検証・電力システムに関する改革方針

「自然エネルギーですべての電力をまかなう町」の第2部です。

酔いが一瞬にして消える 連載小説287

2013年05月14日 | 第2部-小説
「お前、泣き上戸だったか?」
町長になった公平は悪がき仲間に言うように松本に言った。
「お前の話に職員はみんな喜んでいたんだぞ。この数年、俺たちどれほどがまんしてきたか。職員が定年退職すると補充もなくそのまま。残った者の仕事量は増え、給料は下がる。だがそれは我慢できる。しかし町のために何もできない。寂れていく町をただ見ているだけ。これほど辛いことはない。公平!分かるかこの気持ち」
「分かる!」
「本当か!」
「ああ」

 2人のやりとりから町長と副町長の主従は消えていた。松本は酔っ払いのようにはずんでいた。酒はまだ猪口に2杯ほどしか飲んでいない。酒の勢いでないことは確かだ。
 3月議会が無事に終わったのは良かった。将太の思いはその程度だった。むしろ議員から質問が出なかったことが田舎の議会はこんな感じかと思っていた。自分のそうした気持ちに将太は、自分は第三者だと思った。松本は当事者の感情で3月議会に対応してきたからその成果を手放しで喜んでいる。議員に感謝している。それに対して将太は、自分は仕事としてがんばったに過ぎない。

 そうだとすると、質問をしなかった議員に対する評価は完全に的外れをしているのではないかと思った。酔いが一瞬にして消えるのを感じた