社会福祉法人さざなみ福祉会

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審議会報告案で声明

2008-12-12 11:34:14 | Weblog
2008年12月11日

社会保障審議会障害者部会報告(案)への声明
きょうされん
理事長 西村直

 12月10日の第48回社会保障審議会障害者部会(以下、社保審)において、「社会保障審議会障害者部会報告~障害者自立支援法施行後3年の見直しについて~(案)(以下、報告案)」が示され、最終報告の骨格が明らかになった。きょうされんは、障害者自立支援法(以下、自立支援法)を廃止し障害のある人の地域生活に真の安心と安定をもたらすための新たな立法体系を構築することが必要であるとの立場でかねてより提言を行ってきたが、改めて以下の声明を発表する。

一、報告案は利用者負担について応益負担を基本としながら、現行の軽減策を継続するべきであるとしている。しかしこれは、障害をたとえ1割あるいは数パーセントであっても本人や家族の責任に帰する障害自己責任論という誤った考え方を残すものであり、断じて認めるわけにはいかない。そもそも社保審において、全国の障害のある人と家族の「応益負担は撤廃してほしい」という切実な願いを正面からとらえ、その本質問題についての議論が尽くされたのかは甚だ疑問だ。障害者自立支援法訴訟が始まり応益負担の違憲性が司法の場で問われようとしている今、障害者権利条約が明示した合理的配慮義務を日本の障害者施策の隅々まで行き渡らせる立場からも、応益負担は廃止するべきである。

二、報告案は応益負担とのセットで導入された報酬の日払い方式について「利用者の個別のニーズに応じたサービスの選択が可能」であるからこれを維持し「報酬改定等において必要な措置を講じる」としている。しかしながら、事業所に深刻な経営難をもたらし利用者への支援を困難にしている日払い方式の矛盾は、多少、報酬を上げる程度では解消されない。報酬の日払い方式は、月払い方式に戻すべきである。

三、報告案では事業体系の在り方について、現行の体系を前提として「必要な見直しを実施すべきである」としている。しかし、障害のある人の実態や願いとは全く乖離した一般就労至上主義と訓練主義への傾倒は解消されず、また一般就労に近いところに重点的に予算を配分するために成果主義に基づいて過度の競争を煽るという仕掛けも残されたままである。このような基本問題を抱える現行の事業体系は廃止し、雇用行政と福祉行政を実質的に一本化させた上で、小規模作業所と地域活動支援センターを含めたすべての事業を対象とする新たな体系を構築するべきである。

四、報告案では障害程度区分について「各々の障害特性を反映したものに見直すべきである」としているが、医学モデルに基づいて本人の障害程度から必要な支援を決めるという根本的な問題は解決されていない。ICFや障害者権利条約といった国際水準を十分に踏まえ、社会生活モデルを基に環境要因やニーズに応じて必要な支援を導き出すという新たな仕組みを構築するべきである。

五、他にも論点はあるが、上記4点だけを見ても社保審における議論が自立支援法の枠内での検討に終始したことは明らかである。福田首相(当時)や麻生首相が、国会等において「抜本的な見直しが必要だ」と述べ、全国の障害のある人や家族、関係者は大きな期待を寄せたが、結果は「抜本的見直し」「解体的出直し」には程遠いものとなった。また、社保審での審議やヒアリングで出された意見の多くが報告案に反映されていないことは、最初から結論が決まっていたのではないかとの疑念さえ抱かせるものであり残念でならない。私たちは、自立支援法がもたらしたマイナスの影響を解消し障害のある人の地域生活をプラスに転じさせるために、引き続き力を尽くすことをあらためて決意し、ここに表明する。


以上

<問い合わせ先>  きょうされん(担当:事務局長 多田 薫)
TEL 03-5385-2223