読書感想とロードバイク日記2

週末のお天気の日にロードで走っています。晴耕雨読ならぬ、晴れたらバイク、雨の日は読書の日々

「きみはだれかのどうでもいい人」

2022年03月25日 | 日記

伊藤朱里(小学館)

ちょっと不思議な小説ですが、面白かった。
みんな他人のことは分からない、そして分からないながらも付き合っている。
章ごとに主人公が替わってそれぞれに人となりやら、主張が分かってくる構成になっているのだ。
県税事務所で働く4人の女性が各々の視点で語る「同僚小説」になっている。

内容紹介は
『人とわかりあうことは、こんなにも難しい。

税金を滞納する「お客様」に支払いを促すことを仕事とする県税事務所の納税担当に、同期が休職したことで急遽異動させられてきた若手職員の中沢環。彼女は空気の読めないアルバイト・須藤深雪を始めとする周囲の人間関係に気を遣いながら、かつての出世コースに戻るべく細心の注意を払って働いている――(第1章「キキララは二十歳まで」)
週に一度の娘との電話を心の支えに、毎日の業務や人間関係を適当に乗り切るベテランパートの田邊陽子。要領の悪い新米アルバイトや娘と同世代の若い正規職員たちのことも、一歩引いて冷めた目で見ていたはずだったが――(第3章「きみはだれかのどうでもいい人」)
同じ職場で働く、年齢も立場も異なる女性たちの目に映る景色を、4人の視点で描く。デビュー作『名前も呼べない』が大きな話題を読んだ太宰治賞作家が描く勝負作。
職場で傷ついたことのある人、人を傷つけてしまったことのある人、節操のない社会で働くすべての人へ。迫真の新感覚同僚小説!


【編集担当からのおすすめ情報】
言葉にならずにわだかまっていた感情が、豊かな言葉で、繊細に描き尽くされた傑作!島本理生さんと穂村弘さんも大絶賛!!明日から、職場の見え方が変わるかもしれません……。 

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
伊藤/朱里
1986年生まれ、静岡県出身。2015年、「変わらざる喜び」で第31回太宰治賞を受賞。同作を改題した『名前も呼べない』でデビュー   』

・・・心理劇的な感じもあります。
・・・個人的には、タイトルになっている第三章で全体把握ができたように思う。
・・・職場に中に色々な人がおるけど、そこに「生きにくさ」を持った人物がいることで混乱が起こるのだが、あまりありそうにない設定なのがわかりにくい気がした。本書のタイトルと中身が真逆なのだが、でも面白かったですよ。😵 
コメント (1)
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「三人屋」

2022年03月24日 | 日記

原田ひ香(実業之日本社)

三人姉妹が一軒の家で時間帯を変えて三種類の商売をやっているという面白い設定。朝は喫茶店、昼はうどんや、夜はスナック。
ここで展開されるご近所商店街のみなさまの一種ドタバタ的な人間模様。

内容紹介は
『朝は三女の喫茶店、昼は次女の讃岐うどん屋、夜は長女のスナック―時間帯によって出すものが変わるその店は、街の人に「三人屋」と呼ばれていた。三女にひと目ぼれするサラリーマン、出戻りの幼なじみに恋する鶏肉店の店主、女にもてると自負するスーパーの店長など、ひとくせある常連客たちが、今日も飽かずにやって来る…。さくさくのトースト、すだちの香るぶっかけうどん、炊きたての白飯!心も胃袋もつかむ、おいしい人情エンターテインメント!

著者
1970年神奈川生まれ。2006年にNHK創作ラジオドラマ大賞にて最優秀作受賞。シナリオライターとして活躍した後、07年『はじまらないティータイム』で第31回すばる文学賞を受賞して作家デビュー。12年、初の長編エンターテインメント小説『母親ウエスタン』でブレイク。その他の著書に『東京ロンダリング』『人生オークション』『アイビー・ハウス』『彼女の家計簿』『ミチルさん、今日も上機嫌』がある。  』

・・・商店街の名前が「ラプンツェル」だなんておとぎ話だが、中身は正反対。いわば、ドロドロ恋愛系小説なので驚く。
・・・最後のところの北海道の話はちょっとグロテスク。お終いはなんだかハッピーエンド風なのだが、あのまま終わったら落ち込みそうになって良くないが、ちょっと安易だね。ともあれ話題にはなる。
・・・章の名前が登場する男達という趣向も面白い。どっちが主人公だ?という混乱もあるけどね。😐  

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「そして陰謀が教授を潰した」

2022年03月15日 | 日記

早瀬圭一(小学館文庫)

みなさんほぼ忘れているでしょう。しかし当時は大事件でしたよ。筆者も若かったから一種身近な感覚を覚えました。

内容紹介は
『教授による教え子強姦事件は有罪か、無実か
本作は、1973年に青山学院で起きた「教授による女子学生強姦事件」の真相を、元新聞記者である著者が執念をもって追いかけた45年の集大成となるノンフィクション。
青山学院法学部・春木猛教授(当時63歳)が、教え子の同大文学部4年生の女子学生へ、3度に亘る強制猥褻・強姦致傷の容疑で逮捕される。
春木教授は懲役3年の実刑が確定し、一応の決着とされるが、教授自身は終生「冤罪」を訴え、無念のまま亡くなった――

事件当時、新聞記者だった早瀬氏は、事件の裏にある、女子学生の不可解な言動や、学内派閥争い、バブル期の不動産をめぐる動きなど、きな臭いものを感じ、45年かけて地道に取材を続けます。
有罪なのか、冤罪なのか、事件だったのか、罠だったのか……。
本書は、その取材の記録と、早瀬氏なりの「事件の真相」に迫る作品。

小説家の姫野カオルコ氏による文庫解説も必読です。
〈 編集者からのおすすめ情報 〉大宅壮一ノンフィクション賞受賞作家でもある早瀬氏は現在84歳ですが、本書の文庫あとがきを執筆されるにあたり、事件の関係者の自宅を調べ上げて取材するなど、「記者魂」は今もなお全く衰えることがありません。
現在では「古い事件」となってしまっていますが、かつては、ハルキといえば、村上でも角川でもなく「春木教授」のことを真っ先に思い出した人が大勢いたはずだ、と本書の解説原稿で小説家の姫野カオルコ氏はお書きになっています。
欲望と悪意うずまくこの事件のことを知らない世代にこそ、早瀬氏の記者魂をお読みいただきたい、執念の一作です。   』

・・・本書の中で、最高裁の判決に納得がいかないという話があるが、これは最高裁が基本的に憲法違反に関連しないと裁判にならない点を忘れている。もっとも二審までの事実認定が全く甘くて、これでは被告は救われない。当時の「大学の教授が女子学生を相手に・・・」となったら文中の後藤田さんではないが、はじめから負けだ。
・・・「青山学院大学のキザな大学教授。その大学教授にレイプされたと主張する女子大生。それをネタに強請る不動産屋(実は女子大生と深い仲)。そして大学内の派閥争い… 」というWEB上の書評が事件を象徴している。
・・・女子学生の多いところの先生方は「商品に手をだしてはいけない」のだ。その典型。
・・・しかい当時の青学ってこんな大学だったのね。裏口もあり、金が動くしちっとも小ぎれいとも思えない(関係者がいたらごめんなさい)。
・・・ともかく、「ひょんなところから事件がころがって大げさな話になってしまった」感があるが、そもそも当該教授の脇の甘さが原因。関係者全員(裁判所も含め)が別々の思惑で訳のわからない「事件」になってしまったのだろう。この事件を知っているひとには興味深い。お勧めでしょう。😅 
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「犬の報酬」

2022年03月15日 | 日記

堂場舜一(中央公論新社)

前半が少々だれるけど、最終場面は一気に読ませる。
自動車産業は経済産業省が所管という背景を思えば・・・意味深な背景。

内容紹介は
『「企業の〈失敗〉に対し、男たちは如何に動いたか」
大手メーカーのタチ自動車は、自動運転技術の開発に取り組んでいた。政府の自動運転特区に指定されている千葉・幕張での実証実験中、実験車両が衝突事故を起こす。軽微な事故ということもあり、警察は発表しなかった。ところが数日後、この事故に関するニュースが東日新聞に掲載される。東日新聞社会部遊軍キャップの畠中孝介に情報を流したのは、いったい誰なのか? トラブル対応時の手際の見事さから社内で「スーパー総務」と揶揄されるタチ自動車総務課係長・伊佐美祐志を中心に、「犯人探し」のプロジェクトチームが発足するが……。 「事故隠し」を巡る人間ドラマ――話題の「自動運転」のリアルに迫る、最新で渾身の経済エンタメ長篇。 

著者略歴 
堂場/瞬一
1963年生まれ。茨城県出身。青山学院大学国際政治経済学部卒業。2000年秋『8年』にて第13回小説すばる新人賞を受賞   』

・・・霞が関の誰かが単独で政策決定するわけじゃあないからちょっと創作しすぎ感もあるけど、展開としては面白い。結局そうだったよね・・・の世界なのだ。
・・・モデルの自動車会社は分からない。静岡本社だったり千葉に研究室があったり、世襲社長だったり、まあ作った話だねぇ。複数モデルか。
・・・マスコミについての意見も書評にはあった。すなわち「マスコミ報道が過熱し、大企業を経営難に陥らせたり、そのひと言で政治家を脱落させ、タレント活動休止に陥らせたりと、過剰な社会的制裁」である。同感だなぁ。
「黒幕」に踊る関係者ってところか。😛 



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「トリカゴ」

2022年03月08日 | 日記
辻堂ゆめ(東京創元社)

無国籍者というテーマに光を当てた作品だが、普通に暮らしていると分からないものだ。取り上げ方で「トリカゴ」事件を作った訳だが実際にはあり得ない設定だからまだ読めるのかも知れない。
児童虐待の問題でもある。これをミステリ風にしたのでノンフィクションの形より読んでもらえるのだな。

内容紹介は
『第24回大藪春彦賞受賞作
殺人未遂事件の容疑者は、無戸籍だった──強行犯係の里穂子と特命対策室の羽山が手を組み、執念の捜査の末に辿り着いた真相とは。『十の輪をくぐる』の著者渾身の傑作長編。

辻堂ゆめ
(ツジドウユメ )
1992年神奈川県生まれ。東京大学卒。2014年『夢のトビラは泉の中に』が第13回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞に選ばれ、翌年同作を『いなくなった私へ』と改題しデビュー。他の著書に『コーイチは、高く飛んだ』『あなたのいない記憶』『悪女の品格』『片想い探偵 追掛日菜子』『あの日の交換日記』のほか、〈図書館B2捜査団〉シリーズなどの児童書にも挑戦するなど、活発な執筆活動を続けている。 』

・・・二転三転する捜査や推理で行き先はわかりにくい展開だが、なんとなく方向性は見える。
・・・ネットの批評で「テーマを読みたいのではなく、面白い本を読みたい 」という意見があったが、確かにそういう面はあるのだろうな。私も途中は飛ばし読みしてストーリーを追いかけたので人ごとではない怠惰なな読者かもしれない。無国籍者問題を訴えていると思えば納得でしょう。😐 
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