韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は4月27日、軍事境界線のある板門店の韓国側施設「平和の家」で首脳会談を行いました。両首脳は「完全な非核化により、核のない朝鮮半島を実現するという共通の目標を確認した」とする「板門店宣言」に署名し、朝鮮戦争の終戦を年内に宣言すると発表しました。
「板門店宣言」では南北の相互不可侵や段階的な軍縮を確認したほか、首脳会談の定例化、南北関係発展などに関する合意事項が列挙されましたが、日本政府が注視している日本人拉致問題に関する記載はありませんでした。宣言署名後の両首脳による発言でも言及しませんでした。
また、文大統領が今秋に北朝鮮・平壌を訪問することや、南北共同連絡事務所を北朝鮮・開城に設置することでも一致しました。
【出典参考】2018年4月27日配信「毎日新聞」「共同通信」
◼︎2018年4月27日配信「ハフポスト日本版」が日本語訳した「板門店宣言」全文は以下の通り。
〈韓半島の平和と繁栄、統一に向けた板門店宣言〉
大韓民国の文在寅大統領と朝鮮民主主義人民共和国の金正恩国務委員長は、平和と繁栄、統一を願う全同胞のひたむきな意向を込めて、韓半島で歴史的な転換が起きている意味深い時期に、2018年4月27日、板門店の平和の家で、南北首脳会談を行った。
両首脳は、韓半島にこれ以上戦争はなく、新たな平和の時代が開かれたことを8千万の我が同胞と全世界に厳粛に宣言した。
両首脳は冷戦の産物である長年の分断と対決を一日も早く終息させ、民族的和解と平和繁栄の新しい時代を果敢に向かって行き、南北関係をより積極的に改善して発展させていくべきだという確固たる意志を込めて、歴史の地・板門店で次のように宣言した。
1.南と北は、南北関係の全面的・画期的な改善と発展を成し遂げることで、途切れた民族の血脈をつないで共同繁栄と自主統一の未来を早めていく。
南北関係を改善して発展させることは、すべての同胞の一途な望みであり、これ以上先送りできない時代の切迫した要求だ。
ⓛ南と北は、わが民族の運命は自ら決定するという民族自主の原則を確認しており、すでに採択された南北宣言とすべての合意を徹底的に履行することで、関係改善と発展の転換的局面を切り開いていくことにした。
②南と北は、高官級会談をはじめとする各分野の対話と交渉を早期に開催して、首脳会談で合意された問題を実践するための積極的な対策を打ち立てていくことにした。
③南と北は、当局間協議を緊密にし、民間交流と協力を円満に保障するために、双方の当局者が常駐する南北共同連絡事務所を開城地域に設置することにした。
④南と北は、民族的和解と団結の雰囲気を高めていくために、各界各層の多方面的な協力と交流、往来と接触を活性化することにした。
内部では6.15をはじめ、南と北の両方に意義がある日を契機に、当局と国会、政党、地方自治体、民間団体など各界各層が参加する民族共同行事を積極的に推進し、和解や協力の雰囲気を高めながら、外部では2018年アジア競技大会をはじめ、国際試合に共同で進出し、民族の知恵と才能、団結した姿を全世界に誇示することにした。
⑤南と北は、民族分断により発生した人道的問題を早急に解決するために努力し、南北赤十字会談を開催して離散家族・親戚の再会を含む諸問題を協議し、解決していくことにした。
来たる8.15をきっかけに、離散家族・親戚の再会を進めることにした。
⑥南と北は、民族経済の均衡的発展と共同繁栄を実現するために、10.4宣言で合意された事業を積極的に推進していき、1次的に東海線および京義線鉄道と道路を連結し、現代化して活用するための実践的対策を取っていくことにした。
2.南と北は、韓半島で先鋭化する軍事的緊張状態を緩和し、戦争の危険を実質的に解消するため、共同で努力していく。
①南と北は、地上と海上、空中を含むすべての空間で、軍事的緊張と衝突の根源となっている相手側に対する一切の敵対行為を全面中止することにした。
来たる5月1日から軍事境界線付近で、拡声器放送とビラ散布を含むすべての敵対行為を中止して、その手段を撤廃し、今後の非武装地帯を実質的な平和地帯にしていくことにした。
②南と北は、西海の北方境界線一帯を平和水域にし、偶発的な軍事的衝突を防止し、安全な漁労活動を保障するための実際的な対策を打ち立てていくことにした。
③南と北は、相互協力と交流、往来と接触が活性化されることによる様々な軍事的保障対策を取ることにした。
南と北は、双方の間で提起される軍事的な問題を、滞りなく協議・解決するために、国防部長官会談をはじめとする軍事当局者会談を自主開催し、5月中に将官級軍事会談を開くことにした。
3.南と北は、韓半島の恒久的で強固な平和体制構築に向けて、積極的に協力していく。
韓半島で、正常とはいえない、現在の休戦状態を終息させ、確固たる平和体制を樹立することは、これ以上先送りできない歴史的課題である。
①南と北は、いかなる形の武力も互いに使用しないことに対する不可侵合意を再確認し、厳しく遵守していくことにした。
②南と北は、軍事的緊張が解消されて、互いの軍事的信頼が実質的に構築されることによって段階的に軍縮を実現していくことにした。
③南と北は、休戦協定締結65年になる今年に終戦を宣言し、停戦協定を平和協定に転換し、恒久的で強固な平和体制構築に向けた南・北・米三者または南・北・米・中四者会談の開催を積極的に推進していくことにした。
④南と北は、完全な非核化を通じて核のない韓半島を実現するという共同の目標を確認した。
南と北は、北朝鮮側が取っている主導的な措置が韓半島の非核化に向けて非常に有意義で重大な措置だという認識を共にして、これからそれぞれ自身の責任と役割を果たすことにした。
南と北は、韓半島の非核化に向けた国際社会の支持と協力のために積極的に努力することにした。
両首脳は、定期的な会談とホットラインを通じて、民族の重大事を随時、真摯に議論して信頼を厚くし、南北関係の持続的な発展と韓半島の平和と繁栄、統一に向けた良い流れをさらに拡大していくために、共に努力することにした。
文在寅大統領は、今年秋に平壌を訪問することにした。
2018年4月27日
板 門 店
大韓民国大統領 文在寅・朝鮮民主主義人民共和国国務委員会委員長 金正恩
【出典】2018年4月27日配信「ハフポスト日本版」
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