社会福祉法人さざなみ福祉会

てんかんや精神障害者の人の作業所などを運営しています

福祉がつなぐ地域再生の挑戦

2012-11-15 15:50:38 | Weblog

福祉がつなぐ地域再生の挑戦
 ――自治体と歩む障害者福祉の可能性

クリエイツかもがわ


 
福祉がつなぐ地域再生の挑戦

黒田学・社会福祉法人よさのうみ福祉会 編著
A5判228頁 2012.7 発行
定価 2100円(本体価格2000円)
ISBN978-4-86342-091-5 C0036

民間会社倒産で閉鎖した宿泊保養型施設の指定管理を受け再生。新たな雇用を生み出し、半年で4万人が訪れ、地元の食材をふんだんに使ったランチバイキングには行列ができる──高齢化、過疎化で深刻な財政困難を抱える町の、福祉、農業、中小企業など住民自治の力を土台とした行政との協働の積極的な施策展開。地域再生、活性化の注目すべき先進的な取り組み。

●もくじ ●内容紹介

グラビア「リフレかやの里」で働く仲間たち
まえがき

第1部 「リフレかやの里」再生─よさのうみ福祉会と行政・地域の連携
プロローグ
1.丹後に障害者の働く場があれば─夢の芽
 峰山共同作業所とみねやま作業所
 刻み込まれた遺言
 よもぎ入浴剤
2.労働生活施設をつくる運動のなかで─夢の蕾
 養護学校づくりの運動を源流に
 よさのうみ福祉会の設立と認可施設化
 一四年にわたった労働生活施設をつくる運動
3.よさのうみ福祉会の新たな挑戦─夢の花
 法人事業の新展開
 ハウス栽培・農産加工への挑戦
 進み始めた行政との連携
4.障害がある人もない人も─夢の実
 功を奏した回り道
 「リフレかやの里」で働く
エピローグ

第2部 なぜいま行政と福祉法人との連携か(座談会)

野田川共同作業所の開設と行政の支援
 ─一九七九~九〇年代
労働生活施設づくりの運動と「七人の有志」
 ─九〇年代前半
見えない姿が見える姿に─九〇年代後半
障害者の実態から必要に迫られた事業展開
 ─二〇〇〇年代前半
与謝野町「安心どこでもプラン」の後押し
 ─二〇〇〇年代後半
なぜそこまでできるのか─与謝野町の「身の丈」  
「リフレかやの里」への挑戦─雇用の場をつくる
大きなチャンスに 
例のない地域共生型福祉施設
 ─元気な法人のスクラムで実現 
当事者の思いや願いが中心軸にある
 ─困難でも揺らがない理由 

第3部 よさのうみ福祉会と与謝野町
 ─障害者の発達保障と福祉のまちづくり─(黒田 学)

はじめに
 ─「学校づくりは地域づくり」、与謝の海養護学校
  開設を出発点に
1.与謝野町の障害者福祉
2.よさのうみ福祉会の歩みと特徴
3.障害者の発達保障と福祉のまちづくりへの期待
おわりに─本書の編集に関わって

資料
あとがき

 

まえがき

 社会福祉法人よさのうみ福祉会(以下「福祉会」)は一昨年二〇一〇年に設立三〇周年を迎えました。
 三〇年の節目に当たる年は、福祉会にとって二つの大きなプロジェクトが同時に始動する年となりました。一つは、前指定管理者(民間会社)の倒産により閉鎖されていた町立宿泊型保養施設「リフレかやの里」の再開へ向け、与謝野町から指定管理を受けたことです。いま一つは、当福祉会を含む与謝野町内の高齢、障害、医療・看護に係わる四つの法人が垣根を越えて連携し、町民の多面的な願いにもとづく地域共生型福祉施設整備の計画と実行でした。
 これらは、地域の障害のある人たちの新たな働く場の拡充であり、地域再生や活性化への町民の願いの反映であるだけに、法人理事会等での慎重な検討の結果、この二つの事業をともに推進することを決定し、取り組みを開始しました。
 レストラン、大浴場、ホテルをそなえた「リフレかやの里」は、昨年春から夏にかけて与謝野町による館内改修工事や農産加工所新築工事が行われ、京都府より障害者就労系事業所(就労継続A型・B型事業所)として指定を受け、一〇月にリニューアルオープンしました。再開後約半年余を経て来場者はすでに四万人を超え、障害者を含む三十数名のスタッフのもてなしと地元の食材をふんだんに使ったランチバイキングが好評を得ています。
 特別養護老人ホーム、在宅複合施設(デイサービス、ショートスティ、ホームヘルプ事業、高齢者専用住宅)、訪問看護ステーション、障害者就労系事業所からなる地域共生型福祉施設は、与謝野町加悦地区の中心地で始まった建設工事が、来年一月末完成に向けて急ピッチで進められています。共生型福祉施設内の障害者就労事業所は、特養・高齢者施設の給食下ごしらえ、配食サービス、カフェなどを担います。
 これらプロジェクト事業の展開と並行して、設立三〇周年記念事業の一環として、福祉会の歴史と事業の到達をまとめるため、「あゆみ編集委員会」を立ち上げ検討を進めてきました。この編集委員会には、福祉会の役員、評議員、管理者、職員をはじめ出版社ならびに福祉分野の学識経験者にも加わってもらいました。
 検討を重ねるなかで、出版社や学識経験者から「与謝野町で展開中の事業は、障害者福祉と自治体の連携による地域再生の典型例であり、これをテーマとした書籍にまとめ全国に発信してはどうか」との提案をいただきました。
 二つの大きなプロジェクトは、従来の障害者福祉事業からの発展であり、新たな峰を築くものと言えます。それは、民間の障害者福祉法人の自己努力だけでは決して成し遂げられるものでなく、町民本位の福祉行政をすすめる自治体の強力な支援、地域の理解と後押しがあってこそ実現したものです。
 今から三〇年、四〇年前は、障害者の働く場や暮らしの場がほとんどないなかで、障害当事者の切実な願いを何よりも大切に、地域の理解と支援の輪を広げ、粘り強い地域運動を通して行政のさまざまな支援を得てきました。このような地域を束ねる経験の蓄積、障害のある人たちの願いを実現するためのあくなき探求、新たな仕事や事業を次々と展開するパワー、障害者支援補助制度の活用などは、私たちが得意とする分野です。
 与謝野町は「福祉はまちづくりの原点であり、新たなまちおこしと振興の力」を町の基本姿勢に掲げ、「頑張る企業や起業を応援するまちづくり」の具体化として「与謝野町地域福祉空間整備『安心どこでもプラン』」を策定して、積極的な町独自施策を展開されてきました。この積み重ねが、今日の二大プロジェクト事業につながったと言えます。
 今日わが国は、長引く経済不況、大震災と原発事故、国民への公約を次々と裏切る政治と増税論議など国民のなかに強い閉塞感が漂い、とりわけ地方においては、少子高齢化や過疎化の進行がより深刻な現実をもたらしています。
 その一方で、次代に確かな未来を切り拓こうとする多様な取り組みが全国各地で展開されています。与謝野町も全国の自治体と同様に深刻な財政困難を抱える小さな町ですが、福祉、農業、中小企業などさまざまな分野で、住民自治の力の発展を土台とした自治体の積極的な施策が展開されています。
 民間の運動や事業と自治体、地域が連携することによって新たな可能性や条件が切り拓かれる事実を全国に紹介することで、このような視点での取り組みが全国に広がり、障害者福祉事業と地域再生がともに進むことを切に願い、本書の出版に至ったものです。
 本書の第1部「『リフレかやの里』再生」は冒頭、「リフレかやの里」で働く障害当事者の様子から始まります。そして、福祉会がどうしてこの「リフレかやの里」の指定管理を受けることになったのか、そもそもよさのうみ福祉会とはどのような組織なのかなど、読者の多くがもたれる疑問に答える形で物語風に展開しています。
 第2部は、「なぜ今行政と福祉法人の連携か」をテーマに、自治体の職員、福祉法人職員が学識経験者を交え、座談会で縦横に語っています。
 そして第3部は、黒田学立命館大学産業社会学部准教授による「よさのうみ福祉会と与謝野町─障害者の発達保障と福祉のまちづくり」と題した論文を掲載しています。
 全国各地で働く福祉職員や住民とともに歩む自治体労働者をはじめ、各地で地域再生に努力されている方々に、広く本書をお読みいただくことを願ってやみません。
 また、本書に関する率直な感想やご意見、ご批判を、ぜひお寄せください。私たちはそれを糧として、当地で「障害のある人もない人も、みんなが元気に安心して暮らせる地域づくり」を、引き続き進めたいと考えています。

二〇一二年六月

社会福祉法人よさのうみ福祉会
理事長 廣瀬公二

 

わたしたちは10・31を忘れまい

2012-11-01 14:22:49 | Weblog
わたしたちは10・31を忘れまい
-第36次国会請願署名・募金運動全国キャンペーンのスタートにあたって-
 
2012年10月31日
きょうされん理事長  西 村  直
 
 7年前の2005年10月31日、障害者自立支援法が障害のある人々の声を無視して強行的に成立した。
わたしたちは決してあの日を忘れまい。
 
 それから一年後の2006年10月31日、「出直してよ!障害者自立支援法 10・31大フォーラム」に15000人が集い、それから毎年のように幅広い障害団体がこのフォーラムに結集している。
 2009年の大フォーラムでは、当時の厚生労働大臣が、この集会に参加した大勢の面前で自立支援法の「廃止」を約束した。
 わたしたちは、その言葉を決して忘れまい。
 
 自立支援法違憲訴訟団との基本合意を反故にし、内閣府のもと総合福祉部会がまとめた「骨格提言」を蔑ろにし、自らの公約のほとんどを放棄した政権は今、その支持基盤を失いつつある。
 しかし、歴史の歯車は後戻りができない。
 だから今、わたしたちは障害者権利条約という羅針盤に従い、障害のある人々が障害のない人々と平等に諸権利を享受できる社会づくりに向けて、多くの諸団体との結びつきと市民の支援の広がりを築くため、新たな一歩をこの日、10月31日から歩み始めようではないか。
 
 「自立支援法」でもその焼き直しでもない、「骨格提言」に基づく法制実現への歩みが今日から始まる。