読書感想とロードバイク日記2

週末のお天気の日にロードで走っています。晴耕雨読ならぬ、晴れたらバイク、雨の日は読書の日々

「バブル」

2017年07月29日 | 日記
永野健二(新潮社)

 日本のバブルの時代を描いたノンフィクション。このようなノンフィクションはやはり時間をおいて物事が客観的に観られるようになってから書くべきものなのだろう。
 特に、その時代の最中には見えない部分が多く、当事者にとっても流れの中にいたら決して理解できなところがある。あの時代、アメリカに住んでいてどうしてこんなに日本が経済的に発展し、土地代が高騰し、それとともに人々の価値観も異常になってしまったのか、不思議だったが、ようやく本書で見えてきたような気がする。バブルの終わりごろリクルート事件がありその断片を日本で身近に見たのでとても印象深い。歴史と言うものはそういうものなのだろう。

 内容紹介は
『低金利と株高政策がもたらしたもの
一昔前、東京・麹町のホテルで「永野塾」と名付けられた小さな早朝勉強会が開かれていた。
主宰者は本書の著者、永野健二氏。のちに首相となる政治家、著名な経営者、文化人など、一流の論客たちが講師としてこの勉強会にはせ参じた。著者が「伝説の記者」と呼ばれる所以(ゆえん)か。
しかし、テーブルの周りに座った勉強会のメンバーは、講師の話よりも、具体的事例を資本主義という構造の中に位置付けようと格闘する永野氏の姿を印象深く覚えている。
バブルという資本主義の宿命について書く際にも、著者は永野塾での姿勢を堅持した。
読み進めば分かる。この本が固有名詞であの時代を語っていることに。登場するのは高橋治則、小谷光浩といった「バブル紳士」たちだけではない。田淵節也と野村証券、ピケンズと豊田英二、山一証券副社長の自死と三菱重工転換社債問題、「証券局を資本市場局にする」と構想した大蔵官僚の挫折などなど。
そしてこれらの固有名詞は永野氏が「渋沢資本主義」と命名した日本独特の経済体制の変質過程に落とし込まれていった。
奥行きのある視点が貫徹しているから「俗物紳士図鑑物語」で終わっていない。資本市場というフィールドでの出来事が、ある時はバブル拡大の背中を押し、ある時は膨張のきっかけに姿を変えるという、マクロ経済の流れとどういう相互関係にあったのかもよく分かった。
最後に著者は指摘する。
「日本のリーダーたちは、円高にも耐えうる日本の経済構造の変革を選ばずに、日銀は低金利政策を、政府は為替介入を、そして民間の企業や銀行は、財テク収益の拡大の道を選んだ。そして、異常な株高政策が導入され、土地高も加速した」
この構図、今の状況に通じるものがないか。「伝説の記者」はこう警鐘を鳴らす。
「アベノミクスの動きは、バブルの序章である」と。
評者:軽部 謙介
(週刊文春 2017.01.24掲載)

内容紹介
闇を抱えていたのは住銀だけではなかった!
住銀、興銀、野村、山一……
日本を壊した「真犯人」は誰だったのか?
日本に奇跡の復興と高度成長をもたらしたのは、
政・官・財が一体となった日本独自の「戦後システム」だった。
しかし1970年代に状況は一変する。
急速に進むグローバル化と金融自由化によって、
日本は国内・国外双方から激しく揺さぶられる。
そして85年のプラザ合意。超低金利を背景にリスク感覚が欠如した
狂乱の時代が始まる。
日本人の価値観が壊れ、社会が壊れ、そして「戦後システム」が壊れた──。
あれはまさに「第二の敗戦」だった。

バブルとは一体何だったのか?
日本を壊したのは誰だったのか?
バブルの最深部を取材し続けた「伝説の記者」が
初めて明かす〈バブル正史〉。
この歴史の真実に学ばずして日本の未来はない。

第1章 胎動
三光汽船のジャパンライン買収事件
乱舞する仕手株と兜町の終焉
押し付けられたレーガノミックス
大蔵省がつぶした「野村モルガン信託構想」
頓挫した「たった一人」の金融改革
M&Aの歴史をつくった男
第2章 膨張
プラザ合意が促した超金融緩和政策
資産バブルを加速した「含み益」のカラクリ
「三菱重工CB事件」と山一證券の死
国民の心に火をつけたNTT株上場フィーバー
特金・ファントラを拡大した大蔵省の失政
企業の行動原理を変えた「財テク」
第3章 狂乱
国民の怒りの標的となったリクルート事件
1兆円帝国を築いた慶應ボーイの空虚な信用創造
「買い占め屋」が暴いたエリートのいかがわしさ
トヨタvs.ピケンズが示した時代の転機
住友銀行の大罪はイトマン事件か小谷問題か
「株を凍らせた男」が予見した戦後日本の総決算
第4章 清算
謎の相場師に入れ込んだ興銀の末路
損失補填問題が示した大蔵省のダブルスタンダード
幻の公的資金投入                     』

・・・あとがきの中に著者が父親と話をしたことが書いてあり、立派なお父さんだったのだと感じ入った。経済人としても一人の父親としても。
今を知るための必読書ではないか。
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「墜落の夏」

2017年07月27日 | 日記
吉岡忍(新潮文庫)

 このJALの事故は日本にいなかった時に起こった。最近何かのきっかけで本書を読んでみたいと思い手に取ったもの。うたい文句通り、一番正確なかつ冷静なノンフィクションと言っていい。

 実際のあの事故についてある程度正確な知識を得ることができた。死者520名、生存者4名、有名な遺書を書いた方々が5名。これだけ大勢の事故ともなると、一人一人にドラマがあるのだろう。

 内容紹介は
『1985年8月12日、日航123便ジャンボ機が32分間の迷走の果てに墜落し、急峻な山中に520名の生命が失われた。いったい何が、なぜ、と問う暇もなく、遺族をはじめとする人々は空前のできごとに否応無く翻弄されていく…。国内最大の航空機事故を細密に追い、ジャンボに象徴される現代の巨大システムの本質にまで迫る、渾身のノンフィクション。講談社ノンフィクション賞受賞。』

・・・結局事故原因は判然としないが、現代は本書に言うとおり巨大なシステムに支えられそれを動かすことによって存在していることを思い出させる。名著のひとつです。
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「浮世に言い忘れたこと」

2017年07月18日 | 日記
三遊亭圓生(小学館)

 昔の人は良いこと言いますね。「昔はよかった」だけではない、何かがあります。
 きっと今の日本人が忘れたものを言ってくれているからでしょう。
 内容紹介は
『昭和の名人が語る、落語版「花伝書」
古今亭志ん生、桂文楽と並ぶ“昭和の三名人”の一人として、後世まで語り継がれる噺家、6代目三遊亭圓生。その名人・圓生が、芸や寄席、食べものなどについて、軽妙かつ真摯な語り口で、すべてを語っています。
全体は、「人情浮世床」、「寄席こしかた」、「風狂の芸人たち」、「本物の味」の4部構成。特に、「人情浮世床」は昭和の落語を伝える花伝書として貴重である。落語ファンだけでなく、昭和の大衆文化に浸れる一冊です』

・・・上記の三人の中では一番好きな噺家です。人間国宝にならなかったのは何かわけありだったかなぁ。レコードで、今はCDだけど、記録が残っていて、今でも噺が聴けるのがありがたい。

https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51fU3-8vPpL._AC_UL160_.jpg
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「音の記憶」

2017年07月13日 | 日記
小川理子(文芸春秋)

 多彩な人はいるのだなぁ・・・企業の役員にしてジャズピアニスト。
 パナソニックの音響関係をやっているから、音つながりなんだろうけど、音楽家ならではの感性も活かされていいのでしょうね。文章的にはちょっと物足りないところもあるけど、良いお話でしょう。女性活躍社会だしね。

 内容紹介は
『◆パナソニック女性役員の手記◆

日本の会社で働く全ての女性に贈る 働くこと、愛すること、継続すること。
かつて松下電器にはソニーに匹敵する自由なる研究所があった。1986年に入社した私は、その音響研究所に配属され栄光のブランド「テクニクス」の様々な発展形の技術・商品を開発する。
人には大切な「音の記憶」がある。その感情を技術が喚起する。そんな商品をめざし、うちこんだ青春の日々は、8年目でプロジェクト解散、配置転換で雲散霧消したかに見えた。
失意の中で始めたジャズ・ピアノで世界的な評価を受ける。「君はパナソニックのトップにはなれないが、プロとしては成功する」そうアメリカのプロデューサーに言われ、心は揺れるが……。

【目次】
■序章 音の記憶
二〇一四年九月ベルリン。私は消えたブランド「テクニクス」復活をパナ
ソニックの責任者として宣言した。この本では、私が「会社員として」
「ピアニストとして」二足のわらじで、いかに音に懸けてきたかを語りたい
■第一章 全ての生き物にはリズムがある
母親のお腹の中で聴いた『赤い靴』と『春よ来い』。なぜこれらの曲が特
別な感情を呼び起こすのだろう。理工学部へ進学した私は、聴覚や生体の
リズムを研究する。そして就職を考える中、運命的な一本の論文に出会う
■第二章 就職まで
「これからの時代は違うんちゃうかなあ」。松下電器で音響の仕事がしたい
と会社訪問すると大学の先輩から「志望業界を変えなさい」と諭された。C
Dなどデジタルオーディオが誕生し、音響事業は激変の時を迎えていたのだ
■第三章 自由なる研究所
それでも松下電器を選んだ私は念願通り「音響研究所」に配属された。
「感性を活かし世の中にないものを作りなさい」という所長小幡修一のもと、
金管楽器型スピーカー、超薄型スピーカーとユニークな製品を生み出す
■第四章 汐留の輝ける青春
ウィーンのオペラ座に採用された超薄型スピーカー。世界的な評価を得た
技術を使って住空間を変えるプロジェクトが始まった。壁一面スピーカー
という前代未聞のホールづくりは、二〇代を懸けるに相応しい挑戦だった
■第五章 失意のプロジェクト解散
三〇歳のとき転機が訪れる。全速で走ってきたプロジェクトが一瞬にして
終わったのだ。薫陶を受けてきた所長の小幡も去った。会社を辞めようか
と悩んでいると上司の木村陽一から誘われた。「ジャズ、やってみないか?」
■第六章 オール・ユー・ニード・イズ・ジャズ
曽根崎の老舗ライブパブ、ピアノとドラムだけのデュオで初舞台を踏んだ。
仕事をしながら毎月のステージに立ち、ジャズにのめり込んだ。七年後、
本場米国での国際ジャズフェス。満員の観客から拍手を受ける自分がいた
■第七章 二足のわらじ
「仕事もピアノも中途半端はいかんよ」という恩人からの手痛いひと言。
奮い立った私はDVDオーディオ、インターネットと新たな仕事に取り組
む。東京に転勤してからは日米で九枚のCDを立て続けにリリースした
■第八章 愛こそ全て It's All About Love
「ミチコ、アメリカでデビューしないか」。米国でリリースしたCDが英国
ジャズ専門誌で年間ベストアルバムに選ばれた。プロデューサーからプロ
オファーを受け、渡米するか悩んでいるとき高校時代の初恋の人が現れる
■第九章 松下幸之助が教えてくれたこと
日本に残る決断の後、本社の部長職に着任した。梅田の新歩道橋や浅草寺
雷門の寄贈など「企業は社会の公器」と考えた創業者の寄付行為に始まる
社会文化グループ。私は無電化地域へのソーラーランタン提供を思いつく
■第十章 テクニクス復活プロジェクトに懸ける
二〇代を捧げたオーディオ「テクニクス」は生産中止になっていた。しか
し時代は再び「高品位な音」を求めている。リスナーや評論家との橋渡し
をするラストピースとして、会社は消えたブランドの再生を私に託した
■第十一章 ベルリンでの復活宣言
着任当初、驚くべきことに最上級モデルのアンプは仮組み、スピーカーは
一部が他社製だった。迫る復活プレゼンの舞台。それでも私は一切妥協し
ない。音質を決定する「音決裁」は最難関と恐れられた。不眠不休の四カ月
■第十二章 幻のターンテーブルSL-1200
七〇年代に開発されたターンテーブルは世界累計三五〇万台を売り上げた
テクニクスのアイコン製品だ。イスラエルから復活を願う二万五〇〇〇超
の署名が届いた。定年退職したOBを頼り、途絶えた技術を蘇らせる
■第十三章 女性が欲しくなる「オーディオ」で未来を拓く
音楽を聴く人の半分は女性。しかしハイエンドオーディオの購入者は九割
以上が男性なのだ。「重くて大きいものが良い」という従来の価値観を打
破し、「女性」と「小型化」を追求。音の宝石箱OTTAVAに辿り着いた
■第十四章 若い人へのレッスン
テクニクスを指揮するパナソニックの役員として、また一四枚のCDをリ
リースしてきたピアニストとして。仕事とジャズを通して実感してきたこ
と。自分らしくあるために大切にしてきたこと。次世代へのメッセージ

著者略歴
小川/理子
1962年、大阪府生まれ。パナソニック株式会社役員。3歳の頃よりピアノを始め、様々なジャンルの音楽に親しんでいたこともあり、慶應義塾大学理工学部在学中から、松下電器産業(現パナソニック)の音響研究所に憧れていた。86年入社後、同研究所に配属。金管楽器の形をしたスピーカー「サウンドスペースツインロードホーン」など数々のユニークな開発を手がけた。しかし93年に所属する部署が解散。その後、音響開発の現場は離れるが、ジャズピアノでは2003年に北米でリリースされたCDが英国専門誌で年間ベストアルバムに  』

・・・目次が詳しくこれだけ読んだら内容は分かる。パナソニックは関西の会社だねぇ。作者も慶応卒だけど、元は関西。恋の話が興味深い。ちょっとしか書いていなきけど。ご主人(多分)が同級生で、かわいいね。おくてだし。

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「ブリューゲルの世界」

2017年07月11日 | 日記
森洋子(新潮社)

 眺め飽きない本だ。
 精密で楽しい。細部まで描かれ、諺が詰まっていてこれを解説してくれるのも面白い。
 

内容紹介は
『傑作《バベルの塔》を始めとする油彩画全41点を徹底解説!新知見も盛り込み、世界的研究者が16世紀フランドルの大画家の全貌を語り尽くします。
・・・
広場で遊びに熱中する子どもたち。雄大な自然のなかで、労働にいそしむ農民たち。そして、群衆のなかに埋没する聖書の主人公―。あっと驚く構図に超細密技法で、16世紀フランドルの人々の営みを写し取った画家ピーテル・ブリューゲル。その全真筆41点を、5つの切り口で世界的研究者が徹底解説。新発見の『聖マルティンのワイン祭り』や油彩画のルーツとなった版画作品、その人脈や信仰心、五世代にわたる一族の活躍などについても触れた、ブリューゲルの全画業に迫る最新版にして決定版。

著者略歴
森/洋子
美術史家、明治大学名誉教授。新潟県生れ。お茶の水女子大学哲学科卒業後、ミュンヘン大学で西洋美術史を学ぶ。米ブリンマー・カレッジ美術史学科で修士号取得。ベルギー政府給費留学生としてブリューゲルを研究、国際基督教大学で学術博士号取得。ブリューゲルの研究書に対し、サントリー学芸賞、芸術選奨文部大臣賞、ウジェーヌ・ベェ国際賞などを受賞。1988年にベルギー国王より王冠勲章シュヴァリエ賞、2001年に紫綬褒章を受章。2011年にベルギー王立考古学アカデミー外国人会員に選出』

・・・一つのことを突き詰める研究の人生ってすごいですね。これで第一人者二なれるのも興味深い。
個人的には、ブリューゲルの前のヒエロニモス・ボスがもっと面白いと思うなぁ。
でもブリューゲルもウイーンの美術館で見た「バベルの塔」には感動しました。
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