社会福祉法人さざなみ福祉会

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きょうされん声明要旨

2017-03-22 09:10:22 | Weblog

見解:「地域包括ケアシステム強化法案」の問題点と障害福祉への影響(概要版)きょうされん 2017年3月21日

1.国民・当事者不在のまま、突然提案された「地域包括ケアシステム強化法案」

・「地域包括ケア強化法案」は、介護保険法見直し案の他に、30の法律の見直しが一括提案されたもの。介護保険にとどまらず、国民の生活と福祉全般に深く関わる法案である。

・「社会的孤立」や「制度の狭間」の背景には、縦割りの法律や制度も要因にあるが、社会保障全体に対する財政抑制などがあり、こうした問題には触れていない。

・子ども、高齢者、生活困窮者など多くの人に影響する法律を、一括で提案し、短期間に国会を通過させようというのは、あまりに乱暴。

・障害者自立支援法違憲訴訟団と国(厚労省)が結んだ「基本合意」では、障害者自立支援法を実態調査や障害者の意見を十分に踏まえることなく拙速に施行したことを、国(厚労省)は反省を表明している。

・にもかかわらず、国民や当事者に一切の説明のないまま法案を提出した政府・厚労省に対して、深い疑問と疑念を抱かざるを得ない。

 

2.「3割の応益負担」導入は介護サービスを本当に充実できるのか

・いま日本では2週間に1度“介護殺人”が発生。(NHK調べ)

・2015年8月の2割負担導入、要支援1・2の生活支援の介護保険給付からの除外は、高齢者や家族、自治体に大きな影響をもたらした。

・しかし、介護保険法の見直し案は「3割負担」を提案し、課税世帯の利用者負担上限を月44,400円にすることを盛り込んでいる。

・ケアプランの「1割負担」の導入、要介護1・2の人の介護保険給付からの除外、福祉用具の全額自己負担などは、「見送り」であり、いずれ提案される(社会保障審議会・介護保険部会の最終のまとめ)。

・見直し案には、778カ所もの「政・省令で定める」が規定されているため、介護サービスの水準・内容は、法案だけで判断できない。

 

3.新たに盛り込まれた「共生型サービス」とは

・「共生型サービス」は、介護保険法・障害者総合支援法・児童福祉法のそれぞれに条文が盛り込まれ、1カ所の事業所で3つの法律にまたがった複数のサービスを提供できる。その対象は、以下の通り。

・障害者総合支援法は、すべての介護給付・訓練等給付の15事業。

・児童福祉法は、すべての障害児通所給付の5事業

・介護保険法は、介護給付の居宅サービス(12事業)、地域密着型サービス(9事業)、予防給付の介護予防サービス(10事業)、地域密着型介護予防サービス(3事業)で、合計34事業。つまり、介護保険の施設サービスの特別養護老人ホームや介護老人保健施設などを除いた居宅、通所、ショートステイ、グループホームなど。

・ところが「共生型サービス」の具体的なあり方は、厚労省令にもとづく自治体条例で定めるため、法案では評価・判断できない。

・利用者負担と負担上限額は、すでに明確である。

・障害者福祉は、課税世帯の負担上限は月37,200円となっている。

・介護保険は、課税世帯を月44,400円にすることが提案されている。

 

4.「共生型サービス」の問題点

・「共生型サービス」は、「サービスを効果的・効率的に提供するための生産性の向上」が出発点であり、安上がりな人員体制で複合的なニーズに対応する、という厚生労働省の問題意識が読み取れる。

・「共生型サービス」の制度化は、遅々として整備のすすまない地域包括ケアシステム確立を促進するためという問題意識も強く出ている。

・利用者負担問題においても、介護・福祉・児童と別々の法制度で利用する人たちが同一の事業所で一緒に活動していながら、制度間によって、また収入や世帯の状況に応じて負担額が異なるという不公平感が生じる。

 

5.私たちの求める福祉・介護の改革の方向性

・「地域包括ケア強化法案」のめざす社会像は、「地域共生社会」ではなく、公的な社会保障の薄い社会である。

・現時点では各分野について質量の両面から基盤を拡充するべきであり、それを抜きにした「我が事・丸ごと」は支援内容に混乱をもたらす。

①介護保険法は、「介護の社会化」や「公的介護保障の充実」を謳った原点に戻るための改革をすすめるべき。

②「共生型サ-ビス」は、「効率化」や「生産性の向上」から考えるべきではない。

③福祉・介護の人材の確保については、低賃金かつ劣悪な労働条件を解決するなど、問題の根本要因を解決するべき。

④「基本合意」で確認した「応益負担の廃止」を、介護保険にもひろげていく視点が大切。介護保険制度そのものの全面的な総括をするべき。

⑤財政抑制を出発点とした消極的な視点ではなく、「同年代の他の者との平等」の生活水準を指標に、法律・制度、支援のあり方を検討すべき。

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