検証・電力システムに関する改革方針

「自然エネルギーですべての電力をまかなう町」の第2部です。

企画倒れ 連載小説294

2013年05月22日 | 第2部-小説
「無理ですか! 分かりました。ではまた機会がありましたらご協力をお願いします」
 電話を置いた将太は深いため息をついた。電話をしていたのは自然エネルギー推進協議会に委員として就任してもらいたいと考えていた町民だった。3月初旬、将太は大平町長、松本副町長と自然エネルギー推進体制を話し合ったとき、町民参加の協議会設置を提案した。協議会は意見を述べるだけでなく、推進の諸活動を実際にすることとした。
 というのも従前の各種協議会は集まって、行政から取り組みや今後の施策重点の報告を受け、それに対して各人が意見を言って散会するというものだった。これでは町民あげての取り組みにならない。そこで将太が提案したのは「夏祭り実行委員会」のような稼動きをする協議会だった。

 提案は町長も賛成し、議会に報告する原案を将太が作成することになった。新鮮でやる気のある人に参加してもらうため委員の若干名を公募する案も了承された。
 松本副町長は議会の承認を受けて、協議会ができない事態が発生すると大変なことになる。議会報告する前に人選を固めて欲しいと求めた。将太は人選は議会の承認を受けて取り組むものと考えていた。だがそれではダメだということになり、松本の力も借りて、委員になって欲しい人をリストアップし、電話や訪問をして委員就任の要請をしてきた。

 商工会や森林組合、区長会、青年・婦人団体は定番メンバーとして就任してもらう承諾は得たが太陽光発電を設置した人、あるいは自然エネルギー推進に関心を寄せている人はだれ1人、委員就任を受けてくれなかった。
「とても無理です」と次々と断られた。理由は「時間が取れない」だった。
 朝、早く家を出て、夜遅く帰ってくる。休日は家の仕事、畑の仕事があり、余裕がないと言う。
 そして今もまた、断られたのだ。

 これでは企画倒れになる。電話を置いた将太は「まいったなあ」と背もたれ椅子に体を預けると両腕をのばしながらつぶやいた。そこに松本副町長が入ってきた。