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落語 ただのキャンプ好き

今流行りのキャンプをテーマにした落語会。キャンプが好きなわけではないし、どちらかと言えばアウトドアは苦手な自分だが、出演する落語家が大好きな三遊亭白鳥、林家彦いちということで参加してきた。内容は、前半が白鳥彦いちのアウトドアがらみの落語1席ずつで、後半がアウトドア派落語家4人のトークセッション。落語はいずれも古典落語の改変バージョンで初めて聴く演目。トークセッションは、アウトドアグッズの紹介、キャンプ場でのハプニングなどでほぼ満員の会場が盛り上がっていた。
(演目)
林家彦いち 愛宕川
三遊亭白鳥 茗荷宿アフター
中入り
アウトドアトーク
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プーチン戦争の論理 下斗米伸夫

ロシアの政治や歴史の専門家によるウクライナ侵攻の解説書。これまでに色々読んできた軍事専門家とは少し違った視点で今回の戦争の背景を教えてくれる。まず最初に語られるのは、今回の紛争が冷戦時代のようなイデオロギーの対立ではなく歴史や宗教を巡る文明の衝突であるという点。そこから見えてくるのは、他の東欧諸国のようにカトリックを信奉する西ウクライナ、コンスタンチノープルがオスマントルコに占領されたあと東ローマ帝国の血統を受け継いだロシアおよびその首都であるモスクワがキリスト教の正当な継承者、継承地であるという宗教観を持つ正教を信奉する東ウクライナというウクライナの二面性だ。これを読むと、なぜウクライナという国がソ連崩壊後に一つの国として成立したのかむしろ不思議な気がするくらいだ。一方、本書で彼の地の歴史を見ていくと、今回の紛争の背景として、ゴルバチョフと西欧諸国で描いた冷戦後のヘゲモニーをないがしろにしたアメリカをはじめとする西欧諸国の度重なる傲慢な施策や挑発行為、あるいは失政が根底にあることがわかる。この点においてはプーチンにも十分な言い分はあり、プーチンの過ちは対立を戦争という暴力で解決しようとしている点と、占領地での略奪や虐殺といった戦争犯罪の2点にあることになる。プーチンの残虐性とか異常性が前提になっているような報道とはかなり違った事実を浮き彫りにしてくれる一冊だった。(「プーチン戦争の論理」 下斗米伸夫、インターナショナル新書)
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国税OBだけが知っている失敗しない相続 坂田拓也

ジャーナリストの著者が国税OBの税理士の話を元に相続に関する知識を解説してくれる一冊。実生活にも役立つ時が来ると思うので読んでみた。個々の事例について深掘りはされていないがかなり多くの事例が取り上げられているので基本的な知識の確認に役立つ内容だ。取り上げられた事例については、親族間でもめてしまった失敗事例だけでなく、揉め事を回避できた成功事例もかなり取り上げられているので、今後の留意点という感じで読むことも可能。個人的には、税理士選定の重要性、成年後見人制度の現状などが興味深かった。(「国税OBだけが知っている失敗しない相続」 坂田拓也、文春新書)
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絶滅のアンソロジー 真藤順丈

「絶滅」をテーマにしたアンソロジー。絶滅という題名なので、人類滅亡とかトキ、オオカミ、ドードー鳥など生物種の絶滅を扱った話なのかなと想像したが、そうした単純な話はほとんどなくて驚かされる。作家という人たちが絶滅という単語からイメージするものの多様さ、さらに近未来SF、クライムノベル、ディストピア小説といった小説世界の多様さがよくわかる一冊だ。各短編のなかでは、感染症対策の行き着いた先の話とAIロボット犬の話の近未来SF2編、はちゃめちゃな盆踊り大会の話が、特に面白かった。(「絶滅のアンソロジー」 真藤順丈、光文社文庫)
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月夜の羊 吉永南央

ずっと読み続けている紅雲町珈琲屋こよみシリーズの第9作。老主人公の何気ない日常や周囲の人々の関わりの中で遭遇する様々な出来事、それらに節度を持って対処していくことによって得られる小さな幸せのようなものが立ちのぼるストーリーだ。自分も歳をとってきてわかるのだが、平穏な日常の中でも、かなりドラマチックなことや予想外のことは起こるものだ。そのあたりに対する共感が読み続けている原動力になっている気がする。(「月夜の羊」 吉永南央、文春文庫)
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昆虫学者はやめられない 小松貴

昆虫学者によるエッセイ集。内容は、昆虫に関するトリビアと昆虫を研究対象としている学者に関するお話が半分くらいずつ書かれている。奇妙な昆虫の話も面白いし、ありふれた昆虫にもこんな一面があるよという話ももちろん面白いのだが、本書で断然面白いのは昆虫学者に関する「あるある」の方だ。本書では、昆虫学者の生態として、大まかに言うと、昆虫標本をコレクションする醍醐味、昆虫の擬態を見抜く技、新種発見の苦労話の3つが書かれていて、それぞれがめちゃくちゃに面白い。標本コレクションの話では、見た目が派手なカブトムシは日本に5種類ほどしかいないのですぐに飽きる、美しい蝶でも数百種類なので頑張れば数年でコンプリートしてしまう、従って多くの昆虫学者は地味だが種類の豊富な昆虫に惹かれるのだそうだ。また、昆虫の擬態に関しては、優れた擬態で発見が困難な昆虫と昆虫学者との知恵比べ、優れた擬態を持っているのに全くそれを活用せず簡単に見つかってしまう昆虫の話などが詳しく書かれていて秀逸だが、そこから「そもそも擬態とは何か」という問いかけにつながっていくのがすごい。新種発見については、日本において一般市民が新種を発見する可能性はほぼゼロであるが、日本で発見される外来種の多くが一般人の「新種では?」という専門家への照会によるものだそうで、その点では意義のあることだとのこと。とにかく面白い話が満載の一冊だった。(「昆虫学者はやめられない」 小松貴、新潮文庫)
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空をこえて七星のかなた 加納朋子

初めて読む作家の作品。7つの短編からなる連作集だが、いずれも登場人物の名前が星の名前とか星座の名前だったり、夜空とか宇宙に何となく関わった設定の短編で、それらが繋がっているのかそうでないのかわからないまま読み進めることになる。残り3編になる辺りから、あれっと思うような展開になり、最後の2編で全てが繋がる少し驚きの結末だ。全部読み終えてから全7編の時系列がどうなっているのか確かめると、なるほどそういうことだったのねということになる。一つ一つのお話も面白いし登場人物も生き生きとしていて読後感のとても良い一冊だった。(「空をこえて七星のかなた」 加納朋子、集英社)
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落語他 第4回ただの鉄道好き

鉄道マニアの古今亭駒治とダメじゃん小出による鉄道ファン向けの二人会。年一回の開催で今年が第4回。第2回から参加しているので自分としては3回目になる。駒治師匠の落語は横浜での公演やオンライン公演をほぼ欠かさず観ているので、「海芝浦」の1席は一度聞いたことにあるネタだったが、もう一席は初めての噺。ダメじゃん小出のネタは両方とも初めて聞く話で、「神奈川県最端駅巡り」はつい先日の彼の独演会で聞いた話の姉妹編のような内容。テーマや観ている人の嗜好に合わせて自在に内容を変えるあたりはさすがという感じだった。今回の目玉であるスペシャルゲスト吉永陽一氏を交えたスライドトークは圧巻の面白さ。空撮による鉄道写真の第一人者ということで「空鉄」というジャンルの奥深さには感心するばかり。なお、前回からの協賛鉄道会社からのお土産がさらに充実していてびっくりした。
①古今亭駒治 海芝浦
②トーマス漫談 ダメじゃん小出
③スライドトークショー 吉永陽一
④ダメじゃん小出 神奈川県最端駅巡り
⑤古今亭駒治 駅弁大会への道
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新!店長がバカすぎて 早見和真

数年前の本屋大賞ノミネート作品の続編。前作は本屋で働く店員さんのブラックな職場環境が執拗に描かれていて、読んでいてやるせない気持ちになった記憶があるが、今作はやや趣の違う印象を受けた。職場の苦労話は相変わらずだが、その苦労はどんな職業にもありそうなものとか上司に恵まれなかった不運という色彩が強くなっていて、さらにそれでも働き続ける書店員さんの使命感や日々の充実感が多く描かれているからだと思われる。もう一つの前作との違いは、非日常的なエピソードが満載という点。SNSでの炎上とか意外な人事異動とか謎の覆面作家の正体とか、各章毎にかなり大きなイベントが盛り込まれていて、ややドタバタ感を感じてしまうほどだ。SNSの炎上など扱いがコミカルすぎて違和感を覚えてしまうが、これも読者サービスなのだろう。読者サービスという点では、それ以外にも、作中作と本文の意外な連携とか、題名の「!」マークに隠された意味など、そこら中に散りばめられている。前作同様明らかに本屋大賞を意識して書かれている本書が再度ノミネートされるかどうか気になるところだ。(「新!店長がバカすぎて」 早見和真、角川春樹事務所)
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ウクライナ戦争の200日 小泉悠

ロシアの軍事研究家と様々な分野の専門家が現在進行形のウクライナ戦争について語った対談集。それぞれがお互いの専門知識を融合させたり、補完し合いながら戦争の実相を解き明かしていく様が見事。軍事専門家同士の対談では、戦況の背後にある事情、戦力の配分、兵站、指揮命令系統などと戦況の関連を詳しく教えてもらえて非常にためになった。特に、自衛隊の火力調整会議の話、輸送ヘリの武装などについて各国の考え方に違いがあること、今回の戦争におけるドローンの役割など、知らなかったことばかりで目からウロコだった。(「ウクライナ戦争の200日」 小泉悠、文春新書)
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すみれ屋敷の罪人 降田天

著者の本は3冊目。廃墟となっていた戦前の旧家のお屋敷から2体の白骨死体が発見された。本書は、この死体が誰のものなのか、この一族に何があったのかを調べて欲しいという内容のメールから始まる。誰が誰に依頼したメールなのかがまずもって最初の謎だ。依頼を受けた人物は、当時のお屋敷について知っていると思われる人物へのインタビューを開始するが、関係者たちが高齢なこともあり記憶が断片的だったり曖昧だったりで、少し真相に近づいたと思うと、それを否定する話が出てきたり新たな謎が浮かび上がったりする。読者を翻弄するのは、関係者がそれぞれの立場でしかものを見ていなかったこと、自分に都合の悪いことは話さないことに加えて、当時が戦時下という特殊な時期だったこと、旧家独特に体面の維持に躍起になる人々ばかりだったりしたことなどだ。最後に明かされる真相は意外すぎるくらい意外なものでその点はすごいのだが、やや着地点が戦時下の特殊性に頼りすぎた感がある気がした。(「すみれ屋敷の罪人」 降田天、宝島社文庫)
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ディープヨコハマをあるく 佐野享

書評誌で取り上げられていた一冊。横浜市民としては読み逃すことのできない一冊と思って読んでみた。題名の印象から横浜に関する裏話のような内容かと思ったが、読んでみると非常に真面目に横浜のそれぞれの地域にまつわる過去から今までの歴史を簡潔に伝える内容。全体の印象としては、地域毎の旧所名跡、食文化、娯楽施設、交通事情などがバランスよく取り上げられていて、横浜を散歩するときのガイドブックに適していると思えるほどだ。また、横浜という街の変化について詳しく書かれているのが個人的にはとてもためになった気がする。自分自身横浜に住むようになって30年になろうとしているが、横浜駅の東に伸びる地下道がもたらした駅周辺の変化、綱島温泉が東海道新幹線開業をキッカケに廃れていったことなど、昔と今という2つの時点の比較や何が街が変えたのかという記述が色々参考になった。(「ディープヨコハマをあるく」 佐野享、辰巳出版)
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此の世の果ての殺人 荒木あかね

江戸川乱歩賞の史上最年少、満場一致受賞ということで話題の本書。あと数ヶ月で地球が滅亡するという特殊設定のミステリー。最近のミステリーは、町中をゾンビが徘徊していたり、主人公が異世界に転生してしまったり、歴史改変ものだったりと、特殊設定のものがやたら多い感じだが、本書もその一つだ。但し本書の特徴は、これまでに読んだそうした特殊設定ミステリーとはひち味違って「特殊下の日常」のようなものがごく自然に描かれている点が際立っていること。読んでいてそれだけで楽しかった。ミステリー要素についても、犯人が途中で何となく分かってしまう結構ありがちなパターンだったが、それを欠点と感じさせない面白さがあった。(「此の世の果ての殺人」 荒木あかね、講談社)
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すべての月、すべての年 ルシア・ベルリン

書店員さんの覆面座談会の記事を読んでいたら、最近全国的に売れている話題の一冊とのことなので読んでみた。著者は20年近く前に亡くなっているアメリカの女性作家で、死後10年くらいして再発見、その後徐々に世界的に再評価されてきている作家とのこと。本書は10ページくらいの短編が20編ほど収められた短編集で、その多くは作家自身の体験を描いた私小説のような内容。最初のうちは何を読んでいるのかよく分からない感じだったが、何故か救急救命室の事務員の話あたりから俄然面白くなってきて、その後も面白いなぁすごいなぁという短編がいくつかあった。彼女の略歴を見ると、執筆にあたって老人ホームでのヒヤリングなどを行なっていたとあるので、おそらくそうして得た話と自分の体験を融合させるのが彼女の作風なのだろう。彼女の作品集の日本語版は本書が2冊目、最初の1冊目が再評価のキッカケになったということなので、そちらも読んでみたいと思った。(「すべての月、すべての年」 ルシア・ベルリン、講談社)
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