仕事帰りにコンビニの前を通ると、カウンターに星の姿があった。
アイスカフェオレを買って、星の方に近づくと、星も、渚に気づいて、隣のイスを引いてくれた。
「暑いですね」渚が、声を掛けると、「暑すぎるよね」と、星が返した。
渚が星に会うのは、随分久しぶりだ。
元々、痩せ気味なのに、頬が幾分こけたように見える。
「相変わらず、忙しいんですか?」渚が、尋ねると、「8月には、1週間くらい休みが取れるよ」と、
ちょっと嬉しそうに答えた。
普段は、あまり気づかないけど、笑うと空に、似ているなと、渚がぼんやり考えていると、
星が、「8月の休みに、あの人の墓参りに、行ってこようと思っているんだ」と、唐突に話し始めた。
去年亡くなった母親の事だろう・・・。
葬儀にも行かなかったぐらい、母親を恨んでいたのに、心境の変化があったのだろうか?
「この間、あの人を看取ってくれた人から手紙を貰ってね、亡くなる直前まで、俺に会いたがってたみたいでさ・・・。時間がある時でいいから墓参りに行ってくれないかってね。」
病の父と、幼い星を捨てて、去っていった母親の話は、渚も知っている。
「行ってあげたら、お母さん、喜ぶと思うな」渚が、勧めると、星は、頑なに、「おふくろは、今の母しかいないけど、あの人の墓参りだったら、言っても良いかなと思って」と、答えた。
何時もの大人な星ではなく、少年のような星の言葉に、胸を打たれた・・・。
ジュルジュルとストローで、カフェラテを飲む渚に、渚ちゃんに会えて良かったと、星が呟いた。
夏の日差しが、ようやく少し傾き始めた。