検証・電力システムに関する改革方針

「自然エネルギーですべての電力をまかなう町」の第2部です。

高いハードル 連載小説290

2013年05月17日 | 第2部-小説
 将太はパソコンに向かって、自然エネルギーですべての電力をまかなう工程表をみていた。町長が議会に4年後に100%自給を達成させると提案した時の工程表だった。
 占部町全体の消費電力は年間576万kwhだった。マイクロ水力発電と太陽光発電でまかなう計画だ。試算は出力100kwの流れ込み式水力発電4基を町が水利権を持っている2級河川に設置。太陽光発電パネルは町所有地7カ所に合計出力1000kW、民間で1500kWを普及する。この水力400kWと太陽光発電2500kWで年間600万kwの電力量を生産できる。

 地方債起債については県と相談してほぼ認可されるめどはある。問題は民間で設置して欲しい1500kWの太陽光発電だ。試算では売電が有利な出力10kW以上を考えた。都市の一般住宅で10kWの太陽光発電パネルの設置は無理だが占部町ではそのスペースを持つ家は多い。大平町長が個別訪問をした効果で400kWの太陽光発電ができた。これ自体、驚異的な普及だと思う。

 しかしあと1100kWはめどがない。1軒10kWとして110軒の家に設置してもらう必要がある。1400軒あまりが町の全戸数だ。その中で110軒はかなりハードルが高い。なにはともあれと、将太は意識調査をかねて町民訪問をしたのだ。
 その結果は、考えに甘さと実情無視があることが浮き彫りになった。大平町長はその問題を乗り越えて太陽光発電パネル普及を「町民運動まで高めよう」と言った。その方策を考えるのは将太以外にいない。「分かりました」と答えた。

 パソコンに向かい、書いては削除し、書いては削除する。目が疲れしょぼしょぼした。こりはじめた肩をもみながら、こんな時はあの人たちに意見を聞くのが良いと思った。
「相談したいことがあります」
電話をかけた相手は京香だった。