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パフォーマンス 新春18きっぷ ダメじゃん小出

横浜にぎわい座での公演を欠かさず聴いているダメじゃん小出の独演会。いつもながら、硬い座席でお尻が痛くなるのも忘れるあっという間の2時間だった。今回はいつもとはやや趣きが違い、ミュージックソーやニュースレポート形式がなく、最初から最後まで話芸で楽しませるという感じ。特に中入り後のクモハ12撮影会報告と演者自身の自叙伝風の語りは唯一無二の圧巻の面白さ。来月のパフォーマンスもチケット購入済みなので今から楽しみだ。

①鉄道体験レポート 伊豆急大雄山線(金太郎の里)
②保護者面談 乗り鉄くん
中入り
③クモハ12撮影会報告(ク:運転台あり,モ:モーター,ハ:3等車)
④鉄道ファン小出自叙伝
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宙わたる教室 伊与原新

大好きな著者の最新作。様々な事情で定時制高校に通う年齢も来歴もバラバラの生徒4人が、指導の先生に促されて科学部を創設、色々な困難を乗り越えながら学会で火星のクレーターについての発表を行うまでを描く科学小説だ。NASAの火星探査車「オポチュニティ」の話、読み書きが困難な人向けの特殊なフォントの話、まだ詳細が解明されていない独特の形状をした火星の「ランバートクレーター」の話など、幅広いジャンルの科学トリビアを織り込みながらの展開で、著者ならではの面白さを堪能した。あとがきを読むと、かなりの部分が実話に沿った内容とのことでとてもびっくりした。著者の本をネットで調べてみたら単著一冊とアンソロジーに収録されている短編数編以外は全部読んでいた。これからも著者の本は残らず読んでいきたいと思った。(「宙わたる教室」 伊与原新、文藝春秋)
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宇宙から考えてみる「生命とは何か?」入門 松尾太郎

太陽系外惑星の観測を専門とする研究者による宇宙科学の入門書。内容の大半は「系外惑星の観測」に関する進歩の歴史と最新の研究についてだが、その研究の進歩によって解明に近づくことが期待されているのが「地球外生命体の存在」ということで、話は生物学や生命とは何かという問題にについても及ぶのが本書の特徴だ。第1章は地動説の登場から地球型(岩石型)系外惑星の存在が明らかになるまでの宇宙科学の進歩について、第2章はアリストテレス以降の博物学や生物学の進歩について、最終章は系外惑星のより精緻な観測を狙う技術進歩という構成で、それらを通じて「地球外生命は存在するか」という問いの解明に近づこうとする研究者たちの努力が描かれている。地球外知性体との接触や交流などは多分にラッキーな偶然が必要だと思うが、地球外生命体の存在の解明はもしかしたら地道な研究の積み重ねでたどり着けるかもしれないとの期待を抱かせる。教科書的な記述が多い本書だが、全編を通じて地球外生命体の発見を目指す研究者の熱意が伝わってきた。(「宇宙から考えてみる「生命とは何か?」入門」 松尾太郎、河出書房新社)
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可燃物 米澤穂信

昨年のミステリー関連の賞を総なめにした5編の短編が収められた話題作。主人公の警部が、山で遭難した死体に他殺の跡があるのだが凶器が見つからない事件、午前3時のありふれた交通事故だが何故か目撃者が多すぎる不思議な事件、命の恩人を殺してしまったと自首してきた被疑者が何故か動機を黙秘している事件、生ごみ収集日に頻発する放火事件、謎の多いファミレス立てこもり事件などを鋭い洞察で次々に解決していくそのバラエティさが大きな魅力だが、それ以上に簡潔に書き込まれた警察内部のやりとりのリアリティがワクワクするほど面白い。軽い学園ミステリーから歴史ミステリーまで幅広い話題作を連発する著者の今後が更に楽しみになった。(「可燃物」 米澤穂信、文藝春秋社)
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存在のすべてを 塩田武士

書評誌の2023年ベストテンで満場一致で一位に輝いた作品。著者の本は3冊目だが、既読の2冊とも非常に重厚で密度の高い内容だったので読む前から期待が高まる。物語は、神奈川県内で同時に2件の児童誘拐事件が勃発し、それに対処する警察官たちの奮闘が描かれた長めの序章から始まる。この段階でその緻密な描写とスリリングな展開に驚き、かつ何だかものすごい話だと感じて引き込まてしまった。続く本章では、それから30年後、事件関係者が少しずつ減っていく中で、ある出来事をきっかけにして、事件に関わった新聞記者と警察関係者の生き残りが大きな謎を残したまま未解決に終わった誘拐事件の真相に迫るべく奮闘する姿が描かれていく。一方それと並行して、ある画廊の父親を持つ女性の少女時代からの話が語られるのだが、これらの話がどのように結びついていくのかが読者の興味を引っ張っていく。この辺りの語りも濃厚かつ緻密だ。自分としては、話の舞台が神奈川県という地元であること、日本の洋画画壇のおぞましい因習などが事件の重要な要素になっていることなどもあり、話の細部に至るまで最高に面白いと感じた。(「存在のすべてを」 塩田武士、朝日新聞出版)
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友が消えた夏 門前典之

初めて読む作家。20年以上のキャリアを持つ人気作家とのことながら読む機会がなく、今回書評誌の今年の国内ミステリーランキングで文庫部門第1位で絶賛されていたのでネットで取り寄せて読んでみた。読み始めると、ある大学の演劇部の合宿で起きる凄惨な連続殺人、たまたま乗り合わせたタクシーに拉致された女性の話、一人暮らしの老女が射殺される事件など、どういう繋がりがあるのか全く見当のつかない事件が交互に語られていき、不可思議さが募るばかり。次第に事件の全容が分かっていくが、その動機の異常さ、犯人の意外性には唖然とさせられる。読んできた話を思い起こすと、「あれっ?」と思うような違和感が至る所にありそれが真相に行き着くヒントになっている。まず「どうして登場人物一覧がないのだろう?不親切だなぁ」「目次が細切れすぎてそこから大筋が掴めないし分かりにくいなぁ」というところから始まって、読み進めていくうちに「何か登場人物の登場回数に偏りがあるなぁ」などなど、普通のミステリーとは違う何かがあるようで違和感がいっぱいだ。そもそも題名からして青春ミステリー風なのに事件はものすごく残酷なところも変だなぁと感じていたのだが、最後の結末を知ると、それら全てに意味があることが分かる。クローズドサークル、密室トリック、叙述トリックといった本格ミステリー要素も満載だが、そうしたジャンルをはるかに超える衝撃作だと思う。ビックリ仰天の一冊だった。(「友が消えた夏」 門前典之、光文社文庫)
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とにもかくにもごはん 小野寺史宣

オープンしたばかりの「子ども食堂」に集う人々の群像劇。発起人の女性、ボランティアで働く学生や主婦、夕食を食べにやってくる子どもたち、そしてそれらの人々の家族が、何故そこに居合わせ、何を思うのかが語られる。9人の登場人物の視点で語られているのはある1日のたった数時間の出来事。大きな事件は何も起こらないが、「子ども食堂」との様々な関わりを通じて見えてくるのは、それぞれが抱える悩みだったり迷いだったりで、色々考えさせられる。最初の発起人の女性が子ども食堂を作ろうと思ったきっかけの話と最終話の展開には思わずグッときてしまった。(「とにもかくにもごはん」 小野寺史宣、講談社文庫)
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本の背骨が最後に残る 斜線堂有紀

新進気鋭のミステリー作家の最新作。書評誌では特殊設定のSF作品として紹介されていたが、どちらかというと耽美主義的なゴシックホラー的な短編が7つ収められている。それぞれの短編は、物語を口伝する人同士が物語の正当性を賭けて戦い負けると火あぶりの刑になる世界、他人の痛みを肩代わりする装置が開発された世界、特定の人物に雨が降り続けてふやけてしまう世界、人間が動物に生まれ変わると信じられている世界、タイムマシンでパラドクスを回避しつつ過去の人のために役立てることができるかどうかという話など、とにかく設定が奇抜でかつおどろおどろしい話ばかり。共通しているのは、主人公が女性で「苦痛」がテーマであること。異様な世界なので人にお薦めするにはすこし勇気がいるが、これからも著者の作品を色々読んでみたいと思った。(「本の背骨が最後に残る」 斜線堂有紀、光文社)
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死に山 ドニー・アイカー

書評誌が選ぶ2023年の文庫ベストテンの第1位の本書。1959年2月にロシアウラル山脈北部で起きた9人の若者の遭難事件、通称「ディアトロフ峠事件」の謎を追ったノンフィクション。遭難現場近くに犠牲者のための立派な追悼碑が建っていたり、事件の記憶を風化させないための財団があったりで、ロシアではかなり有名な事件らしい。この事件、経験豊かなトレッキンググループが突然遭難したこと自体が謎なのだが、発見された彼らのテントに鋭利な刃物で切られた跡があったり、9人の遺体の状況がある者は裸足、ある者は裸同然、ある者は大きな火傷の跡、ある者は舌がなかったりと、とにかく異常。50年以上経っても雪男の仕業ではないか、UFOに襲われたのではないか、更には事件当時の当局の対応が消極的だったことから軍事秘密に関わる事故に巻き込まれたのではないか、事件の数日前に体調を崩してグループを離れて難を免れた生存者の犯行ではないかといった数々の憶測が飛び交っているらしい。ドキュメンタリー映画監督である著者は、本人たちが残した事件当日までの写真、克明な日誌、捜索隊、遺族、生存者の記録や証言、更には現地調査を行なって謎に迫っていく。著者の考察は、時間の経過だけでなく、大事にしたくないロシア当局の消極的態度、スターリンからフルシチョフ、エリツィン、プーチンといった指導者の交代で揺れ動くロシアの政治情勢などとも戦いながら、ある有力な仮説(カルマン渦列、超低周波音)にたどり着く。単なるドキュメンタリーではなくミステリー要素たっぷりのすごい一冊だった。(「死に山」 ドニー・アイカー、河出文庫)
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村でいちばんの首吊りの木 辻真先

著者の本は2冊目。短編ミステリー3編が収録されているが、母と息子の手紙のやり取り、母と娘の日記、無生物が一人称で語る物語と、それぞれが凝った構成で話が進んでいく独特のもの。表題になっている最初の短編は著者の最高傑作と帯に書かれているが、自分が一番すごいなぁと思ったのは2つ目の作品。母と娘がそれぞれの日記をこっそり盗み読んでいるのだが、両者とも読まれていることに気づきつつ知らないふりをしている。そこで持ち上がった大事件の顛末。途中で仕掛けや結末はそこそこ分かってしまうが、そこに至るまでの文章(日記文)の面白さが半端ない。表紙裏の著者略歴を見ると1932年生まれ、現在91歳とのこと。ウキペディアを見ると、映画、漫画、ドラマ等の脚本や原作がそれこそ無数に紹介されているし、ミステリー小説やSF作品も多数出ている。再評価という感じではないが、かなりの作品が最近になって新しく文庫化されているらしい。重厚な社会派作品とか凝りに凝った本格ミステリーとは別のテイストのエンターテイメント作品、これから色々探してみようかという気分になった。(「村でいちばんの首吊りの木」 辻真先、実業之日本社文庫)
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人を襲うクマ 羽根田治

ここ数年全国でクマに襲われて被害者が出る事件が相次いでいるとか、OSO18の死体が見つかったといったニュースを聞いていたので本書を読んでみることにした。内容は①1970年北海道での九州の大学生3名のクマによる死亡事故、②クマの生態などに詳しい秩父の剥製業の人のお話、③平成20年代におきたクマ襲撃事件7件の重傷者の証言、④クマに関する様々な調査を行なっている研究者による解説という4部構成で、それぞれがとても為になった。全体的に山登りやトレッキングを趣味とする人のための解説書なので、クマと出くわさない為にはどうしたら良いか、あるいは運悪く出くわしてしまったらどうすべきかという視点で書かれているが、結論としてはその時の熊の状況や心理状態によって色々なケースがあり「正解はない」ということらしい。第2部では、熊猟には通常の解禁時期(冬)の狩猟と人的被害が出た後の害獣駆除(春〜秋)の2通りがあり、解禁時期のクマの方が毛皮もツヤツヤ、高価で売れる油や胆嚢が大きいという話、秩父の三峯神社の御神木に子グマが登ってしまい駆除された話などが興味深かった。また第3部では、被害者のほぼ全員が重傷を負っていて、クマが顔を狙ってきたとか、覆いかぶさってきてとっさに首を守ったという生々しい証言がすごかった。第4部では、日本は世界的にみて非常にクマの被害が多い国であること、それらの事故の被害者は春から秋に山菜やキノコ採りで山に入った地元の高齢者が多いこと、事故の大半はツキノワグマによるもので生息数あたりの事故件数がヒグマの10倍にのぼること、里山の衰退などで2020年から被害が急増していることなどの解説。クマ被害に遭わないための対策としては、不要な柿や栗の木の除去、残飯の処理、持ち歩く食料を密閉容器にいれる、ペッパースプレーの使用方法研修や装備の徹底、注意看板の設置などがあるそうだ。本書にはOSO18のことは書かれていないが、まさに今問題になっている人と熊の共存のあり方を考える糸口を教えてくれる一冊だと思った(「人を襲うクマ」 羽根田治、ヤマケイ文庫)
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落語 落語三銃師

昨年末の3年続けて鑑賞している年末恒例「落語三銃師」の会。例年通り、三遊亭白鳥、林家彦いち、桃月庵白酒がそれぞれ一席披露する他、3人によるトークと写真を見せながらの今年の活動報告会という内容。白鳥師匠は古典落語「芝浜」を少し取り入れた20年後の落語界を語る新作落語。初めて聴いたがとても面白かった。彦いち師匠も初めて聴く女子柔道選手が主人公の創作落語だったが、高座ででんぐり返しをする白鳥師匠ばりのお話。トリの白酒師匠は例年通り玄人向けの有名な古典落語。場所が横浜で落語通が多いだろうと考えての演目だと思うが、こういうネタは年末年始のTVでたくさん観れるし、自分としては他の2人に合わせるような奇抜で楽しいお噺が聴きたかったというのが本音だった。

(演目)
①オープニングトーク
②三遊亭白鳥 「黄昏のライバル」
③林家彦いち「青畳の女」
中入り
④地方公演報告
⑤桃月庵白酒「富久」
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2023年のベスト10

読んだ本の冊数はここ数年150冊前後で落ち着いている。今年はノンフィクションで面白かった本が多かったような気がする。まずフィクションの方は、以下の10冊が特に印象的だった。

①ホリージャクソン「自由研究には向かない殺人」3部作
今年最終話が刊行されたので、この機会にと3部作を続けて読んだ。第1作の比較的爽やかなミステリーから次第に主人公が追い詰められていく展開が衝撃的だった。主人公がSNSやインターネットを駆使して真相を暴いていくスタイルは、日本作家の作品にも見られるように、ミステリー界に大きな影響を与えたような気がする、
②永井紗耶子 「木挽町のあだ討ち」
時代小説はあまり読まないが、本書は単純に面白いと感じた。途中で「もしや?」と思ったが題名に施された仕掛けまでは気が付かなかった。ベスト10には入れなかったが、時代小説では青木文平の「本売る日々」も良かった。
③キムボヨン 「どれほど似ているか」
SF的な思考と現代社会への告発が融合した各短編にびっくり、韓国SFの凄さを見せつけられた一冊。韓国の小説では世界に衝撃を与えたチョ・ナムジョの「82年生まれ、キムジヨン」も今年読んだが、キボヨンのSFもジャンルは違うがしっかりその流れを継承している。
④丸山正樹 「デフヴォイス」
TVドラマにもなった話題作だが、コーダという言葉、手話にも色々な種類があること、口話法に拘ることへの問題提起など、知らなかったことの多さに驚かされた。
⑤津村記久子 「水車小屋のネネ」
各方面で今年度ベストの呼び声高い一冊だが、とにかく物語自体の面白さに圧倒された。
⑥宮島美奈 「成瀬は天下を取りにいく」
主人公の前向きな姿に「いいなぁ」と思った。自分もM1グランプリに出場してみようかと本気で思った。
⑦詠坂雄二 「5A73」
一つのキーワードをここまで徹底してこねくり回す著者の緻密な構成に脱帽。
⑧杉井光 「世界でいちばん透きとおった物語」
最後の一行にビックリし、その後で最初から各ページを見直してしまった。著者だけではできないすごい仕掛けを実現させたことにとにかくビックリ。
⑨楊双子 「台湾漫遊鉄道のふたり」
鉄道好き、グルメ好きの本かと思ったが、読者にとてつもなく大きなテーマを突きつける一冊。
⑩呉勝浩 「爆弾」
最初から最後まで息をつかせぬ面白さ。

続いて、ノンフィクションで面白かった5冊。この中では若者の支持を集めているという成田悠輔の本が最も衝撃的だった。
①高野秀行 「語学の天才まで一億光年」
②沢木耕太郎 「天路の旅人」
③堤未果 「ショックドクトリン」
④全卓樹 科学夜話シリーズ「銀河の片隅で科学夜話」「渡り鳥たちが語る科学夜話」
⑤成田悠輔 「22世紀の民主主義」

2010年132,2011年189,2012年209,2013年198,2014年205,2015年177,2016年218,2017年225、2018年211、2019年155、2020年128、2021年163、2022年158、2023年151

2023/12/31
読んだ本 2804
観劇など 238
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