なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

整形外科術後の膿瘍形成

2016年07月19日 | Weblog

 クリニックから電話で依頼があり、高熱の患者さん(64歳男性)を紹介したいという。発熱以外には症状がないという話だった。市医師会長に就任したばかりの元気な先生で、時々出席する医師会の講演会でも良く話かけてくれる。ふだんは糖尿病と高血圧症でそこに通院していた。

 昨年排尿に時間がかかるという訴えで当院の泌尿器科を受診して、ユリーフの処方を受けていたが、症状が改善して通院をやめていた。最近は頻尿があるというので、尿路感染症、特に前立腺炎を考えたが、直腸指診で前立腺の腫脹・圧痛はなく、尿検査でも混濁はなかった。

 先月初めに隣県の病院で腰部脊柱管狭窄症の手術を受けていた。その後、術創部から糸が出て、クリニックで抜糸していたという。仰臥位になると背中の創部が当たって痛いが、術後なのでそんなものと思っていたらしい。発赤・腫脹・圧痛があり、押すとプニプニしていた。膿瘍形成があるが、深さはわからない。

 単純CTでみると、手術創の直下の皮下組織から背部筋にかけて膿瘍形成を認めた。腰椎への波及も疑われた。肺炎・胆道感染症も否定的で、これが発熱の原因と確診できる。術後の感染なので、手術をした整形外科に紹介するしかない。早速地域医療連携室から連絡をとって、受診する手配をした。

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間質性肺炎+感染?

2016年07月18日 | Weblog

 今日は日直で出ている。比較的受診数は少なかった。間質性肺炎で他の先生が診ている87歳男性(在宅酸素)が酸素飽和度低下で受診した。両側肺に陰影が加わっていた。間質性のような浸潤影のようなで、良くわからない。前回の入院中に間質性肺炎の増悪として、基幹病院呼吸器科に転送された。その時は感染性の肺炎によると判断されて、カルバペネムと抗真菌薬の投与で軽快した。長くは診ないので、また当院に戻ってきたが、まだ食事摂取ができない状態だったので、その後しばらく入院していた。

 今の処方はプレドニン30mg/日にバクタとジフルカン内服で、これで増悪したら厳しいという話をしていた。間質性肺炎のマーカーは外注ですぐにはわからないが、LDHの増加が目立った。プレドニンの増量にするかどうかも迷ったが、今日はステロイド(ミニ)パルスを追加して、抗菌薬(ゾシン)を開始した。

 88歳女性がデイサービスの施設で転倒した。ばたっと倒れたのではなくて、しゃがみ込むように倒れたという話だった。当初は腰が痛いという訴えだったので、外科で胸腰椎のX線を撮影した。背部正中に沿っての叩打痛はなく、X線でも新規の圧迫骨折はないと判断されて、帰宅となった。ところが、病院の駐車場まで行ったところで、嘔吐して腹痛を訴えた。病院に戻ってきて、今度は内科受診となった。右側腹部を痛がっていて、認知症はあるが、転んでから腹が痛くなったという。訊き返しても同じ訴えだった。

 胸腹部CTで確認すると、右側腹部の筋肉内に血腫がある。圧痛部位と一致した。断続的に嘔気も訴えている。外科でも診てもらって、外傷なので外科入院となった。

 昨日「即戦力 循環器疾患診療実践ガイド」樅山幸彦編著(診断と治療社)を購入した。樅山先生は、「さあはじめよう!心電図」(医学出版)の著者だった。「研修医が目の前の患者さんを実際に診断し治療できるようになるための手引書」とある。小著ではあるが、よくまとっていてわかりやすい。非専門医には十分で、これに枝葉を足していけばいい。欠点はどちらの本も小著の割に値段が高いこと。

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「モリタクの低糖質ダイエット」

2016年07月16日 | Weblog

 「モリタクの低糖質ダイエット」はライザップのCMに出ている経済アナリスト森永卓郎さんのダイエット本だ。4カ月で約20Kgのダイエットに成功している。炭水化物大好きで、清涼飲料水がぶ飲みで、HbA1cが11.4%となって、糖尿病の治療をしていた。それが糖質制限+筋トレで、注射(GLP1受容体作動薬)も経口血糖降下薬も必要なくなり、血糖検査だけ定期的に受けているそうだ。

 江部康二先生のブログに、東大の門脇孝教授の話が載っていて、東大病院でも糖質40%の食事を始めていて、門脇先生自身が糖質制限食にしているという。ますます流れは糖質制限に傾いているようだ。

 「糖尿病治療ガイド2016-2017」を見ていた。内容はさほど変わらないが、新薬が次々に出る糖尿病薬が一欄表になっているので整理するのによい。食事療法は、炭水化物60%・55%・50%と微妙な下げ方のままだ。ここから、さらに40%へ下げていくのだろうか。

 「重篤な肝障害(肝硬変など)が合併すると、肝への糖取り込みの低下と糖新生の低下により、食後高血糖とともに食前血糖が起こりすくなる。経口血糖降下薬ではこの状態を是正することは困難で、速効型(または超速効型)インスリンの毎食(直)前3回注射が必要である。」というところは参考になる。実際に、腹水コントロールの難しい非代償性肝硬変の患者さんが入院しているから。空腹時血糖が低めの割に、食後血糖が高く、ついスイーツを食べると血糖500超になったりする。ついでに膵性糖尿病で低血糖になりやすいことも言及していいと思うが。

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リウマチ性多発筋痛症の再燃

2016年07月15日 | Weblog

 75歳女性が内科医院からの紹介で受診した。この方は2年前に上肢下肢の疼痛・微熱で発症した。リウマチ性多発筋痛症と診断して、プレドニン15mg/日から開始して症状は軽快したが、思ったより回復が遅かった印象がある。その後、プレドニンを漸減して5mg/日になったところで、かかりつけの内科医院に治療継続を依頼していた。症状が安定すれば、3か月分の処方で経過をみるの当院通院でよかったが、かかりつけ医でも合わせてもらいたいと希望された。

 先月治療開始から2年経過したので、プレドニン5mg/日隔日投与に変更になった。2年継続して隔日投与から中止してくださいと紹介状に書いていたので、その通りにしてくれたものだ。先月は症状がなかったが、今月になって上肢下肢か少し痛くておかしいという。初診の時のようなつらい症状ではなかったが、気になるという。把握痛ははっきりしない。

 検査すると、白血球数は正常域、血沈41mm/時、CRP0.3mg/dlとかすったような?値だった。ちょっと迷ったが、この患者さんは「死んでもいいけど、痛いのはイヤ」というのが口癖だった。初期量まで戻すほどではないと判断して、プレドニン5mg/日毎日で経過をみることにした。

 82歳女性が入院中の精神科病院からの紹介で受診した。中年のころから躁うつ病で治療を受けている。パーキンソン病の治療も受けていて、L-dopaによるdyskinesiaで先月当院の神経内科に1週間ほど入院していた。薬剤の調整で軽快して、もともと精神科病院に入院予定だったので、そのまま入院していた。入院後に精神的には落ち着いた、と付き添ってきた夫が言う。もともとADLは悪く、介助でやっと歩行器歩行が少しできるくらいらしい。今日は車椅子からの起き上がりができないので、パーキンソン病の悪化でしょうかという紹介だった。

 車椅子で診察室に入ってきた。意識は清明で特に麻痺などはない。車椅子から両手でつかまって立てなくはないようだった。外来看護師さんが前回入院した時のdyskinesiaの症状を覚えていて、あの時と比べたら問題ないですよという。処方の変更もなく、急に悪化するのも考えにくい。よくよく話を訊くと、昨日歩行器を使用していた時に、転倒して後頭部を打撲したらしい。頭痛・嘔気はなかった。

 頭部CTでは頭蓋内出血はなく、骨折もなかった。昨日の転倒がきっかけて、もともと低いADLがちょっと下がっただけらしい。CT後に神経内科医にも診てもらったが、変わりないという。打撲のこと、頭部CTの結果、パーキンソン病の悪化ではないことを記載して、精神科病院で経過をみてもらうことにした。

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Ca拮抗薬による歯肉肥厚

2016年07月14日 | Weblog

 高血圧症で内科外来に通院している81歳男性が、歯科クリニックからの紹介で受診した。Ca拮抗薬の副作用でる歯肉肥厚をきたしているので、処方変更をという内容だった。2010年から高血圧症で通院していて、アムロジピンで治療を開始して、その後ARBが追加になり、今は両者の合剤を内服している。辞めた先生から回ってきた患者さんだった。

 口を開けてもらうと、歯肉が淡いピンク色に腫脹しているようだ。部分入れ歯が歯肉に当たって痛いそうで、入れ歯はずっと使っているが、こんなことは初めてという。入れ歯自体には問題ないようなので、歯肉の問題なのだろう。「よくある副作用症例に学ぶ降圧薬の使い方」には「最短で(処方後)1か月から認められ、通常は6か月から2年で観察される」とある。この方は5年経過して発症したことになる。

 間質性肺炎・治らない気胸の77歳男性は、胸痛ととにかく全体に苦しいという訴えが続いていた。胸部X線では気胸の程度は変わらず、酸素飽和度の悪化もなかった。非癌患者さんではあるが、治す当てがなくなり、昨日から緩和ケアを開始した。使用量は少量だが、うまく効いているようだ。呼吸器センターから転院してきた時から食事はとれない。理髪したこともあるが、体全体が一回り小さくなって戻ってきていた。奥さんにはここからは1日ずつ持つかどうか診ていく段階ですとお話した。

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糖尿病の講演会

2016年07月13日 | Weblog

 昨日は市医師会の講演会があった。糖尿病の講演で、前半は患者さんをどう治療に導くかという話だった。講師の先生は平尾紘一先生のクリニックに内地留学されたそうだ。まず平尾先生直伝の、患者さんの守ってほしい3項目の紹介があった。1)自覚症状がないこと(合併症も含めて)、2)検査をしないとわからないこと、3)きちんと医療機関に通院すること、の3つをまず患者さんに伝えて、中断しないようにすることが大事という。患者指導(一方向性)として上から押しつけるのはダメで、患者さんと交渉(相互関係性)して進めていく。「血糖が高いが、どうしましょうか」と問いかける様にするそうだ。

 日本糖尿病協会で出している、糖尿病連携手帳は良くできているので、せひ活用してほしいという。病院にとってはこの手帳の項目を埋めていくことが糖尿病の良い治療・合併症のチェックになる。特に眼科と連携して、所見を記載してほしいという。これまで検査値は記入していたが、この手帳全体をちゃんと見たことはなかった。

 また石井均先生(奈良県立医大教授)とのつながりもあるそうで、石井先生の医療者には1)知識、2)技術、3)言葉が大事だが、特に言葉、つまりコニュニーションが重要という話もされた。石井先生の「糖尿病医療学入門」と「病を引き受けられない人々のケア」いずれも医学書院刊を紹介された。

 「高齢者の安全な薬物ガイドライン」によると、高齢者ではDPP4阻害薬が最適、というかこれしかないという。2番目はないんですと言われて、確かにそれは常々思っているが、それだけで改善しない時にどうするが困る。

 「糖尿病標準診療マニュアル」は半年ごとに改訂されているそうだ。大血管症合併症の予防効果があり、低血糖と体重増加を避ける治療がエビデンスに基づいて記載されている。第1選択はメトホルミン(500mg/日分2~1500mg/日分3)だが、75歳以上では新規処方は勧められない。第2選択はDPP4阻害薬で、これは使いやすい。SU薬はグリミクロン(20mg/日分1~80mg/日分2)とアマリール(0.5mg/日分1~2mg/日分2)を使用するが、前者は20~40mg/日くらいを後者は0.5~1mg/日と少量で使用する。グリミクロンはハーフのハーフ10mg/日がいいという。アクトスは体重増加・浮腫の副作用があり、7.5mg/日で使用する。DPP4阻害薬+メトホルミン500mgを分1の処方はコンプライアンスがいいので好まれているそうだ。

 「糖尿病ガイドライン」は2年に1回改訂されるが、どれも第1選択としていて、わかりにくい。推奨されるHbA1c7%未満は、表の下に小さく記載されている空腹時血糖130mg/dl、食後2時間血糖180mg/dlに相当することが参考になるそうだ。

 平尾先生は、DPP4阻害薬+高用量メトホルミン+少量のSU薬を、黄金の処方としているという。

 SGLT2阻害薬の薬効は基本的にどれも同じだが、海外で認可されているフォシ-ガ・カナグル・ジャディアンスが良いのではということだった。SGLT2阻害薬は、単独では低血糖を生じない、経口薬である、肥満を助長しないでむしろ減量する、1日1回の処方、すべての糖尿病薬と併用できる、エビデンスがある(出始めている)、血圧・脂質・肝機能も改善する、という点で優れている。

 70歳以下ならば、メトホルミン、DPP4阻害薬、そしてSGLT2阻害薬という処方で治療できる。高齢者でも実際に処方してみると、当初危惧したほどの問題はなく、案外使えるのかもしれない(元気な高齢者にだが)。

 会場の先生方はピンときていなかったようだが、平尾紘一先生・石井均先生という自分がこれまで注目してきた先生方の話が出て、またその考えを継承する先生の話が聴けて有意義だった。(座長の自分が一番楽しんでいた)

 

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内頸静脈血栓塞栓症

2016年07月12日 | Weblog

 Lemierre症候群の65歳男性の腎機能が改善したので、頸部~胸部造影CTを行った。確かに右内頚静脈の血栓塞栓症があった。右頸部の腫脹はまだ若干あるが、疼痛(重苦感)は軽減して、開口障害は消失した。幸いに肺の敗血症性塞栓はなかった。血液培養で2セットから同じ嫌気性菌(グラム陽性球菌・桿菌、グラム陰性桿菌)が検出されたが、それ以上の菌の同定はできないそうだ。残念。抗菌薬をどこまで継続するか、抗凝固薬をどこまで継続するかだ。抗菌薬はセフトリアキソンで開始していたが(溶連菌・インフルエンザ桿菌狙い)、口腔内けんきせいカバーでアンピシリン/スルバクタムに変更している。

 大学病院の感染症科の教授一行が当院の感染病床を見学に来られた。当院には2類感染症対応の感染病床がある。大学病院でも1類・2類感染症対応の病床を造る予定だが、平成30年完成予定になっている。それまでにMERSなどの感染症患者(流行地域からの帰国者)が発生した場合は、感染病床を持っている市中病院にお願いするそうだ。

 当院には感染病床が4床あって、外からの専用の入口もある。建物は立派だが、建設にかかわった感染症に詳しい医師はすでにいない。物はあるが人がいない状態だ。成人麻疹の患者さんなどでごくたまに使用している。大学病院でも、担当する医師は決まっているが、担当する看護師さんをどうするかは決まっていないそうだ。本当にMERSの患者さんが来たら、拒否されてしまうかもしれない。

 「よくある副作用症例に学ぶ 降圧薬の使い方 改訂だ4版 高血圧治療ガイドライン2014対応」を読み返している。高血圧症の本でこれ以上のものはないと思う。

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戻ってきた気胸

2016年07月11日 | Weblog

 間質性肺炎で気胸をきたした77歳男性が戻ってきた。胸腔ドレーンを入れて吸引していたが、まったく改善せず、先月呼吸器センターのある専門病院へ転送していた。胸腔ドレーンをもう1本挿入していたが、改善はみられなかった。当院で挿入した方のドレーンから感染をきたしたので(3週間くらいになっていた)、それを抜去して1本での吸引を継続している。気管支鏡による処置も考慮したが、そもそも胸膜側全体にブラがあり、どこから漏れているのか同定できないので断念したそうだ。呼吸器外科に相談したが、処置をするそばから、さらに漏れてくる可能性が高く、手を付けられないという判断だった。

 先週の金曜日に主治医の先生から、在宅酸素になった経緯などの問い合わせの電話がきた、その時に転院してからの状況を伺って、どうしようもなくて困っている様子だったので、専門的な治療の対象にならなければ当院に戻してくださいと伝えていた。胸部X線で確認すると、肺は広がっていなかった。奥さんの話では、地元の病院に戻ってきたので、患者さん本人は良くなっていると思っているようだという。吸引を継続して経過をみるしかない。刺激の少ない自己血を注入したらどうだろうか。

 慢性腎不全で通院していた91歳女性が、全身性浮腫で受診した。もともとある程度の全身性浮腫はあるので、全身性浮腫の悪化?ということになる。室内の短い距離をやっと歩くくらいだったが、ほとんど動けなくなって、娘さん夫婦が連れてきた。処方されている利尿薬をさらに増量して経過をみるしかない。血液透析の適応はなく、尿毒症が進行していく時はDNRの方針とした。

 紫斑病性腎炎はIgA vasculitisという病名になっていた。ネフローゼ症候群を呈すると50%以上は腎不全になるそうだ。「研修医当直御法度」の第6版が出ていたので、amazonで注文した。第2版から購入していて、第3版には寺沢秀一先生が当院に講演に来たときにもらったサインがある。

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内科学会地方会

2016年07月10日 | Weblog

 昨日は午後から内科学会地方会の教育講演会に行った。演題は、COPD・CKDにおける電解質異常・NSAIDs不耐性(いわゆるアスピリン喘息)・肺高血圧症・糖尿病だった。

 COPDは気流閉塞の話があり、治療は1)LAMAまたは2)LABAを使用して、さらに両者の併用を行う。喘息様の症状があれば3)ICSを追加する。治療によって肺機能低下速度が改善するが、今度は1)呼吸不全(急性増悪)2)肺癌3)心血管疾患への対策が必要になる。また身体活動レベルが低いと予後が悪いので、呼吸器リハが必要になる。安静時に低酸素血症がなくても、運動誘発性低酸素血症(6分間歩行でSpO2が90%未満)があると予後が悪い。急性増悪の治療には、1)抗菌薬2)気管支拡張薬3)ステロイドを使用する。急性増悪の原因として、1)心不全2)気胸3)肺血栓塞栓症にも注意する。

 CKDにおける電解質異常は、東海大学の深川雅史先生が講演された。なるほどと思って聞いていたが、後から振り返ると良くわからない。ご自身の著書を宣伝されていたので、ちゃんと読むことにしよう(持ってはいる)。

 NSAIDs不耐症の話は興味深く聞いた。専門家はいるものだ(講師の所属する相模原病院はアレルギーのメッカだが)。つまり、シクロオキシゲナーゼCOX1阻害作用を持つNSAIDsによる強い気道症状のこと。アスピリン喘息は誤解を招く表現なので、用語が変わってきて、最新の表現はNSAIDs-exacerbated respiratory disease(N-ERD)になるそうだ。アレルギーと不耐症(非免疫的機序)を合わせて過敏症という。セレコックスが最も安全だが、絶対ではない。ただし、NSAIDs不耐症には気道型と皮膚型があり、セレコックスも皮膚型には安全ではない。アセトアミノフェンは比較的安全だが1回500mg以上は危険で1回300mg以下に留めるのがいいという。ステロイドは内服は安全だが、注射薬はコハク酸エステルは危険で、リン酸エステル(デカドロン・リンデロン)が良い。しかし後者にも添加剤としてパラベンなどがほぼ100%含まれていて、投与する時はゆっくり点滴静注する。オマリズマブ(ゾレア)は最も効果があり、予め使用しておくとNSAIDsを投与しても症状が出ないくらいだという。この辺のことは、倉原優先生の喘息の本にあったので読み返そう。

 肺高血圧症は診断がついた時には、まともな肺血管が1/3くらいになっていて予後不良という。胸部X線の肺動脈拡張、心電図の右軸変位・V1・2のR波増高ははっきりしないこともあり、疑ったら心エコーで右室の拡張を確認する。右心カテで平均肺動脈圧が25mmHg以上で確診となる。糖尿病では、エンパグリフロジン(ジャディアンス)の心血管イベント改善(EMPA-REG)に続いて、リラグルチド(ビクトーザ)の心血管イベント改善が発表された(LEADER)。renal eventにも効果があるらしい。

 教育講演会が終わってから、ベーリンガー主催の糖尿病の懇話会に出た(65歳からの糖尿病治療)。立派なホテルでの開催で、参加者が最初から決まっているクローズドな会なので、緊張する。講師は福岡大学内分泌・糖尿病内科の野見山崇先生。新進気鋭の先生で、言い切り方が聴いていて気持ちがいい。beyond the BG controlと題して、これまでのとにかく血糖を下げる治療、質のいい(血糖変動を改善)血糖コントロールに続いて、血糖降下以外の効果をも目指す治療にしていくという話をされた。インクレチン関連薬などの糖尿病薬による臓器保護作用・抗癌作用が明らかになってきている。教室の動物実験で、リラグルチドに抗癌作用を認めたそうだ。最近メトホルミンの癌抑制作用が話題になっている。糖尿病薬が動脈硬化や癌の治療に使われるようになるのだろうか。SGLT2阻害薬は、正常血糖のケトアシドーシスをきたすことがあり、注意が必要というこどだった。また、グルカゴン分泌を促進するかもしれないので、最初にDPP4阻害薬を使用した上での使用が好ましいという。使用するとCペプチドが低下して膵β細胞に負担をかけない治療ができること、動脈硬化を改善する効果があることも話された。

 DPP4阻害薬の使い分けはあるかと訊いてみた。基本的にはどれも効果は同じとされている、臨床試験で心血管イベントを減少あるいは増加させるという結果が選択に影響するかもということだった。DPP4阻害薬は遺伝子多型の問題で、この患者さんにはこちらの薬が効きにくくてこちらの薬が効くということがあるという。変更してみる価値はある。

 ベーリンガーなので、DPP4阻害薬はトラゼンタを、SGLT2阻害薬はジャディアンスを使って下さいという会ではある。病院に来ているMRさんに訊いたら、トラゼンタはDPP4阻害薬の中で売上げが2番目まできたという。

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「頭痛・めまい・しびれの臨床」

2016年07月09日 | Weblog

 懐かしい「頭痛・めまい・しびれの臨床」植村研一著医学書院刊を見ていた。植村教授はめまいをクリアカットに説明している。まず、めまいを1)眼前暗黒感・失神感black-out spell、2)動揺感・浮動感・ふらつきdizziness、3)回転性めまいvertigoに分ける。これは大抵のめまいの分類と同じだ。

 回転性めまいは、自分の身体が空間に対して、もしくは空間が自分に対して回転している感覚で、急激に発症した眼振の自覚症状と定義する。回転性めまいは、1)頭痛を伴うめまい、2)聴覚症状(耳鳴 and/or 難聴)を伴うめまい、3)Solo vertigo(回転性めまいのみ)に分類する。頭痛を伴うめまいには、小脳出血が入る。Solo vertigoにはBPPVや前庭神経炎が入る。

 聴覚症状を伴うめまいは、1)突発性難聴、2)メニエール病、3)神経血管圧迫症候群(血管による脳神経の圧迫)に分類する。突発性難聴は、聴覚症状(難聴)がずっと続き、めまいは数週間続く。メニエール病は、回転性めまいと聴覚症状が突然一緒にきて、また一緒に止まる。発作の持続時間は1~2時間。この時間経過で突発性難聴とメニエール病はできる。そうでないものは、神経血管圧迫症候群なので、脳外科へ紹介しなさい、というものだった。

 これだけで本当にいいのかとも思うが、わかりやすくて好きだった。植村先生はすでに亡くなられたはずだ。

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