昨日に引き続き、日弁連の第51回人権擁護大会より、採択された「平和的生存権および日本国憲法9条の今日的意義を確認する宣言」の提案理由を転載し、ご紹介します。
3.憲法に関連する諸立法や解釈改憲の動きなど ここ約10年の間に、周辺事態法、テロ特措法、イラク特措法、武力攻撃事態法などの有事法制3法、国民保護法などの有事関連7法の制定、度重なる自衛隊法の改正や防衛庁設置法の改正に基づく自衛隊の海外派遣の拡大や本来任務化、防衛庁の防衛省への格上げ、テロ特措法に代わる給油新法の制定などの立法や法改正が行われ、また、首相の私的諮問機関(有識者会議)から集団的自衛権の容認を提言する報告書が提出され、国会議員の間で「自衛隊派遣恒久法」制定の動きがあるなど、平和についてのわが国のあり方を大きく左右する立法や政治状況が続いている。
当連合会は、これらの諸立法や動向に対し、適宜、憲法に抵触するものではないか、特に憲法が認めていない集団的自衛権の行使を認めるものではないか、明文の憲法改正を先取りするものではないか、などの点を検討し、意見を述べてきた。たとえば、自衛隊をイラクへ派遣することを目的とするイラク特措法については、2004年2月3日理事会決議、同年4月17日会長声明などで、国際紛争を解決するための武力行使および他国領土における武力行使を禁じた憲法に違反するおそれが極めて大きいものであることにより反対であることを明らかにし、そのうえで、自衛隊の派遣先がイラク特措法が禁じる「戦闘地域」であることも指摘し、繰り返しイラクからの撤退を求めてきた。
名古屋高等裁判所は、2008年4月17日、いわゆる自衛隊イラク派遣差止訴訟判決において、航空自衛隊がアメリカからの要請によりクウェートからイラクのバグダッドへ武装した多国籍軍の兵員輸送を行っていることについて、バグダッドはイラク特措法にいう「戦闘地域」に該当し、この兵員輸送は他国による武力行使と一体化した行動であって、自らも武力の行使を行ったとの評価を受けざるを得ない行動であると判断した。そして、憲法9条についての政府解釈を前提とし、イラク特措法を合憲とした場合であっても、この兵員輸送は、武力行使を禁じたイラク特措法2条2項、活動地域を非戦闘地域に限定した同法同条3項に違反し、かつ憲法9条1項に違反するとの判断を示した。そのうえで判決は、原告個人が訴えの根拠とした憲法前文の平和的生存権について、現代において憲法の保障する基本的人権が平和の基盤なしには存立し得ないことからして、全ての基本的人権の基礎にあってその享有を可能ならしめる基底的権利であり、単に憲法の基本的精神や理念を表明したにとどまるものではなく、局面に応じて自由権的、社会権的、または参政権的な態様をもって表わ れる複合的な憲法上の法的な権利として、その侵害に対しては裁判所に対して保護・救済を求め法的強制措置の発動を請求できるという意味において、具体的な権利性が肯定される場合もあり、憲法9条に違反する戦争への遂行等への加担・協力を強制される場合には平和的生存権の主として自由権的な態様の表れとして司法救済を求めることができる場合がある、と判示した。
当連合会は、4月18日、名古屋高等裁判所の判決について、同判決は当連合会のかねてからの主張の正しさを裏付けるものであるとともに、憲法前文の平和的生存権について具体的権利性を認めた画期的な判決として高く評価し、あらためて政府に対し、判決の趣旨を十分に考慮して自衛隊のイラクへの派遣を直ちに中止し、全面撤退を行うことを強く求める会長声明を発表した。
(つづく)
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