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バスを待つ男 西村健

初めて読む作家。物語は定年退職し料理好きの妻と2人暮らしの元刑事が主人公。高齢者向けのバス乗り放題パスを購入したことをきっかけに、時間潰しのために路線バスで都内を巡るようになった彼が、バス巡りの途中で出くわした挙動が怪しい人物やちょっとした不思議な光景の謎を、元刑事の観察眼と直感、妻の推理力で解明していく連作短編集だ。出くわす謎は、本当にちょっとしたものから、刑事時代に関わりながら迷宮入りしてしまい心のしこりとして燻っていた殺人事件など様々だが、バス巡りで見る都内の名所旧跡や時代小説の舞台になった土地などが話に花を添える。その他、古典落語、地元の名物料理などの蘊蓄も出てきて、バス巡りを散歩の一形態と考えれば、さながら老人の好きそうな趣味のオンパレードといった感じの内容だ。自分自身は、名所旧跡には全く関心がないし、古典落語も退屈だと思う方だし、街並みを観察する習慣もなく、主人公とは真逆の高齢者という感じだが、何かに関心を持つ面白さに共感しながら読み終えた。(「バスを待つ男」 西村健、実業之日本社文庫)
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