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心中おサトリ申し上げます 未上夕二

7年前に本屋さんでサイン本を見つけて購入、そのまま未読だった一冊。「野生時代フロンティア文学賞」という賞の受賞作とのこと。毎日心にもないセールストークと上司の中身の薄いお花畑ポエムのような訓示ばかりを言ったり聞いたりしているうちにまともな会話ができなくなってしまったセールスマンの主人公が、何とか自分の言葉を取り戻そうと奮闘するファンタジーだ。それを手助けするのが日本の昔話に出てくる人の心を読むことができる「サトリ」という妖怪。奇妙な設定と、日常生活、自己啓発本、ネットの書き込みなどで耳にする当たり障りのない空虚な言葉への痛烈な揶揄で貫かれた展開を楽しく堪能した。この著者が本作の後どのような本を出しているのかネットで調べてみたら2冊ほどヒット。どちらもお仕事小説のようで読んでみたくなった。(「心中おサトリ申し上げます」 未上夕二、角川書店)
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11文字の檻 青崎有吾

書評誌で絶賛されていた中編「恋澤姉妹」を含む短編集。実際の事件にヒントを得たミステリー、人気漫画のスピンオフ、純粋な密室もの、改変SFなどバラエティに富んだ内容で、著者の作品の様々な面白さを満喫した。「恋澤姉妹」は別のアンソロジーに収録されて話題になっていた作品で、どうやって手に入れたら良いかわからなかったところ、偶然本書に収録されていてびっくり。中編とはいえ同じ作品が短期間に違う本に収録されるということで、出版社の粋な計らいのようなものを感じて嬉しかった。内容は今までに読んだことのないスリリングな展開で、好き嫌いはあるかもしれないが、著者の底知れないストーリーテラーとしての凄さに脱帽。(「11文字の檻」 青崎有吾、創元推理文庫)
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