読書感想とロードバイク日記2

週末のお天気の日にロードで走っています。晴耕雨読ならぬ、晴れたらバイク、雨の日は読書の日々

「定形外郵便」

2023年11月30日 | 日記

堀江敏幸(新潮社)

結構高尚なエッセイ集です。
だからかな、途中で読むのをやめた。気楽に読めないエッセイとでも言うべきか。

内容紹介は
『ジャコメッティ、駒井哲郎、モンテーニュ、安東次男、ユルスナール、ピカソ、長谷川四郎、小村雪岱、ルクレール、倉俣史朗……。絵画や彫刻、映画、写真、音楽など芸術全般に造詣の深い人気作家が、そのまなざしで触れ、慈しんだ素晴らしきものたち。「芸術新潮」で好評連載中のコラム7年分を集めた、約3年ぶりとなる待望の単著。 

目次
零度の愛について
570285
責任の所在
一度しかない反復
内的な組み合わせ
ミロと電話線
最後の恐竜
てのひらの石膏像
呪縛について
言葉の羽虫を放つ
胃の痛む話
右から六人目のフォートリエ
嗅覚の恐怖政治
まだらな青
汚染に抗うための再読
海に叫んだあとの日々
話し合う夏
幻影の家政学
申し訳ない
記憶の埋設法
起源を見つめる力
茫然自失の教え
開かれた孤島で
体験の角度について
安置すべきもの
観覧車のとなりで
挨拶を禁じること
侯爵夫人の絶望に寄せて
時間割と縄跳び
山羊の謡
用語について煩悶すること
傷つきつつ読みとったもの
近くでなければとらえられないもの
三角定規の使い方
分かちがたく結ばれた友
輪ゴムの教え
二つの恋のメロディ
セメント樽の中の手紙
全集になかったもの
ゲームはすでに終わっている
78651
渇いた朝の把握
ぶんらくぶんらく
夏の家で
作品から思想へ
作品に見つめられること
うごうごする言葉
余白の按分
あの日ブレストは
原原種のゆくえ
アンスニの三姉妹
半世紀ぶりの舟歌
背文字のない本
憎しみの基準
信用に足るもの
知のコンデンスミルク
ミナカワリナシ
統計と検札
観音様の手
思考の水分
浸透圧のこと
森のなかの空き地を求めて
壊れたレンズの功徳
即興演奏に関する覚え書き
君たちが元気なのがとてもうれしい
看板について
すべてが後方になる前に
隠れ身の術
Fの重なり
最低感度⽅向について
アンダンテのつぎに来るもの
モラルの種
破壊の前の沈黙
門を開けさせた人
根元的なところでの同意
ムール貝が伝えるもの
お好み焼きをつくるんです
小学生の手習いのように
適材適所の使い方
犀の角のように
前を向いて静かに萎れていけばいい   』

・・・出版社の解説にあった書評を引用
「中身のわからない“郵便物”
大竹昭子
『定形外郵便』とは風変わりな書名である。これを書いているいまはゲラで読んでいるので、本になった姿はまだ目にしていないが、これまでの著者の著作から想像するに、白地に題字と小さな装画があしらわれているのではないか、もしそうならば本の佇まいそのものが郵便物みたいだな、と思って読みはじめたところ、ほかならぬ内容こそが“定形外郵便物”なのに気がついた。
 まず文章のスタイルが定形の枠組から外れている。随想ふうだったり、掌篇小説ふうだったり、追悼文ふうだったり。テーマも多岐にわたり、著者の専門の仏文関係の作家が多く登場するが、おなじように日本の近代作家もたくさん出てくるし、物書きばかりではなく美術家や写真家の仕事にも触れ、同時に社会の動向にも視線をのばす。さながら形状の異なる郵便物のように封を切るまで中身がわからない。いや、開封してもまだ定かではなく、テーマを了解するのは最後の一行にたどりついたときだったりする。
「ミロと電話線」の一行目はこうだ。「かつて固定電話の回線を引くには、数万単位の権利金なるものを一括で納めねばならなかった」。ああ、たしかにそうだった、と持ち重りのする黒い電話機を思い出しながら読み進むと、下宿の話になる。学生時代、著者は下宿に電話を引いていなくて受けるには大家さんの家の電話を使わせてもらっていた。電話が掛かってくると大家さんの奥さんが敷地を横切り、下宿の二階の部屋まで「お電話ですよ」と知らせにくる。そのときの光景がすぐそばで足音が聞こえるように細かく描写されるが、その話の着地する先はなんと画家のミロなのである。
 不便が高じて二年目についに電話を引くことになり、工事人が来るのを待つのみという状況になったある日、クレーとカンディンスキーとミロを組み合わせた「なんとなく気恥ずかしい感じの展覧会」に立ち寄ったところ、彼は他の二人よりもミロの作品に惹き込まれる。
「瞑想と夢想の相異。瞑想にはまだ思考の翳りがあってどこかで醒めていなければならず、それには一心な集中が必要になる。他方、夢想には全身全霊をあげて思考の一点に向かう厳格さがないかわりに、ゆっくり夢のなかで遊ぶ力と余裕がある」。すなわち、「夢想はクレーにではなくミロの陽光に与えられる言葉だった」と彼は深く感銘し、酩酊状態で帰宅すると、留守中に電話の取り付けの人が来て困っていたと奥さんに告げられ、はっとして書類をたしかめると日付を勘違いしていたのだった。最後の一文は「四畳半に射し込む西陽がミロの太陽さながら赤く燃えて、手続きなるものが夢想とは相容れないことを、無言のまま教えていた」とあり、読者の脳内にもミロのあの濃密な赤色が明滅するのだ。
「仕事机の引き出しが開かなくなった」ではじまる「三角定規の使い方」も意表を突くような展開である。引き出しが開かなくなったのは定規の先端がひっかかっていたからで、解決した後、書きかけの原稿の上に定規をぽいと投げると、「つい数日前に会った人の顔がはっきりと目に浮かんだ」。とはいえ、その顔は現実の人ではない。クラーナハ展で見た神聖ローマ帝国皇帝カール五世の肖像画だったのである。図録を開いて三角定規を顔の左右に当ててみたところ、ぴたりと収まったというくだりには、私もその絵の画像をインターネットで検索して試さずにはいられなくなった。
「なにをどう書こうとしても、いま現在吸っている空気が言葉と言葉の隙間に入り込まないわけはない」(「傷つきつつ読みとったもの」)と著者は書く。そうであるならば、「芸術新潮」の連載をまとめた本書には、まさにその時々に吸い込んだものが染み渡っていることだろう。毎月おなじ頃になるとなにを書こうかと考え、今月の自分がどういう体験をしたか、なにを見聞きしたかを遡ってみる。その時間のなかから醸成された八十数篇は、ユーモラスな空気に満ちたものもあれば、自戒する厳しさがみなぎっているものもあり、社会情勢への懸念を忍ばせているものもある。そんな言葉の波動を感じとりながら、書かれたときの状況を想像してみるのも、『定形外郵便』を開封する愉しみなのだ。
 書名を眺めているうちに、以前、著者の『正弦曲線』を友人に贈ったときのことを思い出した。彼女が真っ先に反応したのがタイトルなのに驚いたが、思えば当然のことで、彼女は長いこと数学の教師をしていたのだ。同じように読書好きの郵便局員が本書を見つけたらどんな顔をするだろうと想像すると、ちょっと愉快である。
(おおたけ・あきこ 作家)
波 2021年10月号より      』

・・・”高尚すぎる”というべきだ。凡人には読みにくい。😣 


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「100万回死んだねこ」

2023年11月30日 | 日記

福井県立図書館

副題が『覚え違いタイトル集』。そのものの話で、図書館利用者の問い合わせに苦労しながらも楽しんでいる図書館員のみなさまがほほえましい。
図書館では、最初の何と言うのか、レファランスのような「総記」というか「図書館」関係みたいなところにあって、確かに、そうだろうけど、手掛かりなしに蔵書を見つけるのは大変そうだ。

内容紹介は
『「とんでもなくクリスタル」「わたしを探さないで」
「下町のロボット」「蚊にピアス」
「おい桐島、お前部活やめるのか?」
「人生が片付くときめきの魔法」「からすのどろぼうやさん」
「ねじ曲がったクロマニョンみたいな名前の村上春樹の本」
「八月の蝉」「大木を抱きしめて」
「昔からあるハムスターみたいな本」
だいぶつじろう 池波遼太郎
……
利用者さんの覚え違いに爆笑し、司書さんの検索能力にリスペクト。
SNSでもバズりがとまらない!
クイズ感覚でも楽しめる、公共図書館が贈る空前絶後のエンターテイメント。
あなたはいくつ答えられる? 

本の正確なタイトルは、なかなか覚えづらいもの。そしてうっかり間違って覚えたタイトルを文字通りに想像してみたら、とんでもなくシュールでおもしろすぎる事態になっていることもしばしば。
そんな図書館利用者さんの「覚え違いタイトル」の実例を集め、HPで公開しているのが、福井県立図書館の「覚え違いタイトル集」。
本書は、そのなかから秀逸な「覚え違いタイトル」を厳選し、「覚え違い」を文字通りに表したイラストを添付。そしてページをめくれば「正しい書誌情報」と「司書さんによるレファレンス」が現れて……という仕掛けになっています。
読者のみなさんはきっと、利用者さんの覚え違いに爆笑し、司書さんの検索能力に驚嘆することになるでしょう。
クイズ感覚でも楽しめる、公共図書館が贈る空前絶後のエンターテイメント、ぜひご堪能ください!

* * *

[もくじ]
○はじめに 「覚え違いタイトル集」、始めました
○厳選! 覚え違いタイトル集
○そもそもレファレンスって? 司書の仕事って?
○おわりに みんなの図書館
* * *
イラスト:多田玲子
装丁+本文デザイン:大島依提亜    』

・・・そうですね。クイズにもない売るという着眼点は素晴らしい。
・・・個人的にはかなり答えられるとは思うが、全く分からないケースも散見された愉快なタイトル集ですね。あははと笑って軽く読める。😁 
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「ユニット」

2023年11月08日 | 日記

佐々木譲(文芸春秋)

・・・タイトルはしっくりしないけど、相変わらず読ませるエンターテインメントなんだけど設定は、特に最初の導入部分は暗い話でやるせないですね。

内容紹介は
『十七歳の少年に妻を凌辱され、幼女とともに殺された男。警察官である夫の家庭内暴力に苦しみ、家を飛び出した女。仕事を探していた二人は、同じ職場で働くことになる。ある日、妻子を殺した少年の出所を知った男は復讐を決意。一方、女には夫の執拗な追跡の手が迫っていた。少年犯罪や家族のあり方を問う長編。
ひょんなことから同じ職場で働くことになった二人は共に立ち直りを目指すが…。少年犯罪、復讐権、そして家族のあり方を鋭く問う。『別冊文芸春秋』連載を単行本化。    』

・・・ネットの書評で同感だったもの(以下、引用)
「光市母子殺人事件をそのまま素材にしてスタートしたので、読み始めはちょっと複雑でした。犯人像がまた現実寄りに描かれているので、拒否感がぬぐえないというか、フィクションに入り込んでいきにくかったのです。
 しかしもう一方のDVストーリーが絡んできたので、そこでずいぶん救われました。
 終盤は悪役たちがどんどん暴走していくので、善と悪の対立がはっきりして、やや単純化されすぎたかもしれません。だけどぐんぐんストーリーに引っ張られる感じで楽しく読めました。
 最後は、いやーそこに逃げたらすぐにばれちゃうから、何か一ひねりするのかなーと思ったのに…。 ま、工務店のおやじさんも含めてナイス・ユニット誕生ってことで、おめでとうございます。   」

・・・道警シリーズの、小樽の違法中古車販売の話が出てきて、あら、再活用したか?と思った。
・・・確かにスピード感ある展開でした。その速さが最初の不愉快な印象を吹っ切ってしまったね。これまた一興か。😉 





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「ツナグ」

2023年11月06日 | 日記

辻村深月(新潮社)

・・・ちょっと不思議な話だけど、小説だから良いとして、楽しめる。
・・・泣ける話が好きならおすすめです。

内容紹介は
『一生に一度だけ、死者との再会を叶えてくれるという「使者(ツナグ)」。突然死したアイドルが心の支えだったOL、年老いた母に癌告知出来なかった頑固な息子、親友に抱いた嫉妬心に苛まれる女子高生、失踪した婚約者を待ち続ける会社員……ツナグの仲介のもと再会した生者と死者。それぞれの想いをかかえた一夜の邂逅は、何をもたらすのだろうか。心の隅々に染み入る感動の連作長編小説。 

著者紹介
1980(昭和55)年、山梨県生まれ。千葉大学教育学部卒業。2004(平成16)年に『冷たい校舎の時は止まる』でメフィスト賞を受賞してデビュー。2011年『ツナグ』で吉川英治文学新人賞、2012年『鍵のない夢を見る』で直木賞、2018年『かがみの孤城』で本屋大賞を受賞。ほかの作品に『ぼくのメジャースプーン』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『盲目的な恋と友情』『ハケンアニメ!』『傲慢と善良』『琥珀の夏』『闇祓』などがある。  』

以下、出版社の照会にあった「書評」です。引用します。
『・・・「使者」と書いて〈ツナグ〉と読む。その役割は、〈死んだ人間と生きた人間を会わせる窓口〉として、一度だけの再会の仲立ちをすること。都市伝説のようだが、本当に必要な人のところには使者とつながるごく自然な巡り合わせが用意されている。だが、生者は死者と、死者もまた生者と、一度しか会うことは叶わない。ゆえに、そのたった一度の邂逅は、それだけ重い。
〈僕が使者ツナグです〉と現れた少年は、たとえば、自分に絶望していたOLの、突然死した38歳のタレントに会いたいという願いの仲介をする。また、それなりに裕福な家業を継いだ偏屈な長男の、亡母との再会を橋渡ししてやる。
 本書はそんなふうに、生者と死者それぞれの胸に湧き上がる思いをていねいに掬い上げる、連作スタイルになっている。
・・・(中略)
 最終章では、生者と死者を出会わせる役割の、傍観者だった少年自身が、ひとり出会うなら誰を選ぶべきかと苦悩する当事者になる。それが〈使者〉が背負っている宿命を明かし、少年の両親の悲痛な死の真相を解くカギにもなっていく。辻村の物語巧者ぶりには、うなるしかない。
〈死者は、残された生者のためにいる〉という一文は、それは生者優位的なエゴイスティックな意味ではないだろう。一度でも死者の存在を感じたら、残された生者は、死者とともに生きていることを忘れることはできない。死者が生者にかけた愛情や慈しみ、あるいは取り返しのつかない悲しみや後悔を、生の「証」として刻みつけてしまうから。
(みうら・あさこ ライター、ブックカウンセラー)
波 2018年5月号より   」

・・・確かにほろっとします。
・・・この類の話は好き嫌いあるかも。たまには涙腺を緩めることも人生には必要かもしれない、と思う方はぜひお読みください。小説的ドキドキ感はないけど、静かに楽しめる。
・・・さて、自分ならだれに会いたいかな? 😢 

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「制服捜査」

2023年11月04日 | 日記

佐々木譲(新潮社)

・・・短編集。主人公がいくつかの事件を解決(解き明かす)スタイル。
・・・余韻を残しながら、必ずしも、ハッピーエンド(完全解決で腑に落ちる結末まで明かされるスタイル)じゃない終わり方もこの著者らしくていい。
・・・結局、十勝の地方の町における犯罪の典型的な結末なんですね。

内容紹介は
『札幌の刑事だった川久保篤は、道警不祥事を受けた大異動により、志茂別駐在所に単身赴任してきた。十勝平野に所在する農村。ここでは重大犯罪など起きない、はずだった。だが、町の荒廃を宿す幾つかの事案に関わり、それが偽りであることを実感する。やがて、川久保は、十三年前、夏祭の夜に起きた少女失踪事件に、足を踏み入れてゆく―。警察小説に新たな地平を拓いた連作集。

著者略歴 
佐々木/譲
1950(昭和25)年、北海道生れ。札幌月寒高校卒。本田技研勤務を経てフリーに。’79年「鉄騎兵、跳んだ」でオール讀物新人賞を受賞。’90(平成2)年『エトロフ発緊急電』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞を受賞。2002年『武揚伝』で新田次郎文学賞を受賞する   』

・・・地方の防犯協会、消防団、議会などの組織がどんな抑割を果たしているか垣間見える。その中で駐在のおまわりさんがいて、その町の治安を担当しているんですね。犯罪が起きない平和な町の実態とはこんなものなんだろうか。
・・・道警の裏金作り問題が組織をバラバラにした後始末というか実情がこんなものだったのだろうか。それにしてもベテラン警察官を配置換えして不祥事が起きないようにする方針が正しかったのかどうか。ちょっと考えさせられるところだ。
・・・ともあれ、一味違った展開で楽しめた。😊 



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