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詩集「死ねない魂のための音楽」 篠崎勝己 (2024/04) 龍詩社

2024-05-17 23:24:25 | 詩集
第9詩集。71頁に24編を収める。
「ノイズ」8編、「フラグメント」3編、「虚構のための試論」7編、「死ねない魂のための音楽」3編、その他の詩編3編となっている。

話者のいる世界にはさまざまなノイズが充満していて、その中での話者の言葉もまたノイズになって消えていくだけなのだろうか。おそらくは話者もそのことを知っているからこそ言葉を紡いでいるのだろう。

   見えますか 気付いてしまっても言葉にしな
   ければ存在しないことだけれど 言葉の背後
   に現実は無いのだけれど 無いということが
   存在してしまう
   見えますか 何も無いことを見ている私がい
   ることが
                   (「ノイズ2」より)

まるでこの世界をノイズで埋め尽くそうとしているかのようでもある。言葉は断片化されて、なお意味を求めようとしている。

そのような世界では当然のことのように、見えるものも虚構でしかない。「虚構のための試論」はそのような虚構を言葉で手探ることによって触れるものにしようとしている。「いくつかの言葉の連なり」は「意味を創らなければならない」ものなのだ、たとえそれが「誰もわかりはしない意味であっても」だ。(「虚構のための試論1」序より)

   その場しのぎに創り続けた記憶の集積 それ
   がまぎれもなく私の生なのは他に語るべきも
   のなぞなにも無いからで それが私に似てい
   るはずもなく いずれ無数の他者たちのなか
   にまぎれてしまうのだろうけれど
                   (「虚構のための試論4」より)

限りなく言葉を繰り出すことで自分の存在を確かめている詩集だった。「いまどのあたりにいるのだろうか 私たちの生は」(「夢の不在に」より)と呟くのだが、その言葉も発せられると同時に次の言葉を作者に要求してくきているようだった。
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