検証・電力システムに関する改革方針

「自然エネルギーですべての電力をまかなう町」の第2部です。

屋上に代わる場所 連載小説284

2013年05月10日 | 第2部-小説
 大平町長に報告する前、副町長室で松本と将太は報告書の取り扱いを協議していた。太陽光発電パネルを設置できるのは給食センターのわずか1か所しかないというのは2人にとってショックだった。この結果を町長に報告するだけでは子どもの使いになってしまう。それでは町長も納得しないだろうし我々の計画も出鼻をくじかれた感じになる。
「なにかよい知恵はないでしょうか」

 語る松本はすっかり弱気になっていると将太は思った。2人は報告書を前にしてしばし沈黙した。
「大丈夫です。副町長」
と将太が静寂をやぶった。
「何か考えが浮かんだ!」
「ええ、屋上や屋根でなくてもいいんですよ副町長」
将太は可笑しさをこらえながら言う。松本はよく理解できない。
「屋上以外、太陽光発電パネルはどこに乗せることができる・・・・」と言った松本もはたと気づいて言った。

「そうか、空き地や山の斜面があるか」
「そうです。農地はたとえ耕作放棄地であっても太陽光発電パネルの設置は目的外使用になるから難しいが農地指定を受けていない空き地、山林は設置できます。太陽が照る場所であればガケ地も大丈夫です。しかもです。そこは建物の屋根じゃないから面積が広い。40kW、50kWを設置できる場所は結構あります。ほら役所の裏山の斜面。川に面して道はないがなだらかな南向き斜面があるじゃないですか。昔、農家がつり橋をかけて果樹栽培で切り開いた、今は相続放棄で町有財産になっているとあなたが以前、私に説明したことがある斜面」

 将太の喜々とした話に松本は大きくうなずいた。
頭に思い出しただけで設置可能な町所有地は他にもあった。屋上以外に設置可能な場所があることを確認すると、届いたばかりの調査報告書を取り急ぎ大平町長に報告することにしたのだ。