みちのくの山野草

みちのく花巻の野面から発信。

〔雨ニモマケズ〕(「行ッテ」実践したのかということ)

2017-02-03 10:00:00 | 賢治作品について
<『校本宮澤賢治全集 資料第五(復元版雨ニモマケズ手帳)』(筑摩書房)より>
大切なことはそこへ「行ッテ」実践したのかということ
 さてこうなると、この「ヒデリノトキハナミダヲナガシ/サムサノナツハオロオロアルキ二行」を含む次の〝連〟
  東ニ病氣ノ子供アレバ
  行ッテ看病シテヤリ
  西ニ疲レタ母アレバ
  行ッテソノ稲ノ束ヲ負ヒ
  南ニ死ニサウナ人アレバ
  行ッテコワガラナクテモイヽトイヒ
  北ニケンカヤソショウガアレバ
  ツマラナイカラヤメロトイヒ
  ヒデリノトキハナミダヲナガシ
  サムサノナツハオロオロアルキ
            <『校本宮澤賢治全集 資料第五(復元版雨ニモマケズ手帳)』(筑摩書房)より>
も同じ属性を持つ可能性が頗る大である。つまり、「東ニ病気ノコドモアレバ/……/ツマラナイカラヤメロトイヒ」ということを当時の賢治がはたして実践していたのかというとその保証はあまりなさそうだ。

 まして、仮に賢治がそのようなことを実践していたとしても、特別賢治だけがそのことをもってしてことさら評価されるべきことでもないなとある時以降の私は思うようになってしまった。それは次のようなことをしばしば目の当たりにして以降である。
 先の「東日本大震災」のボランティアに何度か出掛けて行った際にしばしば見知ったことである。それは、沢山の若者たちが地元からのみならず遠くからやって来ていたが、彼らの多くは夜行バスでやって来て、泥にまみれ汗にまみれ、しかもそれらを拭う時間も惜しみながら活動し、そしてまた夜行バスで戻ってそのまま職場に出るというのだ。しかも次のようなこともあった。
 ボランティアに来たのであろう人達の自家用車がかなり駐車していた。その中には〝山口〟ナンバーの車があった。つい嬉しくなって私はその持ち主に声を掛けた。『遠くから大変ありがとうございます』と。するとその車の持ち主、歳の頃25、6歳の若い青年は、何の衒いも見せずに
  『いやあ、困っているときはお互い様ですから』
と爽やかに応えてくれた。
このような沢山のボランティアの若者たちを目の当たりにして私が彼らから教わったことは、いわば「東ニ病気ノコドモアレバ/……/ツマラナイカラヤメロトイヒ」をさりげなくそして熱心に活動している若者たちが沢山いるということだった。

 言い換えれば、賢治が〔雨ニモマケズ〕の中に前掲のようなことを書いていてあったからといって、そのことだけで賢治だけが取り立てて褒められるべきことでもなく、そんなことよりも実際に罹災地に行って現にボランティア活動に汗しているこれらの若者たちをまず褒めねばならないということである。まして、現地に行くこともせずに遠くの地で「東ニ病気ノコドモアレバ/……/ツマラナイカラヤメロトイヒ」と唱うことに私はそれ程の意味も価値も見出せなくなってしまった。だからそうではなくて、
 大切なことは実際そこへ行って実践したということであり、そうしてこそ初めて意味と価値を持つ。
ということを肌で感じたのだった。 

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