軍隊を持たない「丸腰の平和国家」を実現したコスタリカ。戦力不保持を謳う憲法9条を持つ日本とよく似ていると比較して紹介される国ですが、次なる目標は「持続可能な国家」といいます。「原発を考える戸田市民の会」ブログでも紹介しましたが、「とだ九条の会」でも2018年10月15日配信「ハーバー・ビジネス・オンライン」
から転載させていただき、紹介することにします。(サイト管理者)
※以下、転載はじめ↓
〈中米で最も豊かな国となった、「丸腰国家」コスタリカ。次の戦略は「持続可能国家」〉
1948年12月1日に軍隊廃止宣言をしてから、もうすぐ70年を迎えようとするコスタリカ。その道のりは決して平坦ではなかったが、軍隊を持たない「丸腰国家」という選択は決して間違いではなかったという自信は、ほとんどのコスタリカ人に定着している。その彼らが次に掲げるビジョンこそ、「持続可能国家」だ。
◆「エコツーリズム発祥国」から「再生可能エネルギー100%発電国」へ
そもそも中米の最貧国だったこともあって、経済発展は必須だった。そのために行った牧場の乱開発により、1980年代には自然保護が喫緊の課題となっていく。そこで、「エコツーリズム発祥国」として、環境保護と経済発展を両立させる針路に舵をきる。
気づけば、今では中米で最も豊かな国になった。2015年には「先進国クラブ」である経済協力開発機構(OECD)への加盟協議も始まった。国家戦略としてはおおむね成功していると評価していいだろう。
そのコスタリカが今世紀に入って掲げた国家戦略は、「再生可能エネルギー100%発電」と「カーボン・ニュートラル」である。2007年、当時の大統領であるオスカル・アリアス・サンチェスは、2021年までの国家目標として、再生可能エネルギーによる発電率100%とカーボン・ニュートラルの同時達成を目指すことを宣言。コスタリカは新たなステージへと進む決意を示したのだ。
◆クリーンエネルギーだけで発電するコスタリカ
再生可能エネルギー発電に関しては、2015年から約98%を水力・地熱・風力で発電し、ピーク時や供給不足時にほんのわずかの石油火力プラントを使う以外はほぼ達成している。電源構成としては、時期によって変動があるものの、おおむね水力が7割強、地熱が1割強、風力も同程度といったところだ。
先進国ほど重工業がなく、気候的に空調が必要なこともあまりないため、電力需要はそれほど高くない。とはいえ、需給バランスの変動に対応するために柔軟な電源構成が必要とされるのはどの国でも一緒だ。
そのため、国家戦略として電源マトリックスを策定し、それに従って電源開発を行なっている。量的にいえば、メインになるのは上記のように水力だが、雨季と乾季がはっきりしているコスタリカの場合、乾季の終わり頃になると水が不足することもある。そのため、割合としては大きくとも、電源として季節的不安定性があるため、コスタリカはこれをベース電源とは位置づけていない。
実は、わずか1割強の供給量しかない地熱発電こそ、この国のベース電源とされているのだ。地熱は供給が最も安定していて、定期点検の時以外はほぼフル稼働している。点検は順番に行うため、地熱がまとめてダウンすることもない(意図的に止めない限りは)。
その上に豊富な水力発電を上乗せし、足りない部分を風力で補う形で電源マトリックスを考えている。火力発電所は、そのマトリックスの中ではあくまで「緊急時のバックアップ電源」と捉えられている。
施設容量の割合でいえば、地熱は1割にも満たない。他方、火力発電所の施設容量は約2割。火力発電所の職員は、「最新型の“動かさない大規模火力発電所”で働くことが我々の誇りだ」と胸を張る。
現在、そのベース電源を強化するため、国家プロジェクトとして地熱発電所の開発を積極的に進めている。同時に、風力発電には民間企業が積極的に参加し、今年初めて風力による発電が地熱を上回った。ますます「年間を通じて再生可能エネルギーのみで発電」という野望に近づいている。
◆「カーボン・ニュートラル国」から「脱炭素国」へ
カーボン・ニュートラルに関しても、カルロス・アルバラード現大統領は、今年5月の就任式において、2021年までに達成するとわざわざ強調するほど、国家の最重要目標とされている。
ただし、炭素の排出量は増える一方だ。コスタリカのエネルギー需要のうち半分以上を占めているのは、輸送部門である。こればかりは、ほとんどが内燃機関で動いているため、そう簡単に脱炭素化できない。
加えて、右肩上がりの経済発展に伴って、自動車の台数もうなぎのぼりだ。この30年で人口は約3割増えたが、車の増え方はそれ以上。近年は「新生児登録数よりも新車登録台数の方が多い」ことがしばしばメディアでも話題にのぼるほどである。
しかしコスタリカは、炭素の排出と吸収の収支をゼロにするカーボン・ニュートラル達成後の先も、しっかりと見据えている。2030年から「脱炭素化」を始めることも明確に謳っているのだ。つまり、排出する炭素の絶対量を減らしていくということである。
カーボン・ニュートラルの達成は、主に炭素の吸収量を増やすことで達成される。しかし、それでは根本的な解決にはならないとコスタリカ政府は考えている。つまり、炭素の排出量を減らさなければならないと明確に認識しているのだ。とはいうものの、現状として炭素の排出量の増加はとどまるところを知らない。
そこで、車の台数が増えることを前提にしつつも、モビリティにおける炭素排出を削減するという大胆で野心的な目標を掲げた。方法は主に3つに分かれる。鉄道網の拡充と電化、自家用車におけるEVの導入、そしてバスやトラックなど大型車の水素燃料化だ。特に水素燃料に関しては、大統領就任式の際、アルバラード新大統領が水素バスに乗って式典会場に現れ、その強い意志を国内外に力強く示した。
◆山積する課題をクリアして、全員野球で「持続可能国家」へ
ただし、課題も山積している。鉄道に関しては徐々にそのネットワークを拡大しつつも、踏切の未整備などによる事故の多発や度重なる遅延など、電化以前の問題が多い。EVを導入するにしてもコストが高すぎるし、そもそもコスタリカは自動車を生産していない。水素エネルギーに至ってはまだ実証実験段階で、しかも政府は手を出さずに民間主導で開発されている。民間セクターからは法的整備を要求される始末だ。
とはいえ、大きな野望をまず掲げ、それに向かって「全員野球」を進めていくことで課題をクリアしていくのが、コスタリカの近現代史でよく見られるパターンでもある。エネルギー的にも炭素的にも、そしてもちろん経済的にも、国内で循環するモデルを構築できれば、「平和国家」から「環境立国」へと続いてきた世界におけるコスタリカの立ち位置を、「持続可能国家」にまで高めることになるだろう。引き続きこの国には要注目だ。
【文:足立力也】 コスタリカ研究者、平和学・紛争解決学研究者。著書に『丸腰国家~軍隊を放棄したコスタリカの平和戦略~』(扶桑社新書)など。コスタリカツアー(年1~2回)では企画から通訳、ガイドも務める。
【出典】2018年10月15日配信「ハーバー・ビジネス・オンライン」
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