突する直前にパトカーは急停止した。
ジルはクリスの足の上からブレーキを踏んでいた。
運命を変える銃はまたしても運命を変えたのだった。窓ガラスに飛び散った血痕。最後の一発だった。
しかしジルは新たな武器を手にしていた。ショットガン。
これさえあれば。もう私は負けない。そして、、

数分後、パトカーは再び走り始めた。警察署を目指して。
パトカーが走り去った路上には、ボロボロになった警官制服と人骨だけが残されていた。
それでもジルは気づいていない。自分の異変に。


インドのとある山奥、古い寺院で一人の高僧が経を唱えている。
黄金の巨大な菩薩像を前に、そして十二の死体を背に。
敬虔なる仏教徒であった僧たちは人肉を喰わなかった。理性を失い殺し合うなんてことはしなかった。そして、飢えて死んだ。
若い十二人の弟子たちはみな死に、年老いた高僧だけが生き残った。なぜ老いぼれのわしだけが、、と高僧は思った。それはただ単に新陳代謝の違いだったが、つまり若者はより多くの肉を必要としていたのだが、それだけでは割り切れないものがあった。順番が違うだろう、と。
高僧は弟子たちの遺体を埋めてやろうと思ったが、死んだ土は硬く、掘ることができなかった。死んだ世界では死者を弔ってやることもできないのか、、高僧はそれでも、死者を無事に黄泉へと送り届けるために、せめて菩薩の見守る前で、経を聞かせてやろうとしたのだ。
その高僧の飢餓感も限界だった。経を詠む高僧の身体は痩せ細っていた。肋骨からあばらにかけて肉が、いや皮が張りついていた。腹と背が文字通りくっついていた。縮小した胃がその間に挟まっているけれども。
強烈な飢餓感の中で、高僧はなかば狂ったように経を唱えていた。それは死んだ弟子たちを送るというよりもむしろ、自分自身を黄泉へと送り届けるための呪文のようでもあった。
高僧は戦っていたのだ。強烈な飢餓感の中で。後ろには肉がたんまりとあるのだ。この飢餓感を帳消しにして余りあるほどに。空っぽになった腹を満たして溢れるほどに。しかしそんなことは決してしてはならない。神聖なる菩薩様の前で、苦楽を共にしてきた弟子たちを喰らうなど、してはならないのだ!
おかしくなりそうな頭を必死に抑えて、いや、すでにおかしくなっているのだが、高僧は経を詠むことによって気を紛らわせようとしていた。湧き上がる食欲に身体が震えだす。それを抑えるように経を詠む声は大きくなる。
「南無阿弥陀仏!南無阿弥陀仏ぅ!!!」
菩薩像の前で、一人の高僧が、強烈な飢餓感の中で、腹を満たせるほどの肉を背に、暴走しそうな食欲を必死で禁じながら、経を唱えている。これぞ宗教のあるべき姿!
「南無阿弥陀仏っ!!南無阿弥陀仏ーーーぅぅぁ!!!!」

一人の山賊が山の中をさまよっていた。強烈な飢餓感の中で。肉はないか、肉はないか、と。そして、とある寺院をみつけた。
寺院は静かだった。物音ひとつしなかった。山賊の足音だけが聞こえた。
何もないのだろうか、そう思いつつ山賊は御堂に足を踏み入れた。
そこには十三体の肉があった。実際、山賊にとっては数などどうでもよかった。たんまりの肉。貪りついた。
ものの数分で三体の肉を喰らい尽くした。山賊の腹は満たされ、ここでやっと一息入れた。実際、息をするのも忘れてひたすら喰っていたのだった。ここで初めて山賊は御堂を見渡した。そして、そこには黄金の巨大な菩薩像があった。光り輝く眼差しで山賊を見下ろしていた。山賊は、涙を流した。
「おれぁ、仏教なんてこれまでちっとも信じてこなかったけんども、菩薩様ぁ、おれぁ、たった今からあんた様を心から信じますだぁ。」
そう言って山賊は目の前にあった高僧の肉を喰らいはじめた。


警察署。
「ブレッド、準備できたぜ。」
耳にイヤホン、胸元にピンマイク、高感度レシーバーで連絡をとっている。
「よし、ジョーもOKか?」
「ばっちりよ」
「よし、エッジ、やれ」
「ラジャー。3、2、1、ファイヤー!」
爆発音。
〝食料庫〟のドアが爆破された。特殊部隊の装備をした三人、ブレッド、エッジ、ジョーが突入する。俊敏な動きで銃をかまえる。
食料庫には誰もいなかった。何もなかった。
「ダメ、冷蔵庫にもどこにも、食料なんて残ってないわ。」
「ちっ、ムダ足だったってわけか。いや、別にリーダーを責めてるわけじゃないぜ」
「わかってる。」
そのとき三人のイヤホンにノイズが入った。
「うわー!!!」
イヤホンから漏れてくる悲鳴。
「どうした!?ハマーD!」
銃声が聞こえてくる。そして音が途切れる。戦闘が起こっている。
「急ごう!」
三人は食料庫を飛び出した。

ブレッドたちはチームで行動していた。武器を持った戦闘員がひしめく警察署で生き残るには、手を組んだほうがよいと考えたのだ。メンバーは5人。リーダーのブレッド、速撃ちのエッジ、唯一女性のジョー、巨漢のハマーD、小柄なミラー。ハマーとミラーはブレッドたち三人が〝食料庫作戦〟で離れる間、武器庫を守っていた。ブレッドたちは早い段階で武器庫を占拠することに成功し、優位に戦うことができたのだった。ブレッドは優秀なリーダーだった。

ハマーDとミラーは銃を撃ちながら目の前の光景を信じられないでいる。銃弾をかわしているなんて。それに、、
敵が右腕を振り上げ、ジャンプして突っ込んできた。二人は左右にかわす。振り下ろされた右腕が武器弾薬の箱が積まれている金属製の棚を切り裂いた。そんな馬鹿な。敵は右を向いた。そしてミラーと目が合った。
右腕が奇妙に変形している。何か、鎌のような。その先端が鋭利な刃物のようにきらりと光った。
ハマーDは銃を撃てずにいた。もしまたかわされたらミラーに当たってしまう。

ブレッドは走っている。武器庫が先に見えてきた。ブレッドはマグナムを手にした。武器庫の金属製の扉は鋭利に切り取られていた。信じがたい光景だがブレッドの視線はすでにその先にあった。何者かが刃物を振り上げて小柄な男、おそらくミラーだろう、に襲いかかろうとしていた。
「動くな!」
ブレッドはすばやくマグナムを向けた。敵がこちらを向いた。
「おっと、ブレッドさんのおでましか」
その顔には見覚えがあった。
「カルロ!貴様、どうやって牢屋から抜け出したんだ!」
「今の俺に抜けられないものなどないぜ」
ブレッドはそのとき気づいた。カルロは刃物など手にしてはいない。その腕自体が、鋭利な刃物になっていた。鎌のような形、だが金属ではなく肉質でできていた。グロテスクな凶器。
「その腕は、いったい、、」
そのとき背後からジョーとエッジが入ってきた。二人もすばやく銃を向ける。
「五対一はさすがにきついか。ならば」
カルロはすばやく身を翻して、壁にある武器棚を切り裂いていった。弾薬が床に散らばる。ブレッドは銃を撃っている。エッジやジョーも銃を撃つ。しかし当たらない。カルロの動きは素早く、狙いを定めることができない。カルロに当たらない銃弾が弾薬に当たり、二次爆発を起こす。それが三次爆発を起こす。四方八方で爆発が起き、室内が煙にまみれる。まずい、
「撃ち方やめ!」
ブレッドは判断した。しかし、
「遅えよ」
ブレッドの耳元でカルロがささやく。その手には手榴弾が握られている。武器庫の床にも手榴弾が無数に転がっていた。
「みんな、逃げろ!」
手榴弾が投げ込まれる。音もなく。すべてがスローモーションに見える。エッジ、ジョーは駆け出している。ブレッドは武器庫の中をみつめている。ハマーDとミラーが走ってくる。そして、
大爆発。
時間が急速に回りだした。強烈な爆発音と閃光が炸裂した。ブレッドは二人に押し倒される形になった。耳を聾するほどの爆音、目を盲するほどの眩い光、さらに熱風と、細かい瓦礫が肌をかすめる。武器庫が大爆発を起こしていた。
ブレッドが顔を上げる。カルロがいた。
「武器破壊さ。俺にはもう武器なんていらないからな。それに、」
そのとき天井が揺れた。そして咆哮が聞こえてきた。地獄の底から響き渡るような、心に強烈な恐怖を浮かび上がらせる叫びだった。上の階からだ。
「教えてやる。警察署内にはもうお前らと俺、そしてさっきの叫び声の主、俺はキングタイラントと呼んでいるんだが、それくらいしか生き残っている者はいない。キングタイラントは化物だ。ベースが誰なのか面影もない。人間を喰うたびに巨大化してきたって感じだ。さすがの俺でも倒せそうにない。つまり、俺の食料はお前らだけってことだ。気をつけろよ。俺は背後から死角からお前らを襲ってやる。一人ずつな。死神のようにつけ回してやる。」
カルロの顔が炎で赤く照らされる。そして右腕の鎌が奇妙に光る。
カルロは煙の向こうに消えていった。
「ブレッド!」
ミラーが泣き出しそうな声を上げている。
「ハマーが、ハマーが、、」
ハマーDが横たわっている。ぴくりとも動かない。まるで死んだように。
「ハマーは俺をかばって、大爆発で、、」

恐怖の存在

2007年02月16日 | パラソル
9.11事件以後、米国議会が圧倒的多数でアフガニスタン爆撃に同意したのも、イラク攻撃に同意したのも、あおられた不安の持つ伝染力と金力と思考停止の集団心理の結果だった。

ヒトラーの右腕、軍事参謀だったヘルマン・ゲーリングの一九四五年の次の言葉は、支配者が不安をいかに活用するかを見事に語っている。
『もちろん人々は戦争を欲しない。しかし結局は国の指導者が政策を決定する。そして、人々をその政策に引きずりこむのは、実に簡単なことだ。
反対の声があろうがなかろうが、人々が政治指導者の望むようになる簡単な方法とは、、。国が攻撃されたと彼らに告げればいいだけだ。それでも戦争回避を主張する者たちには愛国心がないと批判すればよい。』

不安は支配の道具に使われる。

(森田ゆり『子どもが出会う犯罪と暴力―防犯対策の幻想』)


人間が最も行動的になるのは、その原動力はなにか。

ひとつは性欲である。セックスのためならどんなこともいとわないだろう。

そしてもうひとつは、生欲である。生きるための欲求。
人間は、あらゆる生物は、生命の危機に瀕したときに、最も活動的になる。身体機能が最大限に発揮される。

生命の危機、人間は恐怖を感じたときに、その脳はフル回転してあらゆる解決策を思考し、身体をアドレナリンが駆け巡りあらゆる行動に備える。

貧しい世界に住む人間は、恒常的に生命の危機にさらされているため、その行動力は凄まじい。
中国やインドの急速な経済発展は、若者のエネルギーの所産である。かつての日本もそうだった。
豊かな世界に住む人間は、生命の危機など感じることなく悠々と生活している。その行動力はなまけものである。
これでいいのだろうか?
日本の世界第二位の経済水準というのはもはや幻想である。

さて、レポートの締め切りが近づくと、あるいはテストの日にちが迫ってくると、私の行動力は最大になる。
ぬくぬくとしたローカロリーの大学生生活から一気に覚醒し、脳がフル回転し、レポートモード、テストモードになる。

それは私が生命の危機を感じているからだ。
レポート怖い、テスト怖い、、ガクガクブルブル、、、

本当は常に最大限の行動力を発揮していたいのだが、365日のなかで私が本当に生きているのは50日にも満たないかもしれない。
生命の危機とは無縁なぬくすぎる生活、、

心臓に銃口を突きつけて生きていけたなら。。

生死が人間を動かせる。。

そうそう、バレンタインデーにチョコをもらいましたか?あげましたか?

私はバレンタインデーのチョコにいい思い出をもっていない。
どうして女子たちはチョコレートばかりを渡すのだろうか?
みんながみんなチョコレートばかりもってきたら飽きるに決まってるだろうに。
最初の一個二個はおいしいおいしいと思って食べるけど、そっから先はだんだん飽きてきて、しまいにはチョコレート嫌いになってしまうよ。
チョコレートだけじゃなく、いろんなお菓子をそれぞれもってきてくれたらどれだけうれしいか、、。

ま、そんなわけで、山ほどのチョコレートを渡されてチョコ嫌いになってしまった幼き私は、それ以来女子にモテないようにふるまうようになったのでした。。

イマジネーション視覚論

2007年02月13日 | パラソル
何かイメージを思い浮かべる。
たとえば、リンゴのイメージを思い浮かべてみよう。(目を開けた状態で)
するとリンゴのイメージが浮かび上がる。
空中に浮かんでいるリンゴ、あるいは何かに乗っかっているリンゴかもしれない。
しかし、そのリンゴは本当に「見えている」のだろうか?
リンゴのイメージはあるけれど、目がそれを捉えているわけではない。
目では見えていないが、脳はそれを認識している、というべきか。

目で見るものと、脳で見るものがあるのではないか。
区別するために、目で見る方を「視る」、脳で見る方を「ミル」と表記することにする。

箱か何かの障害物の後ろをボールが飛び過ぎるとき、
○←■←○ ぴゅ~ (伝わるか?)
箱の後ろを通り過ぎる一瞬のボールは隠れているので目には視えていない。
しかしその軌道から、箱の後ろにあるボールのイメージを脳はミテイル。

ジェームス・ギブソンは光配列による直接知覚について論じたけれども、
人間は光配列にないものをもミテイルのではないだろうか。


・イメージは美しい

後姿の女性は美しい。あるいは、カサで顔が隠れている女性は美しい。
それは、その顔が視えないので脳がイメージをつくりあげるからである。
そして、脳は理想のイメージをつくりあげる。だからイメージは美しいのだ。

芸術について考えてみよう。
イメージは美しい。
視せる芸術ではなく、ミセル芸術こそが美しい芸術ではないだろうか。
イマジネーション視覚を呼び起こすような表現。

紙の上の絵の具の重なり自体ではなく、そこから引き出されるイメージ、それこそが真の美を呼び起こすのではないだろうか。
音楽でいうならば、鳴っていないはずの音が聴こえてくるような音表現。
聴かせる音楽からキカセル音楽へ。


・イマジネーション視覚が視覚になるとき

健常者がイメージを思い浮かべるとき、それはイメージだと認識してミテイル。
しかし、ある種の幻覚患者はイメージと実在のものとを区別できない。
イマジネーション視覚が視覚になるとき。
その目はイメージを視ているのだろうか?

イマジネーション視覚を視覚へと昇華させるものは一体なんなのだろうか?

レッツイマジン夢の世界。。

この件に関して参考となるような資料を知っていたらコメントかメールで教えてください。。

水樹奈々@横浜アリーナ

2007年02月12日 | 音楽
水樹奈々、それはある業界ではナンバーワンの人気を誇る歌手である、、

というわけで行ってきました横浜アリーナ!
日本武道館に続いてアリーナでもやってしまうのか!
それはすごいのか?すごいのだろう!

まったく未知数の状態で行った水樹奈々のLIVE。
会場に入っていきなりビックリ!
BGMがエアロスミス!!

Falling In Love (Is Hard On the Knees)
Pink
I Don't Want To Miss A Thing
Dude Looks Like A Lady

が流れてた。覚えてる範囲で。
エアロスミスが延々と。これは最近発売されたベストアルバム「エアロスミス濃縮極極ベスト」かもしれん。

声優のLIVEの前にエアロスミスが流れてるなんて、、
水樹奈々、あなどれない、、、

そんなわけではじまった水樹奈々のLIVE。
ベストアルバム「THE MUSEUM」をリリースしてのLIVEということで、ベストLIVEだったのでしょう。
その長さ4時間!
「L'Anniversary」よりすげえ!「CASE OF BOOWY」に肩を並べるなんて!

水樹奈々がナンバーワンである理由がわかった気がする。
アイドルではなく、ロックスターなのだ。
しかし、しかしである。
ロックの魂をもちつつ、アイドル然としているのだ!
リス耳なんかつけちゃうんだぜ?
それでいて、一人で4時間歌いきっちまうんだぜ?
最強だろ?

お客さんのサイリウムの使用量がハンパじゃないんだよね。
曲によって、青になったり、赤になったり、いったい何本ペンライトもってきたんですか?というくらい。
そのノリはハロプロのコンサートのような熱狂感があるのだけど、
それでいて、ハロプロオタク的な一般人が引いてしまうようなノリではなく、
ロックなノリなのだ。
言ってしまおう。
B'zよりもパワフルなノリなのだ!!!

ロック×アイドル=∞(無限大!!)
水樹奈々は最強のパフォーマーだった!!!

ベストアルバム買います。
2007年、7周年おめでとうございます、奈々様。。

七人のナナ。。

「ミラクル☆フライト」のサビメロが、なんか聴いたことあるな~と思ってたら、大黒摩季の「風になれ」(アルバム「POWER OF DREAMS」)のサビメロをテンポアップしてより爽快にした感じだ!と気づいて、
大黒摩季も今ヘビーローテーションです。。

セットリスト

Tear's Night
TRANSMIGRATION2007
パノラマ-Panorama-
Nocturne-revision-
ミラクル☆フライト
Violleta
still in the groove
それでも君を想い出すから-again-
光(アコースティック)
水中の青空(アコースティック)
Justice to Believe(MUSEUM STYLE)
ETERNAL BLAZE
SUPER GENERATION
アオイイロ
アノネ~まみむめ☆もがちょ~
POWER GATE
Heaven Knows
Crystal Letter
SECRET AMBITION(なのはSSOP)
suddnly~巡り合えて~
The place of happiness
WILD EYES
ひとつだけ誓えるなら

アンコール
残光のガイア
New Sensation
PROTECTION

ダブルアンコール
想い
POWER GATE(観客と合唱)

気が違ってるねえ

2007年02月11日 | フリージャム
熟年離婚が今ブームらしい。

だからって離婚するんじゃねえよマイマザーアンドファザー!!

めんどくさいからやめてほしい、、

キチガイの母に愛想を尽かせた父が別れたいと言ってるらしい。

父の気持ちもわからんでもないんですよ。
その結婚は完全に間違いだったでしょう。
うちのおかんは美人でもなければ器量良しでもない。
なぜ結婚したのか疑問に思うくらいです。

だけどね、
経済的に困るという超個人的な理由をもって却下していただきたい!

まあ俺は経済的に完全に自立しているのでわけないんですけど、
17歳の妹(セブンティーン!)が高校三年になって大学進学を控えているというのに離婚は困るやろ!です。
それよりもセブンティーンの精神面が心配なところです。
母が入院しとるせいでセブンティーンは高校生ながら家事全般を一手に担っているという、、まるで魔女が出てこない灰かぶり姫(別名シンデレラ)のような女子です。
非常に気まずいムードで父娘が二人きり、、
ドラマかよ!
笑えねえ、、

まあそんなわけで、横浜に居る私はそんな諸事情を電話通信のみで知るわけです。
極めて他人事
しかしなるようになったら俺に頼られても著しく困るので、

離婚は却下していただきたい

と、インターネットを見ることのない誰かさんに向けて書く
俺はいったい何者なのだろう、、
ナニレンジャーなんだろう、、、

、、、、、、、、、、

ボウケンジャーのラストがあんな感じになるとは、、
いや、ダイレンジャーのラストが非常にウケた。じいちゃんばあちゃんになった元ダイレンジャーに代わってその孫たちがダイレンジャーになるっていう、、

スーパー戦隊モノをウィキペディアで調べてみて思ったこと。
スーパー戦隊というルールのなかでどれだけの表現ができるのか、
「お約束」という制約があるなかで、どれだけオリジナル性を出せるか、革新的なことができるか、、、
不自由だからこそ発揮されるクリエイティビティがあると思う。
仮面ライダーシリーズにも同じことがいえるでしょう。

ライブマン・ザ・命のヒーロー。。

で、そんな(どんな?)キチガイな母が書いた本

ガラスの心

宣伝しろと言われたので宣伝してやったよ(なんて素直な息子さん。。)

数ヶ月ぶりに読んでみたけど、それなりにおもしろかったです。と営業用コメント。
でも38ページで700円は高いやろ~、と正直思う。
でもこれ自費出版(共同出版?)するのにウン十万かかっておるのでね、、
買いたいやつは買え!
とアクセルローズ気分で言い放つ。(でもアクセルは俺たちのCDを買うな!と言っていたのだけど、、)

その表紙に書いてある言葉。

精神病に負けたくない!
カウンセリングを気軽に受けて
がんばっていこう!


だったら負けんなや!がんばれや!
と言ってやりたいキチガイな54でした。。

ところで、おかんは脆くて壊れやすい心を「ガラスの心」と表現しておるけども、
だったら俺は「氷の心」だな、、と思うのでした。

冷たすぎる氷は割れない。。

念のために書いておきますが、
キチガイキチガイと書いてますが、決して差別用語としては使っておりません。
誰かを差別しようなどという低俗な感情を私は抱きませんので。

夢野久作「ドグラ・マグラ」でキチガイが連呼されていたので、その影響と思われます。
非常にポップな感じで使用してます。

そもそもたいていの人間がキチガイじゃねえか!
キチガイじゃない人間なんているのか?
完全にノーマルな人間が!?
人間なんてみんなどこかいびつで不完全で、

完全な人間なんていないんだよォ
が基本理念です。

Bouken Dreams On...