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2018年ベスト10

今年読んだ本は211冊。今年定年退職となり、本をいっぱい読めると期待していたのだが、家族の介護などに時間を取られたのと、通勤電車の中で読むことができなくなったため、2016年218冊、2017年225冊に比べて冊数はやや低調に終わった。但し、読んだ本の内容はそれなりに充実していたように思う。以下は、今年のベスト10。

①極夜行(角幡唯介)   極限の冒険の中で著者が見つけたものとは何か?最後の最後まで手に汗握る冒険と著者の思いに翻弄された。

②鳥類学者無謀にも恐竜を語る(川上和人)    今年著者の本を3冊読んだがどれもベスト10級の面白さ。著者のユーモアある文章がやみつきになった。

③七つの海を照らす星(七河伽南)  今年初めて読んだ作家。可能性を感じる新人作家に出会えて良かった。

④13・67(陳浩基)   本の冒頭で主人公が植物人間になっているという衝撃的な内容。そのあとの物語の構成が素晴らしい。

⑤錯覚の科学(クリストファー・チャペス)  科学啓蒙本は今年も何冊か読んだが、面白い本にいくつも出会えた。本書もそのうちの一冊。

⑥ディス・イズ・ザ・デイズ(津村記久子)  著者の最近の作品は、職場での人間関係の悩みといった初期の重苦しさから解き放たれたようで本当に面白い。

⑦そしてミランダを殺す(ピーター・スワンソン)  最近、翻訳ミステリーに失望させられることが多かったが、今年読んだ本書と「13・67」の2冊は別格の面白さだった。

⑧定年バカ(勢古浩爾)  今年定年退職になり、その前後に定年本をいくつか読んだが、なかでも本書が白眉。本書のお陰で、少し楽な気持ちで定年を向かえられた。

⑨御子柴くんと遠距離バディ(若竹七海)  今年は復刻本を中心に著者の本を7冊読んだが、どれも面白かった。著者の本は登場人物が多いので、ボケ予防になる気がした。

⑩屍人荘の殺人(今邑昌弘)  ある一つのアイデアで、こんなに面白いミステリーができるのかと感心してしまった。

今年は、ベスト10には入れなかったが、知念実希人の本を11冊、今邑彩の本を7冊読んだ。いずれも、今年の自分の読書を楽しくしてくれたので、感謝したい。

 

2010年132,2011年189,2012年209,2013年198,2014年205,2015年177,2016年218,2017年225、2018年211

2018/12/31  カウント2100

 

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昨日がなければ明日もない 宮部みゆき

シリーズ第5弾。探偵に転職した主人公のもとに舞い込む様々な依頼。自殺未遂後に連絡が取れなくなった娘に会いたい、結婚披露宴に代理で出席して欲しい、元夫の母親から子どもを守って欲しいといった少し奇妙な依頼ばかりだが、探偵業というのはこういうものなのかなぁと思いながら読み進める。大仕掛けのトリックはないが、全てに裏がありそうな展開で、読んでいて楽しいし、読者を絶対に裏切らないだろうという作者への信頼感があるせいか、安心して読めるのが有り難い。自分にはそこまで思い入れはないが、事件をひとつひとつ解決していくごとに主人公が探偵として成長していくのも読みどころのようだ。(「昨日がなければ明日もない」  宮部みゆき、文藝春秋)

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こちら横浜市港湾局みなと振興課です 真保裕一

自分の地元の本ということもあり、軽めのお仕事小説の短編集かななどと軽い気持ちで読んだのだが、実際は、戦後日本の混乱期、高度経済成長期の歪み、最近の外国人労働者の急増問題などいくつかの社会問題を背景に取り込んだ非常に濃厚でスケールの大きいミステリー長編だった。それでいて全く堅苦しくはないし、読んでいて横浜という港に関わる様々なお仕事についての理解も深まる一石二鳥のような作品だ。横浜駅の工事は今も続いているし、横浜という町は色々な背景を持ちながら変貌しつつ、不思議な魅力を放ち続けている。そんな横浜の知らなかった一面を見せてくれた一冊だった。(「こちら横浜市港湾局みなと振興課です」 真保裕一、文藝春秋)

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映画 メアリーの総て

「フランケンシュタイン」の作者であるメアリー・シェリーの伝記映画。発表当時、「女性が書いたということでは売れない」ということで、夫の詩人シェリーの作品という扱いだったという。作家メアリーは、そうした時代とも戦っていたことが分かり、驚いた。名作だと思う。

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王室と不敬罪 岩佐淳士

順調な経済成長、微笑みの国、温和な国民、国民から慕われる国王というタイのイメージを一変させる内容。日本やイギリスと同じ「立憲君主制」であり、皇室や王室に対するタブーが存在することも一緒だが、社会の安定性や自由さが日本と随分違うことに驚かされる。その違いの原因は、おそらく「不敬罪」という法律の存在と国王が国軍の長という実権を握っていることの2点だと思われる。プミポン国王亡き後のタイの行く末が案じられると同時に、日本の皇室のあり方を考える上でも示唆に富む一冊だ。(「王室と不敬罪」 岩佐淳士、文春新書)

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なぜ日本の「ご飯」は美味しいのか シンシアリー

著者の本は3冊目か4冊目。著者の本は、刺激的な題名が多く「韓国人による嫌韓論」というイメージが強いが、読んでみると意外と中立的な内容に思える。著者が日本びいきであることは間違いないので、韓国の人にとってはかなり耳障りなのかもしれないが、著者の韓国批判は、韓国をより良い国にしたいという想いを伝えるための提言に近いものも多い。本書では、旅行者としての著者が数日間の日本旅行で感じたことが記述の中心になっていて、日本文化へ深入りは敢えて避けている。その理由は、その旅行が著者の日本移住計画の準備のような位置付けになっていて、外部者としての日本論を書く最後のチャンスという意識があるからだろう。本書によれば、現時点ですでに著者は日本に移住してきているらしく、今後は日本の内部者として日本を見ることになり、当然今まで見えなかった日本のアラも数多く見たり経験したりすることだろう。その時の著者による痛烈な日本批判を期待したい。(「なぜ日本の「ご飯」は美味しいのか」 シンシアリー、扶桑社新書)

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花だより 高田郁

完結したシリーズの主人公を含む主要な登場人物たちの後日談をまとめた一冊。気になっていたその後ということで、シリーズのファンだったものとしては、本当に嬉しいプレゼントだ。本書は、こうした後日談にありがちなオマケ感は微塵もなく、これこそが本当の完結だと思わせる内容で、著者の文章の確かさも満喫した。本書がものすごく面白いだけに、本当にこれで最後と思うと寂しさが募る。著者の別のシリーズを何となく敬遠していたが、本書を読んで、やはり別のシリーズも読まなければと感じた。(「花だより」 高田郁、ハルキ文庫)

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映画 ボヘミアン・ラプソディ

IMAXで鑑賞。複数の友人から「絶対見るべき」「この歳で人生観が変わった」という熱いメールを受信。1人で見に行ったが、音と映像の素晴らしさに感動。特に終盤は、IMAXで見て本当に良かったと思った。

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世界でたった一つの読書 三宮麻由子

4歳の時に視力を失ったという著者による本を巡るエッセイ。点字本か朗読テープがなければ読書ができないというのは大きなハンディだが、著者は一冊一冊の本を大切に読み、じっくり考察することで乗り越え、自由に本を選択できる人に負けないことを証明してみせる。また最初のうちは、本書のうち視力以外の感覚の鋭さを感じるような部分にばかり目がいっていたが、やがてそれを完全に忘れてしまうような独自の世界を構築している一冊だ。(「世界でたった一つの読書」  三宮麻由子、集英社文庫)

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麻原彰晃の誕生 高山文彦

平成が終わろうとしているなかで出版された平成最大の社会事件とも言える「オウム真理教事件」の首謀者麻原彰晃の伝記。これまでそうした本をしっかり読んだことがなかったので良い機会だと思い、読んでみることにした。先日、関係者の死刑が執行されて、事件の解明が難しくなったという論評があったので、現在どこまで事件の背景が明らかになっているのかを知りたくなったのだ。おそらく、本書出版の背景には、そうしたニーズがあるという考えもあるのだろう。読んでみて、オウム真理教の権威付けに一役買わされたダライ・ラマの側近に取材するなどしっかりした内容で、かなりのことがわかってきていたことがよく理解できた。また、ヒヒイロカネと呼ばれる餅鉄というものが事件に大きく関わっていたことも初めて知った。ひとつ残念なのは、書かれた時期がかなり昔だったようで、地下鉄サリン事件などのことが全く書かれていないこと。事件の解明状況を知るには、この続きを読む必要があるだろう。(「麻原彰晃の誕生」  高山文彦、新潮文庫)

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音楽会 クリスマス・ワンダーランド

歌と踊りのクリスマス・コンサート。小学生から大人まで全員が楽しめるような工夫が満載。行くのを年中行事にしたいと思った。

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赤いべべ着せよ 今邑彩

著者の本は短編を中心に読んできたが、ネットで復刻版が購入できたので長編の本書を久し振りに読んでみることにした。内容は、ホラー要素が強いストーリーだが、れっきとしたミステリー。かなり前の作品なので、結末は比較的予想しやすい単純なものだが、文章や扱っているテーマは重々しい。理不尽な犯罪の被害者という立場の周りには窺い知れない苦悩が色々な形で提示されていて、引き込まれなてしまった。著者の長編には短編にはない良さがあることを再確認した。(「赤いべべ着せよ」 今邑彩、中公文庫)

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救済 長岡弘樹

著者の最新刊。登場人物も多様、扱われる事件も多様だが、どれも著者独特の香りを放っていて、乾いた文体も正に著者ならではのもの。この文体に接するとちょっとした御都合主義なども気にならなくなってしまう。こういうのを本当の愛読者と言うんだろうなぁと思う。そう思わせる数少ない作家だ。たまには、著者のもっと重たい本を読んでみたい気もするが、やっぱり短編でこそ著者の良さが際立つだろう。新刊が出るインターバルもちょうど良い。良いことづくめの一冊だ。(「救済」 長岡弘樹、講談社)

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ひとりメシの極意 東海林さだお

謳い文句が「著者初の新書」とある。内容は、30年以上続いている雑誌連載コラムのなかから「ひとりメシ」をキーワードに厳選した傑作集だ。中には「まるかじりシリーズ」で読んだことがあるものも多いはずだが、そんなことはどうでも良いと思ってしまうような好企画。特に面白かったのは、オイルサーディンと卵の白身と刻み玉ねぎを使った「オイ丼」、自家製カラスミ、豆腐一丁丼などの新作?レシピの数々。それに、子どもの頃に食べたという「サツマイモ2本」を忠実に再現する話等も秀逸だった。(「ひとりメシの極意」  東海林さだお、朝日新書)

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映画 僕の帰る場所

法律の壁により離れ離れになる日本に亡命してきたミャンマーの家族の物語。帰国したミャンマーの少年が、本来の母国に馴染めず苦労する。日本語を話す友だちとの出会いは恐らく少年の幻想なのだろうが、それをきっかけに少しずつ自分を取り戻していく姿が微笑ましい。

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