goo

オンライン落語 白鳥彦いちふたりでオンライン(2)

新作落語のふたりによるオンライン落語会の第二回目。2時間のうち、落語がそれぞれ一席ずつで1時間、残りの1時間弱がトークという構成。寄席も少しずつ再開になってきているが、今の状況では100%心から楽しめるとは思えない。それよりもこうしたオンラインでの視聴の方が周りを心配しないでのんびり聞けるのでありがたい。なお、今回のふたりの二席、個人的にはあまりピンとこなかった。また、全体として、トークよりも落語そのものの方をもっと充実してほしいというのが正直な感想だ。
三遊亭白鳥 時そば?
林家彦いち 夏の物語?
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

逆ソクラテス 伊坂幸太郎

人気著者の最新刊。自分の平凡さやイジメに対して毅然とした態度を取れない自分に悩む小学生、ここぞという時に行動を躊躇してしまうことを歯がゆく感じている大学生など、子どもや若者の視点で描かれた短編5作が収録されている。テーマは、物事を自分の考えだけで決めつけてしまうことの危うさ、なぜいじめは良くないのか、正直である方が結局のところ報われるというのは本当か、といった問題をどうやって子どもたちに考えさせるか、大人としてどういう態度が好ましいのかだ。おそらくズバっとした正解はないとわかりつつも、こういう考え方、言い方、伝え方もあるなぁと頷くことの多い一冊だった。(「逆ソクラテス」 伊坂幸太郎、集英社)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

アーモンド ソンウォンピョン

本屋大賞などで話題の本書。失感情症の主人公が、周囲の様々な偏見や無理解に直面しながらも、手を差し伸べてくれる理解者、厳しい環境に育った不良の同級生などと関わりながら、自分を見つめ、成長していく姿が淡々と描かれている。ネットなどによる偏見の拡散、周囲の空気に共感することに四苦八苦する現代社会など、様々な問題提起もあるが、本書の核心は感情というものが人間関係にもたらす様々な功罪についての考察だろう。少なすぎてもこまるし、多すぎてももやっかいなもの。まさにカント流の感性と悟性に関する永遠の課題を改めて考えさせられた。(「アーモンド」 ソンウォンピョン、祥伝社)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

破壊せよと笑いは言った 中条省平

「現代マンガ選集」と銘打って、日本で独自の進化を遂げたマンガという文化を俯瞰するシリーズの一冊。本書には、戦後間もなくから雑誌ガロ全盛期あたりの当時としてはかなり実験的な作品だっただろうなと思わせる短編が収録されている。作者名には昔読んだマンガの有名どころがずらっと並んでいるが、子ども向けのマンガという印象しかない漫画家達がこんなアバンギャルドな作品を描いていたのかと驚いてしまう。但し、何となくわかるようなわからないような、作者の意気込みが空回りしている変な作品も多い気がする。特に印象に残ったのは、赤塚不二夫の作品。会話が全て古今東西の格言だけで構成されていて、しかもギャクマンガになっているという超絶技巧に驚かされた。(「破壊せよと笑いは言った」 中条省平監修、ちくま文庫)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

虚構推理短編集 岩永琴子の出現 城平京

ライトノベルでマンガも大人気というシリーズの一冊で、読むのは本書が2冊目。あやかしから神と慕われる女子大学生の主人公と、未来を変えられる能力と不死という2つの圧倒的な能力を合わせ持ちあやかしから恐れられるその恋人。その2人の人間があやかしからの要請で謎を解くという設定で、読んでいると、あやかしよりも人間の方が行動が不可解という感じがしてくる。いずれの短編も荒唐無稽な話だが、前作同様、とにかく内容がユニークで、著者の発想というか思考回路がどうなっているのか不思議に思うほどだし、良く練られたストーリーも秀逸。こちらのシリーズ既にいくつか続編があるようだし、著者の作品で面白そうなものがまだ色々あるようで、これから読むのが楽しみな作家だ。(「虚構推理短編集(2) 岩永琴子の出現」 城平京、講談社タイガ文庫)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

みつばの郵便屋さん(2) 小野寺史宜

今注目されている著者のシリーズ2作目。1作目を読んでから随分時間が経ってしまったが、不思議と主人公を取り巻く人間関係はぼんやりと覚えていた。内容は、題名通り郵便配達のお仕事小説ということになるが、やはり著者の本はひと味違うと今回も感じた。様々な個性を持った同僚との職場での人間関係、仕事特有の苦労、仕事への愛着とプライド、仕事を通じた人間としての成長など、お仕事小説に必要な要素を全て満たしつつ、それだけに終わらない魅力が随所に感じられる。表面的には大きな事件やトラブルは皆無なのだが、小さな出来事に対する主人公の感受性の描写が著者ならではのものだからだろう。1作目と2作目の間が空いてしまい、その間に5作目までが刊行され、シリーズも完結してしまったらしい。熱烈なファンという訳ではないが、このシリーズをまだあと3冊楽しめるというのは読者として有難いという一言に尽きる。(「みつばの郵便屋さん(2)」 小野寺史宜、ポプラ文庫)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

210日ぶりに帰ってきた奇跡のネコ 藤原博史

「飼っていたペットが居なくなったので探して欲しい」という依頼の電話があると、著者は依頼者のところに赴き、ペット探しを助ける。こうしたペット探しを専門にする日本でも珍しい「ペット探偵」の実録奮戦記。TVのドキュメンタリーで紹介されたり、ドラマ化されたりしていてかなり有名な探偵だで、自分も2回ほどドキュメンタリーとドラマで見たことがある。本書には10件ほどの実際の活動が紹介されているが、それぞれ色々なパターンがあって、一筋縄ではいかない大変な仕事だということがよくわかる。動物の種類による行動特性の違いやそのペットの性格などから居場所の範囲を狭めていく過程が結構スリリングだ。経験と勘と地道な努力で、見つけられる確率はネコの場合で約80%程度という。特殊な技術はあまり必要ないという記述があるが大したものだと率直に思う。なお、探偵作業とは別に、東日本大震災の時に、飼い主とはぐれた犬やネコに食事を置いて回るエピソードは感動的だった。(「210日ぶりに帰ってきた奇跡のネコ」 藤原博史、新潮社新書)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

カラスの教科書 松原始

カラスの生態を調査している鳥類学者によるカラスに関する雑学満載の一冊。「鳥類学者の書いた本は面白い」という定説があるらしいが、まさにこの本はそれに当てはまる。人間にとって最も身近な鳥であるカラスがこんなに面白い鳥だとは全く知らなかった。本書は、カラスの種類、カラスの一生、カラスの行動様式、カラスと人間の関わり、カラスの登場する伝説や文学作品など、カラスに関する諸々を面白く解説してくれるが、その面白さの4割はカラス自身の面白さ、残りの6割は著者の文章の面白さといったところ。面白かったところを列記するとキリがないが、特に印象に残っているのは、カラスには突出した才能がないためにしばしば「残酷」とか「弱いものイジメ」というレッテルを貼られてしまうというくだり。一撃で仕留める強い爪や嘴がないので何度も突いて獲物を狩る様が残酷に見えたり、強いものには勝てないので雛や卵を狙うので弱いものイジメに見えるそうだ。、また、カラスが生ゴミを散らかす問題や人を襲う習性などについては誤解も多いようで、何となくカラスを擁護する立場に立っている著者の文章も印象的。カラスについては専門の学者が少ないこと、大人の事情で個別識別装置などによる精緻な調査が困難なことなどから分からないことがまだまだ多いらしい。それを補う著者の推測部分が本書の面白さを倍加させている。(「カラスの教科書」 松原始、講談社文庫)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

ロスねこ日記 北大路公子

待望の著者の新作。著者の作品の真骨頂は何といってもその脱力系の文章。その魅力は本書でも全開だ。内容は、昔飼っていた猫のことを少しだけ思い出しながら色々な生き物との触れ合いを試みる著者の奮闘が描かれているというとカッコイイが、実のところは著者が椎茸や舞茸やヒヤシンスを育て上げる小学三年生の理科で学ぶような観察日記だ。それをこれほど楽しく面白く語る著者の文章には改めて脱帽するしかない。(「ロスねこ日記」 北大路公子、小学館)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )