何を見ても何かを思い出す

He who laughs last laughs best

サミットは一年にして成らず

2015-06-08 13:00:24 | ニュース
「お伊勢さんの七賢、か」で「昨年伊勢神宮を参拝した折の三重県警のスマートな警備を思い出せば、これから一年もあれば更に磨きがかかり万全の準備が整うとは思うが、なにせPAC3までお出ましになるのがサミットのサミットたる所以? 地元警察は大変だ。」と書いたが、想像以上に三重県警は大変だという記事を見つけた。

<三重、サミットで三重苦 警備宿泊先やノウハウ不足>2015年6月7日9時22分 日刊スポーツより一部引用
伊勢志摩サミットの警備はどうする? 来年の主要国首脳会議(サミット)の開催地に決まった三重県志摩市の賢島では、2万人以上の警備態勢が必要。他の都道府県警からの応援組の宿泊先など、問題は山積みだ。三重県警には大型国際会議の警備経験がなく、不安を隠せない。サミットの経済波及効果は、県内だけで約130億円、全国では約510億円に上るとの試算がまとまった。
イスラム過激派のテロが頻発し世界情勢が緊迫する中、伊勢志摩サミットの警備態勢は2万人を超えるとみられる。2000年の沖縄サミットでは約2万2000人、08年の北海道・洞爺湖サミットでは約2万1000人の警備態勢が組まれた。三重県警の人員は約3000人で、ほとんどを他の都道府県警の応援に頼ることになる。
しかし応援組の宿泊先を十分に確保できない恐れがあり、今後、周辺の体育館や公民館で宿泊可能か調査する。他県で宿泊して賢島に通勤してもらうことも検討する。食事の調達もまだ白紙の状態だ。
三重県警は皇族や閣僚の伊勢神宮参拝の警護を担うものの、大型国際会議の経験は初めて。県警幹部は「うちのような所帯ではノウハウなんてない。解決しなければならない問題ばかり。あと1年しかないが、何とかするしかない」と気を引き締めていた。
主会場になる予定の賢島の周囲は約7キロ、半島と結ぶ橋は「賢島橋」と「賢島大橋」の2つだけ。警備のしやすさで開催地に選ばれたが、県警幹部は「半島側とは目と鼻の先。海や空からの危険もある。単に橋を守ればいいわけじゃない」と指摘する。
会議場の有力候補は沿岸部の橋のたもとにあり、小型無人機「ドローン」の襲来のほか、対岸からの狙撃も想定しなければならない。




この記事を読むと「警官の紋章」(佐々木譲)にある警察幹部の訓示が、小説の中の作り事とは思えなくなってくる。
これは洞爺湖サミットを三か月後に控えた道警の数日を描いた作品。
2008年サミットが洞爺湖と決定した瞬間から1年かかって道警が練り上げた警備計画が警察庁に承認され、全国の警察関係組織が一斉にサミット・シフトになるのがサミットの三か月前。
この時期に本番のリハーサルの意味合いをもって行われる「サミット特別警備結団式」(警察庁長官・警視総監国家公安委員長・各県警からの応援責任者・内閣府特命担当大臣が一堂に集う)に向け道警幹部は神経を尖らせるが、サミットシフトを厳しく敷いている最中でも、町では当然のことながらストーカー事件も中古車密輸事件も起っている。一見無関係に思える事件がサミット特別警備結団式へと収斂していくというストーリー展開の都合の良さはともかく、警備関係者が如何にサミット一筋に傾注していくかがよく分かる話である。

道警本部の本部長が訓示を飛ばす。
「洞爺湖サミットには警視庁公安部を始めとして、各県警から総勢1万五千の応援が来ることになっているが、我が北海道警察本部は、これらの応援の関係機関にテロ対策を任せきりにしてはならない。~中略~北海道サミットは、いわば北海道警察の威信と名誉がかかった舞台であり、ここでの失敗は許されない。失敗は、世界の危機に直接つながるものである。我々の肩には、世界の平和と安全が直接かかってくるのだと考えて、少しも大仰ではないのだ。9・11事件を今一度思い起こして欲しい。だから北海道警察全部局が、本日いまこの瞬間から洞爺湖サミット体制に入って、テロを未然に阻止し、サミット成功の一助とならねばならないのである。」

刑事課長も訓示を飛ばす。
「今日から我が刑事課も、サミット終了まで完全に対テロ・シフトとなる。いいか、万引き犯が百人出ようと、国家と世界の平和を脅かすことはない。しかし、テロリストは一人で世界を揺るがす。ことの軽重を間違えるな。サミットが終わるまでの三か月間、留置場は空けておけ。基本的に、あとまわしにできる逮捕・勾留はサミットが終わるまで待て。現行犯逮捕以外に、微罪の犯罪者には拘泥するな。~以下訓示続く」

昨年伊勢神宮周辺を警備していた警察官は皆さんスマートだったが、これから一年かけ警備計画を立て、(本番に見立てた)結団式を経て、その時を迎えることとなる。
警察からすれば微罪でしかない万引きもストーカーも市民にとっては一大事であると考えれば、サミットが地元に与える影響は経済効果だけでは計れないシワ寄せもありそうだが、彼の地は神のおわすところ。
官民挙げての協力で経済的にも警備面でもサミットが成功することを願っている。


サミットといえば、1993年の東京サミットでの雅子妃殿下の鮮烈な外交デビューを思い出す。
本来なら晩餐会会場入り口で各国大統領・首相をお出迎えになるのは両陛下であるところ、ご成婚から一月の5か国語に通じた元外交官である雅子妃殿下の外交デビューの日とあって、新婚ほやほやの皇太子ご夫妻がお出迎えに立たれるという粋な計らいがなされたのだ。
英語・フランス語・ドイツ語・ロシア語に通じておられる雅子妃殿下が、相手国の母国語でお出迎えになられる御姿は、皇室の新しい時代を感じさせ、期待で心躍る想いであった。
あれから、どれほどの涙の日々を過ごされたかは想像すべくもないが、昨年の秋のオランダ国王ご夫妻を迎えての晩餐会に続き先日はフィリピン大統領歓迎晩餐会にも出席されるまでに御回復されている。

皇室外交は100人の大使にも勝るというが、東京サミットで雅子妃殿下と話すエリツィン元大統領の嬉しそうな顔や、雅子妃殿下と話すオランダ外相の充実した表情を思い出すと、日本にためにも雅子妃殿下が培われた才能が活かされる場が設けられることを強く願っている。

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