読書感想とロードバイク日記2

週末のお天気の日にロードで走っています。晴耕雨読ならぬ、晴れたらバイク、雨の日は読書の日々

「日没」

2023年10月24日 | 日記

桐野夏生(岩波書店)

・・・いくらデストピア小説の傑作といわれてもねぇ・・・
・・・重たくて、でも読まされてしまったけど。

内容紹介は
『小説家・マッツ夢井のもとに届いた一通の手紙。それは「文化文芸倫理向上委員会」と名乗る政府組織からの召喚状だった。出頭先に向かった彼女は、断崖に建つ海辺の療養所へと収容される。「社会に適応した小説」を書けと命ずる所長。終わりの見えない軟禁の悪夢。「更生」との孤独な闘いの行く末は。

■推薦のことば
これはただの不条理文学ではない。文学論や作家論や大衆社会論を内包した現代のリアリズム小説である。国家が正義を振りかざして蹂躙する表現の自由。その恐ろしさに、読むことを中断するのは絶対に不可能だ。
筒井康隆

息苦しいのに、読み進めずにはいられない。桐野作品の読後には、いつも鈍い目眩が残ると知っていても――。自粛によって表現を奪い、相互監視を強める隔離施設。絶巧の文章が、作中世界と現実とを架橋する。
荻上チキ

個人的な価値観、個人的な言葉、個人的な行動をもとにして作品を創る。それは自由への具体的な希求であり表現だ。その基本がいつの間にか奪われ拘束される。『日没』は桐野夏生でさえ越えられない身のすくむ現実がすぐそこにあることを告げる。
石内 都

絶望の中でも光を探すことができる、と教わってきた。だが、この物語にそういう常識は通用しない。読みながら思う。今、この社会は、常識が壊れている。どこに向かっているのだろう。もしかして絶望だろうか
武田砂鉄

■著者のことば
この作品の主人公は、小説家のマッツ夢井です。マッツは、エッチな小説をうまく書きたいと願ったり、才能ある同業者に嫉妬したりして、猫と暮らしています。
ところが、ある日突然、マッツはブンリンというところから召喚状をもらいます。そして、見知らぬ岬の療養所に行く羽目に。そのうち出られるだろうと高を括っているうちに、マッツは自分が幽閉されていることに気付くのです。
何かが変だ。何かが変わってきている。
違和感を覚えながらも日常に流されているうちに、いつの間にか、世の中の方がすっかり変わってしまっている。この小説は、そんな怖い話です。
フィクションとして楽しんで頂けたら嬉しいですが、世界にはこんな話はいくらでも転がっています。フィクションが現実にならないことを、心から祈ります。
桐野夏生 

著者について
桐野夏生(きりの・なつお)
1951年生まれ。93年「顔に降りかかる雨」で江戸川乱歩賞受賞。99年『柔らかな頬』(講談社)で直木賞、2003年『グロテスク』(文藝春秋)で泉鏡花文学賞、04年『残虐記』(新潮社)で柴田錬三郎賞、05年『魂萌え! 』(毎日新聞社)で婦人公論文芸賞、08年『東京島』(新潮社)で谷崎潤一郎賞、09年『女神記』(KADOKAWA)で紫式部文学賞、『ナニカアル』(新潮社)で10年、11年に島清恋愛文学賞と読売文学賞の二賞を受賞。1998年に日本推理作家協会賞を受賞した『OUT』(講談社)で、2004年エドガー賞(Mystery Writers of America主催)の候補となった。2015年、紫綬褒章を受章。『ハピネス』(光文社)、『夜また夜の深い夜』(幻冬舎)、『抱く女』(新潮社)、『バラカ』(集英社)、『猿の見る夢』(講談社)、『夜の谷を行く』(文藝春秋)、『デンジャラス』(中央公論新社)、『とめどなく囁く』(幻冬舎)など著書多数。    』

・・・これは、「作家」のデストピア。もうひとつ、共感できなかったのは私の未熟さかか。
・・・デストピアなら「1984」でしょう。
・・・この作者なら『OUT』が良い。これを超えるものは、なんでしょう。諸兄はいかに?😐 

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「雪に撃つ」

2023年10月18日 | 日記

佐々木譲(角川)

・・・こっちは、道警・大通署もの。
・・・いつものメンバーが少しづつかかわっていた事件が、最後で結びつくお定まりパターンだけど、安心感があって、読めるのですね。

内容紹介は
『大ベストセラー道警シリーズ、待望の最新刊!
さっぽろ雪まつり開幕前日に起こった、自動車窃盗事件、少女の家出、そして発砲事件。無関係に見える事件が、一年で一番賑わう札幌でひとつに収束していく。
虐待、不正、外国人労働者――刑事たちの執念は届くか 圧巻のタイムリミット・サスペンス。    』

・・・今回の舞台が「札幌雪祭り」。いまも住民にとっては、前夜祭の方がゆっくり見られていいんだわぁ。と書いていて納得。
・・・それにしても、大都会になると色々な人がいて、犯罪も増え悪質な事件も出てくる。
・・・このシリーズの人気の秘訣は、札幌の街を知っているコアなファンが楽しめるところなんでしょうね。その意味で面白かった。
・・・マンネリ感もあるけど、これで良いのさ。。。って道産子は思うんでないかい。😎 
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「警官の掟」

2023年10月18日 | 日記

佐々木譲(角川)

・・・いつもの「道警もの」ではなくて。舞台は川崎、大田区あたり。
・・・ストーリー的に少々無理があると思う。そのあたりが難しい。

内容紹介は
『東京湾岸で男の射殺体が発見された。蒲田署の刑事は事件を追い、捜査一課の同期刑事には内偵の密命が下る――所轄より先に犯人を挙げよ。捜査線上に浮上する女医の不審死、中学教師の溺死、不可解な警官の名前。刑事の嗅覚が事件の死角に潜む犯人を探り当てたとき、物語は圧巻の結末になだれこむ。徹底したリアリティと重厚緊密な構成で警察小説の第一人者が放つ傑作長編。『犬の掟』改題。                 』

・・・著者紹介は省略。
・・・もう一つだったねぇ。結末は意外性があったけど。😵 
・・・元の題名は「犬の掟」で改題して「警官の掟」。これで主人公が変わる。どっちが良いのかなぁ。元のままでもよかった気がします。😥 
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「傲慢と善良」

2023年10月11日 | 日記

辻村深月(朝日新聞社)

・・・面白かった。最初はこの恋愛、どうなるか、と大いに心配。
・・・心理小説ともいえるかな。

内容紹介は
『婚約者・坂庭真実が忽然と姿を消した。
その居場所を探すため、西澤架は、彼女の「過去」と向き合うことになる。
生きていく痛みと苦しさ。その先にあるはずの幸せ──。
2018年本屋大賞『かがみの孤城』の著者が贈る、圧倒的な"恋愛"小説。

「人を好きになるってなんなんだろう」
「読み終わったあと、胸に迫るものがあった」
「生きていく中でのあらゆる悩みに答えてくれるような物語」

「この小説で時に自分を見失い、葛藤しながら、何かを選び取ろうとする真実と架と共に私たちもまた、地続きの自由へと一歩を踏み出すのだ」
――鳥飼茜さん(漫画家) 

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
辻村/深月
1980年2月29日生まれ。千葉大学教育学部卒業。2004年に『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞し、デビュー。2011年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、2012年『鍵のない夢を見る』で第147回直木賞、2018年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞受賞      』

・・・最初は重たい話だと思い、少しづつしか読み進めなくて苦労した。第二部が真実の視点から話が始まる。これも重たくて進行がゆっくりの読書。
・・・今頃の若い人たちの結婚観だとか、婚活を心理面から書いていてとても面白かった。
・・・最後がどうなるか、少々迷いながらも最終ページになって「ほっと」したのは事実。大恋愛小説だったのだな。おすすめです。😅 


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「数学者たちの黒板」

2023年10月11日 | 日記

ジェシカ・ワイン(草思社)

門外漢だけど、非常に面白い。
まるで数学者の頭の中を見せてもらっているような気がする。そして、それぞれの図形なり数式が美しい。こんな世界があるのか。

内容紹介は(出版社の担当、吉田さんの解説を引用)
『誰もが、かつて黒板に板書された授業の内容をノートに写して勉強した経験があると思います。その意味で黒板は身近とも言えますし、一方である時期を過ぎれば疎遠になってしまうものでもあります。そんな黒板は、数学を研究する人にとって、実は私たちの想像以上に重要な存在なのです。本書は、普段垣間見ることの少ない数学者の黒板を写真に写し、その数式を書いた数学者のエッセイを収めた、異色の数学エッセイ×黒板写真集です。
黒板はなぜ数学者にとって重要なのでしょうか。それは、「黒板に書くとき、私の中では、五感が総動員される。チュークの感触や音を感じ、チョークの粉の匂いを嗅ぎ、『黒板への書き込み』が、紙面への書き方とは違うことを知る」という人がいるように、黒板は数学者自身の身体の延長のようなものだからだと言えそうです。時間をかけて数式を展開していくことが思考を整理し、さらにほかの研究者たちと議論を共有するツールともなっているのです。「その長い歴史にもかかわらず、黒板は、数学について考え、伝達するための比類なきテクノロジーだ 」という言葉が、黒板のツールとしての洗練度を象徴しています。
それ以外にも、「黒板は数学者にとって真の魔力を持つ対象だ! 」「私は黒板が絶対になくならないでほしい。もしそうなったら、数学にとって大きな損失になるだろう」「黒板が私の人生を変えたと言っても過言ではない」「黒板は楽観主義を生み出す」「ホワイトボードは私にとってそこまで魅力的ではない」「寝室に黒板を備え付けるべきだと妻を説得し、実際にそうした 」……など、とにかく熱い黒板への思いがつづられていて、数学に興味のない方でもその想いがじかに伝わってくるものになっています。
本書に取り上げられているのは、アラン・コンヌ、ミーシャ・グロモフ、アンドレ・ネヴェス、カソ・オクジュ、クリスティーナ・ソルマニ、テレンス・タオ、ギルバート・ストラング、ヘルムート・ホーファー、スン=ユン・アリス・チャンといった数学界で名声をすでに得ている人に加えて、これからの数学界を担う活力にあふれる新人も含め、実に100以上の黒板と、その黒板に寄せた数学者の言葉が収められています。
現代数学に興味のある人は言うまでもなく、黒板で授業をしている教育関係者の方、そしてかつて黒板で学んだことのあるすべての人に、本書をおくります。
(担当/吉田)

「数学が生み出されるところなら、必ずどこかに黒板があるだろう。 」

数学といえば、抽象的な学問でいかにもデジタル化が進んでいそうに思えますが、実は数学者の多くにとって、黒板はいまでも数学のための最重要ツールであり続けています。黒板は数学と向き合い、数学者たちや生徒たちとつながり、数学の世界を拡張してゆくのに必要不可欠な存在なのです。そんな黒板に見せられた写真家が、フィールズ賞受賞者を含む100を超える数学者の板書を撮影し、その板書を描いた数学者による、数学と黒板への思いが綴られたエッセイを添えた本書。「数学の手触り」が感じられるような、唯一無二の、黒板×数学フォトエッセイ!

■登場する数学者
スン=ユン・アリス・チャン、アラン・コンヌ、ミーシャ・グロモフ、アンドレ・ネヴェス、カソ・オクジュ、ピーター・ショア、クリスティーナ・ソルマニ、テレンス・タオ、時枝正、クレール・ヴォイシンほか

■数学者たちの黒板に関するコメント
「その長い歴史にもかかわらず、黒板は、数学について考え、伝達するための比類なきテクノロジーだ 」
「私は黒板が絶対になくならないでほしい。もしそうなったら、数学にとって大きな損失になるだろう」
「黒板が私の人生を変えたと言っても過言ではない」
「黒板は、一人で作業するときには、とても便利なものだが、共同研究者と議論するときや授業では、欠かせないものになる」
「地球上から黒板がなくなるまで(いつになるか分からないが)、誰もが日本製の上質のチョークを常に持ち歩くべきだ 」
「ホワイトボードは私にとってそこまで魅力的ではない」
「寝室に黒板を備え付けるべきだと妻を説得し、実際にそうした 」

著者について
ジェシカ・ワイン(Jessica Wynne)
写真家、1972年生まれ。ファッション工科大学写真学科准教授。1999年にイェール大学芸術学部で修士号を、1994年にサンフランシスコ芸術学院で学士号を取得。彼女の作品は、「 Turn Shake Flip」(Celebrate Contemporary Art, Eyestorm Books)(2001)、「 25and Under: Photographers」(W.W. Norton & The Center for Documentary Studies at Duke University)(1996)などの書籍にも収録されている。自身の作品はモルガン・ライブラリー、サンフランシスコ近代美術館、カルティエ現代美術財団の永久コレクションに収蔵されており、ミラノ・トリエンナーレ、ホイットニー美術館、クリーブランド現代美術館、アートバーゼルなどで展示された

徳田 功(とくだ・いさお)
立命館大学理工学部機械工学科教授。筑波大学にて物理学専攻。東京大学にて博士号(工学)取得。著書に『機械力学の基礎』(共著、数理工学社)、訳書に『不確実性を飼いならす』(白揚社)、『インフィニティ・パワー』(丸善出版)、『同期理論の基礎と応用』(丸善出版)など。   』

・・・数学は、芸術だろう。一番いい解は一番美しいという。
・・・数学者の時枝正氏は本書の中で「「人々が1音1音を味わいながら音楽を聴くのが好きなのと同様に、私たち数学者は、黒板の上でチョークを使って数学が展開されるのを見るのが好きだ。」と書いている。
・・・内容など全く分からないが、エッセイと黒板の写真が任意のページを開くと現れる。眺めているだけで学問の一端を見ているようで心が安らぐのはなぜだろう。お勧め。😊 


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