山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

北岳で見つかったシダを確認に行く ~花編~  令和2年9月27日

2020年09月30日 | 山に咲く花
 北岳はシダを見てきただけではなく、もちろん花も見てきた。特に登山者が入らない状況の中で植物がどうなっているのかに興味があった。聞くところによると御池小屋周辺に群生していたアザミ類はほとんど食害で消滅してしまったと聞いた。標高3,000mあたりの場所で猿の集団に会ったという話も聞いている。人が入らないからと言って植生に良い影響があるとは言い切れないようである。


    姿を現した北岳。上にも行ってみたいが今年は無理。


    フジアザミは枯れはじめである。


    ホウキアザミ。工事関係者が入るこの場所は残っている。


    もう終焉である。


    コウシンヤマハッカの群生


    ナギナタコウジュの群生


    もう消滅してしまったのではないかと思っていた場所で出会ったアオキラン。


    こんな大株を見るのは久しぶりである。これは今年人が入らなかった影響なのか、それとも当たり年なのか?


    終わりかけてはいるがたくさん見ることが出来た。


    来年もまたたくさん咲いて会えることを期待したい。


    白根御池。この周辺はシカの食害が酷いと聞いている。


    ここにはセンジョウアザミの群落があったはずだが、ハンゴンソウに代わってしまっている。


    わずかに残っていたセンジョウアザミ。もっと背が高くなるはずだが食害で大きくなれない。テント場近くで人が居たことが鹿の制御になっていたようだ。


    復活できるのかどうか?囲ったとしてももはやハンゴンソウに負けてしまいそうである。


    キタザワブシ


    画像では分かりにくいが花茎に屈毛が生えている。

 大樺沢二俣まで行って雨に降られて引き返し、さらには頭上で轟く雷を避けて急いで下山となった。広河原に到着するころには雨が上がり、鳳凰山の斜面には陽が差し込んできた。


    二重の虹が出た。


    立ち寄った広河原園地で結実したホザキイチヨウランに出会う。

 これにて山梨県山岳連盟による今年の山岳レインジャー調査はすべて終了である。最後の虹はご褒美だったのかも知れない。これからさらに大変な調査まとめ作業が待っている。





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北岳で見つかったシダを確認に行く ~シダ編~  令和2年9月27日

2020年09月30日 | シダの仲間
 今年は入山が規制されバスも運行されなかった北岳であるが、植物調査は山梨県からの依頼で行われることとなった。ただし、山小屋は運営されていないためテント泊で行くか日帰りで行くかということになり、ほとんどの調査は行けるところまでで日帰りで行われた。そんな中でハナワラビ属のあまり見かけないシダが見つかったとの報告が上がって来た。画像をシダの専門家の方に鑑定していただき、エゾフユノハナワラビであろうということになったのだが、撮影された画像では茎と葉裏の軸の毛が十分に見えていない。確認に行きたかったが今年は無理だろうと思っていたところ、幸運にもこの日は調査に行くグループが無くゲートの鍵を借りることが出来た。林道通行許可証の期限は9月30日までで、この日を逃すともはや入山は不可能となるので、植物調査を兼ねて北岳に入山する。


    途中までは暗い霧の中だったが、広河原に到着すると青空が見え北岳が姿を見せてくれた。


    大樺沢沿いの登山道にたくさん生えているこのシダはイッポンワラビだろう。


    中肋と辺縁の中間あたりに付く円形ないし楕円形ソーラス、イッポンワラビで間違い無さそうだ。


    早々に現れたウサギシダ。もう痛み始めていた。根元にあるのは別のシダで、おそらくオシダ。


    別の場所でもウサギシダを見たが、もうボロボロである。個体数は少ない。


    ウサギシダ


    イッポンワラビに似るが小羽片に円みのあるシダが現れた。最下羽片には柄がある。


    長楕円形のソーラスが付着し、小羽片の切れ込みが深い。ミヤマシダと思われる。


    葉の隙間が密で違うもののように見えるがこれもミヤマシダだろう。


    高度を上げて標高2,000mを越えたあたりから出現したシダ、ミヤマメシダ。


    根元近くに真っ黒な鱗片が付いている。


    御池に到着。あまり時間が無いのでそのまま休まずに進む。


    ミヤマシダに似るがさらに小羽片先端部の切れ込みが深いシダが現れた。これがキタノミヤマシダであろうか?


    楕円形ないしは長楕円形のソーラスが付着。葉の切れ込み方からキタノミヤマシダだと思われる。


    大型のシダが現れた。見ればすぐに分かるオオメシダ。


    綺麗に整列した長楕円形のソーラスは蕁麻疹のように見える。


    見ておきたかったイノデがこれ。葉の下側のほうが縮小して全体的に流線型となるイノデ、ホソイノデ。


    ソーラスは中央から上方に寄って付く。やや多き目のソーラスが付くと思っていたのだがこの個体ではあまり分からない。


    淡褐色の鱗片、柄は短め。


    中軸中央部の鱗片は披針形でイワシロイノデに似ている。今回いちばん確認しておきたかったのがこの部分の鱗片である。


    もう枯れ始めているオオバショリマ。


    流線型のボディはクサソテツに似ている。ホソバショリマをそのまま大きくしたような形である。


    小さ目のソーラスはやや辺縁寄りに付く。


    大樺沢二俣に到着。期待していたカラフトメンマはもう枯れ始めていた。


    カラフトメンマと大樺沢


    ソーラスは裂片の中軸と辺縁の真ん中に付く。オシダと良く似ている。


    ゴワゴワした鱗片もオシダに似ているが幅が狭いかも知れない。

 二俣で休憩と思ったがここで雨が降り出してしまう。御池小屋まで戻って休憩しようと思ったが今度は遠雷が鳴り出し、止む無く休まずにそのまま下山することになってしまった。雨足は次第に強くなり、頭の上では雷が鳴り出した。ひたすらに下りて御池小屋分岐まで行ってやっと休憩である。

 目的のハナワラビ属は十分に時間をとって観察してきた。


    新たに発見されたハナワラビ属のシダ。


    胞子嚢が成熟していちばん元気な状態である。さて、これの正体は?


    葉裏を見てみる。


    やはり、まばらではあるが細くて長い毛が付いている。


    葉茎にも毛があるのを確認。これはエゾフユノハナワラビである。

 毛が生えていなければヤマハナワラビの可能性が高かったが、密ではないが細くて長い毛が生えていることが確認され、これはエゾフユノハナワラビと見て良いだろう。エゾフユノハナワラビはやや寒い地域に生育しているが、分布を見ると南アルプスの静岡県側にも生育しているようで、おそらく山梨県でも南アルプスだけでなく八ヶ岳や奥秩父山系にも生育している可能性が高いと思われる。さらに調査を進めて行きたい。



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チチブシロカネソウ(キンポウゲ科)

2020年09月29日 | キンポウゲ科
 山地帯の樹林下や渓谷沿いに生育する多年草である。夏期は5月。清楚な白花は時に辺縁がピンク色に染まり、渓谷に舞い降りた妖精のようである。山梨県では南アルプス、大菩薩・小金沢連峰、奥秩父に生育しており、生育地での個体数はあまり多く無い。近年の台風や豪雨により渓谷沿いの個体は流出してしまった場所があり、今後が心配である。


    チチブシロカネソウ 平成30年4月 大菩薩・小金沢連峰で撮影


    同上


    同上


    同上 この年は当たり年だったこともあるが、たくさんの花が咲いてくれた。


    清楚な白花。少しピンク色がかっている。


    令和2年5月 同じ渓谷で撮影


    同上 前年の台風と大雨で斜面が崩れ、多数の株が流されてしまっていた。


   同上 群生して咲いている場所は見当たらず。復活を期待したい。


    令和1年5月 南アルプスの山で撮影


    同上 この場所は個体数が少なく花付きも悪い。


    周辺に生えているルイヨウボタンと競合しているように見える。今後を期待したい。

 ➡山梨県の絶滅危惧のキンポウゲ科植物一覧に戻る

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コウヤワラビはどうなっているのだろうか? 北杜市中山近傍の林道  令和2年9月26日

2020年09月29日 | シダの仲間
 石空川渓谷、尾白川渓谷とシダを中心に散策してきたがいずれの場所でも雨に見舞われた。しかし渓谷から抜け出ると雨はあまり降っていない。時刻は午後4時になったが日没まではまだ少し時間がある。春先に幼葉を見てからずっと気になっていたコウヤワラビの胞子穂がそろそろ出ている頃ではないだろうか。ちょっとだけ立ち寄ってみる。


    林道脇に生えているのを春先に発見したコウヤワラビ。シダらしからぬ奇怪な葉が可愛らしい。


    胞子穂が出ているだろうと思ったのだがまだ出ていない。後ろにあるのは昨年の胞子穂の残骸。


    このシダはいつになったら胞子穂を出すのだろうか?


    周辺を散策。これはトウゴクシダのようだ。


    最下羽片の下向き小羽片が大きい。


    真っ黒な鱗片


    ベニシダに似たソーラス。たぶんトウゴクシダで間違いないだろう。


    こちらがその隣にあったベニシダ。


    最下羽片の下向き小羽片は大きくならない。

 このあたりには少し風変わりなベニシダがあるらしく、交雑のベニシダではないかとシダの師匠が疑っているようであるが、今の私のレベルではとても判別できるようなものでは無い。もっとたくさん見て廻り、勉強しなければならない。


    あまり見慣れないハグマが生えていた。


    カシワバハグマ


    たぶん低山に普通にあるのだろうが今まで気にしていなかったのだと思う。

 車に戻って靴を脱ごうとしたら手にナメクジが付いている・・・と思ったら出血しているではないか。血を吸って丸くなったヤマヒルだった。指で弾き飛ばしてカット判を張っておく。足元には付いていなかったが念のためアルコールスプレーを振りかけておく。さらに、サービスエリアでトイレに立ち寄ったらもう1匹ポロリと落ちてきた。ズボン下にスパッツを履いていたので吸血未遂に終わったようである。まさかあんな林道にヤマヒルが居るとは驚きである。石空川や尾白川は大丈夫だとは思うのだが、今後は注意が必要かも知れない。



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尾白川渓谷の花とシダを少しだけ散策  令和2年9月26日

2020年09月28日 | シダの仲間
 石空川渓谷では土砂降りの雨だったが渓谷を抜け出すと雨はあまり降っていなかった。どうやら山沿いだけ雨が強かったようである。ではもう1ヶ所、そちらの渓谷でもアカハナワラビの葉を見たことがある尾白川渓谷を少しだけ散策してみる。小雨が降っているがさほど強い降りでは無い。カッパを着て散策に出かける。


     橋を渡って渓谷に入る。小雨だったが散策している人がちらほらと居た。


    気になっていたのがこのエビラシダがどうなっているかだったが、もう枯れかけている。


    まだまともなほうのエビラシダ


    成熟したソーラスがまばらに付着。


    決着を着けたいと思っているのがこのイノデの仲間。南アルプスのやや高地で目撃したホソイノデを期待したのだが下部羽片は縮小していない。


    ソーラスは中肋と辺縁の中間あたりに付着。


    やや幅広い茶色い鱗片


    中軸の鱗片はやや幅広(披針形)か細長い(線状披針形)。おそらくこれはイワシロイノデであろう。


    この渓谷沿いで多いのはシラネワラビとそれによく似たこのホソバナライシダ。第1羽片の下向き最下小羽片だけでなく第2羽片の下向き最下小羽片も大きい。


    葉裏の全体にソーラスが付着する。


    ソーラスは裂片の辺縁寄りで切れ込みのところに付着する。


    淡褐色の鱗片が付着しているはずだが痛んで軸に張り付いてしまっている。


    シロヨメナは今が花盛り。


    シロヨメナとホソバナライシダ


    オクモミジハグマも見ごろを迎えていた。


    オクモミジハグマ

 ジンジソウがそろそろ咲く頃なので探してみたがまだ早かったようで発見出来なかった。もっと上まで上がれば群生しているはずなので途中まで登ったものの、なかなか着かず心挫けて撤退してきた。駐車場に到着した途端に雨脚が強くなってきた。下りてきて正解だったようである。


    こちらでも遭遇したアカハナワラビ。本日一番の大株である。


    アカハナワラビ。マクロレンズで撮影。

 本日は1日中アカハナワラビ三昧だった。

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アカハナワラビ三昧 石空川渓谷   令和2年9月26日

2020年09月28日 | シダの仲間
 昨年の秋から調べているハナワラビの仲間であるが、フユノハナワラビだと思って今まで見てきたものはほとんどがオオハナワラビであったことが分かってきた。そして未だにフユノハナワラビは見ていないことが分かったが、アカハナワラビなるものが普通にあることも分かってきた。数ヶ所で見てきているが未だに胞子穂が出ている個体を見たことが無かった。数日前に仲間のブログを見ていたらそれらしき画像が載っていた。電話して場所を聞くと南アルプス山系の渓谷であることが分かった。場所的にアカハナワラビである可能性が高く、さっそく見に行ってみる。前日にも行ってみたのだが現地の駐車場に到着した途端に土砂降りの雨となり撤退してきた。本日もいつ雨が降ってもおかしく無い天候であるが、カッパを着て行ってみる。傘を探したが置き忘れてきてしまったようである。


    橋を渡って渓谷に入る。


    山の上は雲がかかって真っ白である。いつ雨が降って来てもおかしくない空だ。


    薄霧のかかる森の中を探索する。


    さっそく現れたアカハナワラビ。


    葉の辺縁は鋸歯状でオオハナワラビに似るが葉に白っぽいまだら模様が入る。


    胞子穂が出ている個体を発見。


    葉


    別のハナワラビも発見。


    胞子葉の枝分かれが少なく葉の切れ込みが少ない。ナガホナツノハナワラビと思われる。


    さらに別の場所を探索してみると、次々にアカハナワラビが現れた。


    並んで出ているアカハナワラビ


    広葉樹林のやや湿った林床を好んで生育している。


    3本並んでいる株にも出会えた。

 これだけたくさん生えているところを見ると、おそらくそれほど珍しいものでは無いのであろう。今まであまり気にして見ていなかったことが見かけなかった理由だと思われる。もう少し奥まで行って別の花も見てみたかったのだが、降り出したと思ったらあっという間に土砂降りの雨となり、急いで撤退してきた。アカハナワラビは存分に楽しむことが出来たが、葉の数に比べて胞子穂が出ている株は少ないことが分かった。


    小型のシロヨメナ

 今年は本物のフユノハナワラビを見てみたいと思っているが山梨県のどちら方面を探せば良いのか検討中である。御坂山系から南側は主にオオハナワラビ、南アルプス、昇仙峡あたりはアカハナワラビが主であることが分かってきた。まだ探索していない東のほうに行けばフユノハナワラビに出会えるのかどうか?これから探してみたい。

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エゾムカシヨモギ(キク科)

2020年09月24日 | キク科
 高山帯の砂礫地や岩壁に生育する多年草である。花期は8月。山梨県では北岳周辺と八ケ岳に生育している。


    エゾムカシヨモギ 令和1年8月 北岳で撮影


    同上

 2018年版山梨県レッドデータブックには個体数はわりと多いと記載されているが私が見たのはこの個体のみである。引き続き探索したい。

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アズマギク(キク科)

2020年09月24日 | キク科
 山地の乾燥した草地やカヤト野原に咲く多年草である。花期は5月~6月。山梨県では富士山麓で生育が確認されているが奥秩父山系でも発見された。個体数は少ない。


    アズマギク 令和1年5月 奥秩父山系で撮影


    同上


    同上 カヤト野原の草地の中に時として咲いている。


    同上 タンポポを薄紫色にしたような美しいキクの仲間である。


    同上


    奥秩父の山並を背に咲いていたアズマギク

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アキノハハコグサ(キク科)

2020年09月24日 | キク科
 山地帯の日当たりの良い砂礫地や草地に生育する。花期は9月から10月。山梨県では御坂山系で生育が確認されているが斜面の崩落により危険な状況にある。


    アキノハハコグサ 平成26年10月 御坂山系で撮影


    同上 


    同上 苞や茎に白い綿毛が密生する。


    同上 数本に枝分かれして花を付けるところがハハコグサとの違いである。

 発見された時に幸運にも同行しており、この花の存在を知ることとなった。

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南部町に生育するスルガジョウロウホトトギス探索調査  令和2年9月22日

2020年09月24日 | 山に咲く花
 ここ数年来の秋の恒例となっているスルガジョウロウホトトギスの探索調査である。山梨県県条例で特定指定種に指定されたこの花は山岳レインジャー活動の調査対象種になっている。例年同じ沢の奥にある自生地を調査していたが、今年は厳選メンバー5人で訪問したので出来れば別の沢にも入ってみたいと思っていた。ところが・・・いつかやらかすだろうと思っていたがこの日、遂にやってしまった。6時半に集合だったのに目を覚ませば空が明るい。時計を見れば7時10分前である。目覚まし時計が鳴らなかったようで、完全に寝過ごしてしまった。仲間に連絡して先に行ってもらうことにして、急いで自宅を出発する。中部横断道を使って移動し、現地の駐車スペースに到着したところちょうど仲間たちが車を止めて準備しているところだった。車高の低い車があったため、悪路の林道を通過するのに手こずっていたようでなんとか追いついた。予定よりも30分ほど遅れてしまったが、さて、出発である。


    シラヒゲソウ 林道脇のこの場所は例年とあまり変わらず咲いていた。


    ところが渓谷沿いの岩場に生育していたものは岩の崩落があったようでだいぶ減ってしまっていた。


    白花のツルリンドウ


    苔が剥げ落ちたのと一緒に個体数が減ってしまっていた岩壁は、苔が生えてきて個体数もだいぶ回復してくれた。


    復活したスルガジョウロウホトトギス


    イワシャジンも咲いていた。


    さらにその奥の自生地は昨年以上に個体数が減少している。


    斜面の崩落や苔の脱落によるものだと思う。残念。


    発見当初は花を付けていない個体を含めて300株くらいあったと思うが半分くらいになってしまった。


    さらに次の場所に行ってみる。ここは変わらずに花を咲かせていてくれた。


    見事なり。甲斐のスルガジョウロウホトトギス。

 例年ならば10匹以上のヤマヒルを撃退しながら歩く渓谷道だが、今年はあまり居ないようで退治したのは3匹だけだった。年々ヤマヒルが減ってきているように思う。歩くには良いのだが環境の上ではこれは良いことなのかどうか?山の中が乾燥してきているということではないのだろうか?

 まだ時間があったので、以前から目を付けていた別の沢に入ってみる。苔の生えた雰囲気の良い谷だったが、先に進んで行くとお決まりの崖のような急峻な谷に変わる。頑張って登ってみると、やはりこちらの谷にもスルガジョウロウホトトギスが咲いていた。


    谷間の奥に咲いているスルガジョウロウホトトギスを発見。この先は急峻で登れない。


    急峻だがなんとか登れそうな別の谷に入ってみる。


    ここにも咲いていた。ただ、谷が狭く個体数は少ない。


    しかしこちらの谷にも咲いていてくれて感無量だった。

 初めて入る谷は先がどうなっているか分からないうえに何が出てくるか分からない怖さとワクワク感がある。このワクワク感が探索調査の時のいちばん面白いところだと思う。たいていの場合は空振りに終わるのだが、今回は目的の花に出会えて大成功である。


    シダも見て廻る。ウチワゴケは苔のように見えるがシダの仲間である。


    ウチワのような葉の先にラッパ型の胞子葉が出ている。その中に胞子が付いている。


    カラクサシダ。葉に毛が生えているのが特徴。


    カラクサシダは冬緑性のシダで、ソーラスはこれから成熟するところである。


    チャセンシダ、かと思ったが・・・


    先端近くに無性芽が出ていた。これはイヌチャセンシダのほうだろう。


    裏側を確認すると、軸の裏側にも翼が付いている。計3枚の翼を持っており、これはイヌチャセンシダである。


    ずっと気になっていたヨメナの仲間を確認する。これは普通に見かけるシロヨメナだと思う。


    しかしこの渓谷にはもうひとつ別のヨメナが生育している。


    葉の形が切れ込みのあるハート形をしている。これはいったい何?


    左が普通のシロヨメナ、右が正体不明のヨメナ。


    花に詳しい仲間に問い合わせてみたところ、これはタテヤマギクという花であることが分かった。

 タテヤマギクは富山県立山のほうでは無く丹沢の立山というマイナーな山の近くで見つかったことから付いた名前だそうである。神奈川県西部や静岡県、東京都南多摩地区に局地的に生育しているようで、環境省の準絶滅危惧種に指定されている。おそらく山梨県では生育が知られていないキク科植物なのではないかと思う。いずれは山梨県絶滅危惧種の仲間入りする可能性が高い植物であるが、分布域や個体数などはもう少し調査する必要がある。

 寝過ごしてしまい仲間には迷惑をかけてしまったが、探索調査としてはたいへん実のある調査になったと思っている。





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八ケ岳観音平周辺を散策  令和2年9月20日

2020年09月23日 | シダの仲間
 本日は雨の予報だったので散策せずに画像の整理を行う予定だったのだが、朝起きて空を見上げると雨は降っていない。少しすると雨が降り出したがほんの小雨である。スマホで雲画像と雨雲レーダーを見てみると甲府市より南側は雨雲がかかっているものの北杜市よりも北側は降っていないようである。ならばちょっと散策に・・・と中央道に乗り空を見ながら行き先を考える。行ったことが無い入笠湿原のエゾリンドウを考えたが山には雲がかかっていておそらく花が開いていないであろう。前日訪れた鳳凰山杖立峠のエゾフユノハナワラビらしきシダが八ケ岳の観音平でも発見されたという話を耳にした。観音平のどのあたりなのかという情報は無く、探索しても発見できない可能性が高いのだが、ひょっとしたら・・・という思いで観音平周辺を散策してみることにする。インターを小淵沢で下りて観音平に向かい、お昼頃から散策を開始する。ハナワラビの仲間の生育している環境から見て、森の中の少し開けた草地が疑わしい。だとすれば、観音平にある2つの展望台あたりが怪しいのではないかと考えて周回してみる。


    笹原の多い観音平。大型のシダが生えている。


    ヤマドリゼンマイかと思ったが根元近い部分に胞子葉が残っていた。


    もう枯れかけているが、これはオニゼンマイ。この周辺にあるのはほとんどがオニゼンマイだった。


    こんな笹原の中ではシダは期待できない。展望台に向かう。


    岩の隙間に生えていたのはヘビノネゴザ


    イワデンダも結構生えている。


    ヤブレガサ


    最近気をつけて見ているトリカブトの仲間。葉は深裂しているがあまり細く無い。


    しかし花柄の部分を見てみると直毛が密生している。


    どうやらこれはホソバトリカブトのようである。


    ミヤマママコナが少しだけ生えていた。


    展望台に到着。

 展望台の周辺は少しだけ草地になっているがほとんどが笹原である。草地の中や周辺を探したが残念ながらハナワラビの仲間は発見できなかった。さらに上に登ってもうひとつの展望台(雲海展望台)に行ってみる。


    八ヶ岳の稜線で見かけるホソバトリカブトとはだいぶ違う感じがするが、これも同じもののようだ。


    オニゼンマイの大群落があった。前にも見ているはずだがシダに興味が無かったので見過ごしていた。


    ハナワラビの仲間は発見できなかったが奇怪なシダに遭遇した。


    先日の瑞牆山でシダの師匠から解説を受けていなければ正体が分からなかったであろう。


    小羽片の先端部が細かく切れ込んで尖るこのシダはカラフトミヤマシダであろう。


    ソーラスが付いていればほぼ確実に同定できるのだが、どれを見てもソーラスが付いていない。

 カラフトミヤマシダは主に八ヶ岳や奥秩父山系の山域に生育し、北海道にも生育している。珍しいシダではあるが山梨県では絶滅危惧種に入っておらず、次のレッドデータブック書き換え時には登録されてくる可能性があるシダである。ソーラスが確認出来ず確定には至らないが先端が尖る小羽片の形から見てたぶん間違いないと思う。


    雲海展望台に到着。天候が悪かったので登山者は少なかったようで、数人に出会ったのみだった。

 やはり目的のハナワラビの仲間はそう簡単には姿を見せてくれない。北岳で見つかったのは標高1,900m付近、鳳凰山は2,200m付近である。いずれもエゾフユノハナワラビであろうと思われるが、八ヶ岳のものはどうなのだろうか?もし同じくエゾノフユノハナワラビだとすればもう少し高度の高いところに生育している可能性が高く、もっと上を探してみなければならないであろう。いずれは姿を見る日が来ると思う。

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サンプクリンドウ(リンドウ科)

2020年09月23日 | リンドウ科
 高山帯の日当たりの良い砂礫帯に咲く多年草である。山梨県では北岳周辺に生育し、花期は8月下旬~9月である。生育地での個体数は少ない。


    サンプクリンドウ 平成30年9月 北岳で撮影


    同上 小さな花である。


    同上 サンプクリンドウの花

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キタザワブシ(キンポウゲ科)

2020年09月23日 | キンポウゲ科
 亜高山帯の草地を主に生育する多年草であるが高山帯にも生育している。主に南アルプス山系に生育している。葉は3深裂~3中裂しほぼ基部まで裂ける。花柄と萼の外面に屈毛(曲がった毛)が生えているところがミヤマトリカブトと違う。


    キタザワブシ 令和1年8月 北岳大樺沢で撮影


    同上


    同上 画面では分かりずらいが花柄に屈毛が生えている。


    平成29年9月 鳳凰山南御室小屋で撮影。ヤナギランに混じって咲いている紫色の花がキタザワブシ。


    同上 南御室小屋前の草地にはキタザワブシがたくさん咲く。きっちり花を撮らなかったのは失敗だった。


    令和2年8月 鳳凰山南御室小屋で撮影。テガタチドリを撮影した際に一緒に写っていた葉がキタザワブシ。


    同上。花はまだ蕾である。葉は深く3裂しさらに細かく裂けるが、ホソバトリカブトやキタダケトリカブトほど細くはならない。


    令和1年9月 櫛形山裸山で撮影。花柄の毛は確認していないが葉の裂け方からキタザワブシと思われる。


    同上

 櫛形山の個体は池の茶屋付近の個体は葉が深裂せずヤマトリカブトと思われるが、裸山からアヤメ平付近の個体は葉が深裂しておりキタザワブシと思われる。さらに注意深く観察する必要がある。

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ホソバツルリンドウ(リンドウ科)

2020年09月21日 | リンドウ科
 山地の草原や林縁、登山道、林道脇などに生育する多年草である。ラン科植物と同様に生育には根正菌が関与しており、移植しても生着は難しい植物である。山梨県では奥秩父山系や御坂山系、大菩薩・小金沢山系、富士山周辺などに生育しているが生育地での個体数は少ない。花期は9月~10月である。


    ホソバツルリンドウ 平成29年10月 奥秩父山系の草地で撮影


    同上 ツルが草に巻き付いて花を咲かせる。


    同上 薄紫色の上品な感じがするホソバツルリンドウの花


    平成28年10月 大菩薩・小金沢山系で撮影


    同上 ススキの葉に巻き付いて花を咲かせていた。


    同上


    令和1年10月 御坂山系で撮影したホソバツルリンドウ


    同上 稀に見かける白花のホソバツルリンドウ


    同上 うっすらと色が付いていた。

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ハナワラビの仲間の正体は? 鳳凰山杖立峠へ  令和2年9月19日

2020年09月21日 | シダの仲間
 平成29年9月に鳳凰山を訪れた際に中腹の草地でハナワラビの仲間のシダを目撃した。この時はヒメハナワラビだろうと思っていたが、9月になっても胞子穂を出していることに違和感を感じていた。そのまま解決せずに何年かが過ぎ、昨年秋になってからハナワラビの仲間を見て廻っているうちにこのシダのことを思い出した。葉の感じはフユノハナワラビに似て鱗片の鋸歯がはっきりしていないが花期が違う。かつ、小型のうえに葉に厚みがあるように見える。図鑑で調べてみるとヤマハナワラビがいちばん近そうである。今年は9月に入ってから確認に行くことを決めていた。しかしその前の8月に北岳を訪れた山岳レインジャーのメンバーから変わったハナワラビの仲間が見つかったと報告があった。シダの師匠のところにもメールが届いたようで、専門家に鑑定していただいたところエゾノフユノハナワラビだろうという返事が返ってきた。ヤマハナワラビとの違いは茎や葉の裏にやや長い毛が生えていることである。今年8月に鳳凰山に行った際に個体が残っていることは確認してきた。あとは胞子穂と葉裏に毛が生えているかどうかを確認しなければならない。


    平成29年7月に鳳凰山杖立峠で撮影したハナワラビの仲間。もっと大きいのがあったのだが下山途中で撮影しようとしたら食害で無くなっていた。


    この画像を見る限りでは胞子穂の茎には毛が生えていない。ヤマハナワラビではないかと思われた。

 日帰りで行くには少し遠いが十分に行ける距離である。朝8時に夜叉神峠を出発する。


    それにしてもずいぶん殺風景な斜面になったものである。草だけでなくマルバタケブキも無くなっているようだ。


    かつては群生していたのに少ししか無くなってしまったシコクママコナ


    8月に見た時はもっと背の高い株があったはずだが・・・?


    ひとつも花が咲いていないマネキグサ。見れば背の高い部分は全て千切れており、食べられてしまったようだ。


    夜叉神峠到着。白根三山は雲に隠れている。


    アザミの仲間もだいぶ減った。ヤハズヒゴタイは全く見つからない。


    総苞は細くて総苞片は反転、茎に毛が無い。ホソエノアザミと思われる。


    登山道脇の苔の中から黄色いキノコ?がたくさん生えている。調べてみたらカベンタケというキノコらしい。


    杖立峠の目的地近傍に到着。大休憩する。


    天候が回復して白根三山が見えている。


    秋空の北岳

 昼食をとって休憩後、目的地まで移動してシダを探すが・・・小さな個体は見つかるものの胞子穂を出しているものはひとつも見つからない。8月に見たはずの少し大きめの個体が見当たらず、どうやら食害に遭っているようである。


    目的のハナワラビの仲間は見つかったものの小さな個体ばかりだ。


    胞子穂を出している個体がひとつも見つからない。


    これでも大きいほうである。通常ならばこの3倍くらいの大きさになるはずだ。


    裏側を観察。


    茎と葉軸に細くてやや長い毛が生えている。


    やや厚みのある葉と鋸歯状の辺縁

 胞子穂が無いので確定までは至らないが、裏側の葉柄と葉軸に毛が生えているところを見るとこれはエゾフユノハナワラビと見て良さそうである。しかし生えている毛の数が少なく、個体も小さいので答えは保留ということにしておきたいと思う。


    白根三山に夕陽が傾く。夜叉神峠から撮影。

 残念ながら確定に至らず、来年以降に持ち越しとなってしまったが、このまま消滅せずに生き残ってくれるのかどうかが心配である。来年は北岳の個体も確認に行ければと思う。

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