先日の長期金利ジャンプアップに続き、政府幹部のドル安好感?発言・・・。ドルそしてアメリカの揺らぎがいよいよ大きくなってきた感じですね。わたしたちもこれに対応していかないと・・・「(戻り)地獄」へ道連れになってしまいますよ?
「(米貿易にとって)弱いドルは良いことだ」(A weaker dollar is good [for U.S. trade].)―――24日、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)の記者会見におけるムニューシン米財務長官のこの発言を受けてドルは円、ユーロそして人民元に対して大きく下落しました。その後25日、ドナルド・トランプ大統領がこれを打ち消そうと(?)「ドルはますます強くなるだろう。究極的には強いドルを望む」(The dollar is going to get stronger and stronger, and ultimately I want to see a strong dollar.)と述べたせいか、ドルは上記下落前の水準に戻りました。もっともドル円は先週末時点で1ドル108円半ばと、先般の「日銀、超長期国債買い入れ減額!」(1/9)直前の同113円台への「回復」どころか、さらに一段、しかも急速にドル安円高方向に進んでいますが・・・
さて、ムニューシン長官の発言真意をどう推し量るか、です。まずはドル安ドル高のどちらがアメリカにとって良いのか・・・は、トランプ大統領がご指摘のとおり、間違いなく「ドル高」です。なぜなら、ドルが強いほうが外国からの輸入品をそれだけ安く購入できるからです。
では、いっぽうの「ドル安」はどうでしょう。「アベノミクス」的に考えると、対外売り上げのドル換算額が多くなるのでアメリカからの輸出には有利、となりそうですが、じつはそうはなりません(?)。もう長い間かの国は、基軸通貨国の特権を利して、自国品ではなく、ドルをひたすら刷り続けて日本や中国、欧州などの産品を買って消費するほうに慣れてしまい、国際競争力のあるメイドインUSAの多くを失っているためです。これでは通貨安をテコにした輸出振興なんて、いまさらできるはずがない・・・
ゆえに、いまのアメリカ(の貿易)にはドル安は良いことにはならない・・・どころかドル建ての輸入品価格が高くなるだけ米国民の実質所得が減少し、貿易収支もさらに悪化する恐れが大きいことから、ドル高よりもずっとリスキーな状況といえそうです。にもかかわらず、どうして同長官はドル安を容認するかのような発言をしたのか・・・ってこれ、この先のドル安はもはや不可避だから、せめて貿易(輸出)にはgood!みたいな通説を語ることで、ドル下落=インフレが喚起する人々の不安感を少しでも抑えよう、といった意図から、なのではないか?
前稿でも書きましたが、大減税政策発動&中国等のドル・米国債離れのなか、ドルおよび米国債価格の低下(長期金利押し上げ)圧力はすさまじいほどに高まっています。そのプレッシャーをいまのアメリカでもっとも強く感じる人は誰か?となれば・・・まさに「火の車」米連邦財政の総責任者、というわけでムニューシン長官の危機感がじつにはっきりと伝わる(?)上記コメントでありました・・・