みちのくの山野草

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まさかこれが「外臺の夢」?、それはないでしょう

2017-04-01 10:00:00 | 「賢治研究」の更なる発展のために
 さて、〝折角強調した「外臺の夢」とは結局一体何だったのか〟で述べたように、この3月25~26日に行われた「賢治学会イーハトーブセンター」主催の「2017年春期セミナー」は、メインテーマ「羅須地人協会とその時代」よりも強調された副題の「外臺の夢」ではあったものの、初日の25日には「外臺の夢」に関しての発表は一切なかった。それならば、翌26日のエクスカーションではそのことに関してのなるほどと思われる発表等があるのかと思っていたが、それもなかった。
 せいぜい関連することであったことは、豊沢川土地改良区のお話し「外臺地区土地改良の位置づけ」という説明だけであった。したがって、この度の春期セミナーが掲げていた、メインテーマよりも強調された副題「外臺の夢」とは、
    「外臺地区土地改良」=「外臺の夢」
ということであり、そしてその土地改良の説明の中身は「外臺の大規模圃場整備」であったから、
    「外臺の夢」=「外臺の大規模圃場整備」
とうことになり、
    「夢」=「大規模圃場整備」
とうことになる。

 しかし私には何故それが「夢」なのかさっぱり分からなかったし、それどころか、私からすればこの外臺で行われている「大規模圃場整備」は「悲劇の始まり」であると直感した。それは、「外臺地区土地改良の位置づけ」を説明して下さった同改良区の業務課長は、
 この一帯は平成19年に洪水で冠水したが、もしそのようなことがあっても、お米は24時間以内の冠水であれば収量に対する影響がないから大丈夫です。
というような意味のお話をしていたがこのことが私の直感を働かせたからだと思う。そして私は、これがまさか「外臺の夢」? いくら何でも、それはないでしょうと思わず一人ごちた。そもそも、初めから冠水を織り込み済みで稲作をする農民はあり得ないはずだ。しかも、私の記憶によればこの一帯は数年前も冠水したはずだ。そのあげく、新しく造られている田圃には堤防も築かれる予定もないという。
 だから私は、こともなげに「北上川が洪水になって冠水しても構わない」と言っているともとれるこのドライな発言に、開いた口がふさがらなかった。このようなことでは、農民の立場に立っていないことは自明だし、もし24時間以上冠水した場合はどうなるのか、あるいは24時間以内にどんな場合でも無冠水の状態に戻せる策も講じてあるのかと、そもそも北上川の東岸には堤防があるというのになぜ西側の外臺側にはそれを造らんのだ等々、私は正直憤りを禁じ得なかった。もし本当に農民の側に立つならば、言い換えれば賢治ならばと言ってもいいだろう、始めっから「冠水してもいい」などと躊躇いもなく軽々しく言えるはずがないだろうと。

 以前に投稿したように、堤防で囲まれた隣の広大な田圃は少なくともこの2年間、たわわに実った稲が刈り取られることもなく放置されていることが繰り返されている。ちなみに、今年も
《三月になっても未だ刈り取られることもなく、倒伏したままの広大な稲田が拡がっている》(平成29年3月1日撮影)

だから、先に私は、この度の圃場整備によって、
    外臺から大切なものが失われ、私の夢が壊された。騙されるなよ。
と賢治は嘆いているはずだということを主張したのだが、この度、「冠水しても構わない」と躊躇いもなく口にするような圃場整備であるということを知って、それは「夢」どころか、「悲劇」だということを私は改めて思った。

 にもかかわらず、では何故このような大規模な圃場整備を1億4千万円弱の国のお金を使ってするのかというと、中には次のように、
 こんな火急とも思われぬ、時代が要請している訳でもない田圃の造成などをわざわざ外臺でやっているのかというと、それは土建屋のためにやっているのであって、彼らにとっては確かに「外臺の夢」であろう。だからこの度の春期セミナーの企画委員会の「外臺の夢」というテーマの掲げ方は土建屋サイドに立っていて、「賢治精神」のサイドに立ってはいない。
と皮肉る人だってあろう。
 そして私ももちろん思う、この度の春期セミナーの企画委員会は、

というように、メインテーマ「羅須地人協会とその時代」よりも強調した副題「外臺の夢」ではあったが、その中身は羊頭狗肉と言われても致し方ないものであったし、たしかにこれでは土建屋サイドであり、「賢治精神」サイドに立っているとは受けとめられない、そして肝心の農民の側にも立ってはいないと。

 ついては、今回のような副題の設定の仕方及び扱い方は検討し直し、今後は改めていただきたい。

 そんな折、実際農業をしている菅野芳秀氏の論考「グローバリズムの果てのむらから」を知って、なおさらにそのようなことを確信した。

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