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佐藤晃氏の『帝国海軍が日本を破滅させた』を読む!

2006年08月08日 | Weblog
■『太平洋に消えた勝機』に続く話題作だが!
 8月5~6日の両日、佐藤晃氏の『帝国海軍が日本を破滅させた』(上)、同(下)を読みました。前作『太平洋に消えた勝機』で話題を提供した著者の続作です。
 旧陸軍士官学校出身の著者による批判の舌鋒はすさまじく、旧帝国海軍には、①作戦知識が欠如している、②国家総力戦の認識がない、③情報重視の観念がない、④後方兵站が疎か、⑤戦術も拙劣とのことで、まったくのシロウト集団扱いです。
 「海軍憎し」の感が先にあり、貴方に言われたくない、と思う人もいるでしょう。しかし、戦後の日本が、著者が言うように「陸軍悪玉論・海軍善玉論」の雰囲気に毒されていたことも事実のように思います。
 旧海軍が、①日露戦争後の予算確保のためアメリカを仮想敵国に設定した戦略の間違い、②太平洋戦争のほとんどの海戦で米軍に破れている事実、③数少ない勝利の戦いを十分に活かせない無能な指揮官の存在、との著者の指摘はその通りでしょう。
■戦略と精神力でも負けた日本
 太平洋戦争(大東亜戦争)は、「アメリカの物量と科学技術に敗れた」という一面もありますが、同時に「戦略と精神力」でも負けていたように思えます。そしてその背景には、「日本の貧しさと民主主義の欠如」があったと思います。
 詳細は略しますが、日本の貧弱な経済・産業の現実が、海軍指揮官をして一艘でも船を失いたくないとの過度の「艦隊保全主義」や「一発必中の砲は、百発一中の砲に勝る」という馬鹿げた精神論に堕する要因となったのでしょう。戦争に必要なものは、戦略と合理的な精神であり、それを生み出すのは経済的豊かさと心のゆとりであって、「大和魂」ではないのです。
 さて佐藤晃氏の『帝国海軍が日本を破滅させた』ですが、反発と不快感を感じるところもありますが、同時に「旧海軍には戦略と合理的な意識・精神が欠如していた」ことを教えてくれる本です。風説(海軍善玉論)に惑わされることなく、事実を見極めることの大切さを感じました。
                                 以上